No.466926 そらのおとしものショートストーリー5th あの子と海3 金髪っ子32012-08-08 01:20:11 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:1654 閲覧ユーザー数:1572 |
そらのおとしものショートストーリー5th あの子と海3 金髪っ子3
「畜生……っ。どうしてこんなことになっちまったんだ……」
楽しいものになる筈だった海でのバカンス。
イカロスやニンフは勿論、日和や鳳凰院月乃なんかも呼んで皆でワイワイやるつもりだった。
おっぱいボインボインお尻プリンプリンの水着の美少女達に囲まれてうっはうっはのむっひょっひょのひと時を過ごすつもりだった。
ところがだ。
それぞれ都合がどうとかで1人欠け2人欠け、海に到着したのは当初の予定より大幅に少なかった。
たわわに実るおっぱいの量が減ってしまった。
だが俺に訪れた悲劇はそれだけでは終わらなかったのだ。
俺達は観光用ヨットに乗って大海原へと繰り出した。ところがいつものお騒がせメンバーがこともあろうに船内で喧嘩を始めた。
そして危険指数は超1級品である奴らはお約束的な展開として船に大穴を開けてくれた。沈み行く船体。俺は水面へと放り出され……運良く浮いていた丸太に捕まって事なきを得たが、その後気絶してしまった。で、現在……。
「こんな無人島に流れ着くなんて俺は漫画の主人公かっての~~っ!!」
綺麗な淡い青い色をした海に向かって大声で叫ぶ。
何と俺は漂流してどことも知らない無人島へ流れ着いてしまったのだ。前に1度、会長達に騙されてそはらと2人きりで無人島生活体験もどきをさせられたことはある。が、今回は正真正銘の本物だ。本当に無人島に流れ着いてしまった。
「お兄ちゃ~ん。こっちに真っ赤な蟹さんがいるよ~♪」
カオスは波打ち際を横歩きに移動する赤い蟹を見ながら楽しそうに笑っている。
そう、俺と一緒にこの島に漂着したのはカオスだった。
「よりによって、ボインボインのプリンプリンから最も遠いカオスと一緒に漂流とは……ハァ~ッ」
おっぱい分から最も遠い存在を見て大きな溜め息が漏れ出る。
俺だってどうせ漂流するのならイカロスやアストレアやそはらと一緒が良かった。辛く苦しいサバイバル生活もボインボインを見れば苦しみが少しも和らぐというもの。
「でも……こんなペッタンコじゃなあ」
カオスへと目をやる。
今日のカオスは修道服ではなく青い水玉模様のワンピース型のフリフリ水着を着ている。カオスの水着姿が可愛いのは認める。
だが生憎俺はペッタンコ幼女には喜びを感じないので気力ダウンを起こしている。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
ペッタンコ幼女が首を捻りながら聞いてくる。
「いや、俺達をこんな状況に追い込んだイカロスとケイネスの野郎に怒りが湧いてな」
「ほえっ?」
カオスは首を捻った。
体だけでなく頭の中もお子ちゃまなカオスには俺の苛立ちは理解出来ないかも知れない。
自分の頭の中を整理してみるべく俺達がこんな状況に陥った原因を思い出してみることにした。
『ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ、ホモッ!!』
『幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ、幼女っ!!』
イカロスとケイネスの野郎の戦いは熾烈を極め、そしてどうしようもないほどにしょうもないものだった。
そしてこの戦いで俺達が乗っていた船は沈没。
『うわらばぁああああああああああああああぁっ!?』
そして一緒に乗船していたアストレアは海に落ちて深海へと沈んでいった。アストレアはもう助からないのは明白だった。
だから俺はまだ生き残っていたカオスと脱出を図るので精一杯だった。
『カオスっ! あの丸太に捕まって脱出するぞっ!』
『うんっ♪』
カオスは羽をパタパタと動かしながら丸太へと捕まった。
その動作に何かが違うと思いながら俺達は漂流してイカロス達から離れていった。
「さて、これからどうすっかなあ?」
とりあえず無人島に漂着することは出来た。
カオスはがきんちょで頭も幼稚園児並。でも、身体能力だけで言えばイカロスよりも凄い。
「お兄ちゃ~ん♪ 見て見て~♪ サメさん拾ったよ~♪」
巨大なジンベイザメを手に持って振り回すカオス。
「サメが苦しそうだから離してあげなさい」
「は~い♪」
カオスが手を離すと体長5m以上ありそうなサメは水平線の遥か彼方まで吹き飛んでいった。
……カオスと一緒にいれば、脱出は無理でも死の危険も餓死の危険性もなさそうだ。
本当、これからどうすっかな?
「お兄ちゃん。こういうのを何ていうのかわたし知ってるよ」
カオスはニコニコしながら話し掛けて来た。
「ほぉ?」
子供の言うことだからなあと思いながらカオスを見る。
「こういう2人きりで生活するのをね、新婚さんって言うんだよ♪」
カオスは満面の笑みを浮かべている。本当に嬉しそうだ。
「そ~かそ~か。カオスは物知りだなあ」
カオスの頭を撫でてやる。子供は褒めて伸ばすのが教育の基本だからな。
「えへへへへ♪」
幸せそうな表情を浮かべるカオス。
成り行きはどうであれ、しばらくはカオスと2人で暮らしていくことになりそうだった。
そう思っていた俺は甘すぎた。そう。俺の周りにいるのは非常識生物ばかりだった。
「桜井智樹っ! 貴様にカオスはっ、娘はやらんっ!!」
突如大空から1人の男が降りてきた。背中の大きな翼を羽ばたかせながら。
「ゲッ!? シナプスのマスターの野郎かっ!」
白い長い布1枚で全身を包んでいる前髪の長いこの男こそシナプスのマスターに間違いなかった。
「桜井智樹っ! 貴様っ、俺の娘から離れろっ!!」
愛を知らないシナプスマスター略してアイマスは俺を見ながら血の涙を流している。カオスが俺に懐いているのがどうしようもなく悔しいらしい。
フッ。ザマアみろ。普段の行いが悪いからこうなるんだっての。
「アイツ、あんなことを言っているけれど、どうする?」
カオスに尋ねてみる。
「わたしっ、お兄ちゃんとずっと一緒にいるね♪」
カオスは再び満面の笑みで応えた。その笑顔には一点の曇もない。
「グハッ!?」
アイマスは口から大量の血を吐き出した。
「カオスは俺と一緒にいたいのか?」
「うん♪ わたし、お兄ちゃん大好き♪」
「グボォッ!?」
大量の吐血の音がまた聞こえた。見ればアイマスの目からは血の涙がひっきりなしに流れている。
「カオスは桜井智樹のことが好きなのかっ?」
「うん♪」
「この俺よりもかっ!?」
「うん♪ 愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛っ♪」
カオスは再びアイマスに満面の笑みを向けた。それはとても自然で可愛らしい笑みだった。
「桜井智樹……貴様だけは殺すっ!! 喰らえっ! シナプス羅漢撃っ!!」
アイマスは泣きながら駄々っ子パンチを繰り出してきた。
「へっ! そんな攻撃が当たるかよっ!!」
立ち上がってアイマスの突撃に備える。そして、奴との身体能力の差を見せる究極の呪文を発動する。
「脱衣(トランザム)っ!!」
一瞬にして海パンをこの世から消失させる。誇らしげに晒される我が全裸。
「俺のこの素早い動きに付いて来られるのかよっ!」
音速を遥かに回る速度でアイマスの周りを回り始める。
「なっ、何だと!? 桜井智樹の姿が捉えられん!?」
奴の目には俺の姿が何重にも別れて見えているに違いなかった。戸惑うアイマスに対して俺は攻撃を開始する。
「お前なんか及びじゃないんだよっ! さっさとシナプスに帰りやがれっ! オラっ!」
アイマスの脇腹に蹴りをお見舞いする。無防備な脇腹にクリーンヒット。
「ぎゃぁああああああぁっ!?」
アイマスが悲鳴を上げる。だが倒れない。
「オラっ! 惨めに倒れて許しを乞えばどうなんだ? オラ! オラっ!」
「まっ、まだだっ! 俺のカオスへの愛はこんなものでは折れたりはせんっ!」
連続して蹴りを入れる。全て命中。だが、アイマスはそれでも倒れない。
「チッ! 何で倒れないっ!」
アイマスのゴキブリ並のしぶとさにイライラさせられる。
「俺はシナプスのマスターっ! 有翼人の誇りがあるっ!」
アイマスは口から血を流しながらもまだ倒れない。
「誇りなんて捨てちまえよっ! お前の存在はカオスに有害なんだよっ!!」
アイマスへの攻撃を強める。パンチも繰り出してぼこぼこにする。
「ふざけるなっ! 俺はカオスの父親なんだぁあああああああぁっ!!」
アイマスの野郎は吼えた。
その遠吠えが俺にはとても腹立たしく聞こえた。
「へっ! 娘に愛想尽かされたおまぬけな男の分際でよくほざくぜっ!」
ペッと唾を吐き出してアイマスの顔に吹き付ける。
「いいかっ! 男ってのはなあ、全ての可愛い女の子とフラグを立てられてこそ一人前なんだっ! お前のように人を蔑むしか脳のない奴はお呼びじゃないんだよっ!」
アイマスの背中に蹴りを入れる。頭を踏み付ける。
「全ての女の子とフラグを立てるだと!? それでは貴様は、カオスとの結婚をどうするつもりなのだ!? カオスにプロポーズされたであろうっ!」
アイマスが吠えながら立ち上がった。
「ああ~ん? そんなもん保留だ。保留だってぇの。子供の提案をいちいち間に受けていたら大人の世界は成り立たないだろうが!」
アホなことをほざくアイマスに更に蹴りを入れる。
「えっ?」
カオスが半口を開けて俺を見た。その瞳は大きく見開かれている。ショックを受けているようだった。
「貴様ぁあああああああぁっ!! カオスを弄んだと言うのだなぁああああああぁっ!!」
アイマスが殴り掛かって来た。
「へっ! そんなヘナチョコ攻撃が当たるかっての!」
あくびをかきながら避ける。音速にも届かないあまりにも遅い攻撃だった。
「このっ! このっ! このっ!」
「へっ! そんなへなちょこ当たらないっての! オラッ!」
逆にアイマスの足を引っ掛けて倒す。
「さあ、これ以上貴様がカオスを苦しめることがないようにとどめの一撃だっ!」
「クッ! む、無念……」
拳を大きく振り上げて……
「ダメっ! お兄ちゃんっ!」
ふり下ろそうとした腕は、両手を横に広げてアイマスを庇うカオスによって阻まれたのだった。
「カオス、お前……」
アイマスが驚きの瞳でカオスを見る。こころなしかすごく嬉しそうに見える。
「弱い者いじめはダメだよ、お兄ちゃん」
「弱い者って……ガクッ」
アイマスの心は軽く挫けたようだった。
「お兄ちゃん。わたし、このだらしなくて弱っちいこの人の面倒をみることにするね」
カオスは俺とアイマスの顔を交互に見ながら己の決意を語った。
「この人にはまだ、わたしが必要だから」
そう述べたカオスの顔はいつもよりも大人びて見えた。カオスは俺の予想とは違い、もう立派なお姉さんだったのだ。
「じゃあ、お兄ちゃん。わたし、もっと大人になったらお兄ちゃんの所にお嫁に行くね♪」
「ああっ。期待しないで待ってるさ」
カオスはアイマスの首に首輪を嵌めると上空へと飛翔し始めた。首を締められるような構図でアイマスの奴も空へと登っていく。
「親子仲良くやれよ」
「うん♪」
ちょっと誇らしい気分になりながら2人を見上げる。
家族は仲良しが一番だからな。
ちょっと良いことをした気分になった。
カオスの家族仲を修復したことに誇りを持ちながら海を眺める。
視界の隅に超大型台風と超大型の波、そして超巨大イカと超大型のサメ達がこの島に向かって超高速で迫り来るのが見えた。
俺の直感は俺の人生がもうすぐ終わることを告げていた。
カオス……俺がいなくなってもしっかりやれよ。
ちょっぴりお姉さんになったカオスの今後の人生が幸多いものとなることを祈りながら俺は海に散っていったのだった。
了
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