リオンSide
「おい、ルイズ。朝だぞ」
僕がこの世界に来て数日ほどが経った。
「う、ん~。あ、おはようリオン」
「寝ぼけてないで、早く起きろ」
今は現在、僕はルイズの使い魔というよりはお世話係のようなことをしている。ルイズ曰く『せっかく人間の使い魔なんだから別に構わないでしょ』とのことだ。はぁ、まったく。
「分かってるわよ。ほら、服とって」
「そこに置いてあるだろ。僕は先に行ってるぞ」
「うん、じゃあ後でね」
僕は部屋を出て、朝食を食べに厨房に行く。
「あ、おはよう。リオンお兄ちゃん。今ご飯用意するから」
「ああ、たのむ。エルザ」
僕が厨房へ入ると、ちとせとキキがおり、朝食の準備をしていたエルザが僕を見るとそう言って奥に入っていった。
「ホント、エルザちゃんは可愛くて働き者ですね~」
「だな~。ぶっちゃけあんなにちゃんと働くとは思わなかった」
ちとせとキキがエルザの後姿を見ながら、しみじみと呟いた。エルザはキキがどこからか連れてきた10歳ぐらいの少女で、学園のメイドとして働かしてもらっているらしい。
その後、朝食を取り終わったら
「じゃあ、今日も軽く訓練やるか」
「ああ、そうだな」
ここ最近やり始めた剣の訓練をするため外へと行く。僕とキキはある程度距離を取り、互いに武器を構える。キキの武器はとても短い黒色のナイフ(クナイというらしい)を使う。ただし、一本ではなく数本程。奴の戦い方は距離を取ればクナイを投擲し、縮めればクナイと体術による攻撃と中々厄介だ。僕とキキは互いに隙を探しあい、そして・・・
「ふっ!」
「はぁっ!」
同じタイミングで互いに接近しあい、切り結ぶ。僕は左に持ったダガーでキキの体勢を崩しにかかるがキキはタイミングを合わせてバックステップをし、さらにそこからすぐに接近してきてクナイを振るう。僕はそれを剣で受け止めたが、
「ぐっ・・・」
キキの掌底が腹に入る。こいつは流れるように懐に入ってくるので、ヘタに接近し続けるとこのような打撃を何度も入れてくる。しかし、僕だって負けていられない。
「・・・っ!!」
僕は攻撃を耐え、ダガーでキキの腕を即座に斬りつける。ちなみに言っとくが僕たちは少々傷つけられても、訓練後は僕のヒールで治すので問題ない。このあいだ、訓練を決闘とシエスタに勘違いされて大騒ぎになってしまったが・・・。
それからしばらく打ち合って、時間になったので傷を治し皆で食堂の入り口に行く。
「ん・・・?」
視線を感じてそちらを向くと、赤い生き物が見えた。また、あのサラマンダーか。ここ最近僕の事をずっとつけている。少々鬱陶しいが、危害を加えてくるでもないので放っておいている。ルイズたちと合流し午前の授業を共に受ける。僕としては外で身体を動かしていたほうが有意義なんだが、ルイズがうるさいので仕方ない。
昼食後はちとせの案で三人で厨房の手伝いをし、それが終われば、またキキと訓練をする。
「……ハッ!」
「なんのっ!」
いつものように何合が打ち合っていたら、
「きゅい~」
上空からタバサを乗せた竜が降りてきて、
「任務」
「おう。すまんリオン、用事が出来たから今日はこれで」
そう言いい、竜に乗って行ってしまった。僕は剣を仕舞い軽く息を吐く。キキが出掛けてしまったから今日は地下の浴場には行けないか・・・。しょうがない、キキが戻ってくるまで裏庭にあるちとせが作った鍋風呂を使うか。
キュルケSide
「ん~~っと。今日もいい朝ねぇ」
私はいつも通りに朝を迎えた。
「さーてと、今日はどんな香水をつけようかしら」
私はベットから降り、髪を梳かしながら化粧道具を机から取り出す。
「ん? あらあの子、もう起きたの? 朝弱かったはずなんだけど」
私はルイズの部屋の前に忍ばしておいたフレイムの目を通して様子を見てそう呟く。お化粧をしながら見ていると、部屋から愛しのダーリンが出てくる。ダーリンとはもちろんリオンのこと。
「はぁ~。ホントにダーリンって、素敵な人。ルイズなんかにはもったいないわねぇ。フレイム~、いつもの様にお願いね」
私はフレイムに命じてダーリンの後を追わせる。うふふ・・・、彼いつも無愛想だけれどもそこがいいのよねぇ。学院の男子たちって積極的なのが良い所なんだけど・・・やっぱりダーリンみたいにクールなのがいいわよね。
「ん~? よし、今日も完璧」
私は鏡でお化粧の出来を確認して、化粧道具を仕舞い、タンスから服を出して着て準備完了。私が部屋を出ると
「おはよう、ルイズ。今日も早いのね」
「おはよう、キュルケ。別に私が早く起きたってあなたには関係ないじゃない」
「そんなこと無いわよ?愛しのダーリンとお話しできるじゃない」
「あんたまたぁ!? いい加減にしなさいよ! それに、リオンは私の使い魔なんだから手出さないでよ」
と、まぁいつも通りのやりとりをしていると、タバサがやってきたので私たちは食堂へ向かう。最近こうやって三人で食堂に行くことが多くなったけど・・・・ま、楽しいからいいか。それからのんびり朝食を取り、食べ切れなかった分はタバサに上げた。いつ見ても良い食べっぷりねぇ。
「・・・・・・・・・・・・・」
「Zzzzzzzz・・・・・・・・」
午前の授業が始まり、私たちが教師の話を聞いてる間ダーリンは目を瞑り、ジッとしている。別に寝てるわけではないみたいだけど、はぁ~、カッコイイわ~。タバサの使い魔君、確かキキって言ってたわね。彼は普通に机に突っ伏して寝ている。彼もそれなりにカッコイイが・・・・・・タバサの使い魔だし、それにこれを気にタバサが恋でもしてくれればいいのだけれど、う~ん彼にその気はあるかしらねぇ。
それからお昼になり、私は本を読んでいるタバサの隣に行く。
「ねえタバサ、聞きたいことがあるんだけど」
私は本を読んでいるタバサに話しかける
「あの使い魔の彼とはどんな感じなの?」
「別に」
うーん、やっぱり素っ気ないわね。しかし、このタバサに恋の楽しさを教える絶好のチャンス。逃がしてなるものですか。
「別にじゃないわよ。あなたとても可愛いんだし、少しお化粧して笑えばあの使い魔の彼も、あなたの魅力にメロメロよ!」
「・・・・・興味ない」
!? 微妙な間があったわね! ふふふ、これはこれは・・・・。まさかの反応! やばっ、なんか興奮してきたわ。
「そんなこと言ってて言いの? 彼結構カッコイイし、メイドの人たちに人気あるみたいよ。無愛想だけどよく働いてくれるって」
「・・・・・・・・彼の自由」
そこそこ反応らしいものはあるんだけどねぇ。今一歩たりないわね・・・、そうだ!
「タバサ、実はあたしねぇ、最近、ちょっと恋しちゃったのかもしれないの。聞いてくれる?」
私の話をすればもうちょっとは気にするようになる・・・・・はず? まぁいいわ。とりあえず私も色々話したいしね。だけど不思議ねぇ、なんでお喋りな私と無口なタバサとじゃ気なんて合うはずないのに、この子のそばにいると落ち着くのよねぇ。うーん? 私はそんなことを思いながらタバサに話をしていたら、
「あ! そうか。そうなんだわ。無口なのに、そばにいて苦痛じゃない・・・・・・。そんな相手はあなただけよ。だから、あたしはあなたが必要なの。なぜって、そんなの唯一無二だからよ。やっとわかったわ。恋人の代わりはいくらでもいるけど、あなたの代わりはいないってことね」
うん。なんだか納得したわ。私がそういい終るとタバサがやっと顔を向けて
「・・・・・・必要?」
そう言ってきた。もう、そんなの・・・
「あったりまえじゃない!」
私はそう言いながらタバサに抱きついた。タバサはしばらく私の顔を見ていたけど、また本に顔を向けた。そんなふうにタバサとじゃれあっていたら、タバサの頭にフクロウが留まりタバサは無言のまま足に付いた書簡を取り、読むと表情が冷たくなってスッと立ち上がった。
「ん? なに?どうしたの?」
「出かける」
「はい? 出かけるって、どこに?」
私は急に立ち上がったタバサに聞くが、あの子は何も答えずに行ってしまった。
「うーん。あの子たまにああやって授業サボって出かけるけど、いったいどこで何をしてるのかしら?」
ま、いいか。考えても仕方ないことだし。そういえば私何をタバサと話してたんだっけ?・・・・・・ダメだわ、思い出せない。まぁでも思い出せないってことはたいした事じゃ無いでしょ。
「あ、そうだ。今日ダーリンをあたしの部屋に招待しましょ! うん、決めた」
決めたら早速、もてなしの準備しなくちゃね。うふふふ、今夜が楽しみだわ。
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日常編を書いてみたら、何か変になった。