――視点 フウ――
「え、えぇええー!?」
目の前で起こった、まさに超展開と言える出来事に思わずそんな声を上げてしまう。
と、とりあえず、現状確認。現状の確認を…
まず、分かりやすいように少し前の出来事から…
~回想~
「…あれ? ねぇ、誰か倒れてるよ!」
ルウィーに向かい始めて少しして、一人の女の子が雪に埋もれるようにして倒れているのを見つける。
女の子は地味な感じの黒い服を着ていて、なんとなくだけどユニさんとかノワールさんに似てるなぁ、とかそんな事を思った。
でも、遭難? いやいや、都市もこんなに近いのにそんな事はないだろう。
「…ふむ、死んでる訳ではないようですが…誰でしょう? この方は」
「私は見た事無いけれど…それにしてもどうしてこんな所に倒れてるのかしら」
二人が倒れてる女の子に近付いてそんな会話をしている中、わたしはこの女の子が人間ではないと、そう感じていた。
人間じゃない、そう…
「……この子、女神と同じ感じがする」
「え、女神ですか?」
「貴女、そんなことまで分かるの?」
二人が驚いてわたしにそう聞いてくる。
「うーん、気配? 雰囲気? っていうのか…何かそんな感じがするの」
昔からわたしは他人よりも人や物の気配に敏感で、そのおかげでさっきのとか、この子が女神というのもなんとなくわかった。
女神は人間に似た感じだけど、でも違う感じ、だから。
「ふむぅ…ですが女神にこんな方、いましたっけ?」
「少なくとも現守護女神、候補生には見た事無いわね」
「うーん………って、そんな事より早くこの人を温かい部屋に運んであげなきゃ! こんな所で寝かせてたら凍えちゃうよ!」
確かにこの子の事は気になるけど、それよりもそっちが優先だ。
「そうですね。では少し急いで向かいましょうか」
「うん。…よぃしょっ!と」
アリスに同意して女の子を背負い、右手中指の指輪に魔力を送る。
すると指輪が一瞬輝いたかと思うとわたしの目の前にふわふわと宙に浮いたボードが現れる。
「…よし、動く、ね」
「エアボードは起動するようですね」
「ねぇ、フウ。大丈夫? なんなら私が背負うけど」
「だ、大丈夫! これくらい、わたしでも平気だからっ!」
言ってボードに乗り、エアボードをルウィーに向けて発進させた。
「…なんで強がるのかしら」
「子供扱いされたと思ったんじゃないですか?」
「そんな気は無かったのだけど…」
後ろからそんな会話が聞こえてきたけど聞こえないフリ。
というか強がってなんかないっ!
――――――――――
「では、彼女を部屋に寝かせてきますねー」
アリスはそう言って、女の子を背負って宿の二階に上がっていく。
あれからルウィーに到着したわたし達は、女の子を休ませる場所を確保する為に宿の一室を借りた。
とりあえずそれはいいんだけど…街に来てまた一つ、わかったことが増えた。
「…フウカさん」
「…えぇ、流石に今度は私にも分かったわ」
そう、そのわかったことというのは、街の人だ。
勿論街には人間がいて、それぞれの行動をとっていたんだけど…その人達からは何も感じることができなかった。
なんというか、そこにいるんだけど本当に存在してないっていうか、意思がないというか…とにかくおかしい。
「妙な色の空といい、通行人や住民から生気が感じられない事といい……このゲイムギョウ界、私達が思っている以上に異質な世界ね」
「はい…」
それにあの時、空にいた女の子…あの子も明らかに普通じゃない。
今のわたし達、相当厄介な状況かも…
そう、フウカさんとそんな話をしている時だった。
『―、――――!!』
上から誰かの叫び声? が聞こえてきて、ドタバタと騒がしい音が聞こえてくる。
「…何か、上が騒がしいようだけど」
「わたし、ちょっと見てきますね」
まさかアリスが女の子に何かしたんじゃ…なんて考えながら、わたしは宿の二階へと上がっていく。
『――!? ――――!?』
『――!!!』
「…?」
また声が聞こえたかと思うと、今度はパリーンとガラスが割れるような音も聞こえてきた。
…何が起こってるの?
「おーいアリスー、何か妙に音がしてるけど何が――」
そう言いながら、部屋の扉を開く。
すると部屋にはアリスの姿はなく、右腕がなんか色々変わっちゃっていた女の子の姿があった。
なんかこっちを見て「え?」みたいな顔してるけど…とにかく、
「あ、起きたんだね!」
そう女の子に声を掛ける。
というかこの状況から察するに、アリスは窓から投げ捨てられたのかな。
なんてのんきに思っていると、女の子が喋りだした。
「さっきの奴の仲間か…だが詰めが甘かったな、わたしを捕まえるのなら起動装置くらい取っておくんだったな!」
「え? あの、ちょっと…」
「このシュバルツシスターを捕まえたいのなら見張りを後三人は増やしておけ!!」
わたしの言葉を遮りながら、女の子は割れた窓をさらに突き破って外に飛び出した。
そして、冒頭に戻る。
でも今あの子、シュバルツシスターって…ということは女神候補生?
でも聞いたこと…いや、それよりもあの子、他の人と違って自分の意思を持ってた。
何か知ってるかも…追いかけなきゃ!
「フウ? 一体何があったの――って、何してるの!?」
「あ、フウカさん! 外に落ちてるあの黒いの、お願いします!」
「ちょ、ちょっと!」
フウカさんにそう伝え、返事を待たずにわたしは窓から外に飛び出した。
着地の寸前にレッグユニットのみ装着し地面に着地。
ダンッという音と共に若干地面にヒビが入った気がしたが気にしないことにしておく。
辺りを見回し、走り去る女の子を見つけ後を追いかける。
あとなんか「く、黒いのってそんな…酷いです…」とか聞こえた気がしたけど気のせいだよね。
「見失う前に、捕まえなきゃ…、……ゼロ・シフト――!!」
起動の為のワードを呟き、能力発動。
一瞬の内に女の子の背後まで近づき、腰の辺り目掛け飛び付く。
「な…ッ!?」
「捕まえたっ!」
そしてそのまま女の子と一緒に雪の積もった地面に倒れ込む。
「く…離せッ!」
「ま、待って! 話を聞いて!」
じたばたと暴れる女の子を押さえつけながら言う。
わたしも結構力はあるほうだけどこの女の子、凄い力…、早く説得しないとまた逃げられちゃう!
「お願いだから話を聞いて! あなた、女神でしょ!?」
「だからわたしを捕らえたんだろう! この、いい加減に…」
「わたしも女神だよ!」
「…!?」
自分も女神。そう言うと、女の子が少しおとなしくなる。
「あなたと話がしたいの。だから、お願い…」
「…………」
女の子が暴れるのをやめたのを確認して、わたしは女の子から離れて立ち上がり、手を差しのべる。
「……証拠はあるんだろうな?」
「うん。でも流石にこんな街中だとあれだから、一度宿に戻ろう、ね?」
「…………」
そう言うと、女の子は無言のままわたしの手を掴んだ。
ふぅ、とりあえず、なんとかなったかな。
そう感じながら、わたしは女の子と一緒に宿まで歩いて戻った。
「……これが証拠」
宿に戻った私達は部屋に戻り、ネロ(先程自己紹介した)に変身した姿を見せていた。
……話し方がさっきまでと違う? ネプテューヌさんとかと同じ部類だという事だけ言っておく。
「……だがわたしはお前なんか知らない」
「それはそう。貴女は未来から来たんだから」
ネロから少し聞いた話だけど、彼女は未来のゲイムギョウ界からやってきたラステイションの女神候補生だという。
未来じゃ、私が知らない女神でも仕方ない。
「…どういうことだ?」
「……私は、過去のゲイムギョウ界から来た。ということ」
「…!」
正直彼女の事を完全に信じている訳じゃないが、目を見る限り彼女が嘘を言ってるようにも見えない。
…少し早計かもしれないけど、こちらも事実を言った方が話を聞いてもらえる。そう思い自分の事を彼女に伝えた。
「ちょ、フウちゃんいいんですか? そんな簡単にバラして」
「…なんでだろうね、この人なら大丈夫な気がしたの」
「そんな理由で……はぁ…」
事実を告げた理由をアリスに言うと、アリスは頭を抱えため息をつく。
そんな反応をされるのは予想済みだけど、もう言っちゃったし。
「…ま、今更怒った所で後の祭りですし、もう好きにしてください」
「ありがと、アリス」
アリスに礼を言いつつ、私はネロに向き直る。
「……信じろ、とは言わない。ただ、そうだという事だけ、理解しておいてくれれば良い」
「………」
未だ警戒を解かないネロにそう言って、私は女神化を解く。
あまり無駄にエネルギーを使うのは良くないからね。
「ふぅ。…それで、ネロさんが良ければなんだけど…わたし達と一緒に行動しない?」
「お前達と?(こいつ…ネプねーさんと同じタイプか…?)」
「うん。…外の人、見たでしょ?」
「あぁ…。…そういえば、今思うと妙だった」
どうやら住民がおかしいのはネロさんも気づいてたみたいだ。
「あの人達は…あ、これはわたしの推測に過ぎないんだけどね。多分、あの人達はゲームで言うモブキャラみたいな扱いなんだと思う」
「ですね、主要な人物…教祖や候補生等からは生気も感じられましたし、コミュニケーションは取れそうでしたが…一般の人はコミュニケーション所かこちらを認知すらしてくれませんでした」
アリス、いつの間に…追いかけてる間に調べたのかな。
「どういうことだ…?」
「…要するにこのゲイムギョウ界は、わたし達の知ってるゲイムギョウ界ではない、ってのは確かだよ」
「………」
わたしがそう言うと、黙り込んでしまうネロさん。
…そういえば、ネロさんは何の為に未来からやってきたんだろう。
いや、あまり人の事に口出しするものじゃないね。
「とにかく、これからどうするかを決めないと…」
「それなら先程そちらの方が向かおうとしてた所に向かうというのは?」
あぁ、ルウィー教会ね…
「でもこの時期だと女神はラムちゃんロムちゃんだけだし、ミナさんも結構用心深いから話を信じてもらえるか…。それに犯罪神の生まれた地って事もあって治安悪化の対応で忙しいだろうし…」
「……マジェコンヌ事変、か」
「流石は未来人…いや、女神か。その辺の事件も知ってるんだね」
「その事件についてはねーさん達に聞かされたことがある」
ねーさん…ユニさんやノワールさんかな。
…そういえば未来の候補生って事は、ラムちゃんロムちゃんもこの人にとっては姉みたいなものなのか。何か変な感じ。
「私としてはラステイションに移動したいわ。弾薬の事もあるし、あそこの教祖なら現状等も色々知ってそうだし」
「あー、あのギブアンドテイクな教祖さんですか…。私あの人苦手なんですよねぇ…」
世界の現状ならゲイムキャラとかも知ってそうだけど…ルウィーのはキラーマシン封印役だから世界については知らない可能性もある。
「プラネテューヌは? あそこならイストワールがいるだろう」
「あー、確かにイストワールなら色々知ってるかもだけど…今はあまり時間を無駄にしたくないから…ラステイションに向かった方が良いかも」
微妙な差だけど、ラステイションの方が近いし山とかを越える必要も無いからね。
「んー…ネロさん、ここからラステイションまでは飛べそう?」
「…わたしの飛行能力じゃ厳しいな」
そっか、となると…
「…アリス、フウカさんを連れて影に入ってくれる?」
「え?まぁ、構いませんが」
「えぇ、私あれ気分悪くなるから嫌なのだけど…」
「そんな事言ってる場合じゃないですよ、ただでさえ得体の知れない世界に飛ばされてるんですから」
「…はぁ、分かったわ」
言い聞かせるようにそう言うと、フウカさんはしぶしぶといった様子で頷いてくれた。
「どうする気だ?」
「アリスをフウカさんと一緒にわたし達の影の中に潜らせて、わたしとネロさんは女神化してラステイションに向けて飛ぶ。ネロさんの事はわたしが引っ張るから、多分それで行けると思う」
だったらプラネテューヌに行けばいいだろうって? だからあっちは山とかあるから大変なの!
それに勘がラステイションに向かえと言ってるの。リーンボックスなんてなかった。
…途中で誰かと遭遇しそうな気もするけど、それは行ってみるまで分からないし。
「さ、そうと決まったら早く向かおう?」
「……あぁ」
という事で、行き先をラステイションに定めたわたし達はルウィーの宿を後にする(宿等は一応利用はできるみたいだけど、やっぱり会話は成立しないみたい)
「それじゃ、行こう」
「…あぁ」
「了解です」
「…えぇ」
メンバーの半分くらいがローテンション(一人は移動法が嫌なだけ)だけど…大丈夫かなぁ…
そんな事を思いつつ、わたしは女神化したネロさんの手を取って不気味な色の空へと飛び立った。
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前の人達の話数表示無かったけど多分六話であってるよね…
とりあえず何とか書けたので投稿。しかし若干スランプ気味なので注意。
あとネロさんの口調がイマイチ掴めなかった。リアおぜさん間違ってたらすみません!