第三十一技 最強の本質、其は覇王の証
キリトSide
「バカな……!? 今の攻撃を…避けた、だと…」
ヒースクリフはありえないといった表情をしている。
確かにいまの攻撃は普通ならば避けることはできない。
この世界の常識に囚われていればなおさらだ。
なぜなら俺は剣を離して回避したのだ。
「驚いたのはこっちだ……。あんな速さの攻撃、最初の内に使われてたら俺が負けていたぞ。
そんな切り札を持ってたのかよ…」
俺はこんな風に喋っているが奴のあの異常な攻撃速度と止まったHPバーで、ある事の確信を予感めいた。
それを悟られないようにしているが内心ではヒヤヒヤしている。
「………まあ、そういうことだ。いまのは一度しか使えない技なのでね。正直、外してしまったのは痛手だよ…」
どうやら奴は俺が気付かなかったと思ったのか、それともそれさえも気付かれているのかは知らないが、
取り敢えずこの勝負中ではもう使う事は無いだろう。
なにせ、今度使えば確実に不審がられるはずだ。俺にも、会場の観客達にもだ。
「…ではキリト君、武器を取り直したまえ。仕切り直しといこうか」
「ヒースクリフ、一つだけいいか?」
「どうしたのかね?」
俺は奴にある提案を持ちかける。
この提案が飲まれれば俺の勝利の可能性は格段に上がる。
「俺が勝ってもギャラはいらない。そして、一日だけだが騎士団に協力してやる。
それを条件に武器を変えさせてもらいたい…」
「ふむ…。お得意の聖剣と魔剣でくるのかね?……いいだろう」
―――ざわざわざわざわ
奴が俺の提案を飲んだことで周囲にざわめきが広まった。
キリトSide Out
No Side
「ま、まさか、キリトの聖剣と魔剣がみられるのか!?」
「違うかもしれないぜ? あれはモンスターへの有効度は高いらしいけどな」
「なら、一体どんな武器を使うんだろう?」
「プレイヤー対戦用の武器を用意してるとか、かな?」
「なるほど、そうかもしれないな…」
「どのみちすごい武器じゃないかしら? 楽しみね」
以上が観客の声。
「キリトの奴、本気を出す気か?」
「どういうことよ、ハクヤ。キリトの最強武器は聖剣と魔剣じゃないの?」
ハクヤの一言にリズベットが疑問に思い、問いかけた。
「たしかに武器としてはその二本が最強でしょう…。ですが…」
「キリトが
「それって、どういう意味ですか…?」
ヴァルとシャインの言葉に、アスナは首を傾げた。
「アスナさん。それはいまからのキリト君をみて知ったほうがいいですよ」
「そうね。それでその後、彼から話を聞けばいいわ…」
「はい…」
アスナの疑問にティアとカノンが答え、彼女もここは引くことにした。
以上がキリトの仲間達の声。
No Side Out
キリトSide
俺は『エリュシデータ』と『ダークリパルサー』をアイテム欄の中にしまうと、新たに二振りの刀を装備した。
右手に深紅の『アシュラ』、左手に群青の『ハテン』をもつ。
俺は目を閉じて数秒間瞑想を行う。だんだんと周囲の声が聞こえなくなる。
目を開けると同時に俺は自分の中の『気』を呼び起こす。
それは斬撃を起こす『気』ではない。
俺はそういった『気』の会得はしていないし、会得していてもこの世界では使えない。
だが、本質の『気』は呼び起こす事ができるはずだ。
現に気配や殺気、視線などは感じ取ったり、放つことができる。ならば本質の『気』も呼び起こせるはず。
そして俺の中から『王』の気質の『気』、『覇気』が溢れ出した。
俺は周囲の空気が冷たく、重くなったのを感じた。
ざわめいていた観客は静まり返り、喋ることができないようだ。
俺は二振りの刀をいつもの剣のように持つのではなく、
右手の『アシュラ』を下段から上段にむけてもち、左手の『ハテン』は逆手にもって構える。
相対しているヒースクリフはなにが起きているのか理解ができていないようだ。
だが俺はそれでも戦いをやめない。
いや、やめられない……。
「構えろ、ヒースクリフ。俺に勝つのならば……」
俺の言葉に奴はハッとしてから呼吸を整え構えた。
「……『
キリトSide Out
To be continued……
後書きです。
この作品のキリトは自分オリジナルの武術を使います。
加えてキリトは『覇王』ですので・・・。
次回で決闘は終わりますが、オリジナルの剣術を使うキリトをお楽しみください。
それではまた・・・。
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第三十一話です。
決闘第二話でキリトが疑似本気を出します。
ですが今回は戦闘はなしですね、すいません。
それでは・・・。