No.470800

【獣機特警K-9】Papa's Coming Back【交流】

古淵工機さん

それは、幾度目かの家族の再会。
◆出演
キャリー&ケイシー:http://www.tinami.com/view/470149
リク:http://www.tinami.com/view/376146
モニカ:http://www.tinami.com/view/376207

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2012-08-16 01:21:45 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:714   閲覧ユーザー数:661

某日、ラミナ市内。

アーバンコミューターやFREXが引っ切り無しに走る鉄道高架。

その下をくぐる道路の歩道には、小さな影が横に並んで歩いていた。

影の正体はラミナ小学校の生徒たちだ。

 

「へー、キャリーちゃんとケイトちゃんのパパって冒険家なんだ」

そう言ったのはミニウサギ形ファンガーの少女、ミク・デハヴィランド。

「そうなの。いつも冒険しててなかなか帰ってこないけどね」

と、ピューマ形ロボットの少女、キャリー・ヒルトンは苦笑いを浮かべる。

「二人とも大丈夫?よかったら今夜ヴォルペに泊まってかない?」

と、キツネ形ファンガーの少女、モニカ・マルティーニが心配そうに見つめる。

「そーだよ、おねーちゃんたちだけじゃきっと寂しいよ」

と、イヌ形ロボットの少女、煌月空が続ける。

 

すると、もう一人のピューマ形ロボット…キャリーの妹であるケイシー・ヒルトンはこう返した。

「ああ、心配しなくっていいよ。俺ら二人でもなんとかやってるし」

そしてそれに続くキャリー。

「そうそう。あたしたち、家事プログラムをママからもらってるもんね」

「うん、だから家の事は一通りできるんだぜ。料理とか洗濯とか」

得意げに話すケイシーを、心配そうに見つめるのはK-9隊8号でもある煌月陸斗。

「でも、寂しくないの?だって君たちのパパってなかなか帰ってこないんでしょ?」

さらに、モニカとミクも心配そうな顔をして続ける。

「そうだよ、ママも警察のお仕事で忙しいみたいだし…」

「そうよ、親がなかなか帰ってこないのは寂しいと思うわ」

「…確かに寂しいこともあるけど…でも、離れていても繋がっているから…」

と、ちょっぴりしみじみとした表情で語るキャリーの耳に内蔵された通信機が、

着信メロディーを奏でる。すぐに左耳をつまんで『電話』に出るキャリー。

 

「あ、もしもし?ママ?…えっ?パパが帰ってくる?うん、うん、わかった。すぐ行くね!」

「どうしたの?」

と、キャリーとケイシーを覗き込むリク。

「ごめん、パパが帰ってくるみたいなの!だからリク君たちは先帰ってて。ケイシー、行くよっ!」

「おう!じゃあな4人とも!!」

「うん。バイバーイ」

そう言って走り去るキャリーとケイシーを見送るリク、ソラ、モニカ、ミクの4人。

そして二人が去っていったのを見届けたリクは一つため息をついてこう言った。

「さ、僕たちも帰ろうか」

「「「うん!」」」

そして、再び歩みだす4人。

その背後では、青い車体に夕陽を浴びたファンガルディア号が走り過ぎていった。

ル・ブラン宇宙港。

ここは、他の星から数多くの国際便が発着し、さらにファンガルド星各地からも国内便がやってくる、ラミナ市最大の宇宙港だ。

次々に定期便が訪れては、到着ロビーに多くの乗客が降りてくる。

その到着ロビーにやってきたキャリーとケイシーを待っていたのは、

ファンガルド警察総監であり、二人の母親ロボットでもあるアイヴィー・ヒルトンだった。

 

「ママー!」

キャリーとケイシーは愛する母親の元へと駆け寄る。

「キャリー、ケイシー、よく来たわね」

「ママ、パパが帰ってくるって本当なの?」

「ええ、本当よ。今回は宇宙船の修理とかもあるから2ヶ月ぐらいはファンガルド(ここ)にいるつもりだって」

「じゃあその間パパと遊べるな!やったぜ!」

いつも以上に目を輝かせるキャリーとケイシーの手を引くアイヴィー。

「さ、こっちよ」

「「うん!」」

 

その姿はまるで…いや、間違いなく、文字通り本物の親子である。ただ単にそう見えるだけ、というわけではない。

キャリーもケイシーも、その機体はアイヴィーとその夫の設計データを掛け合わせて製造された。

つまりこの親子は、正真正銘『本物』の親子だというわけである。

 

やがて三人は、宇宙港のスタッフに案内されるがまま、『SP-Ship Bay(特別船発着場)』と書かれたゲートの前に立つ。

ゲートの隣にある窓越しには、旅客船でも貨物船でもない、赤い機体の宇宙船がチラリと見える。

やがてその宇宙船に通じているゲートが開くと、テンガロンハットにマントを着用したピューマ形ロボットの男が現れた。

「ただいま、アイヴィー、キャリー、それにケイシー」

そう、彼こそ現役の冒険家、キャプテン・エドガーことエドガー・ヒルトン。

アイヴィーの夫であり、キャリーとケイシーの父親だ。

「エドガー…!」

まずエドガーに駆け寄ったのはアイヴィーだった。

アイヴィーはその手をエドガーのほうへ伸ばすと、エドガーの肩を強く抱きしめる。

すかさず、エドガーもアイヴィーの機体(カラダ)をしっかりと受け止め、そのまま抱き返す。

「また久しぶりになっちまったな。いつもながら、申し訳ない…」

「ううん…私は大丈夫。それより、また無事に帰ってきてくれて嬉しいわ…」

二人は何度目かの再会を喜び合い、そしてそのまま唇を重ねる。

静かに、しかし熱く、色めいた接吻。やがて二人の唇が離れると、今度はキャリーとケイシーが駆け寄ってきた。

 

「「パパ!!」」

「おう、キャリーもケイシーも元気でやってるみたいで何よりだな」

「パパ、あたしね…モニカちゃんにケーキの作り方教えてもらったんだよ!」

「俺さ、クラス対抗の100メートル走で1位取ったんだ!すげーだろ!?」

「ははは…二人とも、学校生活なかなか楽しんでるみたいだな。勉強も頑張るんだぞ」

と、二人の娘の頭を撫でるエドガーに、アイヴィーが問いかける。

「ところで…今回は随分と長いのね。2ヶ月なんですって?」

「ああ、長い冒険でエリック・ザ・レッド(アイツ)も傷んできてるし、しばらくドック入りだ。それにホラ、俺いつも駆け足でまた星を離れてるだろ?」

「え…?」

「だからさ、いつも何もしてやれないのはちょっと申し訳なくてね。せめてこの機会に父親らしいところも見せてやらないとさ」

と、頭を掻きむしるエドガーを見て、クスッと笑うアイヴィー。

「もう、エドガーったら…今更謝らなくってもいいのに」

「でもホラ、なんだ。やっぱりこんなブラブラと星を渡り歩いているような男なんか…」

「あら、大好きよ?だってあなたのそういうところに惚れたんじゃない。あなたはそのままでいいのよ」

と言って、アイヴィーは自分の尻尾をエドガーの尻尾に絡める。

二人の機体(カラダ)からかすかに漏れる駆動音さえ、不思議と色っぽく聞こえてしまう。

 

暫くしてアイヴィーはエドガーから手を離すと、大きく背伸びをしながらこう言った。

「さてっと。せっかくの再会だし…今夜は久しぶりにヴォルペでゆっくりディナーにしましょ」

「お、そいつはいい考えだ」

と、頷くエドガー。

「ママ、なんでもいいけどあんまり食べ過ぎてお店の人に迷惑かけないでよ?」

と、やや呆れ顔のキャリー。その横ではケイシーがクスクスと笑っている。

「わ、わかってるわよっ…ささ、行きましょ!」

と、顔を赤らめるアイヴィー。それを見て苦笑するエドガー。

いつしか、夜になっていた。空は紺色に染まり、幾多もの星々が瞬いていた。

まるで、家族の再会を祝福するかのように…。


 
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