~翡翠の塔・近辺~
「さてと……いよいよ調査開始ね。とにかく急いで屋上に向かわなくちゃ。」
「うん……でも様子が変だな。」
「えっ?」
地上に降り、呟いたヨシュアの言葉にエステルが首を傾げたその時
「あ、あんたたちは……!」
王国軍兵士がエステル達に慌てた様子で近づいて来た。
「ひょ、ひょっとして連絡にあった遊撃士かい?」
「うん、そうよ。」
「あなたは斥候部隊の?」
「あ、ああ……。あんたらに塔の状況を説明するために残っていたんだ。」
ヨシュアに尋ねられた兵士は頷いて答えた。
「何でも仮面の男にやられたそうやね?」
「そ、そうなんだけどそれだけじゃあないんだ。何と言うか……明らかにおかしいんだよ。」
「おかしいって……何が?」
「み、見れば分かる。とにかく入口に来てくれ。」
そしてエステル達は塔の入口に向かうと驚くべき光景を目にした。
「えっ……!?」
塔の入口が奇妙な色の結界らしきもので塞がれていたのを見たエステルは驚いた。
「あ、あれって……」
「何かの結界……!?」
結界らしきものを見たエステルは呆け、クローゼは真剣な表情で呟いた。
「俺たちが到着した時は既にこうなっていたんだ……。で、調べようとした矢先に例の仮面の男が現れて……」
「………………………………。中に入ることはできないんですか?」
「仮面の男はそのまま入っていったから大丈夫だとは思うけど……。追いかけようとも思ったけど仲間が全員やられちゃって……」
ヨシュアに尋ねられた兵士は肩を落として答えた。
「そっか……。ここはあたしたちに任せてあなたは部隊に戻って。」
「わ、わかった……。女神の加護を!」
そして兵士はどこかに去り、エステル達は塔の中へと入って行った。
~翡翠の塔・異空間~
「へっ……!?」
「ここは……」
エステル達が塔の中に入ると、そこは塔の光景とは全く異なり、広大な空間が見える場所だった。
「ちょ、ちょっと待って……。あたしたち、確かに塔の中に入ったはずよね!?」
「入口に入る時、”転移の時に感じる感覚を感じました。恐らく空間転位……。どこか別の場所に飛ばされたみたいですね。」
周りの光景を見て慌てているエステルにリタは説明した。
「あ、あんですって~!?そ、それじゃあ塔の屋上に登るなんて無理なんじゃ……!」
「落ち着いて、エステル。ブルブランが現れたということは必ず道はあるはずだよ。」
「た、確かに……。……うん!とにかく慎重に進みましょ!」
そしてエステル達は時折現れる機械人形達を倒しながら先を進んだ。
「あっ……」
先に進んでいた時、エステルは何かの装置を見つけた。
「これって……何かの装置みたいね。」
「ふーむ、見たところ何かの端末見たいやけど。」
「……調べてみようか。」
そしてヨシュアは装置を調べた。
「………………………………。……これだ」
ヨシュアがスイッチを押すと、装置が起動し、装置の上の空間に映像が映し出された。
「わわっ……!」
「どうやら情報が記録された端末みたいだ。内容を確認してみよう。」
そしてエステル達は情報を確認して、端末のメモリーである『データクリスタル』を取り出したて読み始めた。しかしほとんどの文字は読めないようになっており、わかったのは情報を記録したのが『セレスト・D・アウスレーゼ』 という人物だけだった。
「なによ、最初以外は読めなくなってるじゃない……って、この『アウスレーゼ』って。」
「はい……リベール王家の姓です。縁(ゆかり)のある方かもしれません。」
エステルに見られたクローゼは頷いて答えた。
「……どうやら重大なことが記されている可能性が高そうだ。何とかして読めればいいんだけど……」
「うーん……そうね。ま、役に立つかもしれないし一応取っておきますか。」
その後エステル達は周りの装置を起動させて、データクリスタルを回収し、屋上を目指した。
~翡翠の塔・頂上~
「こ、ここって……!?」
「塔の屋上みたいやけど、こいつは……」
「屋上を包んだ”結界”の内側ということか……」
「フフ……なかなか早かったようだね。」
屋上に到着し、周りを見ているエステル達に声がし、声がした方向を見るとそこには執行者――”怪盗紳士”ブルブランが”ゴスペル”を起動させた装置の傍で待ち構えていた。
「やっぱり来てたわね……この変態仮面。」
「フッ、はしたない物言いだ。我が挑戦に応えた事もあるのだから、品位を見せてもバチは当たるまい?」
エステルの言葉にブルブランは呆れた口調で言った。
「ひ、品が無くて悪かったわね!」
ブルブランに呆れられたエステルは言い返した。
「それはさておき……ずいぶん久しぶりだな。”漆黒の牙”―――ヨシュア・アストレイ。」
ブルブランはヨシュアを見て、口元に笑みを浮かべた。
「……そうだね。何故あなたが教授の計画に協力しているのか疑問だけど……」
「フフ、他の者はさておき私の場合は趣味を兼ねていてね。このリベールという国は不思議な気品に満ち溢れている。人も、土地も、空気すらも。その気品が本物かどうか見極めてみたいと思ったのだよ。困難に直面した時、それは一層輝くものだからね。」
「なるほどね……。ある意味、あなたは教授と似ているのかもしれない。」
ブルブランの話を聞いたヨシュアは納得した様子で頷いた。
「はは、私が求めるのは美だが、教授の場合は明らかに違う。それは君も知っているはずだ。」
「………………………………」
「しかし、まさか姫殿下がこの場に来られたとは……。私の崇拝を受け入れる気になったと考えてよろしいかな?」
「残念ですが……私は貴方の期待に応えられるような人間ではありません。真に気高き人間であるならどうして迷ったりするでしょう。”アルセイユ”を陛下に返す時、私は答えを出さなくてはいけない。私は……その時が恐いのです。」
ブルブランに尋ねられたクローゼは否定の言葉を答え、不安そうな表情になって答えた。
「クローゼ……」
「………………………………」
「フハハ!その畏れこそが気高さの証!地を這う虫けらが焦がれて止まぬ翼の輝きなのだ!」
クローゼの答えを聞いたブルブランは高笑いをしながら答えた後、ステッキを構えた!するとエステル達の左右に巨大な人形兵器が2体現れた!
「!」
「わわっ!?」
「強襲用人形兵器、”バランシングクラウン”!」
「さあ、見せてくれたまえ!影横たわる地すら照らし出すその輝きを!」
「霊体の本領を見せてあげる!」
そしてエステル達はブルブラン達との戦闘を開始した…………!
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第302話