No.469011

Infinite Stratos 00:Re 第二話

釋廉慎さん

次回戦闘

2012-08-12 11:39:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6146   閲覧ユーザー数:5817

 刹那side

 

俺がこの世界に転移してから一年が経った。……何?展開が早過ぎるだとだと?作者曰く『丸々一話使う程じゃないから』らしい。

話を戻そう。あれから俺とエクシアとティエリアはこの世界についての情報と今後の活動に必要な資金や戸籍の確保に奔走した。『エクシア』というもは今のクアンタの呼び名だが、詳しいことは後で説明する。

墜落した山から街に降りた俺は日雇いのアルバイトで少し資金を稼いでからネットカフェでヴェーダを使って戸籍を偽造し、それから長期のアルバイトや『裏』関係の仕事で海外に渡れる程度の資金を確保した。……服装については深夜にゴミ集積所から拝借させてもらった。世界を放浪していた時期と同じだな。

資金についてはヴェーダで株価を操作して稼ぐという手段があったが昔イアンが『ただの犯罪組織と変わらん』と言っていたのでそんな事はしなかった。経済が混乱しかねん。……俺の口座にハッキングして少しだけ額を盛ったりはしたが。これぐらいは見逃してくれ。生活費ぐらいは自分で稼いでいる。

 

思えば確かに色々あった。道路工事から住込みで定食屋のバイトまで様々な仕事(お蔭で調理技術を手に入れた)をしたり、海の見える街で古流武術を受け継ぐ喫茶店経営の男と知り合ったり(甘いものは好みではないがあそこのコーヒーとシュークリームは美味だった)、兎に角色々あった。そんな風に日本の各地を転々としながら情報を収集していた。特にIS関係については重点的に。今まで得た情報を整理するとこうなる。

 

 

・ISは『篠ノ之束』なる人物が開発した宇宙開発用パワードスーツ。現行兵器を遥かに凌ぐその性能の高さと世界に初めて認知された経緯から世界各国からは『競技用パワードスーツ』の名目で『最強の抑止力』として浸透している。

 

・ISは『コア』と呼ばれる人間でいう脳と心臓に当たるパーツと手足やスラスターといった肉体に当たるパーツから構成されるが、コアについては完全なブラックボックスであり製造については篠ノ之束以外不可能。しかも当の本人は現在失踪中である。尚、現存するコアの総数は467個。

 

・ISは男性には使えず、女性にしか起動させる事が出来ない。故に政府は優秀な操縦者確保の為に女性優遇政策をとり、世界は女尊男卑の世の中となった。

 

 

大まかに纏めるとこの三つになる。他にもあるのだがこの三つが最重要項目と考えた為今は省略させてもらおう。

 

まずISは現在前述の通り競技用パワードスーツとして世界に広まっているが、それは建前であり俺自身の目から見てもまたこの世界の権力者や有識者から見てもその本質は"兵器"だ。そもそも人間相手に対物ライフルレベルの実弾を発砲し刃引きされていない刃物で切りかかる時点で競技の域を逸脱しており、ISの開発を主導しているのは国家の中でも特に軍部だ。世界最強の兵器を競技用と騙る事で平和を装い人々に不安を抱かせないつもりなのかは知らないが、国一つを簡単に滅ぼしかねない代物を実際に運用している時点でおかしいと思える。

また登場以来一度も宇宙に上がった事はなく、その様に使われる様子もまた開発される様子も無い。

 

 

『実際には兵器としても圧倒的に未熟ですがね』

 

 

そう、エクシアが言う様にISには実際に兵器として見るには明らかに不可解な部分も含まれる。『シールドバリアー』と『絶対防御』と呼ばれる機体及び操縦者を保護する為のエネルギーバリアに『パッシヴ・イナーシャル・キャンセラー』、通称『PIC』と呼ばれるISの浮遊・飛行に用いられる慣性制御装置、星間距離でも使用可能な『ハイパーセンサー』、光学兵器の実装など現行兵器を凌駕しこちらの世界でいう太陽炉搭載型MSに匹敵もしくはそれ以上の性能を誇りながら『女性にしか使用出来ない』という欠点を持つ。

もし仮に製作者がISを兵器として造ったのならそれこそ理解出来ない。兵器は要は武器であり、誰にでも簡単に敵を殺せる様にする為の道具である。特殊な技術や能力が必要とかではなく生まれながらにして使用の可否が決められるそれは兵器としても、また宇宙開発の為の道具としても明らかにおかしい。ここに『開発者である『篠ノ之束』が極端な女性至上主義者であり女性の社会的地位の向上を目的にISを開発した』という仮定を更に付け加えても、望み通りの女尊男卑の社会で何故姿を眩ましたのか。危険人物として束縛されるのを嫌い逃亡したとしたら『世界を創り変えた人間』として身勝手が過ぎる話だ。

 

ISが登場して以来男性の社会的地位はそれ以前と比べるまでもない程暴落した。ISの軍への導入により日本の自衛隊を始めとする各国の軍隊は戦闘機や戦車の軍備を縮小、人員も削減した。また女性優遇政策により不条理な理由で逮捕・投獄されまたそれを免れたとしても世間的に不当な扱いを受けるなど様々な弊害が起きている。軍部や政府・議会の上層部にも女性が多く進出し始め、今後ともこの様な変化が加速し続けると俺とティエリア、エクシアは推測する。

 

篠ノ之束の目的が全く理解出来ない。彼女は何の為にISを開発し、世界を創り変えたのか?この世界が"歪み"続けるのならばその『歪み』は俺が破壊する。だからそうなる前にその答えが明かされる事を願う。

 

 

 

 

 

 

 

話を変えるが、クアンタは俺専用のIS『ガンダムエクシア』として生まれ変わった。クアンタは『ガンダム』であり、半永久機関『GNドライブ』を二基搭載、更にはELSと融合しておりISにより科学技術が発達したこの世界に於いても明らかにオーバーテクノロジーの塊である。完全な『個』としての自我を持ち最新鋭のISすらを軽く凌駕するクアンタの存在が世界に知られれば間違いなく追われるだろう。

だからリミッターと偽装としてヴェーダから俺のかつてのガンダムである『ガンダムエクシア』の改修機『ガンダムエクシア・リペアⅣ』のデータをダウンロード、それを基にELSの擬態能力を用いてデータ通りに外見と性能、装備を再現した。太陽炉はツインドライブシステムを解除し、単基での運用に切り替えている。元々ツインドライブシステムを前提に造られたクアンタの太陽炉はどちらかが不調に陥っても稼働出来るようできている。

更に情報収集によりISのコアは自我の様なものを持ち、『コア・ネットワーク』という独自のネットワークを形成、互いに情報を交換し稼働データや経験を基に自己進化するという情報が得られたのでそれを一部参考にさせてもらった。位置特定や機密情報の漏洩防止にコア・ネットワークを切断。『ダブルオー』と『クアンタ』を進化形態として登録し非常時や一定期間後等様々な条件を設定して自己進化を再現。エクシアとは脳量子波を介してのコミュニケーションが可能なので普段はそちらで会話する、といった具合だ。

またエクシアは本来"存在しない"ISの為偽装に全身を包むマントとガンダムの特徴であるツインアイを隠す為のセンサーマスクを装備した。今までそれでGN粒子のレーダー無効化や光学迷彩被膜を駆使しながら秘密裏に非合法組織や違法研究施設の破壊等を行ってきた。そして今現在俺は……ドイツにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 三人称side

 

ドイツの大都市の中心部から外れた小さなホテルに、一人の中東系の青年の姿があった。言わずもがな刹那・F・セイエイである。

 

 

「……毎度あり」

 

 

愛想の悪い宿主に宿泊費をチップと共に支払った刹那は住宅街の大通りに店を開いていた屋台でサンドイッチとコーヒーを買い近くの公園のベンチで朝食を済ませる。現在刹那がドイツにいるのは特にするべきものがあるという訳ではないが、興味を惹くものがあったのには違いない。

今日この街で第二回国際IS競技大会『モンド・グロッソ』の決勝戦が行われるのだ。モンド・グロッソはその名の通りISの大会であり、スピードレース『キャノンボール・フィスト』のレース部門から次々と現れるマーカーを撃ち落とす射撃部門、射撃・格闘問わずの戦闘競技の総合部門等多岐に渡り、世界中のISとトップレベルのIS操縦者が集まり鎬を削るのだ。この世界のIS操縦者がどれ程のものなのか知るには絶好の機会だった。

何よりこの大会には前回のモンド・グロッソの総合部門の優勝者にして世界最強のIS操縦者『ブリュンヒルデ』として名高い『織斑千冬』が参戦しているのだ。今回の大会でも優勝候補と言われる彼女は刹那の目から見てもこの"世界基準"では間違いなくトップレベルの実力者であると同時に"最重要人物"の一人でもある。彼女は篠ノ之束の関係者なのだ。

ハッキングして調べたデータでは織斑千冬は篠ノ之束とジュニアスクール時代からの友人にして最大の、唯一の理解者でもあり、この世界を創り変えた人間の一人でもあった。両親もおらず肉親は年の離れた弟のみである彼女が何故そんな事をしたのかは篠ノ之束同様分からない。少なくとも、唯一の肉親の弟を養う為にIS操縦者として稼いだ金を養育費と生活費に充てている辺り悪人ではなさそうだが……。

アリーナの観客席チケットも手に入れたが一介の観客風情がそんな有名人にして選手である彼女に生で会えるとは思ってはいない。だが遠くから見るだけでも何か得られるものがあると考えた刹那はヴェーダを使ってまで(・・・・・・・・・・・)チケットを手配したのだ(やり過ぎだとティエリアから注意されたが……)。サンドイッチをコーヒーで胃に流し込んだ刹那は足早と会場へと向かっていった。


 
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