No.465183

IS《インフィニット・ストラトス》 SEEDを持つ者達 第6話

Lさん

第6話です。
セシリア戦の為、キラ達の出番はほとんどありません。

プロローグ
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2012-08-05 01:18:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:11304   閲覧ユーザー数:10976

昼休み、千冬に呼び出された一夏は、生徒指導室に来ていた。

 

「織斑、お前のISだが、準備に時間が掛かるという事で学園から専用機が受領される事になった」

「専用機って、オルコットみたいな国家の代表候補生が持つ事を許されるっていうあれですか?」

「そうだ、だが、そのISだがな、届くのは一週間後、つまりは決闘の日だ、初期化(フォーマット)最適化(フィッティング)は試合中にしてもらう」

「それって、試合中にISを俺に合わせて調整するって事ですか?」

「そうだ、通常は動かさずにするのだが、事情が事情だからな」

 

これは、一夏にとってかなり厳しい試合になるのは確実である。

初期設定でしかも一夏用に調整されていない機体で代表候補生と戦うなど自殺行為に近い。

だが、それでもやるしかない、一夏はそう覚悟するのであった。

 

 

生徒指導室を出た、一夏は昼食を摂るため食堂に向かった。

そこで同じく昼食を摂ろうとしていた箒とキラ達と出会い一緒に昼食を摂る事になった。

 

「一夏はISの連続稼働時間はどれ位?」

「入試の時だけだから……30分も稼動させてない気がする、20分位か?」

「それだとIS連続稼働時間でオルコットに負けているな」

 

代表候補生ともなればIS連続稼働時間が何百時間と多い。

 

「キラ、シン、ルナマリア、もし良ければISの訓練とかしてくれないか?」

「良いけど、教師である僕達が一夏だけを見るのは他の人に悪いし……それに一夏の専用機が届くのは一週間後だよ、学園の訓練機も打鉄やラファール・リヴァイヴがあるけど、一年のこの時期だと貸し出しに時間が掛かるから」

「な、なら私が鍛えてやる!」

 

如何するかと悩んでいたら、箒が鍛えると言い出した。

 

「良いかも知れんな、一夏は剣道をやっているようだし、箒に相手をしてもらうのも一つだな」

「シン先生の言うとおりだ! 早速、今日の放課後に剣道場に来い一夏!」

 

剣道大会に優勝した箒と相手する事で一夏の腕を上げておくのもいいかもしれない。

 

「分かった、お願いするよ、箒」

「任せろ、私がみっちり鍛え上げてやる!」

 

一夏に頼まれた事を嬉しく感じる箒である。

それを見ていたルナマリアはニヤニヤしていた。

 

「僕達も少しだけなら訓練をしてあげるよ」

「本当か助かるぜ、キラ」

「その代わり、無様に負けたりとかするなよ」

「ああ、やるからには絶対に勝つ!」

 

決闘までの一週間、一夏は放課後に箒との剣道の稽古、キラ達によるISの訓練を受けセシリアの決闘に備えるのであった。

 

 

それから一週間後

第三アリーナのAピットでは、男性版ISスーツを着ている一夏と箒が待機していた。

 

「織斑君、織斑君!」

 

管制室に居る真耶の声がピット内に響いた。

 

「来ました、織斑君の専用IS!」

 

音を立てながらピット搬入口が開かれる。

重い駆動音を響かせながらゆっくりとその中のものを晒していく。

そして、扉の先には……灰色に近い白の装甲を持つISが居た。

 

「これが織斑君専用IS白式です」

「白式……これが、俺の専用機……」

 

一夏は白式の装甲に手を置いてみた。

 

「どうした……?」

 

質問してくる箒の声も聞こえない。

というよりも耳に入っているが、一夏の頭にまでは到達していない。

 

(馴染む……理解出来る……これが何なのか、何の為にあるのか……解る……)

「すぐに装着しろ、アリーナを使用出来る時間は限られているからな」

「……はい」

 

千冬の鶴の一言で漸く思考の海から引き上げられた一夏はコックピットに腰を下ろした。

 

「そうだ、座る感じで良い。後はシステムが最適化する」

 

白式の装甲が展開し、一夏と一体化する。

まるで最初から一夏の体に合ったかのように。

一夏がISを装着し終わったのを確認し、千冬が声をかける。流石に自分の弟の初戦と言うこともあってか、口調がIS学園の教師ではなく一夏の姉のそれに戻っている。

 

「大丈夫、千冬姉。いける。」

 

それに一夏が威勢良く肯定の言葉で返し、千冬もそうかと答える。

そして一夏は今度は箒に向けて言う。

 

「箒」

「な、なんだ。」

 

いつもと違う声色の一夏に箒が僅かに動揺しながら返事をかえす。

それを聞いた一夏が後ろを振り返る。

 

「行ってくる。」

 

それは戦いへと赴く男の表情だった。

 

「……ああ、勝ってこい。」

 

それを見た箒はしっかりと返事を返す。

それを聞いて一夏は頷き、足を進める。カタパルトに脚部を固定し、ゲートが開き全ての準備が整った。

 

『進路クリアー。システムオールグリーン、カタパルトの権限を織斑君に譲渡、織斑君、発進どうぞ!』

「白式、行くぜ!」

 

その言葉と共に白式を纏った一夏はカタパルトによって押し出され、アリーナへ発進していった。

既にアリーナに出ていた青い機体……イギリスの第三世代型IS、ブルーティアーズに乗るセシリアが一夏を小馬鹿にした態度していた。

 

「あら、逃げずに来ましたのね」

 

ブルーティアーズの主砲であるライフル、スターライトmkⅢを白式に向けて構えていた。

 

「最後のチャンスをあげますわ」

「チャンスって?」

「わたくしが一方的な勝利を得るのは自明の理、今泣いて謝れば、許してあげない事もなくってよ」

「そういうのはチャンスとは言わないな」

「そう? 残念ですわ、それなら……お別れですわね!」

 

構えたスターライトmkⅢの銃口から、一直線にレーザーが発射されると同時に試合開始の合図が出た。

一夏はレーザーをギリギリで避けるが左ショルダーアーマーに掠った、その砲撃を文字通り引き金にして、セシリアのレーザーによる連続砲撃が始まった。

 

「装備は!」

 

武器は無いか調べると、ウィンドー画面に近接ブレードが表示された。

 

「コレだけか!? 無いよりはマシか!」

 

一夏は近接ブレードを展開しながら、セシリアの砲撃をかわしていく。

 

「遠距離射撃型のわたくしに近距離格闘装備で挑もう何て、笑止ですわ!」

 

スターライトmkⅢを乱射するが、一夏はレーザーを必至に避けていくが、それでも僅かに掠りシールドエネルギーが減少していた。

 

 

「織斑君、やはり苦戦していますね」

 

管制室から一夏とセシリアの試合を見ている真耶が呟いた。

無理もない、一夏は入試の時しかISを動かしていない。

それに比べ代表候補生であるセシリアはIS稼働時間が何百時間と多い。

一夏が苦戦するのも無理は無い。

 

(だけど、まだ勝負は分からない)

 

キラは試合を行う前に一夏にある事を伝えていた。

それは、一次移行(ファースト・シフト)するまで逃げ切れというものだ。

おそらく、セシリアは白式が初期設定のままだとは思っていない、そこに一次移行(ファースト・シフト)行われれば隙が生まれる筈、その僅かな隙に倒すというものだ。

だが、ISの操縦は素人である一夏がセシリアの攻撃を避け続けられるかが問題である。

 

 

試合が始まってから既に27分が経過しようとしていた。

 

「このブルーティアーズを前にして、初見でこうも戦えたのはあなたが初めてですわね、褒めて差し上げますわ!」

「そりゃ、どうも」

 

一次移行(ファースト・シフト)が行われない事に苛立ちを覚え始めた一夏、そこにセシリアが動いた。

 

「ではそろそろ閉幕(フィナーレ)と参りましょう」

 

そう言うと、ブルーティアーズの腰部から四基のビットを射出した。

そして、一夏の周りを飛び回りビットからレーザーが放たれる。

放たれるレーザーを一夏は辛うじて回避、防御するが、防御した瞬間をセシリアが突いた。

 

「左足、頂きますわ!」

 

スターライトmkⅢのレーザーが放たれる、しかし、一夏は近接ブレードで弾き飛ばし直撃を免れた。

このままでは負けると感じた一夏はシールドエネルギーを削られる覚悟でビットから放たれるレーザーを超高速回避をしながらセシリアに接近、近接ブレードを振り下ろした。

しかし、セシリアは距離を取り回避する。

 

「無茶苦茶しますわね!! でも無駄な足掻きですわ!」

 

セシリアは毒づきながらも4基のブルーティアーズを操作し一夏を追い払おうとする。

しかし、一夏はビットの攻撃を回避しながらビットを破壊する。

 

「なっ!?」

「分かったぜ! この兵器は毎回命令を送らないと動かない、しかもその時、お前はそれ以外の攻撃が出来ない、制御に意識を集中させているからだ、そうだろ?」

 

言葉尻こその問いかけだったが一夏のその自信に満ちた口調と表情は、既に確信しているに違いない。

いや、既に一夏は確信していた。

セシリアも、致命的な弱点を悟らせないように戦術を組んでいた。

だが、一夏は気がついた。驚異的の戦闘センスが垣間見た瞬間だった。

 

「距離を詰めれば、こっちが有利だ!」

 

全てのビットを切り落とし、セシリアに迫った時だった。

セシリアは口元を吊り上げ静かに笑う。

 

「掛かりましたわね」

「何!?」

「4基だけじゃありませんのよ?」

 

その瞬間、腰部にあるスカートが動きミサイル型の誘導兵器が発射された。

まさか隠しだまを用意していたとは思っていなかった一夏はミサイルの追尾から逃れようとするが、避けきれずミサイルが着弾した。

爆煙に消える一夏を見て、モニタールームにいた箒が悲鳴にも似た声をあげる。

千冬と真耶、キラ、シン、ルナマリアも同時にモニターを注視するが

 

「……ふん、機体に救われたな、馬鹿者め」

「えっ?」

「どうやら、間に合ったようですね」

 

まだわずかに残っていた煙は引き裂かれた。

そこに居たのは、一次移行(ファースト・シフト)を終えた白式の姿だった。

 

「ま、まさか……一次移行(ファースト・シフト)!? あ、あなた、今まで初期設定だけの機体で戦ってたっていうの!?」

「ああ、そうだ……これでやっと、この機体は俺専用になったわけだ」

 

一夏は新たにモニターに映った武器情報を見る。

そこには"雪片弐型"と表示された近接ブレードだった。

 

「雪片って……千冬姉が使ってた武器だよな……」

 

雪片はかつて一夏の姉、千冬が世界大会で優勝した時に使っていた最強の剣である。

その後を継ぐ剣が今、一夏の手にあった。

 

「俺は世界で最高の姉さんを持ったよ」

 

一夏がそう言うと雪片弐型が変形し、青白い光の刃が現れた。

 

「でもそろそろ、守られるだけの関係は終わりにしなくちゃな……これからは俺も、俺の大切な人を守る」

 

どこか遠いところを見ているような目をしていた一夏だったが、今度はセシリアを真っ直ぐ見据える。

今まで以上に腹を決め、自らの進むべきところだけを真っ直ぐ見る一夏の表情。

 

「……は? あなた、何を言って」

「とりあえずは、千冬姉の名前を守るさ! 弟が不出来では、格好が付かないからな」

 

誰にでもなく、自分に言い聞かせるように言う一夏。

それに対して痺れを切らせたセシリアが仕掛けた。

 

「ああもう、面倒ですわ!!」

 

ミサイルで仕掛けるが、初期設定の状態でもブルー・ティアーズの砲撃を避けきった一夏にとって、一次移行(ファースト・シフト)を終え一夏専用にフォーマットされた白式を駆る一夏は、それまでよりも素早く移動する。

 

「見える!」

 

ミサイルを青白く光る刃ですれ違いざまに振るうと、ミサイルが真一文字に両断された。

続けざまに先ほどよりも圧倒的に早く安定した加速でセシリアへ肉薄する。 

 

「おおおおっ!!」

 

気合一閃。振りぬいた斬撃がセシリアを捉えた。

セシリアは避けきれないとスターライトmkⅢを盾代わりに受けようとするが、一夏の斬撃の前にスターライトmkⅢは両断されてしまった。

 

「これで終わりだ!!」

 

雪片を横一線に振るう一夏、もう身を守る物は何もないセシリア、そして、一夏の斬撃を受けシールドエネルギーが0になった。

そこに決着を告げるブザーが鳴り響いた。

 

『試合終了。この試合は引き分け』

 

アナウンスが流れて、場所を問わずこの試合を見ていた人間が状況を把握しきれずに一様にぽかんとしていたのだった。


 
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