No.465103

~貴方の笑顔のために~ Episode 5 私が求めるもの

白雷さん

蜀の反乱がおこっていると知り、駆けつける一刀。彼は間に合うことができるのか、そしてむかう途中彼が目にしたものとは

2012-08-04 23:43:34 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:13788   閲覧ユーザー数:11181

~一刀視点~

 

蜀にむかう途中俺は、何人かの噂話を耳にした。

そのどれもが、蜀の王、劉備に敬意、感謝を表したものであり、

そして何人かは少し成都の様子が変だとそうつぶやいている。

 

劉備、玄徳か。俺も何度かはあったことがある。

綺麗な桃色の髪をした女の子。華琳はいつも彼女が本当の王であるのか

そう、いっていたっけ・・

でも、華琳が確か最後に、あの夜に、彼女について何かをいっていた

気がする。

それは、なんだったんだろう・・・

 

そして、やはり、反乱は本当であったか。

で、あるならば早く向かわなければ。

 

蜀が魏にたすけを求めるとしても、今、三国はひとつの国ではなく同盟というかたちをとtっている。だから、助けを必要ならばちゃんとした将が会いにいかなければいけない。

そんなことでは間に合わない。

 

俺は、いち早く白帝城へ向かうため、馬を走らせた。

 

 

白帝城へあと約十里地点。

 

な、なんだこれは。周りから漂ってくる嫌な臭い。これはまさしく死体の臭い。

いや、まだ死んでからあまりたっていない血の臭いだ。

 

辺りを見渡すと蜀の兵が何人か倒れている。

これは、ひどい。 傷口から見るに、毒矢で一発、動けなかくなったところで

とどめというところか。

間に合わなかったのか、俺は・・

 

目の前の森が燃えている。  やはり辛い。

人が死んでいるのを、仲間の友が死んでいるのを見るのは。

覚悟はしていた。今までは華琳の隣にいればよかった。

俺は、彼女に全てをおしつけていたのかもしれないな。

それでも、今は俺がやらなければいけない。賊みたいに、

咎めではいけないんだ。

これは戦だ。

 

そう言い聞かせるが自分の拳は震えている。

やっぱり、怖いんだな俺は。

 

“ドサッ”

 

そんなことを考えている中、森の中から矢をおってなんとか歩いてきた

女の子がいる。

出血はひどく、毒矢があたっている。

すごい、生命力だと思いつつも、俺は彼女のそばにかけていった。

 

「・・・ちょっと、そこの君、大丈夫?」

 

「・・・・・」

 

「ねぇってば!」

 

「・・・・・」

 

いくら呼びかけても返事がない。

 

 

彼女が大切に抱きかかえている犬・・・赤い毛並みのコ―ギ―が

かろうじて起き上がり、ペロペロと彼女の傷口をなめる

 

「・・・セキト」

 

なめられた彼女はそうつぶやいた。

 

セキト・・か

 

とりあえず目を見て話そうと思った俺は

座っている彼女に合わせて腰を下げる。

 

「・・・・っっ!!」

 

彼女の顔を見た俺は驚きの表情に変わる。

 

「・・・・っ!呂布ちゃん!?」

 

そう、それはあの、天下無双とまでいわれた呂布奉先であった。

しかし、なぜだ。呂布ともなるものがこんなにまでなるなんて、

それほどまでに蜀はもう大変なのか・・

それとも、彼女はなんかしらの計略にかかったのか。

どっちにしろここにいては危ない。

どこか離れた安全なところへ。

 

そう思った俺は彼女の腕を掴む。しかし

 

「・・・・や」

 

と彼女は言い、俺の手を振り払った

 

「・・・恋・・たぶん、ここでこうなるの、が運命、だから」

 

「運命・・・それってどういうこと?」

 

「・・」

 

「話して、くれないのか?」

 

ブルブルと呂布は首を振る。

 

「お兄さん、いい人、多分。 だからいい。」

 

そういう呂布はすこし息が荒い。毒のせいだろうか・・

 

「恋、もともと、しぬはずだった。 それが戦い。 でも桃香がたすけてくれた。

家族っていってくれた。  恋、うれしかった。」

 

「そっか」

 

呂布、その存在はあまりにも恐怖となり、歴史上でも裏切りの代名詞として

言われている。

 

「恋はたたかうひと。  でも、桃香はいきていいっていってくれた。」

 

「あの、時、死んでもよかった」

 

「・・・」

 

呂布はこんなふうに考えていたのか・

 

「それでも、生きたいっておもっちゃったから、いきていいんだって

 しっちゃったから・・恋・・」

 

「この前、桃香から手紙がきて、嬉しかった。恋はなんか、みんなと

 ちがうっておもってたから」

 

そうか、それが、きっと一人でここへきた理由なんだろう。

罠。その残酷な一文字

それでも、呂布なら知っていたはずだ、それが罠だってことに。

そして気づかなかったとしても、こんなに怪我を負わないはずだ。

 

「恋、ほんとはしってた・・手紙がうそだって、」

 

「だけど、だけどね。恋うれしかった。それでもうれしかった。

 みんなといっしょになれるって思ったから」

 

「だから、きちゃった」

 

そうやって涙を流しながら辛そうに微笑む彼女の姿を見た俺も、

どうしようもなく辛かった。

そう思って、なにかいいたいって、そう考えていたけど、そんな時

呂布が顔をあげて空をみながらいった。

 

「これが、わたしの運命だったのかもしれない」

 

「ほんとちょっとの夢」

 

そうか、彼女にとって劉備たちの関係は本当に大切なものだったんだろう。

だから、最後までいい関係で終わりたい。

希望が現実に砕かれたくない、そう思ったのかもしれない。

彼女が一人すごした時間はそこまで彼女を変えてしまった

のかもしれない。

 

俺は知らなかった。なんでなんだろうと。考える時間もなかったのかもしれない。

けど、俺の言葉は涙に変わり、呂布を抱きしめていた。

 

「・・・??なにか、恋した?」

 

「ううん、そうじゃない、そうじゃないんだ。」

 

 

“ぎゅっ”

 

 

俺はさらに力強く彼女を抱きしめた。

彼女の希望が本当のものだって気づかせてあげたくて。

もっと周りに頼っていいんだって。

もっと自分を彼女に大切にして欲しくて・・・

 

「・・・・ん?」

 

「君は一人じゃない」

 

そう呂布がもつ圧倒的な武。それがきっと彼女から人が遠ざかる

理由だったんだろう・・・こんな優しい子なのに・・・。

 

俺は・・そう。 一人じゃだめなんだ。

俺でよければ彼女を支えたい。一人の人として。

 

「君は一人じゃない・・・一人じゃないんだ・・・

 俺が君の家族になって君を守るから」

 

俺はいつのまにかそんなことを言っていた。

 

「・・・恋の家族?」

 

「うん」

 

一刀は彼女の目をしっかりと見て力強く頷いた。

 

「・・・恋、ほんとうは悲しかった。辛かった。でも

 泣いちゃいけないって、そうずっとおもってた。 

 ・・・でも泣いていいの?」

 

「悲しいときは泣けばいいんだ。君はもう守るだけじゃないんだから・・・

 だから、死ぬことを運命なんて思わないでくれ。

 俺は君の家族になりたい、俺じゃだめかな?」

 

「・・・(フルフル)」

 

「ははっ・・・そっか」

 

「じゃあいこっか、呂布ちゃん」

 

その場を離れるために俺は立ち上がって、彼女に手を伸ばした

 

「・・・恋」

 

「えーっと、それって真名、だよね・・・いいの?」

 

「・・・ん。恋、にぃにぃと家族」

 

にぃにぃ・・兄のことか。 そっかそっか。

 

すこし照れながら家族になったのだからと

自分の決意を、ちゃんとした心をみせたいと思い

仮面をはずす一刀。

 

顔を知っていたのか、恋は少し驚く

 

「俺は北郷一刀っていうんだ・・・

 でもちょっと訳があって今はこの恰好をしてる。

 だから、えーっとその・・・」

 

「・・・呂」

 

と恋がつぶやく

 

「・・・恋、呂布・・・字、奉先・・・だからにぃにぃも呂」

 

いきなりのことにに驚いた一刀であったが家族になると

決めたんだからと思い、

 

「それじゃあ、俺の性は呂、名は白、字は乱舞」

 

「・・・ん、 えっと、真名、は?」

 

真名、この世界において命の次に大切とも言える名。

俺は・・・

 

「恋、それがどんなに大切かもわかってる。

 だからこそ、恋、俺はきみにつけてほしい。」

 

「恋に?」

 

「お願いだ」

 

「・・・刃、にい」

 

「剣は、人を守るためのもの。そして優しいもの。 だからにいにいは刃。

 だめ、かな?」

 

「刃、か。  そう、だな」

 

剣、確かにそこには色々な思いや覚悟が詰まっている。

俺に背負える名前なのだろうか?

いや、それでも妹からもらった名前。背負ってみせる!

 

「ありがとう、そしてよろしくな、恋」

 

「・・・ん」

 

そううなずくと恋は安心したのか気を失ってしまった。

毒のせいもあるのだろう。

体がだんだんと弱りかけている・・

 

それでも、こんなときのための俺の30年だ。

今の俺なら大丈夫。

最初に駆け寄った時には恋に応急処置をしたが、

少し休める場所でもう少しやったほうがいいな。

 

 

 

 

 

そうして、一刀はそのばで軽く氣の治療を施し、恋を担ぎ、森の中、

安全なところへかけていった。

 

恋、俺は必ず、ずっとそばにいるから・・

 

 

呂奉先、その武は天下無双とうたわれ、

関羽、張飛、趙雲相手にも圧倒的な強さを誇る。

その頂に立つ彼女はその武がゆえに寂しく、

“隣に立つもの”をもとめていた。

 

そして今、彼女はその存在を手に入れた。

 

先ほどまでの辛い彼女の表情はなくなり、一刀に担がれている彼女は

幸せそうな顔をしていた。

 


 
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