~ボース市~
「ど、どうしよう……。このままだと逃がしちゃう!」
飛び去って行く竜を見たエステルは慌てた様子で言った。
「……俺はこれからあのデカブツを追跡する。お前らは軍が来るまで被害状況を確認してろや。」
「えっ……!?」
「アガット?」
アガットの指示にエステルとシェラザードは驚いた。
「後でまた連絡する!」
そしてエステル達の返事も聞かず、アガットは竜が去って行った方向を走って追って行った!
「アガットさん!?」
「ちょ、ちょっと!?」
アガットの行動にティータとエステルは驚いた。
「き、君たち!いい所にいてくれた!」
その時、市民の一人がエステル達に近づいて来た。
「頼む、手を貸してくれ!瓦礫の下敷きになった人や逃げ遅れた人がいるんだ!」
「なに!?」
「あ、あんですって!?」
市民の言葉を聞いたジンとエステルは驚いた。
(レーヴェ………どうしてこんな事を…………)
プリネは悲しそうな表情で俯いていた。
「プリネ!どうしたの!?早く逃げ遅れている人達を助けるわよ!」
「……………はい。ただ、私とリタさん、ツーヤは燃えている建物の消火活動と傷ついた市民の方達の手当てに廻ります!」
エステルの言葉に我に返ったプリネは頷いた後、リタとツーヤを見て言った。
「………そうだね。建物の消火をする為に、ここは冷却魔術を使える私達の出番だね。」
プリネの言葉を聞いたリタは頷いた。
「わかった!そっちはお願いするわ!ミント、貴女もプリネ達を手伝って!確か貴女も吹雪のドラゴンブレスが使えたわよね!?」
「う、うん!わかった!」
エステルの指示にミントは頷いた。
「みんな、行くわよ!」
そしてエステル達はプリネ達を残して、ボースマーケットに急いで向かった。
「私達も急いで、建物の消火をしましょう!」
「はい!」
「「うん!」」
そしてプリネ達は燃えている建物群に向かった。
「………かなり燃え広がっているね。一回で消せるといいんだけど……」
リタは次々と燃え広がっている建物群を見て、真剣な表情で呟いた後、魔術の詠唱を始めた。
「………パラスケヴァス!!」
そしてプリネはパラスケヴァスを召喚した!
「お願いします!貴方の水のブレスで、燃えている建物の消火の手伝いをしてください!」
「………………!」
プリネの頼みに頷いたパラスケヴァスは大きく息を吸った!
「ツーヤ!貴女は”竜化”して、水か吹雪のドラゴンブレスで消火してもらえるかしら!?確か貴女は”水竜”だったわよね!?」
「はい!お任せ下さい!!ハァァァァァァァァ……………………!!」
プリネの指示に頷いたツーヤは両手を空へと上げて身体全体にすざましい魔力を溜めて光に包まれ、そして!
「グオオオオオッ!!」
光が消えるとツーヤがいた場所には家屋ほどの大きさの青い竜――”竜化”したツーヤが現れた!
「ミント、先ほどエステルさんがおっしゃっていましたが、貴女も吹雪のドラゴンブレスが使えるのかしら?」
「うん。ミント、水属性が得意なツーヤちゃんみたいな威力はないけど、吹雪のドラゴンブレスが使えるから、ミントも”竜化”する!ハアアアアアアアアアア………………!!」
オーブメントを駆動させながらのプリネの疑問に答えたミントも”竜化”し、白銀の竜になった!
「行きます………!全てを凍てつかせ!コキュートス!!」
そしてプリネのアーツが発動し、アーツによって発生した吹雪や氷が燃え広がっている建物の火の威力を少しだけ弱め
「「氷金剛破砕撃 (ダイヤモンドアイスバースト)!!」」
さらにミントとツーヤはそれぞれすざましい吹雪のドラゴンブレスを吐いて、弱まっている火をさらに弱め
「大海に呑まれなさい!デネカの大海!!」
「…………………!」
リタが放った水の魔術とパラスケヴァスが放ったブレス――アクアブレスによって、燃え広がっていた建物の火は完全に鎮火した!その後プリネ達は火事によって傷ついた市民の手当てや、火事によって崩れた瓦礫に埋もれている市民の救助を始めた。
~ボースマーケット内~
「ひ、酷い……」
一方ボースマーケットに到着したエステル達はマーケット内の惨状に一瞬呆けた。
「……まずは、役割分担を決めなくちゃ!シェラ姉!クローゼとティータと一緒に逃げ遅れている人たちを誘導して!」
そして気を取り直したエステルはシェラザード、クローゼ、ティータに指示をした。
「ええ、分かったわ!姫様、ティータちゃん、西口の方に向かうわよ!」
「はい!」
「わ、わかりましたっ!」
エステルの指示に頷いたシェラザード達は行動を開始した。
「………パズモ、永恒!!」
さらにエステルはパズモとサエラブを召喚した!
「パズモは他にも瓦礫にはさまれている人がいないか確かめて、それでもしいたら、あたしに知らせて!それと天井にも気を配って、もしシェラ姉たちが誘導している人達に瓦礫が落ちてきたら、魔術で破壊して!」
(わかったわ!)
「永恒はシェラ姉たちが誘導している人達の中に歩けない人や子供がいたら、背中に乗せて運んで!」
(承知!)
エステルの指示に頷いたパズモとサエラブもそれぞれ行動を開始した。
「ジンさん、オリビエ!あたしたちは瓦礫の撤去を手伝いましょ!」
「おお!」
「フッ、了解だ。」
そしてエステル、ジン、オリビエも行動を開始した!
「お願い!返事をしてちょうだい!」
メイベルは瓦礫の下にいる人物に悲痛な表情で叫んだ。
「くっ……駄目だ……」
「僕たちだけの力じゃ……」
市民達が瓦礫をどけようとしたがビクともしなかった。
「メイベル市長!」
「き、君たちは……!」
「エ、エステルさん!」
そこにエステル達が近づいて来た!
「手伝いに来たわ!誰か下にいるのね!?」
「リ、リラが……。リラがわたくしをかばってこの瓦礫の下に……!」
「!!!」
メイベルの説明を聞いたエステルは驚いた。
「このくらいだったら1人で持ち上げられるだろう。ちょいとそこから離れてくれ。」
「あ、ああ……」
「た、頼みます。」
ジンの言葉に頷いた市民達は瓦礫から離れ、そしてジンは瓦礫の下に手を入れた。
「……フンッ!」
そしてジンは瓦礫を持ち上げた!
「リラ!?」
瓦礫の下にいたリラを見つけたメイベルは声を上げた。
「う……あ……。……お嬢……さま……」
所々傷を負い、血を流しているリラはメイベルの姿を見て、安堵の表情をした後、気絶した。
「おお、生きてるぞ!」
「ああ、リラ!!」
「オリビエ!リラさんを運ぶのを手伝って!」
「フッ、任せておきたまえ。」
そしてエステルはオリビエと協力して、リラを瓦礫から少し離れた場所に運んだ。
「早く治療しないと……!テトリ!ニル!」
リラの状態を見たエステルはテトリとニルを召喚した!
「2人はリラさんに治癒魔術をお願い!」
「わかりましたわ!………癒しの息吹!!」
「はい!……大地の恵み!!」
エステルの指示に頷いたニルとテトリはリラに治癒魔術をかけ始めた。
その後エステル達は分担して市民達をボースマーケットから非難や手当てをした後、報告の為にギルドに向かった…………
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第261話