俺は翌日、各国政府に『自分にとって渡すに足る人にしか渡さないのであしからず』と、一報入れた。無理矢理奪おうとする国にはそれ相応の反撃をする。とも言ったが。まあそんな訳で平和な日々が過ごせる…
「と、思っていたんだがな…」
「決闘ですわ!」
「良いぜ。望むところだ。なんならハンデも付けてやろうか?」
事の起こりはクラス代表を決めるという話だったんだが、女子はこぞって俺と一夏を推薦してきた。まあ、俺はKMFを使うため辞退させてもらった。はっきり言ってISがKMFに挑むのは、本物の武器を持った男に丸腰の女性が挑むような物だ。
そうするとイギリスの代表候補生の…確かセシリア・オルコットさんだったか?が突っかかってきた。彼女曰わく猿のような人物が代表など恥曝し以外の何者でもないらしい。
「うるさいぞ、お前ら。ピーチクパーチク喧しいんだよ。俺からすれば、お前ら両方共がただのガキに等しいんだ。いい加減にしないとお前ら2人を同時に潰すぞ」
「まあ!なんて物言いですの?貴方もこの男と同じなのですか?」
「候補生風情が喚くな。そういうのは国家代表になってからほざけ。俺からすればお前なんぞ30秒で撃墜できるわ」
「そういう貴方は参戦しないんでしょう。臆病風に吹かれた負け犬の遠吠えにしか聞こえませんわ」
「…織斑先生。一週間も必要ありませんから、今日!直ぐにでも!こいつと戦わせてください!
もう我慢ならん!いい加減ムカついた!候補生程度でいい気になっているこいつの自信を粉々にしたいんですが!!是非にご検討ください!!」
「…オルコット、今からでも遅くはない。悪いことは言わないから、謝っておけ。こいつの実力は国家代表すら上回るからな」
「こんな男が国家代表よりも上?それこそ悪い冗談ですわ」
「織斑先生…もう、いいですよね…?日本の侮辱はまだしも男は猿か。ハッ!ならお前は猿の遺伝子から生まれた牝猿だよ。大体世界を一周した俺からすればイギリスも日本も大差ないんだよ。大体あんた国の代表の癖にIS発祥の地とKMF作製者である俺を侮辱したな?もうお前の国にコアが入って来ることは無いと思えよ?」
「なっ!?卑怯でしてよ!」
「ハッ!口は災いの元。良い言葉だよな。大体歴史上で公平だった者などいるものか。お前は俺に喧嘩を売った。それがお前さんの国に飛び火しただけだ。俺には関係ない。精々あんたの候補生の資格を剥奪した後、会社と家の買収と取り壊し位だろう。軽い物だろう?国の損害としては、だが」
「お、おい晃の兄貴。何も其処までしなくても…」
俺は一夏の発言を無視して話を続けた。
「セシリア・オルコット。お前が男をどう思おうがどう罵ろうが、それは自由だ。今のご時世、俺もムカつくような男も多いからな。だが、それに俺を巻き込むな。候補生ならば己の発言に責任を持て。他者に対する偏見を捨てろ。確かにお前は選ばれた人間だ。だが、努力を怠ればお前が言った猿以下の者になる。それで良いのか?お前は」
「そんな事…良くないに決まっていますわ!」
「ならばもっと誇り高く毅然としていろ。そして自分の経歴を自慢するな。その慢心が消えれば、お前はもっと強くなれるんだからな。…次に一夏」
「な、なんだ?」
「俺はさっき言ったな?イギリスも日本も大差ないんだよって。お前が怒った理由もよく分かる。だがな、それはお前が相手の国を貶して良い理由にはならないんだ。分かるか?」
「ああ。言いたいことは分かるよ。でも、俺も黙っていられなかったんだ」
「分かっている。だから一週間後、このクラスの代表の任命権を賭けて2人に戦ってもらう」
「「え?」」
「俺は戦いまで否定はしない。戦いが人を成長させるのは事実だからな。だから2人が戦い、己の認めた者を任命しろ。勝って勝利を掴んだ者のみが、権利を得るんだ。それで良いな?」
「ああ!セシリア、悪いが勝負は俺が頂くぜ?兄貴に良い所を見せたいからな」
「代表候補生の名に賭けて、今回の勝負私が勝たせていただきます!」
「じゃあ丸く収まったところで、山田先生次どうぞ」
「ふぇっ!?あっ、はい!」
この先生本当に大丈夫かと思わざるを得ない一瞬だった。まあ、この学校で教師やってるんだ。ISの技量はあるんだろう。
俺が放課後自分のラボで研究していると、簪と楯無が入ってきた。え?俺が何の研究をしているのかって?今は第9世代、つまりエナジーウイング搭載型にエネルギービットを搭載しているところだ。…………………よし、設置完了。
「何か用か?」
「ひどっ。用がなきゃ来ちゃ駄目なの?」
「いや?天下のIS学園の生徒会長がこんなところで油を売っていて良いのかな?って思っただけだ。その内虚も探しに来るだろうしな」
「うっ…。って、あれ?通信機が点滅してるよ?」
「え?…あ、ホントだ。通信先は…レイか。また、誰かを見つけたのか?…もしもし?」
「あ、殿下。良かった~。繋がったよ」
「それで今度は何だ?またリアのKMFの修理か?」
彼の名前はレジール・イルダス。略してレイだ。俺の選んだ12人のKMF使い、名称【ナイト・オブ・ラウンズ】のメンバーでナイトオブ3だ。基本的に【ナイト・オブ・ラウンズ】の面々にはデータ取りに勤しんで貰っている。
「それなんですが、訊いて下さいよ殿下。また現れたんですよ!」
「…何が?」
「異世界からの来訪者ですよ!しかも今度は2人も!」
「とりあえずその2人を引っ張り出せ。交渉するから」
それから数分後、黒髪の青年と赤髪の女性が出てきた。同じ制服に目というか雰囲気的に見て、おそらく軍人だろう。首から下げているペンダントがISかな?
「とりあえず初めまして。【ナイト・オブ・ラウンズ】の主、草薙晃です。お名前と所属を伺ってもよろしいですか?」
「ZAFT軍所属シン・アスカだ。こちらは同僚の…」
「ルナマリア・ホークよ。よろしく」
「よろしくお願いします。端的に説明しますと、この世界は貴方達の知る世界ではありません」
「…どういう事だ?」
おそらく彼らも異世界の狭間に飲み込まれてこの世界にやって来たんだろう。俺はかいつまんで2人にこの世界の実情と俺達の事について話した。普通は混乱してそれどころではない筈なんだが、2人は普通に対応していた。
「…それで2人が宜しければで構わないのですが」
「何かしら?」
「其処でテストパイロットをしてみませんか?勿論衣食住は提供しますし、お望みであれば給料も出しましょう。如何でしょう?ああ、返事は決まってからで構いませんので、決まったら誰でもいいので仰って下さい。…後これは余談ですが、そこには貴方達以外にも異世界からの来訪者がいますので、話をしてみるのも良いかもしれませんね。では、失礼します」
~シンside~
何なんだろうあの子は?あの子がこの集団のトップ?にわかに信じがたい事が大量にあり過ぎてなんだか対処に困ってきた。
「それでどうするの?シン。私はやってもいいと思うけど」
「うーん、情報も少ないしな。受けるのはいいとしても、まずは何をするのかを訊いてみよう」
「それもそうね」
「お~い、話は終わったかい?」
ちょうどいい所にさっきの青年――確かレジール君だったか。まずは情報収集から初めて行かないとな。俺は彼に色々な事を訊き始めた。
side end
~晃side~
俺はそう告げると通信を切った。今まで2人異世界からの来訪者が迎えているが、2人とも中々興味深いデータを持っている上に過去の戦闘データからも中々興味をそそる物が出てきた。2人ともあそこから出ようとしないが、発信機を付けさせて貰うが基本的に自由に町を散策してもらっても構わないんだが…どうやら2人とも一度街に出た時に女性関連で酷い目にあったらしく、出たがらなかった。まあ、別に構わないんだけどご愁傷様とだけ言っておいた。
「どうかしたの?」
「また来訪者が来たってだけ。出来ればテストパイロットを務めてくれるとありがたい。こちらの予測を超えるものが多々存在するからな」
「大変だね。【ブリタニア】の王様は」
「まったくだ。かのアーサー・ペンドラゴンの末裔とはいえ、ここまで面倒なことになるとはな。中々どうして大変な物だよ。ところでそろそろ寮に戻らないとマズいんじゃないか?」
「…え?あ、ホントだ」
時刻は現在夜8時。そろそろ戻らないと、マジで織斑先生にどやされるだろう。まあ、楯無ならサラッと流してしまいそうなビジョンが浮かぶんだがな。なんせこいつ人誑しだからな。
「あ、私はここに泊まっていくから」
「…はぁ?何言ってんだ?お前は。そんな事許可が降りるわけ…」
「生徒会長権限♪」
「いきなり職権乱用ですか。そうですか、それじゃあ今日も寝られないな」
「…今日もってどういうこと?」
「昨日は各国政府にKMFについての通達をしていたから、寝る暇が無かったんだよ。かといって女性と一緒に寝てタガが外れる可能性もなくはない。ならば今日も徹夜。普通だろ?」
「…はあ。別に私は大丈夫だよ?一緒に寝ても」
「俺が大丈夫じゃないんだ。簪は早く部屋に戻れ。流石にそろそろやばいぞ」
「…分かった。お姉ちゃん、抜け駆けしたら許さないから」
「私からは何もしないわよ。何かされても…ってそれはないか」
簪は小走りで寮に戻った。ギリギリで織斑先生には怒られなかったらしい。なんでも俺にISについて、相談していたと説明したら納得されたらしい。流石に厳重注意はされたらしいが。
「そういえば【ペンドラゴン】の状態はどうなの?」
「ぶっちゃけ現行ISで負けるとか有り得ないレベルのスペックだ。
量産機とか一撃でシールドエネルギーを零に出来る程の威力の火力もある。
はっきり言って公式チートを体現したような機体になった。やっぱりガンダムのスペックを流用したら誰も勝てんな。パイロットが理性的で助かった」
「私でも無理かしら?」
「いくらロシアの国家代表でも無理だな。お前が【ブリタニア】に入ってくれれば、KMFを渡せるようになるんだが…」
「流石に皆を裏切れないわよ。それにあの集団に入るには私じゃあ技量不足だから。理由も無いしね」
「理由なんて言ったら、俺はどうすんだよ?俺は復讐の為に動いてるんだぜ?俺の最終目標はISの根絶だぜ?俺はお前とは戦いたくない。…なあ、楯無」
「何?晃」
「俺には幸せになる資格なんかない。己の復讐の為に他人を巻き込む俺なんかにはな。そんな俺だけど、家族とは戦いたくないんだ」
「うん。それで?」
「お前にも簪にも言えることだが、俺みたいな血にまみれた【化け物】と共にいるべきじゃない。だから」
「俺から離れろ、なんて言ったら怒るよ。ねえ、晃。私はあの夜に言ったよね?
私は何があっても貴方の傍にいるって。
だから、そんな悲しい事を言わないで。そんな寂しいことを言わないで、ね?」
「それでも俺は言い続けるんだ。俺は【化け物】だって。俺は自分の願いを叶えるためなら平然と人を殺す【化け物】なんだって。
そんな俺の傍に居続けることが傍に立ち続けることがお前をどれほど悩ませ続けるか、検討もつかない。お前なら俺みたいな血に、罪にまみれた奴よりもずっと良い奴に巡り会える筈なのに、俺の傍にいてその人生が棒に振られたりしないかが凄く心配なんだよ、俺は」
俺は目的のために直接的にも間接的にも多くの人を殺した。これからも多くの人を殺すだろう。そんな俺についてくるには生半可ではない覚悟が必要となるだろう。地獄の底辺に落ちてもしょうがないほどの業を背負わなければならないんだ。そんな思いを楯無や簪にさせたくはない。
「不要な心配だよ、それは。覚悟はある。いざとなったら、私も戦う。己の守りたい者のために。それで地獄に落ちても、貴方と一緒なら後悔はない。むしろ本望だよ」
「…はぁ。分かったよ。でもその時はKMFに乗ってもらう。これだけは譲れない」
「うん♪さて、それじゃあ寝るとしましょうか」
「はいはい、お休み。俺はまだ【ペンドラゴン】や【アルビオン】、【聖天八極式】にも改良を加えないといけないからな」
「何言ってるの。晃も寝るのよ?」
「は?いや、だからまだ俺はKMFの改良をしないと…」
「そんなのいつでも出来るでしょう?ほらほら、早く!」
強制的に隣で寝されました。しかも腕を胸と腕で挟んだ状態。なんという生殺しだと思わざるを得なかった。しかも寝たと思って腕を抜こうと思ったら力強く抱きしめていた。まるで好きな人から離れたくないとだだをこねる子供のように。そんな彼女のことを愛おしく感じた俺は、抱きしめた。存在を主張するかのように。離れることはないと囁くように。この親愛の感情しか持たない俺でも、いつか恋愛をするのだろうか?
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世界最強の兵器と言われる兵器を生み出した少年は一体どこに向かうのか?主人公の所属する組織とちょっとびっくりなキャラ登場。