アルセイユに乗船する為にエステル達は王都に向かい、そして到着し、空港に向かおうとしたその時、ミントが予想外の事を提案した。
~王都グランセル~
「え!?ミントは”四輪の塔”に行かないって……なんで?」
ミントの意外な言葉を聞いたエステルは驚いてミントを見て尋ねた。
「うん…………確かに”四輪の塔”の異変の調査と解決も必要だけど、でも今のリベールは”結社”の襲撃によって色んな場所で戦いが起こっている……逃げ遅れた人達の保護をする為にカルナさん達が王国中を駆け回っているけど………でもそれじゃ、人手は足りないと思うんだ!だから、ミントがママ達が安心して”四輪の塔”の調査をできるように………そして”遊撃士”として市民の人達を守る為にミントは地上に残って、カルナさん達のお手伝いをするよ!」
エステルに尋ねられたミントは決意の表情で答えた。
「ミント…………」
「しばらく会わない内に本当に大人になったね…………」
「へっ。言うようになったじゃねえか。」
「ミントちゃん、カッコいい………!」
「フフ………もしシルフィア様が今のミントを見たら、誇らしげに思うでしょうね。」
ミントの決意にエステルは驚いた表情をし、ヨシュアは微笑み、アガットは口元に笑みを浮かべ、ティータは尊敬の眼差しでミントを見つめ、プリネは優しく微笑んでいた。
「……………わかったわ!お互い頑張ろうね、ミント!」
「うん!」
エステルに笑顔を向けられたミントも笑顔で頷いた。
「………では私とツーヤも地上に残りましょう。」
「え…………」
そしてプリネの申し出にエステルは驚き、仲間達と共にプリネとツーヤを見た。
「さすがにミント一人に負担をかける訳にはいきませんし、それにこの非常事態ですと、大使館より帰還の指示がいつ来てもおかしくありませんし…………」
「で、でも…………」
プリネの言葉を聞いたエステルはヨシュアとプリネの顔を不安そうな表情で何度も見たが
「………エステル。プリネさんは他国の皇族よ。今から行く所は今までとは比べ物にならないくらいの危険度はあるわ。そんな所に両親の許可もなく、連れて行くのはさすがにまずいわ。」
「うん…………」
シェラザードに諭され、諦めた。
「みなさんが安心して”四輪の塔”の異変の調査と解決できるように、あたし達は帰還命令が来るその時まで、ミントちゃん達のお手伝いをします。あたし達の分も頑張って下さい。」
「ツーヤ……わかったわ!」
「地上は頼んだぜ。」
「はう~………ミントちゃんとツーヤちゃんと別行動なのはちょっと残念だな…………」
ツーヤの言葉にエステルとジンは頷いて言い、ティータは残念そうな表情をした。
「フフ、またすぐに会えるよ。」
「ええ。………リタさん。私達の代わりにエステルさん達をサポートしてあげて下さい。」
「うん、任せて。エステルとプリネちゃん………2人の”友達”として頑張るね。」
ティータの言葉にミントは微笑み、プリネの頼みにリタは可愛らしい笑顔を見せて頷いた。そして仲間達は空港に、ミント達はギルドに向かおうとしたが
「あ、えっと………プリネ!ちょっとだけ話………いいかな?それとみんなは先に行って、ヨシュアだけ少し待ってて!」
「エステル?」
「…………?わかりました。ツーヤ、先にミントと一緒にギルドに行っててください。」
「はい、マスター。」
エステルの言葉にヨシュアは首を傾げ、プリネも首を傾げた後、ツーヤに指示をした。そしてその場はエステル、ヨシュア、プリネの3人だけになった。
「プリネ、ちょっとこっち来て。後、ヨシュア。盗み聞きしないでよ!これから話すのは乙女同士の秘密の会話なんだから!」
「(ハハ………ケビンさんとの会話を根に持っているのかな?)はいはい、わかっているよ。」
「?はい。」
エステルの言葉にヨシュアは苦笑しながら頷き、プリネは首を傾げて頷いた。そしてエステルとプリネはヨシュアから少しだけ距離を取り、エステルは真剣な表情でプリネを見て小声で言った。
「あのさ、プリネ…………無茶苦茶な事を言っているって思うかもしれないけど………プリネってヨシュアのお姉さん………”カリン”さんなの?」
「!?なっ…………!ど、どうしてエステルさんが………!」
「あ、その反応だと、やっぱり当たりか。」
エステルに尋ねられたプリネは目を見開いて驚き、プリネの反応を見たエステルは納得した表情で頷いた。
「…………いつから私がカリン・アストレイの転生した人物だと気づいていたんですか………?」
「グロリアスで”剣帝”からカリンさんの話を聞いた時よ。ヨシュアが持っているハーモニカ………あれ、カリンさんが遺した形見でしょ?それをプリネ、最初にあのハーモニカを扱った時、凄く扱いなれていたし、何より”星の在り処”が吹けたし……後はヨシュアがプリネの事を何度かカリンさんに見えた事があるって聞いて、確信したわ。」
「………そう…………………ですか………ヨシュアが………………」
エステルの答えを聞いたプリネは寂しげな笑みを浮かべて答えた。
「えっと………今更聞くのも何だけど、”K”ってカリンさんの名前の頭文字よね?」
「ええ…………まだあの子に名乗り出るつもりはありませんでしたので………」
「何で?カリンさんが転生して生きているって知ったら、ヨシュア、喜ぶと思うけど。」
プリネの話を聞いたエステルは首を傾げて尋ねた。
「”私の死”という”壁”を超えない限り、ヨシュアは前に進めません。”私”の存在はヨシュアにとって重荷になっていたんではないかと思いましたし、それに今更名乗り出た所であの子が信じるかどうか、不安で………」
「カリンさん…………」
辛そうな表情で語るプリネにエステルは何も言えなかったがある事を思い出して、言った。
「大丈夫………もうヨシュアはカリンさんを失った悲しい過去に目を背けず、前を歩いているわ!」
「え…………?」
エステルの言葉に驚いたプリネはエステルを見た。そしてエステルはメーヴェ海道であった出来事を話した。
「……そうだったのですか。…………本当にありがとうございます、エステルさん。あの子を絶望の淵から救ってくれて………」
「えへへ…………それより、さっきあたしが言った事………まだ迷っているの?」
プリネにお礼を言われ、照れたエステルはプリネに尋ねた。
「…………………リベールの”結社”の件が片付けば名乗り出ます。もう一人、闇から救わないといけない人もいますので………」
「”剣帝”レーヴェね。……………わかったわ!約束だからね?」
「はい。」
「あ、それと。いつかあたしやヨシュア…………”剣帝”レーヴェの前でヨシュアが持っているハーモニカで”星の在り処”、聞かせてね!」
「フフ、わかりました。」
エステルに笑顔を向けられたプリネは優しい微笑みを浮かべて頷いた。
「あ、ちなみにこれからプリネの事をなんて呼べばいいのかな………?ヨシュアのお姉さんでもあるし。」
「今まで通り”プリネ”で構いませんよ。”プリネ”と”カリン”………どちらも”私”なのですから。」
エステルの疑問にプリネは微笑みながら答えた。
「そっか。これからもよろしくね、プリネ。」
「はい。」
そしてプリネと離れたエステルはヨシュアに近づいた。
「………話は終わったのかい、エステル。」
「うん。じゃ、行きましょうか。」
そしてエステルとヨシュアは空港に向かおうとしたが
「…………あの、ヨシュアさん!」
「プリネ?」
プリネに呼び止められ、ヨシュアはエステルと共に立ち止まり、振り返ってプリネを見た。
「………素敵な女の子を見つけたわね。絶対にエステルさんの傍から離れては駄目よ……………ヨシュア。」
プリネは優しい微笑みを浮かべてヨシュアを見て言った。
「え…………(ね………え………さ……ん……?)」
プリネが見せた微笑みとカリンの微笑みが重なって見えたヨシュアは呆けた。
「それじゃあ、お二人とも頑張って下さい!」
そしてプリネはエステル達に背を向けてギルドに向かって走り去った。
「あ…………」
「(プリネ………えへへ、さっきの言葉だと、プリネ、あたしをヨシュアの恋人として認めているって事よね!)ヨシュア、どうしたの?プリネが気になったようだけど。まさか、早速浮気~?」
プリネが走り去り、無意識に片手を伸ばしたヨシュアにエステルはからかうような口調で尋ねた。
「そんな事あるはずないよ…………その…………プリネが一瞬姉さんと重なって見えて、驚いたんだ。」
「はいはい、ヨシュアのシスコンは筋金入りなのはわかっていますから、さっさと行くわよ!」
「ちょっと、エステル。それは誤解だよ。」
そしてエステル達は仲良く会話をしながら”アルセイユ”が停泊している発着所に向かった………………
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第299話