No.465195

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 256

soranoさん

第256話


今回のBGMはVERITAの”それでも生きる”です♪

2012-08-05 01:30:17 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1362   閲覧ユーザー数:1262

~マルーダ城・バルコニー~

 

「……こんな所で何をやっている?お前にとっては滅多に体験できないパーティーだぞ?」

「………あなた。エステルさんにとって今日は色々ありましたから、疲れて1人になりたい時もありますよ。」

なんと近付いて来たのはリウイとイリーナだった。

「あ……リウイ………それにイリーナ様も。」

リウイ達に気付いたエステルは微笑みの表情で2人を見ていた。

「?俺達がどうかしたか?」

エステルの微笑みを見たリウイは不思議そうな表情で尋ねた。

「えへへ……やっぱり、2人はお似合いよね!イリーナ様が目覚めてよかったね!」

「………何故、その事を………?2人の記憶ではその事は知らないはずだが。」

「武術大会でカーリアンと戦った時、あたしが”ラピス”になった時、カーリアンが教えてくれたもん。」

「………全く………あれほど機密だと言ったのに、口の軽い奴だな………」

「フフ、いいではないですか。ラピス姫達ならば、教えてもいいと思ったんではないですか?」

エステルの説明を聞いたリウイは呆れて溜息を吐いたが、イリーナは優しい微笑みをリウイに向けて言った。そしてイリーナは改めてエステルを見て、微笑んだ。

「……こうして貴女と話すのは初めてですね、エステルさん。もう私の事は知っているとは思いますが、改めて自己紹介をさせて頂きます、私の名はイリーナ。イリーナ・マーシルン。……リウイの正妃です。もう一つの名はイリーナ・マグダエルです。」

「は、初めまして!エステル・ブライトです!えっと……もう一つの名前ってイリーナ様が転生した人の名前ですか?」

イリーナに微笑まれたエステルは緊張した様子で答えた後、尋ねた。

「ええ。偶然にも私と同じ名前なんです。フフ……けどそのお陰であなたは幼い”私”があなたと出会った時、”私”だと気付いてくれたんでしょう?」

エステルの疑問にイリーナは頷いた後、上品に笑ってリウイを見た。

「…………別に名前が同じだからという理由ではない。あの時、感じた雰囲気から”イリーナ”があの時出会った少女に眠っていると気付いただけだ。」

「えへへ……それだけリウイがイリーナ様の事を思っている証拠ね!よかったね、イリーナ様!」

リウイの答えを知ったエステルは微笑んだ後、イリーナに笑顔を向けた。

「フフ、ありがとう、エステルさん。……もし、よければ私の事も気軽な呼び方にしてくれないかしら?”私”が目覚めてから気軽な呼び方をしてくれるのはツーヤぐらいですもの。貴女とは貴女がリウイに接しているように気安く接してもらいたいですから………」

「えっと…………じゃあ、イリーナさん!」

イリーナにある事を頼まれたエステルは考えた後、ある呼び方でイリーナの名を呼んだ。

「ありがとう。…………フフ、私が”さん”付けでリウイが呼び捨て。そしてペテレーネが”聖女様”だっていう人は貴女ぐらいね。」

イリーナは上品に笑いながら答えた後、凛とした表情でエステルを見た。

 

「エステルさん……”魔”に堕ちようとしたリウイを止めてくれて本当にありがとう……貴女が止めてくれたお陰で、今のリウイがいるのですから……」

「あ、あはは……そんな大した事はしたつもりではなかったんだけどな………そう言えば、あの時のリウイ、かなり怒っていたけど、やっぱりイリーナさんが眠らされたからあれだけ怒っていたんでしょ?プリネだけなら、そんなに怒るような気がしないし。」

イリーナにお礼を言われたエステルは恥ずかしそうな表情で答えた後、リウイに尋ねた。

「………………………………ああ。また、”あの時”のようにイリーナを失うのかと考えてしまって……な……………」

エステルに尋ねられたリウイは少しの間黙っていたが、やがて溜息を吐いて答えた。

「……あなた。私の事を思ってくれるのは嬉しいですが、復讐心に狩られて、殺戮者になるのだけはやめて下さい……そんなの、本当のあなたではありませんし………私達が誓った”理想”も遠のいてしまいますし………」

「……わかっている。お前と誓った理想がようやく実現できたのだ。俺の為にも………そしてお前の為にも、もうそんな真似はしない。」

イリーナに静かに問いかけられたリウイは重々しく頷いた。

「えへへ……よかった。」

2人の様子を見たエステルは微笑ましそうに2人を見ていた。

「………エステル・ブライト。以前からお前には聞きたい事があった。」

「ん?何??」

静かに問いかけて来たリウイの言葉にエステルは尋ねた。

「…………何故、お前は俺達”闇夜の眷属”を”友”になろうとし、俺達に歩み寄ろうとする?普通の人間なら、俺達の事を畏怖、或るいは敵意を持つのが普通だ。なのになぜお前は最初からそんな感情を持たず、普通の人間に接するような態度で俺達に歩み寄る?」

「そんなの、決まっているじゃない!同じ”人”だからよ!人間とか闇夜の眷属とかそんなの関係ないわ!みんな同じ”人”なんだから!」

「「…………………………」」

エステルの答えを聞いたリウイとイリーナは驚いた表情をしていたが

「フッ………」

「フフ………」

やがて2人はそれぞれ口元に笑みを浮かべた。

「??2人とも、どうしたの?あたし、何かおかしなことを言ったかな??」

2人の様子を見たエステルは首を傾げた。

「いや……………幼い頃からそこまでの考えを持っているとは思わなくてな………プリネ達も本当によい友を見つけたものだ………」

「フフ、そうですね。……世界中の人達がエステルさんと同じ考えを持つ方達ばかりなら、争いもなくなるんですけどね………」

「あ、あはは……言いすぎよ~。」

リウイとイリーナの言葉にエステルは照れながら答えた。

 

「~~~~~~♪」

~~~~~~~~♪

 

その時誰かの歌声と共に音楽が聞こえて来た。

「あれ………この曲って………」

聞き覚えのある曲に気付いたエステルは音楽や歌声が聞こえて来た方向を見た。

 

「~~~~~~♪」

~~~~~~~~♪

~~~~~~~~♪

~~~~~~~~♪

~~~~~~~~♪

そこではエリザスレインが玲瓏な歌声で『星の在り処』を歌い、オリビエはピアノで、アムドシアスは竪琴で、ツーヤがフルートで、そしてプリネがヴァイオリンで『星の在り処』を合奏していた。

「ハハ……エステルの仲間達が歌える人を捜していた時、俺がエリザスレインを紹介したら『なんで私が』って最初は文句を言っていたけど、エリザスレイン、真面目に歌っているね。……さすがは伝説になっているだけあって、素晴らしい歌声だね。」

「ええ………人間、闇夜の眷属、魔神、竜、そして天使の合奏………これも”共存”しているからこそ、その身に実感できるすばらしい芸術ですね………」

エリザスレイン達の合奏を聞いていたウィルは笑い、セラウィはウィルに寄り添って微笑んでいた。そしてしばらくすると、合奏は終わった。

 

パチパチパチパチパチ…………!

 

合奏が終わると大きな拍手がエリザスレイン達に向けられた。

「フフ、まさに聞きほれるような歌声だね、エンジェル?」

大きな拍手の中、オリビエは拍手に酔いしれながらエリザスレインを見た。

「……これでも私の歌声は伝説として語り継がれるほどの歌声よ。当然の評価ね。」

オリビエに見られたエリザスレインは澄ました表情で答えた。

「他種族が協力し合い、演奏する合奏………ウム!誰も再現した事がない、素晴らしい音楽にして芸術!その中に芸術を愛する魔神たる我がいて当然だな!」

「フフ……こんな素晴らしい舞台に参加できるとは思いませんでした………」

「はい。マスターのようになる為に楽器を練習していましたが、まさか最初の本番がこんな凄い舞台で演奏する事になるとは夢にも思いませんでした……」

アムドシアスは自己陶酔になり、プリネは微笑み、ツーヤは苦笑していた。

「フム……せっかく、こんなにも素晴らしい役者が揃ったんだ。まさか一曲だけで終わらせようだなんて、思ってないよね♪」

「当然だ!」

「……はい!」

「フフ……私でよければ皆さんの気が済むまでお付き合いしますよ。」

「ハア……まあ、いいわ。人間達に語り継がれる私の歌声………闇夜の眷属達にも特別に聞かせてあげるわ。」

オリビエの言葉にアムドシアスやツーヤは大きく頷き、プリネは微笑み、エリザスレインは溜息を吐いた後、口元に笑みを浮かべて答えた。

「フフ……得とご覧あれ!他種族が協力し合う最高のハーモニーを!」

そしてオリビエ達は楽譜を見ながら別の曲の合奏を始めた。

 

「うわ~………凄い!!光と闇の種族が協力し合って、合奏するなんて………!」

オリビエ達の演奏を見ていたエステルは目を輝かせた。

「フフ……あれこそが私達が目指した理想によって実現した物の一つですね、あなた。」

「………そうだな。」

イリーナの微笑みにリウイは口元に笑みを浮かべて頷いた。

「……リウイ。」

「?どうした。改まって。」

エステルに静かに見つめられたリウイは同じように見つめ返し、尋ねた。

「イリーナさんが蘇った事だし………ラピスとリンの思い………今、伝えるね。」

「…………聞こう。」

エステルの話を聞いたリウイは静かな表情で促した。そしてエステルは2人の力を同時に解放し、先端に金が混じった黒髪、瞳は翡翠と紫紺のオッドアイになり、静かに言った。

「……『お2人とも末永く、お幸せに。』………これが2人の今の思いよ。」

「………ラピス姫………………リン姫……………」

「………………………………そうか。……………2人の思い…………確かに受け取った。」

エステルの言葉を聞いたイリーナは涙を流し、リウイは目を閉じ、静かな笑みを浮かべて頷いた。

「じゃ、伝えたからね!2人の理想が世界にも広げる為に、あたしはあたしの出来る事で頑張るわ!」

「……ありがとう、エステルさん。」

「………”魔”に堕ちようとした俺を止めた事……2人の思いを伝えてくれた事………そして俺達の理想を理解する新たな同志となってくれた事………礼を言う。………戦友(とも)よ。」

「えへへ………じゃ、あたしは他の人達と話してくるわ!」

エステルは太陽が輝くような眩しい笑顔をリウイ達に見せた後、リウイ達に背を向けて、どこかに向かった。

(陛下。私達はこの娘と共に貴方達を見守っています………)

(……いつか、陛下達と”あの時”のように肩を並べて戦う日が、また来る事を楽しみにしているぞ……)

「…………………!!」

去っていくエステルの背中から、ラピスとリンの微笑みが一瞬見えたリウイは目を見開いて驚いた。

「あなた?どうしたのですか?」

「いや………………何でもない。………そろそろ俺達も広間に戻るぞ。」

「はい、あなた。」

そしてリウイとイリーナも広間に戻って行った。その後、パーティーを楽しんだエステル達はマルーダ城に泊まり、そして翌日リウイ達に見送られ、元の世界に戻った。元の世界に戻ったエステル達は次なる目的地、ボースへ旅立つ用意の為にロレントに1日だけ滞在し、その翌日……………

 

 

 

 


 
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