その後アルセイユはボースの空港に向かい、着陸して停泊した。そしてエステル達は今後の事を話し合い始めた。
~アルセイユ・会議室~
「竜が逃げ込んだのは霧降り峡谷の北西部……空賊アジトがあった場所より奥にある霧の深い難所です。」
「つまり、飛行船を使った捜索は難しいということですね?」
ユリアの報告を聞いたクローゼは真剣な表情で尋ねた。
「残念ながら……。地上から捜索部隊を派遣するしかないでしょう。」
「ちょ、ちょっと待って!大勢の兵士を差し向けたらまた竜に逃げられちゃうわよ!」
「そうね……。ここは少人数で捜索して竜のスキを突いた方がいいわ。」
モルガンの話を聞いたエステルは慌て、シェラザードは提案した。
「つまり、この先はおぬしらに任せろということか?」
「難所の捜索は、軍人よりも我々の方が慣れていますからな。適材適所というやつでしょう。」
モルガンの疑問にジンは頷いて答えた。
「……ふむ…………。だが、おぬしらとて捜索するアテはあるのか?たしか、峡谷の北西部には道らしき道もなかったはず。行き当たりばったりでは何日かけても終わりはせんぞ。」
「そ、それは……」
モルガンの指摘に返す言葉がなかったその時
「……そいつは任せとけ。」
「おぬしは……」
「アガット、ティータ!?」
会議室にアガットとティータが入って来た。
「フフ、私達もいますよ?」
さらにプリネ、ツーヤ、ミント、リタも入って来た。
「ミント!それにプリネとツーヤも!」
「プ、プリネ姫!」
アガットやプリネ達の登場にエステルは驚き、モルガンも驚いた。
「プリネ達の方はメンフィルの兵士さん達への指示は済んだの?」
「はい。先ほど指示を終えて、アルセイユが戻って来たという報告を聞き、直接こちらに来ました。」
「ミントとリタちゃんはちょうど区切りがついたから、こっちに来たの!」
「………空港に到着した時、プリネちゃん達ともちょうど合流できて、一緒にこっちに来たわ。」
エステルの疑問にツーヤは答え、ミントやリタもツーヤの説明を補足するように続けて答えた。
「そっか。そ、それよりもアガットはもう動いて大丈夫なの!?」
ツーヤ達の説明を聞いたエステルはアガットを見て驚いた表情で尋ねた。
「怪我の方は心配ねぇ。ただのカスリ傷だからな。」
「……ティータ、ほんと?」
アガットの答えを聞いたエステルは信じられず、ジト目でティータに尋ねた。
「う、うん……。アガットさん、無理はしてないと思うよ。それにさっき念の為にプリネさん達が治癒魔術をかけてくれたし。」
「そっか……だったら良いんだけど。」
「フン、体力だけは有り余っているようだな。任せろと言っておったが、作戦の顛末は聞いているのか?」
「ああ、ルグラン爺さんから大まかなことは聞いてきた。竜は霧降り峡谷の北西部に消えたそうだな?」
モルガンに尋ねられて頷いたアガットは確認した。
「うん、そうだけど……」
「霧降り峡谷について詳しいヤツを知っている。そいつに頼めば、竜の隠れた峡谷の北西部に渡れるだろう。」
「ほう……」
「そ、それって誰なの?」
アガットの話を聞いたモルガンは驚き、エステルは尋ねた。
「峡谷の東側に住んでいるウェムラーってオッサンだ。昔、道もない北西部に渡ったことがあるらしい。」
「フッ、さすが遊撃士。日頃の地道な情報収集が実を結んだということだね。」
「………………………………。しかし、実際に竜を見つけたらどうするつもりだ?………廃鉱の時に現れた獣達と共に退治するのか?それでも退治できるかわからない相手だぞ。」
アガットの話を聞いたオリビエは感心し、モルガンは考え込んだ後、尋ねた。
「竜の額には”ゴスペル”が仕込まれていたそうだな?まずはそいつを何とかするのが先決だろう。」
「ふむ……」
「考えてみれば、あれのせいで竜が暴れたかもしれないのよね。今までにも”ゴスペル”は色々な異常現象を起こしているし。」
「”ゴスペル”を無力化できれば竜の暴走を止められるという事か。ふむ。理屈としては合っている……」
アガットの説明を聞いたモルガンやシェラザード。ジンは納得した。
「”ゴスペル”の無力化というと、ケビン殿が使った方法を思い出すな。あの時はアーティファクトを偽物ではるが”ゴスペル”に叩き付けることでショートさせていたが……」
一方ユリアは”ゴスペル”を無力化する方法を考え込んだ。
「そんな悠長なマネはしないさ。フレームごと”ゴスペル”を破壊するだけだ。」
「なに……!?」
「ちょ、ちょっと待って!”ゴスペル”を壊すってそんなこと簡単にできるの?たしか物凄く硬いフレームで包まれてるんじゃなかったっけ?」
「それについてもなんとか目処が付いた。……コイツだ。」
驚いているエステル達にアガットは何かの装置が取り付けられた重剣を見せた。
「それって……」
「根元に何かのユニットがはめ込まれているみたいね。」
「今朝、ラッセルの爺さんが定期便で送ってきた新発明……。”ゴスペル”のフレームを破壊するためのユニットだ。」
「ええっ!?」
アガットの話を聞いたエステル達は驚いた。
「ふむ……。一体どういう仕組みなんだい?」
そしてオリビエが気になり尋ね、ティータが詳細な説明を始めた。
「えとですね……。このユニットが、フレーム素材のみ崩壊させられる波長の高振動をブレード部分に与えるらしいです。振動が原因で2、3回使ったら壊れちゃうそうなんですけど……。うまく刀身を食い込ませられれば”ゴスペル”を破壊できるそーです。」
「よ、よく分からないけどメチャメチャ凄そうな発明かも。」
「フフ……さすがは王国一の天才学者ですね。」
ティータの説明を聞いたエステルはあまりわかっていない様子で納得し、プリネは感心していた。
「さっきティータに付けてもらったばかりだが、どうやら問題なく動きそうだ。あとは実際に竜を捜しだして額に喰らわせてやるだけだが……。どうだい、将軍さんよ?」
「まったく……。そこまで用意されたのでは認めてやるしかないではないか。」
アガットに不敵な笑みを浮かべて尋ねられたモルガンは苦笑しながら言った。
「それじゃあ……」
「俺たちに任せていいんだな。」
「うむ……。やれるだけはやってみるがいい。ただし念のため、飛行艦隊を峡谷の周りに展開しておく。おぬしらが竜を逃がした時、即座に対応できるようにな。」
「ヘッ、上等だ。ムダ弾を撃たせないようせいぜい気張らせてもらうぜ。」
そして竜を見つける為、エステル達はアルセイユから降りた
~ボース国際空港~
「この後、”アルセイユ”はボース地方の上空を巡航する。竜の居場所が特定できたらよろしく連絡をお願いしたい。」
「うん、任せて。」
アルセイユから降りて、仲間達と共に発着所まで来たエステルはユリアの言葉に頷いた。
「竜の居場所が分かったらジークに伝えてもらいます。私が同行していない場合も、エステルさんの近くにいるようお願いしておきましたから。」
「殿下、同行するならばくれぐれもお気を付けてくだされ。……エステル・ブライト。それからアガット・クロスナー。」
「へっ……?」
「……なんだ?」
モルガンに呼ばれたエステルとアガットは首を傾げた。
「もし竜が峡谷から逃げたら軍が責任をもって何とかしよう。もう2度と、リベールの民を傷付けるようなことはさせぬ。だから、失敗を恐れずにやれるだけやってみるがいい。」
「モルガン将軍……」
「……まさかアンタからそんな言葉が聞けるとはな。どういう風の吹き回しだい?」
「なに、ただの社交辞令だ。……大尉、出発するぞ。」
「は!」
そしてアルセイユは飛び立った。その後エステルは肝心の重剣を使うアガット、重剣に付いているユニットの整備ができるティータ、竜と本格的に戦う時になった際、”竜化”して対抗できるミントとツーヤ、古代竜以上の存在の竜と戦った事のあるリタ、さらにプリネの召喚によって最強の種族である”魔神”――アムドシアスをメンバーにして、ギルドで待機する仲間達と別れた…………
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第274話