No.467464 IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第13話Lさん 2012-08-09 01:11:50 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:9995 閲覧ユーザー数:9692 |
クラス対抗戦は中止になり、半年間のスイーツフリーパスは貰えなくなった。
学園中の女子全員が暗い空気を漂っていた。
クラス対抗戦での襲撃事件が切欠で箒と鈴はキラとシン、ルナマリアを名前で呼ぶようになった。
クラス対抗戦から1週間後、一人で廊下で歩くキラ。
6月の授業で実戦演習が行われる、その際にキラ達はISを使うのだが、キラ達のISは第三世代を大きく凌駕する性能の為、あまり生徒達には見せたくはない。
そこでリミッターを設定する事で第三世代の性能まで引き下げる事に決まった。
シンとルナマリアは既にリミッターの設定を終えていたのでキラ一人で整備室に向かっていた。
「此処か……」
整備室に着いたキラはそのまま中に入った。
中はブラインドが掛けられた窓の外から入る陽光と、電気が相まって結構明るく広かった。
「これは、作りかけのIS……?」
整備室の端っこにある、ある物がキラの視界に入った。
基本フォルムは純国産の第二世代型IS打鉄に似てはいたが明らかに違うISだった。
「打鉄とラファール・リヴァイブにしてはフォルムが違う……誰かの専用機なのか?」
「貴方は……?」
誰の専用機なのかは解らない為、ちょっと調べようとしたキラだったが、突然聞こえてきた少女の声に振り向く。
そこに居たのは、水色のセミロングの髪に、四角い眼鏡を目に掛け、華奢な体つきをしており、頭部に何かを付けた少女だった。
「君は確か……4組の更識 簪さんだね?」
「は……はい……」
「このISは君の?」
「そ……そうです……」
「織斑先生から君の事を聞いているよ」
「お、織斑先生から!?」
簪は千冬が自分の事を知っている事に驚いていた。
「君のIS"打鉄・弐式"について申し訳ない事をしたと言っていたよ」
そう言うと簪は表情は暗くする。
簪の専用機"打鉄・弐式"は完成していない。
"打鉄・弐式"を開発を行っていた倉持研が"白式"の方に掛かりっきりになってしまった為、開発がストップした。
それを簪は開発途中である"打鉄・弐式"を引き取り、一人で組み立てている。
「もし良かったら、君一人でISを完成させようとしている理由を聞かせてくれないかな?」
「……私が"打鉄・弐式"を完成させて、お姉ちゃんへの……コンプレックスを少しでも解消したかったから……」
「生徒会長の更識 楯無だね」
周囲から天才と言われている簪の姉、更識 楯無に対して簪は強いコンプレックスを抱いていた。
姉は天才と言われ、更に自分の専用機を自分で造ってしまった、だが簪はそんな姉にいつも勝てない、天才の姉と比べられて、誰も簪を見てくれなかった。
開発途中の打鉄・弐式を引き取り、簪の手で完成させれば周囲は認めてくれる。
更識 楯無の妹ではなく、更識 簪としての個人を見てくれると思ったのだ。
「やっぱり、私じゃ無理なのかなって、何度も思いました、所詮、私じゃお姉ちゃんの真似事をしても上手くいかないんだって、思いました……」
「そんな事ないよ」
「えっ……!?」
キラの言葉に俯いていた簪は驚き顔を上げた。
「確かにISを一人で組み立てるのは周りから見れば無謀と思われるかもしれない、だけど、君はそれでも一人の力で完成させようとしているじゃない、十分凄い事だよ!」
「そ、そう……ですか?」
「うん、だからもっと自信を持って僕は応援するから」
「あ、ありがとうございます!」
目尻に涙を浮かばせながら頭を下げる簪。
同時に簪はキラを何処か兄のような感情を抱いていた。
だが、これが原因でのち、一人のシスコン大将と戦う羽目になるのだった。
時は進み、六月の最初の土曜日。
「ルナマリア、あたしと勝負しなさい」
食堂で昼食を摂っていたルナマリアに鈴がいきなり模擬戦を申し込んできた。
そして今の事の発端は一夏が鈴と話していて『そういやルナマリアがISを動かしている所を見たこと無い』と言い、鈴が『あたしが戦ってみる』と答えた。
「ホントにやるのかよ鈴」
「言い出しっぺはあんたでしょ一夏。それにあたしも一遍やってみたかったのよね」
「でもルナマリアは教師だぜ? 教師をやるだけの実力はあるぜ」
「だからこそよ、今のあたしの実力を試したいのよ!」
ルナマリア本人を無視して会話がなされていく。
確かにルナマリアは教師になってから生徒達の前でISを起動させていない。
因みに鈴はキラとシンと模擬戦をした事がある。
結果はもちろん、鈴の完敗である。
リミッターの掛けた状態での模擬戦はまだやっていないのでルナマリアは鈴の模擬戦を引き受ける事にした。
「いいわよ、その挑戦、受けて立つわ」
「じゃあご飯終わって15時からね」
鈴は自分が食べ終えて話をつけると食堂を出ていってしまった。
ルナマリアは昼食の後、食休みを済ませてアリーナに向かった。
アリーナにはISを展開した鈴と一夏、キラ達が待っていた。
ルナマリアはISを展開すると鈴は驚く。
「
「どう、これが私のIS"インパルス"よ」
「インパルス……衝撃……確かに衝撃を受けたわ、だけど、勝つのはあたしだからね!」
「鈴、私の実力を見せてあげるわ!」
既に鈴とルナマリアは武器を構えていた。
「じゃあ、今から模擬戦を開始するよ、始め!」
キラの合図と共に飛び上がったルナマリアと鈴。
ルナマリアシールドを斜めに構えつつビームライフルを撃ち横へ加速する。
シールドを斜めに構えたのは衝撃砲を防いだ時に吹き飛ばされるのを避けるためだ。
「ちょこまかと……!」
鈴は衝撃砲で牽制して双天牙月で斬り掛かるが、ビームサーベルで防がれた。
だが、双天牙月を高速で振り回して連続攻撃を仕掛ける、ルナマリアはビームサーベルとシールドで連撃を防いでいた。
(離れれば衝撃砲、近付けば双天牙月による連続攻撃、このままじゃ埒があかないわね……あれを使うか!)
ビームサーベルで鈴に斬り付けるが、鈴は回避して距離をとる。
だが、ルナマリアが狙ったのはこれである。
「ブラストシルエット!」
ルナマリアの声と共にフォースシルエットがパージされるとブラストシルエットが展開されインパルスに装備された。
そして、
「装甲の色が変わった!? それに何なのよ、あれは!?」
鈴が驚いていた、それは模擬戦を見ていた一夏達も同じであった。
「色が変わった!?」
「色が変わるISなど聞いたこと無いぞ!?」
「それだけではありませんわ、背中の装備が外れたと思ったら、新しい装備が現れたら装着しましたわ!」
「あれがルナマリアのインパルスの最大の特徴である、"換装システム"だ」
「換装システム?」
そこにキラがインパルスの換装システムを説明を始めた。
「換装システムは装備を変えることによりあらゆる局面での戦闘に対応出来る様にしてあるんだ、今さっきまで装備していたのは中近距離戦闘を想定した機動力強化用装備、"フォースシルエット"、そして、今インパルスに装備されているのは遠距離戦闘を想定した火力強化用装備"ブラストシルエット"」
「では、装備を変えただけでISの装甲の色が変わったのは何故ですか?」
「装備したシルエットにはそれぞれにあったエネルギー消費に調整して、エネルギー消費の効率化を図っているんだ、その副次効果によって装甲の色は装備するシルエットごとの変化するんだ」
キラが説明を終えた頃には、既に鈴は左肩の衝撃砲が破壊されていた。
「ソードシルエット!」
一気に勝負を決めるため、自身が得意とするソードシルエットを呼び出す。
ブラストシルエットがパージされ、ソードシルエットに換装した。
インパルスに装備されると
「今度は格闘装備!?」
背面にマウントされているエクスカリバーを引き抜くと最大戦速で一気に鈴に突撃した。
ルナマリアの突撃に鈴は双天牙月を振りかぶってカウンターを放とうとしたが、それよりも速くルナマリアは双天牙月を左手に持つエクスカリバーで受け止めた。
「なっ!?」
「もらったわよ!!」
そして、右手のエクスカリバーで右肩の衝撃砲に切り裂いた。
切り裂かれた衝撃砲は破壊された。
ルナマリアはエクスカリバーで一気に攻め立てる。
三分後、鈴のシールドエネルギーが0となりルナマリアの勝利となった。
模擬戦の後、ピットから出て来た鈴は俯いていた。
ルナマリアも流石にやり過ぎたかと思うほどだ。
「ごめんなさい、やり過ぎたわ……」
「別にいいわよ?」
「え?」
鈴は落ち込んでいるのではなかったのかと、ルナマリアは思っていたが鈴は顔を上げる。
「あそこまでやられれば清々しいわ、逆に手加減される方があたしにとっては気に食わないわね」
鈴の顔は満ち足りたものだった。
代表候補生とだけあって打たれ強かった。
「でも……」
「ん?」
「あれ弁償してもらうからね?」
すごくいい笑顔で言う鈴。
「分かったわ、それで何をして欲しいの?」
「一週間、食後にデザートを奢ってもらうわよ!」
衝撃砲を破壊した代償として毎食、鈴にデザートを奢る事になったルナマリアであった。
模擬戦後、キラ、シン、ルナマリア、一夏と一緒に食堂へと向かった。
箒は部屋の引越しの為、居なかった。
年頃の男女が同じ部屋というのは本人達にも世間的にもいろいろと問題があるのだが少なくとも一夏が間違いを起こす勇気があるはずが無い。
「ねえ、あの噂聞いた?」
「聞いた聞いた!」
「え、なになに?」
「織斑君の話。今月末の学年別トーナメントで……」
「ええっ!? マジ!?」
「本気と書いてマジ!」
食堂に入ったキラ達の目に入ったのは女子が固まって何やら話している様子だった。
だがそれを盗み聞きしたり会話に参加する気はさらさら無いキラ達は特に気にもかけず注文をとって席に着いた。
そこに既に食事を済ませた鈴がルナマリアに近づいてきた。
「来たわねルナマリア、今日はティラミスを奢って貰うわよ」
「わかったわ」
「……災難だなルナマリア」
「ええ、世話の焼ける妹で参っちゃうわ!」
「こらっ! 誰が妹よ!」
「誰って、他に誰が居るのよ、り・ん!」
悪戯子の様な笑みを浮かべながら鈴をからかうルナマリア。
からかわれるのが面白くない鈴はそっぽ向いてしまう。
「悪かったわ、お詫びにもう一品奢ってあげるわ!」
「一番高い奴を奢らせてやる!」
ルナマリアは拗ねた鈴を連れて席から離れた。
その姿は本当に姉妹に見えた。
「あっ! 織斑君とキラ先生とシン先生だ!」
「本当だ!」
「ねえっ、あの噂ってモゴォッ!?」
そこへいきなり固まっていた女子の一部が一夏達の元へ走ってきたが一人が喋りだした途端口を塞がれて拘束された。
「こらっ! 秘密だって言ったでしょ!?」
「いやだって本人だし……」
小声でボソボソと話しているが、三人にはさっきの『噂』とやらが気になっていた。
「噂って、何だ?」
「う、うん!? 何のことかな!?」
「えっと、ほら! 人の噂も三六五日って言うでしょ!?」
「な、何言ってるの! 四十九日だってば!!」
「七十五日だよ……」
誤魔化す以前にあまりにも常識の間違えようにキラは静かに突っ込んだ。
「ほ、本当に何でもないから! じゃーねー!!」
「何だったんだ……?」
「さあ……」
女子達の話を気にせずに食事を再開した三人だった。
翌日の月曜、この日の朝はいつもよりも騒がしかった。
「やっぱハヅキ社製のがいいなぁ」
「え? ハヅキのってデザインだけって感じじゃない。私は性能的に見てミューレイのスムーズモデルがいいと思うけど」
「でも高いでしょあれ」
女子達は個人でISスーツを用意するためにカタログを片手にあれやこれやと意見交換していた。
授業では学園指定の物を使っていたのだがISというのは人それぞれの仕様に変化するので早いうちから個別のスタイルを確立するためである。
ISスーツは皮下神経の電位差を感知することでISに操縦者の動きをダイレクトに伝える役割を果たすので、有り無しでは有った方がよりスムーズな操縦が可能となる。
また衝撃までは吸収出来ないが小口径拳銃の弾丸までなら完全に受け止められる。
「諸君、おはよう」
「おはようございます」
『おはよう』
「お、おはようございます!」
千冬と真耶、キラ、シン、ルナマリアが教室に入ると同時に全員が席に戻り軍隊顔負けの気を付けの姿勢になる。
やはり千冬の日頃の有り難い指導のお陰である。
「今日から本格的な実戦訓練を開始する。訓練機のISを使用しての授業となるが各人、気を引き締めるように。後ISスーツは個人のが届くまでは学園指定のものを使うように、忘れたら学園指定の水着、それすら無い者は下着で構わんだろう」
本来ここには女子しかいないはずだし千冬なりの発破の仕方なんだろうが男の前で言うことではないだろう。
因みに学園指定の水着はスクール水着、しかも紺色で名札付きである。
「では山田先生、ホームルームを」
「はい。ええとですね。今日は転校生を紹介します! しかも二人です!!」
『えええっ!?』
クラス中の女子が一気に騒ぎ出した。
女子特有情報網を掻い潜ってのいきなりの転校生なのだから驚かない方が可笑しい。
「ではどうぞ!」
「失礼します」
「………」
教室に入ってきたのは男子の制服に身を包んだ金髪の人間と軍服の様に改造された制服に身を包んだ銀髪の左目の眼帯が特徴的な人間だった。
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第13話です。
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