No.465017

新世紀エヴァンゲリオン~補完、祝福の後~

Qを目前に控えテンションが上がってしまい、勢いだけで書いてしまいました。これから、ぼちぼち続けていこうと思いますので、どうかよろしくお願いします!  あと、設定の矛盾や間違いは広い心でお許しくださいませ。  基本的に新劇場版の世界観、それにテレビシリーズ、をミックスした世界観でやっていこうと思います。

2012-08-04 21:54:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1292   閲覧ユーザー数:1255

 

 全ての使徒を倒した。ゼーレの人類補完計画を阻止した。それで、世界は何事も無かったかのように平和になって、またコリもせず人類同士で争ったりしてる。

 たぶん、セカンド・インパクトが起こる前の世界に戻りつつある世界。これから僕達が生き続ける、平凡で退屈な世界。でも、いやだからこそこの世界を好きでいられる。

 

 西暦2017年、僕は高校生になった。そして今も、エヴァに乗ってる。

 

 補完、祝福の後。

 

 「起立、気を付け、れーい」

 第三東京市立第一高校1年A組の教室から学級委員長、洞木ヒカリのハキハキとした号令が廊下に響き渡り、疲れた顔の高校一年生達がゾロゾロと廊下に出て、部活に帰宅にとそれぞれの放課後を過ごすために歩き去っていく。

「ふぅ……なんか、まだ高校生になった感じしないなぁ」

 教室から去っていく同級生の背中を眺めながら、ヒカリがボンヤリと呟く。

 彼女がそう感じるのも無理はない。高校に進学したとはいえ、クラスメイトのほとんどは第一中学校2年A組の頃から変わっていないのだ。

 これにはワケがあった。二年前終結した人類と使徒と呼ばれる謎の怪物との戦い。あの時、第一中学校に通う生徒のほとんどが戦火を逃れるために第二東京市に疎開した。ヒカリ達はその疎開先の中学校で義務教育を満了したのだが、卒業の数ヶ月前に最後の使徒が倒され、非常事態宣言が解除された。そのおかげで、中学卒業後の進路に第三新東京市立第一高校を選ぶことが出来るようになったのだ。

 クラスメイトのほとんどが疎開先の中学校からこの高校に進学したことに、ヒカリは当初驚きを隠せなかった。彼らが第三新東京市に帰ってきた理由としては、親の仕事の都合がほとんどだった。

 だが、そんなクラスメイト達もヒカリと同じく、心のどこかで気にかけていたはずだ。

 二年前、この代三新東京市に残していってしまった三人のクラスメイトのことを。

 ヒカリがこの高校に進学する事を決めた最大の理由は、あの時挨拶も出来ずに分かれてしまった彼らが、この高校に進学するという話を聞いたからだった。

「委員長」

「へ!?」

「あ、驚かせてゴメン。でも、さっきから声をかけてたんだけど」

「あ、そ、そうごめんなさい。ちょっとボーッとしてて……碇君」

 ポン、と肩に置かれた手にビクリと身体を震わせて、ヒカリは背後に立つその手の主に振り返った。そこには、二年前別れたときからずっと気にかけていた少年の姿があった。

 最後にあったときよりも少し長めに整えられた黒髪、女性的だった容姿はさらに磨きがかかり、再開したとき一瞬見とれてしまった、身長も伸びており、同じくらいだった背丈から頭一つ抜かされている。

「昨日、ケンスケから電話があってね。来月の中頃くらいに第三新東京市に帰ってくるんだって。トウジと一緒に」

 心から嬉しそうに微笑みながら、碇シンジは自分の親友達と彼女の意中の相手の名を口にした。

「え、鈴原が帰ってくるの?」

「うん。よかったね委員長」

「え!? いやその、あの、そ、それは……うん、ありがと。碇君も、また三人一緒になれて良かったね」

「うん。本当に嬉しいよ……ん? どうしたの委員長、顔赤いよ?」

 2年も会っていない二人の親友のことを思い出して、シンジはまた嬉しそうに笑った。その笑顔に見とれている自分がいることに気付いて、ヒカリは思わずシンジから顔を背けてしまう。そして、チラリと2年ぶりに再会した少年の顔を見つめた。

(本当に、碇君……だよね?)

 入学式で再会したときも、また同じクラスになって喜び合ったときも、ヒカリはシンジが二年前よりもどこか変わった事を感じていた。身体の成長はもちろんだが、それとは違うもっと別の何か……言葉にはできない別の何かが変わっていることに気付いた。

 そしてそれを、素敵だと、魅力的だと感じている自分がいることも。

「どうしたの、具合でも悪い?」

「ううん、ううん何でもないの! ほ、本当に……・!」

「そう?」

(もう~、早く帰ってきて鈴原~……!)

 でなければ、シンジに揺らいでしまいそうだ。そんな自分の心を恥じ入りながら、ヒカリは鈴原トウジの顔を頭に思い浮かべた。

「碇君」

 首をかしげるシンジの背中に、細く透き通るような声がかかる。彼女もまた、この町に残ったヒカリのクラスメイトの一人。

「そろそろ行かないと」

 綾波レイはシンジのシャツの袖をつまむように引っ張って、シンジを促した。

 彼女はシンジと違ってその見た目は全く変わっていない。青いショートヘア-、透けるような白い肌、人形のように美しい容姿。全てが二年前のままだ。だが一つだけ、彼女が変わったところを上げるなら、その青い髪には可愛らしい白い花の装飾が施された、小さな髪留めが付けられていた。

「あ、そうだね。じゃあいつも通りに」

「ええ。下で待ってるわ……洞木さん」

「え、なに?」

「さよなら」

「さ、さよなら」

 戸惑い混じりのヒカリの返事を聞くと、レイは何事も無かったかのように教室をあとにした。

「わ、私……綾波さんに名前呼ばれたのも、直接挨拶されたのも……初めて」

「そうだね。最近、ネルフの中でも綾波が変わったっていう人が増えてきてるんだ」

 綾波の思わぬ行動に驚きを隠せないヒカリにシンジは少しはにかみ、自分のカバンを手に取った。

「それじゃ、僕も行くね。委員長も気を付けて」

「う、うんありがとう……ねぇ碇君」

「なに?」

「……ううん、何でもない。また明日ね」

「? うん、また明日」

 手を振るヒカリに応えて、シンジは教室をあとにする。夕焼けの教室に、ヒカリだけが一人残った。

 シンジの背中が廊下の先に消えたのを見て、ヒカリは教室から廊下に出てその窓から見える駐輪場に目を落とす。駐輪場には学生の自転車の他に50ccのバイクの姿も見える。

 その中の一台。赤いネルフのマークがプリントされた白いスクーターの傍で、白いヘルメットを被って彼を待つ青髪の少女の姿が見える。しばらくすると、彼女に駆け寄る一人の少年が現れ、青いヘルメットを被ってスクーターに跨りエンジンをかける。青髪の少女は少年の後ろに腰掛け、その白い両手を彼の腰にしっかりと絡ませる。

 やがてスクーターは徐行で走り出し、校門を出てからは道の向こうに消えてしまった。

「変わったのは、綾波さんだけじゃないよ碇君」

 彼の去り際に言えなかった言葉を口にして、ヒカリは一人残った教室をあとにした。

 

「碇君……」

「なに?」

 赤信号に捕まりスクーターを止めたとき、レイがシンジの背中に語りかけた。

「洞木さんとなに話してたの?」

「え? 来月ケンスケとトウジが戻ってくるって話だよ?」

「……そう」

 どこかほっとしたように、レイは深く息を吐き再びシンジの背中に身を預けた。

「どうしたの? いきなりそんな事訊いて」

「ううん、何でもないの。早く、ネルフに行きましょ」

 レイの真意を測りかねてシンジは口を開きかけたが、言葉を発する前に信号が青に変り、シンジは仕方

 

なくハンドルを入れてスクーターを走らせた。

(良かった。この場所に座るのは、この温もりを知ってるのは、私だけでいいもの)

 二年前の自分なら、こんな事考えもしなかっただろう。それに対する戸惑いは確かにある。だが、それ以上にレイはシンジの背につかまり、頬に彼の体温を感じるこの一時が、何よりも得難くそして愛おしいモノであると理解していた。

「わ、ちょちょっと綾波!? そんなに力入れたら苦しいよ」

「そう? ごめんなさい」

 シンジの背中を強く抱きしめながら、レイは一人、穏やかな微笑みを浮かべた。

 

 
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