No.467980

いきなりパチュンした俺は傷だらけの獅子に転生した

たかBさん

第四十六話 運が悪い『傷だらけの獅子』

2012-08-10 01:59:10 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:7986   閲覧ユーザー数:7234

 第四十六話 運が悪い『傷だらけの獅子』

 

 

 『傷だらけの獅子』。

 

 彼はとてつもなく運が悪いようだ。

 彼が助けただろう盾の守護獣は金髪の少年の手当てを受けることなく、僕が『傷だらけの獅子』から受けた攻撃で手放した闇の書に自らを捧げた。

 あの守護獣も受けたダメージと途中までとはいえ、大分魔力を闇の書に吸われたからね。そして、闇の書の完成がはやてを救う手段だと信じて疑わなかったのだろう。

 

 そして、闇の書は完成。

 完成した闇の書は主であるはやてをこの場に呼び出し、そして…。

 『悲しみの乙女』を発動させたという訳だ。

 

 助けようとした者から砲撃を撃たれた。それは怨敵である僕がいたから。という理由があるが、あと一息の所で彼は最悪の一手を取った。

 『悲しみの乙女』が放った一撃から黒い魔導師を救う為に獅子の力を使い、僕に背中を見せてから彼をその砲撃から遠ざける為に、その突風のごとき素早さで離脱した。が、その隙を逃がすほど僕は甘くない。

 僕から離れていく背中に剣で一撃を加えると、その大きく広げた翼と背中に大きな亀裂が走る。

 さらにそのダメージもあってか、『悲しみの乙女』の一撃から逃れることが叶わず左足を損傷した。

 どうにか原形を留めているその足には今もなお激痛が走っているだろう。

 まあ、かくいう僕も先程の砲撃でかなりボロボロなんだがね…。

 

 ドスッ。

 

 「主の受けた悲しみと痛み。とくと味わえ!」

 

 「ふ、ふふふ…。君も求めるのか?太極を…」

 

 『悲しみの乙女』が持つ砲身からは、いつの間にやらあの烈火の将が持っていただろう刃が装着されていた。

 それが今ボロボロになった僕とシュロウガを貫いていた。

 『揺れる天秤』で魔力障壁の装甲にいつの間にかダメージを負い、

 『傷だらけの獅子』が物理装甲に亀裂を作った。

 そして、覚醒したばかりとはいえ、魔力障壁を先程の砲撃で完全に吹き飛ばし、且つ、物理装甲にもダメージを与えた。

 そして最後は烈火の将の刃で僕を貫くとは…。まったく、してやられたね。

 

 「爆ぜよ!」

 

 ズドオオオオオオオオオオオンッ!!

 

 僕を貫いていた刃を中心に大爆発が起こる。

 これにて僕は戦線離脱という事か。

 …()はだけどね。

 

 

 

 「…終わったの?」

 

 「…いや、まだだ。なのは。まだアサキムがいなくなっただけだ」

 

 私は突如放たれた収束砲に飲み込まれたアサキム。そして、あの銀髪の女性が背中から生えた黒い羽をはためかせて彼の腹部に剣を突き刺してその後大爆発を起こした。

 その爆発が収まった頃にはアサキムはいなかった。

 そのことにほっとしているとクロウ君から声をかけられた。

 

 「…まだ、闇の書が残っている」

 

 「今のって、なのはの砲撃と似ていなかった?」

 

 フェイトちゃんも私のすぐそばに寄ってきて私に話しかけてきた。

 うん。あれは私のスターライトに近い砲撃だった。あれって、闇の書の持つコピー魔法?

 

 「お前達も『闇の書』というのだな…。だが、それもお似合いか。私は呪われているのだからな」

 

 「…それは」

 

 「だが、私は私のやるべきことを成す」

 

 「…やるべきこと?」

 

 「私はこれからこの世界を破壊する。主に害をなすこの世界を破壊する」

 

 ジャキィ…。

 

 「「っ!?」」

 

 「特に私は私と同種の力を持つ者倒さねばならない」

 

 その銃口はクロウと高志に向けられた。

 

 「『揺れる天秤』。『傷だらけの獅子』。お前達の力を手に入れれば私は太極に近付ける。この『悲しみの乙女』の因果も断ち切れる。我が主の願いも叶えることが出来る」

 

 「「!?」」

 

 「太極?」

 

 「因果?」

 

 彼女は何を言っているの?

 ただ、彼女を求めているのがクロウ君と高志君の命だという事だけはわかる。

 

 「さあ、そのスフィアと御霊を私に捧げてもらうぞ。スフィアリアクター達よ」

 

 

 

 銀と青の影がスピードで翻弄して背中からガンレオンを殴り飛ばした。

 

 「ガフッ!」

 

 銀髪の女性にガナリーカーバーで殴り飛ばされた俺はついには足が動かなくなった。

 彼女がアサキムに放った収束砲で左足をやられ、今の攻撃で右足まで動かなくなった。

 

 「…さすがにやばいか」

 

 (お兄ちゃん!くるくる!攻撃が来るよ!)

 

 「…そうだ、な。覚悟を決めないといけないな」

 

 (お兄ちゃん!?どうしたの?!)

 

 一瞬とはいえマグナモードを使ってクロノを助けながらあの砲撃をかわそうとしたのがまずかった。

 アリシアの方はまだまだ元気みたいだが…。今の俺は魔力がからっからっ。

 アリシアというスフィアの補助もあったが俺自身の魔力が枯渇しかけている。

 

 「…プレシア。後のことは任せる」

 

 

 俺の魔力×スフィアの力=ガンレオンの魔力総量

 

 

 俺はそう考えている。

 大本である俺の魔力がゼロになればどんなに強化してもガンレオンの戦闘能力はゼロだ。

 プレシアの話だと俺の魔力はもともと少ないCランク程度にしかない。今の今まで魔力が尽きなかったのがむしろ奇跡みたいなものだ。

 ガンレオンがどれだけ省エネなデバイスかを説明していたこともあった、な。

 

 「…アリシア。ガンレオンを手放すんじゃないぞ」

 

 (お兄ちゃん!なにを…。何をしようとしているの!?)

 

 俺がいなくなることで、アリシアのスフィアがどんな状況になるか分からない。

せめて、ガンレオンのマスターをアリシアにすればそのスフィアの影響を抑えられるかもしれない。

 

 

 ガンレオン。マスター情報。所有者沢高志。

 所有者の変更を開始。

 

 

 (お兄ちゃん!)

 

 アリシアの目にも見えているのだろう。俺の目の間に現れたモニターに映し出された文字を見てアリシアが理解しているかは分からないだろう。だが、俺から発せられる雰囲気からこれから何をするかを感じ取ったのかもしれない。

 俺は念話でガンレオンの回収をするようにアースラに打診すると、通信でプレシアの声が聞こえてきた。

 アースラにいるプレシアにもガンレオンの設定を俺が変更しているのが伝わっているのだろう。

 プレシアの表情は強い焦りに染まっていた。

 

 『…タカ、あなた何を考えているの?』

 

 アリシアはスフィアを埋め込まれてはいるけれどスフィアリアクター。スフィアのエネルギーを抽出するという役割。

 俺はスフィアユーザーで、それを扱う役割。

 あの銀髪の女性はスフィアを狙っている。俺とアリシアのどちらかを狙うとしたら確実にアリシアだろうが、この混戦時恐らく区別がつかないだろう。だから…。

 

 「はああああああ!」

 

 銀髪の女性の持つガナリーカーバーの先端にレヴァンティンの刃が装着され、ガンレオンに向かって飛び出してくる。

 その様子を見たフェイトやなのはが俺を援護しようとしたが間に合わない。

 ユーノといつの間にか合流していたアルフの魔法も間に合わないだろう。クロウのSPIGOTなら間に合うかもしれないが、チャージに時間を手間取るだろうし、俺ごと切り刻まれる可能性だってある。

 俺に一番近いクロノもまた駄目だろう。

 …それにこの足では避けられない、な。

 

 「クロノ!アリシアを任せるぞ!」

 

 ≪ユニゾンアウト≫

 

 アリシアとのユニゾンを解くと同時にガンレオンの設定の変更も終える。

 

 

 ガンレオン。マスター情報を更新。所有者アリシア。

 ライアット・ジャレンチ所有権を一時、沢高志に譲渡。

 

 

 ガンレオンから這い出た俺は自分に残された魔力で自分の身体能力を底上げ。そして、力任せにアリシアの入っているガンレオンをクロノに向かって殴り飛ばした。

 

 ガァアアアアンッ。

 

 「お兄ちゃん!」

 

 「タカッ!?」

 

 俺に殴り飛ばされたガンレオンはクロノの方にたどり着いた時には待機状態に戻り、ガンレオンの重苦しい装甲から普段着に変化したアリシアがクロノに抱きかかえられる。

 そして、

 

 ドスッ!

 

 「ぐっ、ぼぁああああ…」

 

 勢いよく飛び込んできたガナリーカーバーの刃に腹部を貫かれた。

 痛みよりも熱い。と、思った。だけど叫べない。思ったように口が動かない。

 そして、口の中いっぱいに血の味が広がる。

 

 「闇に眠れ」

 

 俺に剣を差し込んだことを確認した元はやてがそうつぶやくと同時に俺の手にしていたライアット・ジャレンチも魔力の光りとなって霧散した。

 

 「お兄ちゃん!!」

 

 …俺に向かって手を伸ばしているアリシア。だけど、指一つ。笑顔一つ見せることが出来ずにいた。

 あれ…。でも、なんだか、体、が…。

 …ああ、そうか。

 

 「…俺、…死ぬのか」

 

 まるで重りを体中に流し込んでいるかのように体中が重く感じる。

 持ち上げようと気にもならない。

 

 「おにいいいいいいちゃああああああんっっ!!」

 

 アリシアの叫び声を聞きながら俺の視界。目に見える世界が…。

 俺の意識と共にはじけ飛んでいった。

 


 
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