No.470678

~貴方の笑顔のために~ Episode 10 策の全貌

白雷さん

冷苞の登場により、敵の策を知った雛里。彼女は目の前の二人にその真実を話し始める。蜀の危機を救うために。
しかし、雛里は一刀の存在に恐怖を抱いていた。

2012-08-15 22:09:55 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:11939   閲覧ユーザー数:9693

~一刀視点~

 

俺は目を覚ますと、恋と隣り合わせで寝ていた。

いつのまにか、俺は寝てしまったらしく、なぜか毛布のようなものがかかっていた。

どうやら、彼女がこの掛物を用意してくれたらしい。

本当にありがたい、そう思う。

そして、寝台には鳳統がまだ寝ている。

 

しかし、傷口はふさがり、顔色もよく、

俺は思わず安堵し彼女の頭を撫でていた。

 

「・・・?」

 

しばらくして、彼女がほへ?とした顔で起きた。

 

俺が少しびっくりして後ろに下がると恋にぶつかってしまったらしく、

恋もその眠たそうな目を開けた。

 

 

 

~雛里視点~

 

私が目を覚ますと、そこには彼のすがたと、恋さんの姿があった。

でも、なんか変・・です。

確かにわたしは昨日、この男のひとの顔をみた、はずです。

けど、今日の彼は仮面をかぶってその顔を隠しています・・・

何かあったのでしょうか?

 

「?どうかしたのか?」

 

私がずっと彼のことを見ていたのか、そう聞いてくる。

 

「あっ、いえ、なんでもないです。」

 

私は何か大切な理由があるのならば軽率に聞いてはいけないと思って

その口を閉じる。

「そう、か。それならよかった、」

 

彼は私がまだどこか痛めていると思ったのか、私のなんでもないという答えに安心した声をだした。

 

「あなたは、誰、なんですか?」

 

それはずっと疑問だった。 私は、いえ多分、私たちはこの人のことを知らない。

 

「・・恋のにぃにぃ。」

 

そんな私の質問に今起きたばかりの恋さんがそう答える。

 

恋さんの兄?いままで聞いたことありません・・

 

「それより、起きたばかりで質問するのも悪いと思っているんだが、ひとついいか?」

 

私が考え込んでいると、その仮面の男の人はそう、尋ねてくる。

私は、そのうち分かることだろうと思い、疑問を抑え、返事をした。

 

「?、はい、なんでしょう?」

 

「鳳統さん、なぜ、南門の攻略が失敗したんだ?」

 

いきなりのことだった。

 

「私は・・」

 

そんな彼の言葉にぱっと、私に起こったすべてのことを思い出す。

そして、今私が出来うることを考える・・・

それは彼と、恋さんに、真相を話して、少しでも助けを借りるということ。

いまから、私が長坂にいっても、間に合わないし、それに、朱里ちゃんなら

いかなくても敵の動きに気づくはずだし、それに、その時間もない。

そうすると、恋さんの武に頼るしか最善の方法なのだけれど・・

 

私は同時に彼と恋さんに急いで事の真相をはなさなければという思いに駆られたが、

私はその時彼に違和感を感じる。

 

なぜ、彼は私が南門で敗れた、いや、南門に私がいて、そこから攻めようとしていたことを知っていたのだろうか・・・

彼は少なくとも蜀の武将ではない・・そして見るからに兵士でもない。

外部からきた人間がどうして・・・私があそこにいただけで、

そのことを知っているのでしょう?

普通でしたら、もう私の味方が壊滅し、そして私が射抜かれたのを見たとき、

攻めようとしていたなどと考えないはずです。

普通だったらこう、聞くはずです。

なにがあったのかと。

 

私は、冷たい汗が流れるのを感じる。

軍師として私はわかる・・・この人は、もし敵でないのなら、とてつもない・・・

そして、何よりも怖いのがもう、敵ではないということがわかっていること。

なにより、恋さんが兄としてしたっている人なのだから・・・

 

 

私が不信感を持っていることに気がついたのか、彼は言葉を正す。

 

「すまない、いきなりで悪かった。でも、安心していい、俺は敵でもなんでもない。

 勝手ながら君たちの力になりたいんだ。」

 

だから、怖いんです・・わたしは・・

 

「・・大丈夫、雛里。いい人、だから」

 

違うんです。恋さん、そこじゃないんです。なにか怖いんです・・

彼は全てを見通しているかのようで。

 

「俺が、怖い、のか?」

 

「・・・っ!」

 

私は自分の考えも読まれたと思い、震える。でも、私が怖がっていたことは

恋さんでもきづいていただろう、私は多分さっきから、ずっと震えが止まらなかったから。

でも、それでも、私は震えを止めた。

 

「・・・いえ、大丈夫です」

 

いま、私が軍師として恐るよりはやるべきことがあったから・・

 

冷苞さんの登場により、私は敵の策の全貌を知った。

蜀の危機を防ぐためには、私はこの二人に託すしかない。

そう思って私は策の全貌を二人に話し始めた。

 

「まず、私たちは張任さんが乱を起こしたことをしり、

玉座の間で軍議を始めました。

私たち軍師はその乱に疑問を抱いていました。

すぐ、制圧される数で、今の時期になぜ、と。

その時、

 ボロボロになった伝令さんが、

 “長坂に冷苞将軍率いる五万の兵あり”

 ということを報告しました。

 私たちは伝令さんが今にも倒れそうな様子から、

 そして、私たち軍師は疑っていたことがこれで晴れたと思い

 この報告は真実であると思いこみました。

 目の前の現実から、否応なしにそれを事実だと

 思い込んでしまう・・・

そして、軍師の疑い。

しかし、それこそが敵の策だったんです。

 

 冷苞さんが私たちの前に現れた・・・・

 それはつまり、冷苞さんは長坂にはいなかったことを意味します。

 そして、五胡とのつながりがある、彼女が五胡の兵とともにいないことは

 どう考えてもおかしい。

 このことから長坂は偽兵の計かと・・・・

 

 その目的は、成都から将兵をへらすこと。

 白帝城もしかりです。

 私たちは、張任さんが敵の主力と思い込み、白帝城へとも

 主戦力をおくりました。

 

 しかし、ここでおかしいのが先ほど言った伝令さんです。

 なぜ、あの伝令さんはそんな状態で私たちに偽りをつたえたのでしょうか。

 そして鄧賢さんの細作部隊の全滅。

 今思えば、蜀一の細作部隊が全滅するということは

 ありえないことだったんです。

 私たちはそれほどまでに、五胡兵に驚き、

 そして軍師たちは五胡兵の存在に疑いが晴れ、安堵してしまった。

 そして、そんなこともありえると考えてしまった。

 

 おそらく鄧賢さんは私たちの情報網を尽く

 つぶしして、偽の情報をあたえていたんです。

 おそらくいまごろ鄧賢さんは・・・・・」

 

 

 

そう・・・全ては今話した通り、

張任さん、冷苞さん、そして鄧賢さんによる心理、情報を制する策でした。

 

「劉備さんがあぶない・・・・か・・・」

 

ずっと、話を聞いていた恋さんのお兄さんがそう言う。

 

「・・・はい」

 

「それで、俺にできることって?」

 

「・・・恋さん、に、主にお願いしたいのですが・・」

 

私は彼女の武は知っている。しかし彼の武は知らないどころか彼の存在

まで知らなかった。

今、確実なのは恋さんに頼むことだった。

 

「・・すまない、鳳統さん、恋は昨日の怪我で毒をうけたみたいで、

 まだ完全に動けないんだ」

 

「大丈夫、恋、いける」

 

「だめだ、頼む恋、わかってくれ。どんなに強くても無理をすれば隙が生まれる。

 俺は、もう、失いたくないんだ」

 

なにか、意味ありげにそういう彼の拳は震えていた。

 

「俺がいく。」

 

「・・・」

 

恋さんはその言葉に何も言わなかった。

つまりそれは同意。そして策を私が話した上で恋さんが同意したということは

つまり、彼にはそれなりのいや、並以上の武があるということ。

 

私には選択肢がなかった。

 

「では、あの・・」

 

「ああ、すまない、焦っていたもので。

 俺の姓は呂、名を白、字を乱舞という。恋の兄だ。

 よろしく」

 

「あっ、はい、ごめんなさい、私の名はよんでくださっていたのに。」

 

「いいよ、気にしないから。  それで、」

 

「あ、はい。 呂白さん、今できる最上の策は白帝城の南門から侵入。

 そして、火計などを用い城内部に混乱をつくることです。

 一番の方法は敵にまぎれることですが、それでも見つかってしまったら、

 かなりの危険を伴います・・

 大丈夫、でしょうか?」

 

「了解。それくらいなら俺にもできそうだ。」

 

即答だった、私は怖い・・

私たちの動きを、私を助けに来てくれたあの一瞬で判断し、

かなりの危険と思われる策を瞬時に受け入れてしまうような彼が。

 

「じゃあ、恋、鳳統さん、少しいってくる。

 恋、鳳統さんをよろしく、な」

 

「・・・ん、・・・にぃにぃ、、」

 

「どうかしたか、恋?」

 

「気をつけて」

 

「ああ、わかってる。こんなところでは俺はやられない」

 

そう言って、彼は恋さんの頭を優しく撫でた。

 

そうやって彼は黒い外套をはおり、白帝城へ向かうべく小屋から出て行った。

 

 

 

 

~白帝城~

 

鳳統の部隊が壊滅させ、冷苞は白帝城へと入っていった。

 

“敵将鳳統、うちとったり”

 

そんな叫びとともに冷苞が城壁に現れる。

それは蜀軍の士気を低下、そして将を困惑させるのには

十分な理由だった。

 

雛里のことは定かではないし、それは偽りの情報かもしれないと思うが、

紫苑は確定的なことにきづいてしまう。

敵のねらいは、敵の全貌は何なのかということを

 

 

そして紫苑は桔梗、焔耶を集めことの全てをはなす。

 

紫苑から全てを聞き、成都の危機をしる三人。

 

いそぎ成都に向かおうとする三人であったが時すでに遅し・・・

冷苞将軍を加え士気が上がった敵、

将軍の登場と、軍師の死去。その知らせにみるからに士気がおちている蜀軍・・・・

 

兵数の差はいまだあったとしてもここで蜀軍が退いてしまえば、

敵は城からうってででき、追撃に移る。

そうなれば蜀の戦線はもたず、運が悪ければ

壊滅してしまう・・・

 

そう考えた三人は焦りの色を浮かべながらも

攻城戦をつづけるしかなかった・・・

 

 

主の危機をしりながら自分は助けにすらいけない・・・・

そんな無力さに三人の頬には涙がつたわった。

 

 


 
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