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「今の医学では対処のしようがありません」
「冷凍保存技術をご存知ですか?」
「今は無理でも、未来では治療法の確立がなされているでしょう」
「病が治せるその時まで、貴方は現状を維持したまま眠り、待てばいいのです」
医者の語る最先端医療は完璧で、救世主が現れたかのように思える。
反面、そこまでして生き延びた先に待ち受けるものは何だろうかと考えてしまう。
冷凍保存されれば殆んど老化せず、待とうと思えば病が治せると判断されるまでいくらでも待つことが出来るらしい。
わたしの病が治る日はいつやって来るのか、もしかしたら次に目覚める時なんてやって来ないではないだろうか。
そんなのは杞憂で、あっさり数年のうちに治してもらえるかもしれない。
つい、溜息が出た。
先ほどから同じような事をずっと考えては、勝手に不安になって落ち込んでいる。
待ち時間というものは良いものではないな。
いろいろと悪い想像をしてしまって、不安と緊張で胃の調子が悪くなりそうだ。
なんとなくお腹をさすっているとノックの音した。
ついにその時が来たようだ。
「石川さん、調子はどうですか?」
「少し緊張してます」
苦笑しながら答えたわたしに、お医者さんは人のいい笑みを浮かべながらきっぱりと言った。
「大丈夫です。しっかり成功させて、次に起きた時には、すっかり元気になっていますよ」
不安が消える訳ではかったが気遣いはうれしい。
冷凍するのはこのお医者さんなのだ、起こしてくれるのもこのお医者さんだったらいい。
少なくともこのお医者さんが現役の間に起きられるのだから。
お医者と別れ、健康チェックを行い、お腹からっぽにして準備万端。
次に目覚めたら希望を持とう。
理不尽で、明確な終わりが視界を塞ぎ、未来が見えないなんてことが無くなった時、わたしが持つ諦めの心は邪魔なだけだ。
ポジティブに、ホジティブに。
棺桶みたいな人ひとり分のスペースしかない円柱状のカプセルが、私を待っている。
中に横たわると、笑ってしまうほど機械的な密閉をするウィーンという音が聞こえ、フタがスライドしていく。
フタが閉まっても中には照明が点いてあるので、想像していたよりは怖い思いをしなくて済みそうだ。
「石川さん大丈夫ですか?」
カプセルの中にお医者さんの声が聞こえる。
目だけでスピーカーや、あるかもしれないカメラを探しながら答えた。
「はい、問題ないです」
「それでは始めますよ、目をつぶって楽にしてください」
しばらくして、カプセルの中にガスが入れられた音がしてきた。
いよいよかな?せめて寝ている間くらい、死に追われる恐怖から開放されて、いい夢が見られますように。
それではおやすみなさい。
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此処まで書いて力尽きました。
書いたものについての知識なんてこれっぽっちもありません。
大体は想像です、あしからず。