No.469825

IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第17話

Lさん

第17話です。

プロローグ
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2012-08-14 01:31:02 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:9608   閲覧ユーザー数:9295

アリーナの一件から一時間が経過していた。

保健室のベッドでは打撲箇所に包帯を巻かれた鈴とセシリアが居た。

 

「別に助けてくれなくてよかったのに」

「あのまま続けていれば勝っていましたわ」

「お前らなぁ……まあ別に感謝されたくてやった訳でもないし俺自身がムカついて乱入しただけなんだけどさ、シンには感謝しろよ、あの時シンが来てくれなければやられてたぞ?」

「だ、だからあのまま続けてれば勝て」

「どうやって?」

「「うっ……」」

 

一夏から見てもあの状態では勝ち目は無かった。

 

「好きな人に格好悪いところを見られたから、恥ずかしいんだよ」

 

シャルルが飲み物を持ってきて鈴とセシリアに小声で言った。

しかし、一夏には何言ってるのかよく聞き取れなかった。

 

「なななな何を言っているのか、全っ然っ分かんないわね! こここここれだから欧州人って困るのよねえっ!」

「べべっ、別に私はっ! そ、そういう邪推をされるといささか気分を害しますわねっ!」

 

二人は顔を赤くしてカミカミなセリフを言った

キラ、シン、ルナマリア、シャルルも溜め息ついた。

するとキラはある事を思い出したのか一夏に話し始めた。

 

「あ、そうだ、今度の学年別トーナメントの事なんだけど……」

 

その時だった、像が猛スピードで走ってくるような地響きが聞こえ、そして次の瞬間、保健室の扉が空中を舞った。

吹き飛ばされた扉を躊躇い無く踏みながら入ってきたのは保健室を埋め尽くす程の女子生徒だった。

 

「織斑君!」

「デュノア君!」

「な、な、何だ何だ!?」

「い、一体どうしたの?」

『これっ!!』

 

一夏達に突き出されたのは一枚の学内緊急告知文の紙だった。

 

「な、何々……?」

「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的な模擬戦闘を行う為、二人一組での参加を必須とする。尚、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りは』」

「ああっ、そこまででいいから!」

「私と組んで織斑君!」

「私と組みましょうデュノア君!」

 

一夏は焦った、シャルルを女だと皆は知らない。

もし女子と組めば当然一緒に訓練したりもする。その時に女だとばれかねない。

 

「悪い! 俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

女子は一気に静まり返った。

 

「まあ、そういう事なら……」

「他の女子と組まれるよりはいいし……」

「織斑君とデュノア君の掛け算ごほんごほんッ、もとい男同士ってのも絵になるし……」

 

女子達は納得して去っていく。

だが、それに納得しない者がいた。

 

「一夏っ!」

「一夏さんっ!」

 

鈴とセシリアがベッドから飛び出し一夏に掴み掛かった。

 

「あたしと組みなさいよ! 幼なじみでしょうが!」

「いえ、クラスメイトとしてここは私と!」

「ダメですよ」

 

そこにやってきたのは真耶だった。

突然の来訪に一夏達は驚いていた。

 

「お二人のISの状態をさっき確認しましたけど、ダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念しないと、後々重大な欠陥を生じさせますよ、ISを休ませる意味でも、トーナメント参加は許可出来ません」

「うっ、ぐっ……! わ、分かりました……」

「不本意ですが……非常に、非常にっ! 不本意ですが! トーナメント参加は辞退します……」

 

トーナメント不参加は代表候補生の二人の立場を悪くしてしまう。

だが、ISが動かせないのであれば参加は出来ない。

二人は悔しさを抑えるため拳を握り締めていた。

 

「あ、それとアスカ先生、始末書の提出は明日までにしてくださいね! 提出が遅れると織斑先生の出席簿が飛んできますよ!」

「げぇ! あれを食らうのだけは嫌だ!」

 

シンは書類にミスをしてしまった際、千冬の出席簿を食らったことがある。

あまりの痛さに蹲るほどであった、正直アカデミーの教官の鉄拳よりずっと痛かった。

それ以降、シンは千冬の出席簿を恐れている。

 

「ヤマト先生、超振動兵器に関する資料を持ってきました」

「ありがとうございます、山田先生」

 

真耶から渡された一枚の封筒をキラは受け取った。

 

「キラさん、何で超振動兵器についてお調べになっておりますの?」

 

疑問に感じたセシリアがキラに尋ねた。

 

「実は4組の代表候補生のIS開発を手伝う事になったんだ」

「4組の代表候補生って、更識 簪よね?」

「うん、彼女のISはまだ完成していないんだ、それで僕が開発を手伝う事にしたんだ」

「何でISが完成していないんだ?」

 

一夏は代表候補生なのに、ISが完成していないことに疑問を感じた。

そこでキラは何故、簪のISが完成していない経緯を話した。

 

「というわけなんだ」

「という事は間接的に俺が原因か!」

「まあ、そういう事になるね、でも、簪さんはもう気にしていないって言っていたから、そんなに気にしなくていいよ」

「いやでも、結果的に俺が更識さんに迷惑をかけたんだ、一言謝らないと俺が気がすまない」

 

結果はどうあれ、一夏は自分のせいで簪に迷惑をかけたのは事実である。

 

「分かった、今から整備室に行くから一夏も一緒についてきて」

「ああ、分かった」

 

 

保健室を後にしたキラと一夏、一緒に付いて来たシャルルは整備室に向かっていた。

因みにシンは始末書を書く為に部屋に戻り、ルナマリアは保健室でセシリアと鈴の相手をしていた。

整備室に着くと簪が椅子に座って待っていた。

 

「遅くなって、ごめんね、簪さん」

「あ、キラ先生!」

 

簪は椅子から立ち上がりキラに近づくが、キラの後ろに一夏が居る事に気付き驚いてしまう。

 

「お、織斑……君……!?」

「初めまして、更識さん」

 

簪は一夏が尋ねてきた事に戸惑いを隠せなかった。

そこにキラが一夏が簪を尋ねてきた理由を話した。

 

「君のISの事を一夏に話したら、君に謝りたいって言っているんだ」

「え……!?」

「キラから更識さんの専用機について聞いたよ、俺のせいで更識さんに迷惑をかけてごめん」

 

一夏は簪に頭を下げて謝った。

 

「謝らなくていい、だから、頭をあげて……」

「更識さん……」

「……専用機が完成しなかった事で私は織斑君を恨んでいたわ、だけど……織斑君は悪くない」

 

大人達の都合に一夏が巻き込まれたに過ぎない。

 

「それに織斑君は悪い人じゃないってキラ先生に聞いていたし……それに今は感謝している……」

「え、最後何て言った?」

 

最後の言葉は小さくて良く聞こえていなかった一夏だったが、シャルルは簪の言葉の意味に気付いて苦笑した。

 

「い、いや何でもない!」

「そ、そうか」

 

簪の慌てように一夏は戸惑ってしまった。

シャルルも自己紹介を済ませるとキラと簪は"打鉄・弐式"の開発に取り掛かった。

 

「まずはIS本体の取り掛かろう」

「はい……」

「まずは、ブースターと推進システムの調整から」

「それだったら、キラ、俺の白式のデータは使えないか?」

 

突然、一夏の提案に簪は驚いた。

 

「それは良いかもしれない、打鉄・弐式は白式と同じ機動型、それに白式は同じ倉持研が開発された機体だ、稼動データ流用等が出来るね」

「でも……良いの織斑君?」

「更識さんに迷惑をかけたんだ、これぐらいはさせてくれ」

 

簪は一夏の顔を見ながら答えた。

 

「……ありがとう、白式のデータ使わしてもらう」

「どう致しまして」

「それじゃあ、スラスターと推進システムは白式のデータを元に調整しよう」

「はい」

 

一夏とシャルルは手伝いをしたいと申し出てきたので、キラと簪はお願いする事にした。

こうして、4人は"打鉄・弐式"の開発に取り掛かるのであった。

 

 

"打鉄・弐式"の開発にキラが協力する様になってから2週間

一夏が提供してくれた"白式"の稼動データと一夏とシャルルが手伝ってくれたお陰で一週間も早く完成することが出来た。

だが、男三人とも簪の元に居たため、三人と話す事が出来なかった女子達は簪に恨めしい目をしていたのは別の話である。

そして、キラ達は"打鉄・弐式"の起動テストを行う為、第三アリーナに来ていた。

簪はISスーツを着替えていた、そして簪は指輪になった自身の専用機を呼び出した。

 

「おいで、打鉄・弐式!!」

 

白と黒の装甲が特徴的な機体、"打鉄・弐式"が展開された。

各所のチェックを済ませると、キラ達が完成させた"打鉄・弐式"の起動テストが始まった。

 

「じゃあ、まずは春雷から撃ってみて」

「はい! 春雷、起動!」

 

ホログラムのターゲットドローンが一機投影された。

ターゲットドローンに狙いを定め荷電粒子砲を放った。

放たれた荷電粒子砲は一直線にターゲットドローンに向かい、落とした。

 

「出力は問題なさそうだ、次はターゲットドローンを10機出すから、連射しながら撃ってみて」

「はい!」

 

ターゲットドローンが10機投影されると簪は荷電粒子砲が連射をしながら落としていた。

全てのターゲットドローンを撃墜した簪は砲身のチェックをする。

春雷は砲身は熱融解している所も罅割れている所も見受けられなかった。

 

「どう?」

「はい、春雷は完璧です」

「そっか、なら次は夢現のテストだ、一夏、シャルル、お願い」

 

一夏とシャルルはISを展開させ簪の前にISと同じ高さの鉄を置いた。

簪は夢現を展開して構えた。

 

「いきます!」

 

鉄に向かって接近して夢現を振り下ろした。

鉄は真っ二つになるが、思っていた以上の振動数を出してしまい、想像以上の切れ味に驚く。

 

「じゃあ、最後は」

「山嵐のチェックですね」

 

ターゲットドローン48機を展開させると簪はマルチロックオンシステムを起動させ全てのターゲットドローンをロックした。

そして、ロックしたミサイル全48発を発射されターゲットドローン全てを撃墜した。

 

「すごい……これが、マルチロックオンシステム」

 

元々、"打鉄・弐式"には日本のマルチロックオン・システムというシステムを搭載する予定だったのだが、マルチロックオン・システムは完成せず、ほぼ諦めかけていた所に"ストライクフリーダム"に搭載されているマルチロックオンシステムの導入だった。

もちろん、キラはそのまま導入はせず、いくつか性能を減らした劣化版のマルチロックオンシステムを導入をしている。

だが、劣化版のマルチロックオン・システムの性能は、元々のマルチロックオン・システムよりも高性能である。

簪は知らず知らずの内に口元に笑みが浮かんでいた。

 

「如何かな? マルチロックオンシステムの方は」

「凄く、良いです! これなら山嵐の性能をフルに発揮出来ます!」

「そう、それじゃあ後は完成した打鉄・弐式を完璧に使いこなせる様にならないとだね」

「……がんばります!」

 

学年別トーナメントまでの1週間、簪は打鉄・弐式を使いこなせる様になるまで徹底的に訓練を行う事になった。


 
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