「それではまず最初に、説明するよりもすずかちゃんの目の前で見せた方が良さそうですね」
そう思った私は自分の右手を手のひらを上にして前に出します。
一体何をするのだろうという感じですずかちゃんは見てきますが、私はその掌の上に桃色の弾丸を一つ出します。
その光景にすずかちゃんはかなり驚いており、アリサちゃんは何も言わずに唯私の手のひらを見ています。
「これは魔法の一つですが、この世界には魔法というものが存在します。私はある師匠と知り合ってそれから知ったのですけど――」
「私はなのはがあのサッカーの試合が終わって少し終わった時に事件みたいなのがあって、その少し前になのはが何処か行っちゃったじゃない。すずかはあの時なのはに何事もなくてホッとしていたけど、あれも魔法に関わっている事なの。あの時私もなのはを追いかけて、そしてその時になのはが魔法を使える事を知ったの」
「そうだったんだ……」
まさか自分の知らないところでそんなことが起こっていて、二人が関わっていたことにすずかちゃんは驚いているようでした。
私はそんな驚いたすずかちゃんを気にせずに手を出した魔法を消滅させて、すずかちゃんに話しかけます。
「まぁ、さっき見せたのは魔法の断片的なものですが、私もアリサちゃんも魔法を使うことが出来ます。まぁ、アリサちゃんの場合はある意味特別なんですけどね」
「それはどういうことなの?」
「それについては後で話します。今は魔法や世界についての知識を教えておきたいので」
実際、アリサちゃんの件は私でもどういう原因なのかは分からないのですけどね。ジュエルシードが原因なのは分かるのですが願いが叶ったからなのか、もしくはジュエルシードのエネルギーによる影響なのかまだ分からないのです。たぶん前者だとは思いますけどね。無意識にアリサちゃんが魔法が使えたらと純粋に思っていた物を叶えたのかもしれませんし。
けどそうなるとほかの事は無心でいる必要があるとお思いますし…… いや、無意識に思っていたからこそアリサちゃんの願いがかなったっていう考えもありますか。無意識っていう事は本当に邪心などもないっていう事でもありますから、あの時の私が死ぬ寸前に何も考えられなかったから願いが叶った時とは違いますしね。
ちなみに後者は前者よりは真実だとは思っていません。別に持っていたからリンカーコアの魔力貯蓄量が広がるっていうのは聞いたことありませんし。
っと、今はその話を後にしたのでしたね。自分が言ったのにどうして私は考えていたのでしょうね?
「それでこの世界の事なんですが、この世界は今私たちが居る地球の世界の他にも別の世界が存在します。この地球も含めてすべての世界を纏めて次元世界と言われています。この辺りって一応アリサちゃんにも教えましたよね?」
「うん、その辺りは最初になのはが魔法を使えることを聞いたときに聞いたわよ。それで世界の中には魔法が広まっている世界もあって、この地球は魔法を使える人がとてつもなく少ないとかそういう話も」
「大体アリサちゃんが言った通りです。私はこの地球の中でも特例と言っていいのですが、とりあえずここまでの話は分かりました」
「なんとなく分かったけど、アリサちゃんが魔法の中では特別っていうのはどういうことなの?」
まぁ、その部分は気になりますよね。その前に管理局とかの話をしたのですが、すずかちゃんがさっきから気になっていたような感じでしたので話す順番を変えましょうか。本当はこの話は一番最後に話そうとしたのですけどね。
「アリサちゃんは魔力の源、リンカーコアっていうものがかなり少なくて、本来魔法を使えなかったはずなのです。けど私に魔法を使えることをアリサちゃんが知った時に、私が集めていたもの、ジュエルシードという物なんですがそれを持っている時にどうやらアリサちゃんのリンカーコアが元の大きさよりも大きくなってしまったようなのです」
「ジュエルシード?」
「はい。次元干渉型エネルギー結晶体っていうものなんですが、簡単に言えばエネルギーをかなり秘めている結晶っと言えば分かりますかね? もっと簡単に言えば願いが叶う物なんですが、アリサちゃんが無意識に思っていたのが原因なのかは正確には分かりませんが、考えられる原因がそれともう一つしかありませんので。もう一つの方はあまり気にしなくていいです」
「それって、願いが本当に叶うの?」
「いえ、大体は失敗します。失敗しますと動物だろうと植物などに取り込んで暴走したり、ジュエルシード単体で暴走したりしますので封印しなければかなり危険な物です。ジュエルシードの他にもそういうものはありまして、それらを総称して古代の遺失物という事からロストロギアと言われています。ちなみに、封印したら願いを叶ったとしても元に戻るはずなんですが……」
そう、アリサちゃんのリンカーコアが今もそのままだという事は一番の疑問であり、ジュエルシードを封印したのに今でも魔法を使えるのは不思議な事であった。ロストロギアはまだ分かっていない部分が多いですからどうしてアリサちゃんが魔法をいまだに使えるのかは分かっていませんし、もしかしたらこの先一生分からないかもしれませんね。一応調べてみることにはしますけどね。
ちなみにすずかちゃんは驚いた顔をしています。まぁ、そんな危険なものを持っていたのによくアリサちゃんが無事に済んでいたのだと思ったのでしょうね。まぁ、正直言えばすずかちゃんが思っている事は私もなんですけどね。なので一応言っておきますか。
「一応言っておきますが、多分すずかちゃんが思っている事は私も思っていた事ですので私もアリサちゃんを危険にしたつもりはありませんので。まぁ、アリサちゃんがジュエルシードを見つけて私を探していたようなんですけど、あの時私は三連休を利用して家に居なかったことが多かったもので、そのせいで一日アリサちゃんがジュエルシードを持つことになってしまいましたもので。気づいたらすぐに封印したのですけどね」
「そうだよね。なのはちゃんが気づいていたらそんな危ない事をさせないだろうし」
さすがに私の性格が分かっていますから、気づいていたらすぐに封印するだろうとすずかちゃんは分かっていたようでした。まぁ、そんな危険な目には絶対にさせたくありませんでしたからね。
「ともかく、アリサちゃんが魔法が使えるようになった原因はそう言う理由があります。一応すずかちゃんも魔法が使えるかどうか確認しますけど、あまり使えないと思っていた方が良いと思いますので」
「分かった。それでいつやるの?」
「今日はもう遅いですし明日にしていいですか? 私も今日は疲れましたし……」
「それじゃあ、今日は私の家で泊まっていかない? 二人の家には連絡しておくから」
「え、良いのですか!?」
「うん、今日は三人とも疲れたと思うし、今から帰るのも二人は嫌でしょ?」
確かに今の時刻は夜の十時を過ぎていました。多分今私とアリサちゃんを返したとしたら逆に私とアリサちゃんの家族が心配すると思いますし、この場合は泊まらせた方が良いという考えでしょうね。
この時の私はすずかちゃんの言葉にかなり賛成でした。だって帰ったとしても怒られるだけだし、木刀を勝手に持っていったことについても言及されると思いますので、数時間は怒られると思いましたからね。特にシスコンのお兄ちゃんに。
ってなわけで私はすずかちゃんに泊まらせてもらう事にしました。
「そういう事でしたら良いですか? アリサちゃんも泊まりますよね?」
「うん、家の方は多分すずかが誘拐されたことを知らなかったと思うから、帰ったとしても怒られるだけだしね」
どうやらアリサちゃんも同じことを考えていたようです。うん、ここは泊まる方がやっぱり良いと思いますね。
「じゃあ、家には後でファリンに連絡しておくから、それまではここで待ってよっか。ファリンが連絡を終えて戻ってきてから客室に案内するから」
それから一度すずかちゃんは廊下で待機していたファリンさんに、私とアリサちゃんの家に私たちが止まることを連絡するようにと命令し、ファリンさんはすぐに連絡しにいきました。
その後の事は特に話すこともなかったので、他愛無い会話をしながらファリンさんを待っている事にしました。
先ほどとは打って変わって私たち三人はリラックスしながら話していて、先ほどのようなシリアスはどこにもありませんでした。さすがに私もシリアスな事ばかり話したくもなかったですしね。
他愛無い会話をしているとファリンさんが戻ってきて、私とアリサちゃんがすずかちゃんの家に泊まる許可を私たちの家から貰ったようです。やはり今から帰させるのはどうかと思ったのでしょうね。
ファリンさんが戻ってきてその話を聞きますと、すずかちゃんが私たちに客室を教えてもらい、私とアリサちゃんはそれぞれの客室で寝ることになりました。
私も今日は寝て明日にのんびりしようと思いましたので、そのまま電気を消してベッドに寝ることにしようとしました。
しかし、私が寝ようと思ってベッドに横になって数分すると、客室のドアが開く音が聞こえてきました。
すずかちゃんの家ですのでこれと言って警戒することもないのですが、一体誰が入ってきたのだろうかと思いました。
「なのはちゃん、まだ起きてる?」
どうやら入ってきたのはすずかちゃんのようで私が起きているかどうか確認してきました。
私は一度ベッドから起き上がり、すずかちゃんの方へと顔を向けます。暗くてもすずかちゃんが居る方は分かりますので、すずかちゃんが居る位置は大体把握できたのです。
「それで、どうしたのですか? すずかちゃんとは別に私と話したいことがあったりするのですか?」
「まぁ、そうなのかな。ちょっとなのはちゃんに話したいことがあって……」
一体何の話なんでしょうと思いながら、すずかちゃんの言葉を待ちます。
するとすずかちゃんは私がいる方へと歩いて来てそしてベッドの上に上がってきて私を抱きしめてきました。
「ちょ、すずかちゃん!? いきなりどうした――」
「ごめん、少しこうさせて。さっきまでは我慢していたのだけど、やっぱり一人になるとできなかった」
……なるほど。誘拐されたことがかなり怖かったのでしょうね。何をされるか分かったものじゃないし、もし私が来なかったらどうなっていたかと思って、今でもその時の怖さが残っているのでしょうね。当然と言えば当然ですね。
なので私は両腕をすずかちゃんの背中に回し、すずかちゃんが気が済むまでこのままでいることにしました。
「え、なのはちゃん?」
「今は泣いても良いですよ。別に我慢しなくても良いですから」
「な、なのはちゃん……」
するとすずかちゃんは泣き始め、私は何も言わずにそれを支えるのでした。
もし今みたいにタイムリープしなくて誘拐されてしまったら、私もすずかちゃんみたいに泣いていたかもしれませんね。年齢的にも怖くない方がおかしいですし。
とまぁ、数分間すずかちゃんが泣き止むまで抱きしめているのでした。
「ありがとう、なのはちゃん」
「別にこれくらいの事なら構いませんよ。あんなことがあったんですし」
泣き止んだすずかちゃんは私から離れていきました。
先ほどとは打って変わって元気になっており、泣くことで少し安心できたのだろうと思いました。
それからすずかちゃんは私に顔を向けたまま話してきました。
「あのねなのはちゃん。このまま一緒に寝て良いかな?」
「え? いきなりどうしたのですか?」
「今日はまだ誘拐されたことが怖くて、一人で寝たくないの。だから良いかな?」
「それ位なら別に構いませんよ。それじゃあ一緒に寝ましょうか」
私とすずかちゃんはそベッドに横になり一緒に寝ることにしました。
本当なら私がすずかちゃんの部屋に行った方が良かったのではないかと思いましたけど、すずかちゃんは何も言わなかったので私は聞きませんでした。
それから私たちは一緒に寝るのですが、すずかちゃんに背を向けていたらすずかちゃんが後ろから抱きしめてきます。何とか離そうとはしようとするのですが、その時にはもうすずかちゃんが寝ていたので諦めましたね。
起こすわけにもいかないと思った私はすずかちゃんに抱きしめながらも、今回だけは良いだろうと思って寝ようとしました。
しかし、そう思っていられるのは起床するまでで、起きたときに大変になることを私は知りませんでした――
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新暦85年、高町なのははある任務の途中で死亡する。
任務は全て嘘であり、全てはなのはを殺害するための一部の管理局員による計画だった。
なのははその計画通りに殺されるが、その任務に向かう途中に偶然何故か落ちていた拾ったジュエルシードによって、なのははタイムリープをするのだった!!
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