No.468825

真・恋姫†無双 異伝 「伏龍は再び天高く舞う」外史編ノ二十五


 お待たせしました!

 遂に始まる反董卓連合軍本隊との戦い。

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2012-08-11 22:37:49 投稿 / 全14ページ    総閲覧数:10062   閲覧ユーザー数:7444

 ~反董卓連合軍、袁紹の陣~

 

「華琳さん達は汜水関を落とすのにどれだけ時間がかかっているんですの!?」

 

 袁紹は遅々として進まない汜水関の攻略に苛立ちの声を上げる。

 

「仕方ないっすよ~。向こうは門を固く閉ざしたまま出てこないんすから~」

 

 文醜が何度目になるか忘れた位繰り返した説明をまたするが、

 

「で・す・か・ら!!それにいつまで時間がかかっているかと聞いているんです!!」

 

 袁紹も既に何度言ったか忘れた位言った言葉を繰り返す。

 

 そこへ…。

 

「麗羽様!美羽様が…」

 

 顔良が血相を変えて飛び込んで来る。

 

「どうしましたの、斗詩さん?美羽さんがまた何かヘマをやらかしたのかしら?」

 

「袁術軍が孫策・呂布の奇襲を受けて壊滅!美羽様は今こちらへ運び込まれて来ま

 

 したが、七乃さんは行方知れずとの事です!!」

 

「な、何ですってぇ~~~~~~!!」

 

 報告を聞いた袁紹の顔色が一変する。

 

「何で孫策達が!?だって汜水関には『孫』の旗が…」

 

「多分それは私達を騙す為の物みたい…」

 

 文醜の疑問に顔良はそう答えた。

 

「それで孫策達は今『申し上げます!』…どうした!」

 

「北郷軍により南陽郡が陥落!北郷軍は孫策・呂布軍と合流し、こちらに向かって

 

 くる模様です!!」

 

「な、な、な、何ですってぇ~~~~~!!」

 

 袁紹の二度目の絶叫が響き渡った。

 

 

 

「麗羽様、どうするんですか?汜水関すら落ちてないのに、このままじゃ腹背に敵の

 

 攻撃を受ける事になっちゃいますよ!!」

 

 顔良が袁紹に善後策を尋ねるが、

 

「きーーーーーっ、そんなの全部斗詩さんと猪々子さんで叩き潰せば済む事ですわ!!」

 

「無茶言わないでくださいよ、麗羽様。幾らあたいと斗詩でも汜水関の敵と攻めて

 

 くる敵を全部倒すのは無理がありますって!!少なくとも汜水関を攻めてる連中

 

 と連携しないと…」

 

 袁紹の無茶振りとも言えるような言葉にさすがの文醜も異を唱える。

 

「だったら、華琳さん達をさっさと呼んできなさい!!」

 

「「はい!!」」

 

 顔良と文醜は諸侯を呼び集める為に陣を出て行った。

 

「何故、こうなったんですの?この私が、三公を輩出した名門たる袁家の棟梁

 

 であるこの袁本初が董卓や北郷などという何処の馬の骨ともわからない

 

 田舎者にここまで…」

 

 袁紹は歯ぎしりをしながらそう呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 汜水関を攻めていた曹操・劉備・公孫賛の所へも袁術軍の壊滅、南陽の陥落が伝え

 

 られると軍の中に動揺が走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~曹操の陣中~

 

「くっ、まさかここまで連合に不利な状況になるなんて…」

 

 曹操はそう一人ごちていた。

 

 元々、曹操は自らの名を高められるとの思いと、大陸のほとんどの諸侯が連合に

 

 参加するとの考えから連合に参加したのだが、予想に反して董卓側に付く者達が多く、

 

 しかも袁術軍までもが壊滅するに至り、自分の認識の甘さを痛感せざるをえなかった

 

 のである。

 

 しかし袁術軍に援軍を派遣して北郷軍攻めに加担した事は既に他の諸侯にも知られて

 

 いる事であり、今更引き返す事も出来なくなっていたのが悩み所だったのである。

 

 しかも、袁術軍の援軍として派遣した李典と于禁の様子が帰って来てから少しおかしい

 

 のも曹操を苛立たせる原因の一つであった。

 

 随行していた兵より北郷軍の待ち伏せにあった事と、その待ち伏せしていた将が二人が

 

 捜していた楽進であった事は聞き出したので、最初は友達が敵側にいる事が原因なのか

 

 と思っていたがそのものに原因があるわけではないように感じられ、二人に聞いても

 

 はっきりとした返事が無いのが余計に苛立たせていたのである。

 

「華琳様!袁紹より使者が来て、至急本陣に集まるようにとの事ですが…」

 

「…今更何を話し合うっていうのよ…桂花、留守は任せるわ」

 

 曹操がそう愚痴りながら袁紹の陣へ向かった後、荀彧は一人これまでの事を考えていた。

 

(まさかここまで董卓に味方する者がいるなんて…これも全てあの諸葛亮が仕組んだ事だと

 

 いうの?このまますんなり行かせてなんかやらないんだから!!この荀彧こそが大陸一の

 

 軍師だって思い知らさせてやるんだから…!)

 

 荀彧は胸の中でそう強く決意していた。

 

 

 

 ~劉備の陣中~

 

「くそっ!まだ汜水関は落ちぬのか!?」

 

「愛紗よ、向こうが出てこねば勝負にもならん事位最初からわかっていただろう?そう

 

 カリカリするな」

 

「そうは言うがな、このまま汜水関が落ちねばやられるのは我々なのだぞ!!」

 

 汜水関が落ちない事に苛立つ関羽を趙雲がたしなめるが、その言葉は関羽をさらに激昂

 

 させるだけであった。

 

 その頃、劉備は姜維と話をしていた。

 

「ねえ、姜維ちゃん。本当に連合に参加したのって正しかったのかな?」

 

「今更何を言われる。連合に参加する事を選択したのは劉備殿ですぞ」

 

「…そうなんだけどね。でも、董卓さんの所の兵士さん達は董卓さんの為にって一生懸命

 

 戦っているし、北郷さんや孫策さんみたいに味方する人達も多いよね。そうすると本当に

 

 袁紹さんの言ってた事って正しいのかなぁって…」

 

「それも今更ですね。私は言ったはずです『真実よりも我々がどう動くべきかが重要だ』と。

 

 そして主君であるあなたは連合への参加の道を選ばれた。ならば、その中でどうしていく

 

 べきかが重要なのです」

 

「どうしていくべき、か…」

 

 劉備は考え込んでしまうが、そこへ袁紹よりの使者が来る。

 

「劉備殿に申し上げます!袁紹様より至急本陣に参集するようにとの事です!!」

 

「劉備殿、一応総大将よりの命ですので今は…」

 

「…わかった。後はお願いね」

 

 そう言って劉備が袁紹の陣へ向かった後、姜維は一人考えを巡らせていた。

 

(むう、連合に参加する方が今後の為に良いと思っていたのだが…北郷軍、いや諸葛亮

 

 が敵方へ付いた時点で連合の負けは決まっていたという事なのか?あの神がかり的な

 

 知謀の前には何をやっても無駄だというのか?…いや、そんな事は無い。そんな事は

 

 無いはずだ…)

 

 姜維は彼女なりにどう対処すべきか考え始めていた。

 

 

 

 ~公孫賛の陣中~

 

「おお~い、華雄!いつまでそんな所に閉じこもってるんだ~!!武人なら武人らしく外へ

 

 出てきて勝負しろ~!!…ええ~っと、その、このうん〇たれ~」

 

 本日の華雄誘き出しの当番にあたった公孫賛は自分が思いつく限りの悪口を言って華雄を

 

 誘き出そうとしているが、生来の人の良さからかこれといった悪口が出てこず、間の抜けた

 

 呼びかけに終始してしまっていた。

 

 ちなみに汜水関攻めの当初は三つの軍勢が一斉に誘き出すための罵詈雑言を投げかけていた

 

 のだが、しばらくしてから将兵の休憩を兼ねて三つの軍が交代で華雄を誘き出すための罵詈

 

 雑言を担当する事になったのであった。

 

「はぁ~、ダメだなぁ。どうも私はこういう事は性に合わん。でも、とりあえず何かしとか

 

 ないと…おお~い、華雄の母ちゃん出ベソ~!!」

 

 それからしばらくこのような呼びかけが続いたが、相手側から全くと言っていいほど反応は

 

 無かったのであった。それもそのはず、汜水関側では既に連合側の三つの軍が代わる代わるに

 

 誘き出しの当番をしている事を把握しており、他の軍の時はともかく、公孫賛の当番の時は

 

 これといった悪口も出ない事も知っており、『公孫賛が出てきた時は最低限の見張りを残し、

 

 後は休息するように』とのお達しが出ていたからだ。だから汜水関側の兵にとっては公孫賛の

 

 悪口はもはや休憩時間を告げる合図でしかなかったのである。

 

 ちなみに当番の交代は大体二刻~三刻位で行われ、夜明けと共に始まり日没と共に終わると

 

 いう毎日であった。正直こんな事をしているからいつまでたっても進展がないのではないかと

 

 思わないでもないが、皆、特に公孫賛は真面目に行っていたのである。

 

「おお~い、華『申し上げます!』どうした、何かあったのか!」

 

「袁紹様より至急本陣に参集するようにとの事です」

 

「…はあ、ようやくか。もう手遅れのような気もするけどな、まさかここまで北郷軍にしてやら

 

 れるなんて思わなかったし。付く方間違えたかなぁ、私…」

 

 公孫賛はそうボヤキながら袁紹の本陣へ向かっていったのであった。

 

 

 

「ようやく揃いましたわね。皆さん遅いですわよ!!」

 

 集まった諸侯を前にして袁紹は苛立ち紛れの声を出す。

 

 それもそのはず、今回参集の触れを出してから皆が集まるまでの時間が汜水関攻めの始まる

 

 前の三倍以上かかっていたからだ。

 

 曹操・劉備・公孫賛といった所はまだ早く来たのだが、他の諸侯が何かと理由をつけては

 

 遅れていたのが原因であった。

 

「皆様も聞いての通り、袁術さんの軍勢は壊滅、そして敵はその余勢を駆ってここに迫ろうと

 

 してますわ!このままでは『私の』連合軍が苦戦するのは必至。そこで皆様にこれからどう

 

 すれば良いのかお聞きしようとお集まり願った次第ですわ」

 

 袁紹のその言葉に皆唖然となっていた。まず今の状況で「これからどうしましょう?」など

 

 と悠長に聞く総大将が古今東西いたであろうか?そしてどう見ても負けそうな状況で「苦戦」

 

 なんていう言葉がどこから出てくるのか?最後に連合を「私の」とまるで自分の私物の如く

 

 に言いやがったその神経に、皆の心はもはや諦めと困惑しか持てなかったのであった。

 

「麗羽…まさかそんな事の為に皆を集めたの?」

 

 そんな皆の心を代弁するかのように曹操が袁紹に問いかける。

 

「そんな事ってどういう事ですの!?そもそも華琳さん達がさっさと汜水関を落とさないから

 

 このような事態になったのはなくて!?」

 

 曹操の問いに袁紹は「お前の責任だ」と総大将にあるまじき責任転嫁で返してしまった。

 

「…! そうね、確かにそうかもしれないけど、それじゃあんたはここに来て何をしてきたの!

 

 総大将って言って、何もせずに踏ん反り返っているだけでしょう!!総大将なら少しはあんたが

 

 考えなさい!!…言っとくけどこの期に及んで雄々しくだの勇ましくだのいうたわ言を吐くなら

 

 私は陳留に帰らせてもらうわよ!!」

 

 

 

 曹操の言葉でその場に戦慄が走る。袁術軍壊滅の今、曹操軍までもが連合を抜ける事になれば

 

 連合の瓦解は必至だからだ。しかし袁紹は、

 

「私が何もしてないとはどういう事ですの!?そもそもこのような連合が組めたのもこの名門たる

 

 袁家の棟梁であるこの袁本初あっての事ですわ!もし檄を発したのがどこかの宦官の孫娘だったら

 

 ここまで集まったかしらね?」

 

 売り言葉に買い言葉とでも言うのだろうか、袁紹はこの期に及んで自らの血筋を持ち上げた上に

 

 あろう事か曹操の血筋を馬鹿にするが如き発言をしてしまったのである。

 

 そこにいる誰もが曹操がすぐさま怒り心頭に燃える事を想像したのだが曹操は、

 

「……あっそ、確かにそうかもね」

 

 意外と冷静に答えたので皆は拍子抜け半分、安堵半分といった感じであった。しかしそれも

 

 続いて曹操が言った言葉にあっという間にかき消される。

 

「確かに、私だったらこんな馬鹿馬鹿しい連合なんて組まなかったかもしれないわね。どこかの

 

 名門みたいに現実を見てないお馬鹿さん揃いではないしね」

 

「どういう事ですの、華琳さん!!私の何処が馬鹿だと仰るというのですか!!」

 

「あら~?私は『どこかの名門』って言っただけで袁家とも麗羽とも言った覚えは無いけど?

 

 それとも麗羽はもしかして自分で自分の事を馬鹿だと思っているのかしらね」

 

「な、何ですってぇ~!!…華琳さん、それが総大将に対する態度とは思えませんわね。まあっ、

 

 所詮は血筋が卑しい者には礼儀作法などと求めてはいけなかったのですわね~」

 

「ふん、何が総大将よ!あんたみたいなのは『お山の大将』というのよ!!むしろ猿山の大将の方が

 

 よっぽど大将として優れてるんじゃないかしら!」

 

 

 

 二人は激しく睨み合いながら罵詈雑言の応酬を始めた。

 

 劉備を始め他の諸侯の誰もそれを止める事は出来なかった。

 

「華琳さん、まさかこのまま連合を抜けて董卓側に寝返ろうなんて思ってるんじゃないでしょうね?

 

 まあ、あなたは張勲さんの誘いに乗って北郷軍攻めに兵を貸してましたから、今更それは出来ない

 

 でしょうけど?」

 

「…確かにそうだけどね。でもあんたみたいな何も出来ない無能な大将に従う位なら敵に頭を下げる

 

 方が百万倍マシかもね」

 

「何も出来ないとは聞き捨てなりませんわね。私は…」

 

「他の誰かに訳の分からない指図ばかりして自分は後ろで震えてる馬鹿大将でしょ?」

 

「だ・れ・が!後ろで震えてるですって~!!そんなに仰るのなら、この袁本初自ら汜水関を

 

 華麗に、雄々しく、勇ましく攻め落としてご覧に入れて差し上げますわ!!あなたこそそれまで

 

 後ろで震えて見ていればよろしいですわ!!」

 

 袁紹はそう言い放って席を立ち、軍を汜水関へ向けるべく準備を始めた。

 

 そして曹操はそんな袁紹を冷ややかに見つめると、他には目もくれずに自陣へ帰っていった。

 

 そのまま軍議はなしくずし的に終わったのだが…。

 

「ねえ、白蓮ちゃん。幾らなんでもこのままじゃ…」

 

「ああ、確かに勝ち目は無いな。かといって、戦局を逆転出来るような策も無いしな~」

 

 劉備と公孫賛はそう言ってため息をついた。

 

 

 

「お帰りなさいませ、華琳様」

 

 帰ってきた曹操を荀彧が出迎える。

 

「いかがでしたか?」

 

「…最悪よ。あんなのに総大将を任せたのが間違いだったわ」

 

 曹操はそう愚痴りながら、軍議での経過を説明する。

 

「では汜水関攻めは袁紹が行うと?」

 

「ええ、そうよ」

 

「それではこちらへ向かってくる北郷達の相手は誰がするのですか?」

 

「…あっ」

 

 荀彧からの問いに曹操は固まる。

 

 袁紹との罵りあいで、その事をすっかり忘れてしまっていたからだ。それはあの場に

 

 いた全員に言える事なのだが。

 

「くっ、仕方ないか…あんなのでも一応総大将だから放っておくわけにもいかないし…

 

 北郷達の相手は我らが行う!桂花、劉備と公孫賛にも助力を願ってきて!」

 

「はい!」

 

(くっ、ここに来て貧乏くじか…でも北郷、そう簡単にはやらせないわよ)

 

 

 

 少し時は遡って、場所は孫策達が袁術軍を壊滅させた直後。

 

 一刀達が合流し、軍議が開かれた。

 

「こうして直接話すのは初めてね。私が孫策、でこっちが」

 

「周瑜だ。改めてよろしく頼む」

 

「こちらこそよろしくお願いします。北郷一刀です」

 

「諸葛亮です。よろしくお願いします」

 

 こうして表面上はにこやかに挨拶をしていたが、内心は…。

 

(これが北郷…明命から聞いてはいたけど予想以上に優男ね。でもあの目は修羅場を何度

 

 も潜り抜けて来た目ね。油断は出来ないわ)

 

(ほほう、この娘が諸葛亮か…。あんな策を立てるようには見た目からは全く感じられん

 

 が…あの目の輝きからは確かに知性を感じる)

 

(周瑜さん…油断ならない感じは前の外史のあの人と変わりはないけど…)

 

(前の外史のあの人より柔らかい感じがします。やはり孫策さんが生きていらっしゃるのが

 

 大きいようですね)

 

 それぞれが探りあいの様相を呈していた。

 

 しかし、何時までもそうしているわけにもいかないので一刀が口火を切る形で軍議が

 

 始まる。

 

「さて、早速だが俺達は汜水関を攻めている袁紹の連合軍に攻撃を仕掛けるが、このまま

 

 正面から馬鹿正直に行っても無駄な損害が広がるだけだ。そこで各軍の軍師殿の見解を

 

 お聞きしたい」

 

 

 

「見解も何もこれだけの軍勢で威嚇すれば烏合の衆たる連合など一瞬にして雲散霧消するに

 

 決まっているのです!!」

 

 そう言ったのは陳宮であった。

 

「そうは言うがな陳宮殿。元々そんな程度で雲散霧消する程度の連中など正面から当たった

 

 所でさしたる損害も出ない。我々が注意すべきは袁紹を除けば、曹操・公孫賛・劉備の軍だ。

 

 そこを少ない損害で突破するのにどうするべきかを考えなくてはならない。私としてはそれ

 

 ぞれの軍に分けて東・西・南から攻撃を仕掛け連携を分断させた所で汜水関の者達に討って

 

 出てもらい撃破するべきと思うが…」

 

「しかし汜水関から出てしまうと連合側がそちらへ殺到してしまう可能性があるのです。その

 

 場合、華雄殿達の方こそ分断されかねませんぞ」

 

 周瑜と陳宮がそのように話し合っている間、朱里はじっと黙って地図を眺めていた。

 

「ねえ、さっきから諸葛亮が黙ったままだけど、何かないの?」

 

 孫策がそう尋ねると、朱里は顔をあげて答える。

 

「基本的には周瑜さんの策に沿って行動すべきと思ってます。しかし陳宮さんの言う通り、汜水関

 

 の人達を当てにする形だと各個撃破は難しいでしょう。ここは我々の中から選抜した部隊を一つ

 

 作り、その部隊に最後の詰めをお願いする形で行くべきかと」

 

「しかしどう選抜するのだ?ただ寄せ集めただけの部隊では碌な働きもすまい?」

 

「それはそうですが『ならば、それは我らが引き受けよう』…はい?」

 

 朱里が言いよどんでいた所へ一人の女性が入ってきた。その後ろから輝里も顔を見せる。

 

「輝里、そちらのかt『ああ、そういえばこうして顔を合わせるのは初めてだな。私が馬騰だ』…!

 

 これは失礼しました。北郷一刀です」

 

「葵…馬騰様は先程こちらに到着されたので、ここまで案内してまいりました」

 

「葵様…久しぶり」

 

「お元気そうで何よりなのです!葵様!!」

 

 馬騰の顔を見た呂布と陳宮は喜びの声をあげる。

 

「はっはっは。さすがの我々でもちょっとここまで遠かったな…恋、音々音、久しぶりだね。そちらは

 

 孫文台殿のご息女だね。ふふ、若い頃のあやつに瓜二つだな」

 

 馬騰は孫策を見てしみじみと呟く。

 

「…母様を知ってるの!?」

 

「ああ、知ってるも何も洛陽にいた頃は同じ部隊に配属されてた事もあったからな。あやつとはどっち

 

 が多く賊を討ち取るかでよく競い合ったものだ。やり過ぎて二人仲良く牢屋にぶち込まれた事もあっ

 

 たけどね」

 

 …『江東の虎』と『西涼の狼』が同じ部隊にいたのか…敵にしたくない顔ぶれだな。

 

 

 

「しかし馬騰殿には劉璋軍の足止めをお願いしていたはずですが?」

 

「ああ、あやつらは襄陽の陥落を聞いたらさっさと引き揚げていったよ。元々積極的に戦うつもりは

 

 無かったようだね」

 

「そうでしたか…それでこちらへ?」

 

「本当は南陽の攻略の手伝いでもしようかと思ったのだけどね。私たちが到着する前に南陽が陥落して

 

 袁術軍も壊滅したみたいだし、こっちに合流しようと来たわけさ。それで?連合を攻めるんだろう?

 

 今言っていた最後の詰めとやらを私達西涼軍にやらせてくれないか?月…董卓を悪者にした愚か者に

 

 涼州人の怒りを喰らわせてやりたいんだよ」

 

「それは願っても無い事ですが…お疲れではないのですか?」

 

 朱里がそう聞くと、馬騰さんは豪快に笑ってこう言った。

 

「はっはっはっはっはっは!!確かにちょっと遠かったけどね。この程度でへばる奴は西涼には一人も

 

 いやしない!今から天竺に行けったって軽くこなせるさ!!」

 

 さすがに天竺は無理じゃね?って、皆も思ったようだが…まあ、疲れてないのなら問題無いだろう。

 

「朱里、馬騰さんもそう言っている事だしここは…」

 

「はい、それでは馬騰さんの部隊には最後の詰め、袁紹軍への攻撃をお願いします。袁紹軍の指揮系統

 

 が乱れれば、汜水関の華雄さん達も呼応して動いてくれるはずです」

 

「ああ、わかった。まあ、私の旗印を見れば華雄の奴も動くだろう。あいつの事だ、ここまで出れなく

 

 て、うずうずしていただろうしな」

 

 そう言ってまた馬騰さんは豪快に笑った。

 

「それでは、これより汜水関に攻め寄せている連合を攻めます!各人の働きに期待します!!」

 

『応っ!!』

 

 

 

 

 

 

                           続く(事を期待しておいてくださりませ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 あとがき的なもの

 

 mokiti1976-2010です。

 

 今回は本格的な戦闘に入る前の動きをお送りしました。

 

 本当はちょっと位戦闘に入ろうかと思ったのですが…うまく繋げれませんでした。

 

 華雄さんファンの皆様、華雄さんの活躍はもう少しお待ちください。

 

 さて、次回は今度こそ反董卓連合軍との本格的な戦いです。

 

 既に連合ですらない状態ですが、向こうも一騎当千の強者揃いなのでちょっと位

 

 頑張らせてみようかなという事で。

 

 

 それでは次回、外史編ノ二十六でお会いいたしませう。

 

 

 

 

 

 

 

 追伸 一応ここでは恋とねねは最初から月の所にいるという設定でいきます。

 

    なので、馬騰とも月を通じて昔からの知り合いになっています。

 

    それはそうと、皇帝陛下を登場させるべきか、させないべきか…どうしよう。

 


 
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