No.465690

第二話 もう一人の来訪者

末吉さん

続きです。

2012-08-05 22:23:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:272   閲覧ユーザー数:270

 

 

「はぁ!せやっ!!」

「流石だな!ユウセイ殿は呑み込みが早い!!」

 

 僕の剣の練習に付き合っている、この世界での「師匠」にあたる、ドレイアさんがそう言いながら、僕の剣を捌いていく。

 なんだか舐められている感じがしてならないけど、別にいい。弱いのは事実だし、慣れていないのだから。

 今僕が修行している場所は、僕達を召喚したというシュタリニア神聖国家という国の城にある訓練場。

 どうして修行しているのかというと、なんかこの世界に現れた魔王って奴が悪さして、誰もこの世界じゃ太刀打ちできないからという訳で召喚され、成り行きで。

 にしても驚いたね。僕が居た世界より遥かに可憐な人が居るだなんて。でもその人は僕を見た瞬間顔を赤らめたけど。

 

 ここに来て一ヶ月。世界情勢やら何やら勉強しながら過ごしてきた。あと、道定の行方も探してもらっている。

 どうも僕に巻き込まれたせいで、道定もこの世界にいるようだ。ただどこに居るか分からないらしい。これは完全に僕の責任だ。何としても見つけ出さないと。

 でもあいつって、僕より強い上に姿を消すのがデフォだったからなぁと思いながらやっていたら、「ちゃんと集中しろ!!」と怒られた。あ、ヤバイ。

 僕は「すみません。」と言って集中して再度打ち込んでいった。けれど、まだ道定の事を考えていた。

 あいつは昔から戦いが嫌いな性分だった。「話し合い程平和的解決は無い!」と豪語して、舌戦では本当に相手を丸め込んだ挙句、誰も傷つけないで解決させたこともあった。

 それは僕が見た最も理想とするやり方だったけど、実際は出来なかった。

 僕が出来たのは、暴力で更生させるやり方。だから強さを求めた。

 だけど、それも道定を超えられなかった。道場主である爺ちゃんだって、

 

「道定は努力の天才だ。あいつは、誰にも気づかれずに強くなっている。同い年では誰も勝てないだろうし、儂でも無理かも知れない。」

 

と言うくらいだ。

 でも彼はそんな「力」を使いたがらなかった。まるで忌避するみたいに。

 最終的に使うんだけど、いつもボロボロになっている。理由を聴くと、「相手が襲ってこないのに襲えるか。」だそうだ。理に適っているから何も言えないんだよね。

 しかも、彼は功績なんて気にしない。「巻き込まれてんのに気にするかよ。」なんて言うもんだから、僕に周りには気づいたら女の子が居る。そして、彼の周りには人が居ない。

 僕の事を妬ましく観てくる男子がほとんどだけど、彼に対する視線は無い。誰も。誰もが。

 僕を見て、彼を見ない。まるで光と影。自分で言うのもなんだけど、僕が光。というか、属性がそうらしい。

 話を戻すけど、僕は彼に追いつこうと頑張ろうと日夜努力している。彼に言わせれば、「補正持ちが何を言っているんだ?」らしいけど。

 はぁ、正直君が羨ましいよ。君と一度だけ本気で戦いたかったなぁ。

 なんて考えていたら、今日の修行は終わりのようだ。

 武器だけ片付けて、僕はドレイアさんと一緒に訓練所を出て行った。

 

 言い忘れていたけど、僕は一応武器を持っている。ただ、それは旅に出るまでは使えない。

 あ~あ。道定と会いたいなぁ。今頃どこで何してるんだろ?

 

 

 僕はドレイアさんと別れて城の廊下を歩いていると、軽快な足取りでこちらへ近づいてくる人が居た。

 

「ユウセイさ~ん!!」

「あ、姫様。駄目ですよ、走ってきては。」

「そんな事言わないでください!誰もいないのですから!」

 

そう言って、えへんと胸を張る姫様。そこ威張るところ違うと思いますけど。そして胸が揺れてるんですけど。

 彼女の名前はマクナリア……なんんだっけ?まぁ、いいや。

 で、マクナリアは分かる通りこの国のお姫様。そして、僕を召喚(道定は巻き込まれて)した一人。ものすごく美人。僕のいた世界にもいたけど、彼女は今までであった人の中ではダントツだった。思わず僕も見惚れた。

 そんな彼女だけど、一目見た時から何を思ったのか積極的に僕と一緒に居ようとする。まぁ教えてくれるからありがたいんだけどね。

 

「今日は何を教えましょうか、ユウセイさん。」

「さんはいらないよ。同い年なんだし。」

「いいじゃないですか。・・・で?何を教えましょうか?」

 

結局そこへ戻るのね。なんて思いながら、僕は少し考えてから答えた。

 

「じゃ、魔法を教えてくれないかな?まだ少し覚えていなくて。」

 

それを聴いたマクナ(二人の時はこう呼べと言われた)は、なんだか嬉しそうだった。

 

 こうして、今から魔法について勉強することになった。

 

 

 魔法というものは、体内に宿る魔力なるものを、術式なる言葉に込めて言う事で発動するんだって。

 より正確に言うなら、術式でイメージの補強をして、そのイメージを魔力で固めて発動するとか何とか。ま、そんなものらしい。良く分からないけど。

 ま、一応魔法が使えるから問題は無いし。

 

 でも憶えるのが面倒なんだよねぇ、なんて言ったら道定に「どうせすぐに覚えられるだろうが。俺なんて・・・・・・・・・」とか言われそうだから、教えてもらったものはすぐに覚えている。

 

 で、魔法には属性ってのは普通にあって、基本属性が火、雷、水、風、土、氷の六属性で、使い手を選ぶのが光と闇、回復とか支援中心なのが無属性。召喚魔法って言う、契約した聖獣たちを呼ぶ魔法もあるんだけど、使える人はそんなにいないみたい。聖獣に勝たないと契約してくれないそうだし。

 僕は勇者のせいか光属性を扱える。道定はどんな魔法を扱えるのだろうかと考えてみたけど、分からなかった。けど、それがあいつだと納得してしまう自分が居た。

 なんだか他にも魔法には種類があるそうだけど、大まかにいうとこんな感じらしい。

 

 

 今は僕にあてがわれた部屋でマクナに魔法についての講義を受けています。でももう覚えたし、術式を教えてほしいんだけどなぁ。

 はぁ。ここに来て一ヶ月経つけど、改めて道定の凄さを思い知るよ。

 同い年なのに卓越した技量、年上だろうが関係なく嵌る巧みな話術、誰が警戒するべき人かを見破る勘、膨大な知識と鋭い推理力。どれも全部努力した賜物って言うのだから、本当にすごい。

 対して、僕には勝てそうなものが技量ぐらいしかない。あと、補正かな?物覚えも勝てるか。

 そう考えたらまたため息が出てきた。ハァ。

 と、ここまで熱心に説明してくれたマクナが、僕の溜息を丁度目撃したのか教えるのをやめて椅子に座ったこう訊いてきた。

 

「どうかしました?なんだか元気が無いようですけど。」

「あ、ううん。なんでもないよ。ただ、ね・・・・・・・・・・」

 

そんな僕の言葉で更に心配そうになったマクナ。しまった。そんな顔をさせるつもりは無かったのに。

 僕はどうしようか悩んだけどかける言葉は見つからなかった。

 すると、マクナはいきなり立ち上がった。

 

「ど、どうしたの?」

 

驚く僕を無視して、彼女は言った。

 

「ユウセイさんは、一緒に飛ばされた友達の事を心配しているのでしょう。ですが大丈夫です!!国の名誉に賭けて必ずや探し出して見せます!!」

 

そう言ってガッツポーズをするマクナ。でも僕は、正直な本音を言ってしまった。

 

「多分、見つけられないんじゃないかな?あいつはいつの間にか人に紛れたり、空気に紛れたり、色々なものに紛れるから。見つけるとすると、何かしらのアクションをある所定の位置で起こさないと駄目だと思う。」

「え?ユウセイさんのお友達は暗殺者か何かですか?」

 

しまった。本音を言ってしまったから道定について勘違いされてしまった。

 でも、あいつは確かにそんな感じだ。僕がここだと思うところで待ち伏せしないと、あいつは絶対に捕まらない。

 これも努力だと言っていたけど、一体どうやったらそんな事が出来るんだい?

 なんて思ってしまったけど、今は彼女の誤解を解く方が先だ。

 

「違うよ。あいつは自分が努力して得たものを、そんな事に使わない。あいつは戦いと争いが嫌いだから。自分から襲う事は無いし、誰かに命令されてもやらないよ。」

 

 僕がそういうと、彼女は「そ、そうでしたか。すみません、とんだ早とちりをして…。」と恥ずかしそうに座った。

 そんな仕草がつい可愛いと思えてしまって、僕は頭を横に振った。雑念よ、消えろ。

 

 

 こうして、僕はこの後も魔法について教えてもらい、夕食を王様たちと一緒に食べ、部屋についているお風呂に入って、着替えてから寝た。

 

 星空を眺めた時に、ふと道定がこの国の近くにいるかもしれないと思ったけど、そのまま寝た。

 

 

 
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