注意 本作の一刀君は能力が上方修正されています。
そういったチートが嫌い、そんなの一刀じゃないという方はご注意ください。
風達と別れた俺は、村に戻っていた。村の人達を弔うためだ。
焼け残った家から服を見つけ、それに着替える。
その後は、穴を掘り、村の人の亡骸を運び、埋める。その作業の繰り返しだ。
墓自体は、岩や木片、花などでそれらしく飾り付けただけのとてもシンプルなものだ。
それでも俺は、村の人一人一人を丁寧に埋葬し、墓をつくっていく。
墓をつくっていくたび、言いようのない感情に襲われながらも。
半日ほど経っただろうか、空は茜色に染まっていた。
ちょうどそこで、最後の一人を埋葬し終える所だった。
目の前には、岩や花などが飾り付けられ、人工的につくられた小山が無数に広がっていた。
全ての作業を終えた俺は、それらの前に立ち、静かに目を瞑って手を合わせる。
俺は世話になった感謝と、助けられなかった懺悔の念を込めて、黙祷を捧げる。
黙祷を終えた俺は、頬に違和感を感じそっと手で触れる。
すると、俺の頬を涙が伝っていることに気付いた。
一刀「はは、風にはカッコつけたけど、まだ駄目みたいだな。」
風のおかげで、負の感情に飲まれることは免れた。
けど、心の傷は思ったよりも深かったようで、この涙がその証拠ともいえる。
涙は止まることなく流れ続け、俺はしばらくその場で、声を殺して泣き続けたのだった。
そんな中、俺の傷ついた心の中には、小さくだがある決意が固まりはじめていた。
心身ともに疲れ果てていた俺は、残っていた空き家に戻り、そのまま深い眠りへとついた。
ザッザッザッザッザッザッ
翌朝、俺は遠くから聞こえてくる足音に目を覚ました。
はじめはまた賊かとも思ったが、その足音は一定のリズムを刻む整然としたものであり、まるで行進のようだった。
俺はその音の元凶を確認するため刀を持って、村の入り口へと警戒しながら向かった。
村の入り口に着くと、遠くに一団を確認できた。
その一団は皆、鎧でしっかりと武装していた。
またその先頭には、馬に跨りそれらを引き連れるようにしてる者もいる。
その様子から、俺はどこかの軍だろうと当たりをつける。
そしてその一団は、ゆっくりとだがこちらに向かって来ているようにみえた。
一刀(くっ、今頃のこのこと・・・)
俺は、その一団に軽い怒りを覚えていた。
もう少し早く来ていれば、と。
しばらくするとその一団は到着し、俺と村の入り口で対峙する形となった。
そこから、この軍の代表者だろうか、一人の人物が近づき、こちらに質問してきた。
??「あなたは、この村の人間?」
その人物は、金色の髪を髑髏の髪留めで巻いている、可愛らしい女の子だった。
しかし、その見た目とは裏腹に、彼女の身体からは威厳ともいえるものが漂っていた。
それだけでも、この子が軍の代表者であると納得するには十分だった。
一刀「いや、俺はここで世話になっただけだ。そうゆうあんたらは?」
俺はぶっきらぼうに答え、そのまま相手へと質問でかえす。
そして、案の定
??「貴様!華琳様になんたる態度だ!!」
??「・・・・・・」
その彼女の両脇に居た二人が、こちらへと殺気を向けてくる。
一人は長い黒髪の女性で、大剣を構えている。
もう一人は、青い髪で片目を隠している女性で、こちらは弓を構えている。
そんな状態で睨みあっていると、
??「やめなさい、二人とも!」
??「し、しかし」
??「私はやめなさいと言ったのよ。」
??「「御意。」」
金髪の子の一喝で、二人はしぶしぶながらも武器を下した。
??「悪かったわね。私はここ陳留の刺史で、後の子たちは私の部下よ。」
俺はその答えを聞いて、「やはりか」と思った。
そしてそれに伴い、抑えていた感情が少しずつ昂ってくるのを感じていた。
一刀「その刺史様がわざわざこんな所まで、一体どんな御用ですか?」
??「最近、この辺りを根城にしている賊がいるという情報があったの。」
ギリッ
歯を強く噛みしめたせいか、口の中から嫌な音が聞こえる。
それをしていないと、感情を抑えることができなくなっていた。
??「私たちは、その賊の討伐にきたのよ。」
しかし相手は、そんな俺の心など知らないため、さらに言葉を続ける。
俺は我慢ができなくなっていた。
一刀「今さら来て・・・」
??「何か言ったかしら?」
一刀「今さら来て、何を言ってる!!」
??「それは、どういうこと?」
一刀「なんで今なんだよ。もう少し、あともう少し早く来てくれれば。」
俺は言葉を荒げてしまう。
そんな俺の言葉に相手は疑問を持ち、説明を求める。
一刀「つい先日、この村を賊が襲って壊滅させていった。」
??「なんだとっ!?」
黒髪の女が、その事実に驚き声をあげる。他のものも、一様に驚きの表情をしている。
だが、俺の言葉は止まらない。
一刀「あんた、偉いんだろ?凄いんだろ?村の人達も誉めてたよ。
あんたがここの刺史になってから、ここら辺は住みやすくなったって。そんな風に、嬉しそうに言ってたのに。」
俺の言葉に、彼女達は暗い顔になる。
なぜ俺が怒っているのか、それを理解したから。
一刀「もし間に合ってたら、助けられたんじゃないのか?村の人達も賊なんかの犠牲にならず、守れたんじゃないのか?」
俺も理解する。
彼女たちは悪くない、これはただの八つ当たりだ。
俺が本当に責めたいのは、自分自身だということに。
もう少し早くや間に合っていればなど、全部過去の自分への言葉だ。
俺がそんな感情に苛まされていると、金髪の子が馬から降り、俺の前までやってくる。
そして、
??「ごめんなさい。」
俺に謝ってきた。
それを聞いた俺は、昂っていた感情が一気に落ち着き、黙りこんでしまう。
??「私達の対応が遅かったせいで、こんなことになってしまった。
謝ってすむ問題ではないけど、せめて謝らせてほしい。」
??「か、華琳様!華琳様がそのようなことをせずとも。」
??「そうです。今回の件、華琳様が悪かったわけでは。」
??「春蘭。秋蘭。 例えどんな理由があろうと、このような事態を招いてしまったのは、全て上に立つ私の責。
だから私は、彼に対して謝らなければならないの。」
突然謝りだした彼女に、腋に居た二人は驚き、それをやめさせようとする。
しかし彼女はそれを押し切り、この謝罪は必要なことなんだと説く。
そしてまた俺へと向き直り、
曹操「そして、あなたに誓うわ。我が名、曹孟徳にかけて、二度とこんな悲劇を繰り返させないと。」
その瞬間、オーラとでも呼べばいいのか、彼女から出た威厳の様なものが一気に辺りに広がった。
一刀(これが、魏の覇王、曹孟徳か。)
俺は見惚れてしまった。
否があれば、俺の様な人間にも頭を下げるその姿勢に。
そしてその否さえ飲み込み、それでも威風堂々としているその態度に。
一刀「すまなかった。あんた達だって助けに来てくれたのに、こんな責める様なことを言ってしまって。」
曹操「構わないわ。貴方の言ったことは全て真実。
私達がもう少し早く行動していれば、この村を守ることができたはずなのだから。」
彼女はそう言って、本当に悔しそうな顔をする。
曹操「できたら、村の人達を弔わせてくれないかしら。 せめて、それくらいは。」
一刀「ああ、わかった。案内するよ。」
俺はそう言って、村の中へと入っていく。
その後を、曹操とその部下の二人がついてくる。
途中、焼かれた家、飛び散った血の跡、転がる賊の死体を見るたび、彼女達は嫌な顔をする。
そして、俺が作った村人達の墓の前へと着くと、曹操達は黙祷を捧げた。
それが一通り終わると、黒髪の女性が俺に質問してきた。
??「貴様、その賊の居場所は知っているか?」
一刀「知ってるけど・・・」
??「ならすぐに教えろ!そんな腐った連中など、全員我が刀の錆にしてくれる!」
??「落ち着け、姉者。そんなに威嚇しては、こやつも話し辛かろう。」
興奮した女性は、俺の胸元を掴み殺気を撒き散らしていた。
それを青髪の女性がたしなめ、掴んでいた服を離させる。
一刀「そこに行っても無駄だよ。」
曹操「どういうこと?」
一刀「もうその賊は全滅してるから。」
??「何かあったのか?」
一刀「別に、何もないよ。只、俺がそいつらを倒しただけだから。」
三人「「「なっ!?」」」
??「まさか、ここに転がっている賊どもも。」
一刀「ああ、俺がやったんだよ。」
俺はなんでもないという風に答えて行くが、3人はそれぞれ驚きの顔を浮かべている。
曹操「貴方、一体何者?」
一刀「北郷一刀。只の一般人だよ。」
曹操「一般人って」
一刀「曹操。一つ質問していいかい?」
曹操「何?」
一刀「君は、どんな国をつくりたいんだ?」
俺は困惑している曹操を尻目に、質問をぶつける。
自分の中にある決意を、より確かなものにするために。
曹操「私は、どこよりも強い国をつくりたいわ。
賊の恐怖にも、他国の恐怖にも、飢えの恐怖にも、民が怯え苦しむことなく、
日々を安心して過ごしていけるような、そんな国を。」
一刀「それは、長く困難な道だ。途中で命を落とすこともあるかもしれないんだぞ?」
曹操「そんなこと、貴方に言われなくても百も承知よ。
例えどんな犠牲を払っても、それこそ私の命を失ってでもね。」
彼女は、強い意志を秘めた瞳でそう答える。
一刀(自分の命を失っても、か。)
満足のいく答えを聞けた俺は、自分の中にあった覚悟を決める。
以前管輅からされた質問、どちらの道を選ぶのか。
ここが自分のいた世界とは違くても、この世界でも人々は生きているし、生活もしている。
俺は、あの時の後悔をもう二度としたくない。
なら、俺が選ぶ道は決まっている。
【side 曹操】
一刀「少し、待っていてくれないか。」
北郷はそう言って、その場から離れて行った。
私はその間、彼のことを考えることにした。
賊相手とはいえ、報告に聞いていたほどの規模なら相当の数だ。
それを彼が壊滅させたというのなら、その武はなかなかのものだろう。
しかし、それよりも彼の中身が気に入った。
私を刺史だと知ってのあの態度や度胸。
世話になったとはいえ、他人のためにあそこまで怒れる思いやり。
そして、一人でこれだけの墓をつくってあげる優しさ。
今まで、私の周りにはいなかった種類の男性だ。
曹操(ふふふ。彼、ほしいわね。)
一刀「おまたせ。」
そんなことを考えているうちに、彼が戻ってきた。
しかしその姿は、先ほどまでの農民の服ではなく、日の光を反射しきらきらと光る、白銀の衣を身に纏っていた。
春蘭も秋蘭も、そんな彼の姿に驚いていた。
そこで私は、以前受けた報告の中に、この付近に流星が落ちたというものがあったことを思い出す。
あの時は、ただの戯言だと思い気にもとめていなかったが。
曹操(まさか・・・)
私がそう思い至った時、彼が口を開く。
一刀「あらためて。俺の名前は、姓は北郷、名は一刀。そして、『天の御遣い』ってやつらしい。」
『天の御遣い』、普段なら一笑するところだが、彼の服はこの大陸ではみたことがない。
なにより彼の目。嘘や妄言を吐いている者の目ではなく、覚悟と誇りを持った者の目だ。
そんな彼が天の御遣いだと言っているのだ、それは事実なのだろうと私は認める。
初め天の御遣いなんてものに、興味はなかった。いや、今でも興味なんてない。
だが、彼、北郷一刀は別だ。
彼はとても興味深いし、できることなら部下にほしい。
そんな彼がたまたま天の御遣いだった。ただそれだけの話。
私は、そう結論付けることにし彼を勧誘することにした。
曹操「一刀。あなた、私の元で働く気はない?」
一刀「ああ、いいよ。」
意外にも、彼は私の誘いに応じてくれた。もう少し、揉めると思っていたのだが。
曹操「あっさりと答えるのね。なにか裏があるのかしら?」
一刀「そんなんじゃないさ。只、多くの人を笑顔にするには、俺一人の力じゃ限界がある。
だから曹操、君の力を借りたいと思ったのさ。」
曹操「つまり、力のある者なら誰でも良かったと?」
一刀「いや、まだ少ししか話せていないが、曹操の民への思いやその覚悟は伝わってきた。
そんな君なら、大陸の安寧ってやつも可能だと思ったんだよ。」
彼はそう答え、私の目をじっと見つめてくる。
そこには、嘘や偽りなど一切入っていない、澄んだ瞳があった。
曹操「ふふ、いいわ。その言葉信じましょう。」
一刀「ありがとう。あらためてよろしく頼むよ。」
そう言って彼は、手を差し出してきた。
私はその手を取り、あらためて自己紹介をすることにした。
曹操「知ってると思うけど、私は姓は曹、名は操、字は孟徳よ。ちなみに、こっちの二人は。」
夏侯惇「私は姓は夏侯、名は惇、字は元譲だ。華琳様の元で働けること、ありがたく思えよ。」
夏侯淵「私は姓は夏侯、名は淵、字は妙才だ。姉者ともども、よろしく頼む。」
曹操「後もう一人いのだけど、その子は城に着いたら紹介してあげるわ。」
曹操(ふふ、男をつれて来たと知ったら、あの子がどんな顔をするか楽しみだわ♪)
私はそんなことを考えながら、城への帰路へと着くことにした。
天の御遣い、北郷一刀という土産を持って。
しかし、この時の私は思いもしなかった。
彼が私達にとって、いえ私にとって、あんなにも必要な人になるなんて。
こんなにも、自分の胸を苦しめる人物になるなんて。
あとがき
sei 「ということで、すこし短めですが第6話でした。
そしてやっとこ、√が確定しました。
これにより、自分の作品は魏√でいくことになります。
イタッ、イタッ。
物を投げないで。い、石は勘弁して下さい。
もう、何番煎じかもわかりませんが、どうしても魏√が書きたかったんです。
またこの√か、という声が聞こえてきそうですが、少しでも面白い話にできたらいいなと思います。
今回は結構難産でした。
あっちこっちに手を伸ばしすぎた自業自得とはいえ、なんとか魏√に乗りました。
乗った?乗せた?てか、本当に乗ってるのか??
まあ嫌なことは置いといて、今回のゲストを紹介したいと思います。
いつもはキリッとしてるけど、好きな人には甘えちゃう、ほんとはさびしがり屋の女の子。
華琳さんで~~~」
ヒュンヒュンヒュン ザクッ
sei 「と、いうのは冗談で。治世の能臣、乱世の奸雄といわれた魏の覇王。
超絶完璧天才少女、曹孟徳様でーーーーす!!(あぶな、あぶなーい。ヒゲ、ヒゲ切れたーー!!)」
華琳「よろしく♪」
sei 「は、はい、よろしくお願い致します。ちなみに、今回の話ですが。」
華琳「そうね。私達と一刀との出会いということかしら。」
sei 「はい、これにより魏√に突入です。」
華琳「それにしても、展開が急な気もするけど?」
sei 「う、それは勘弁して下さい。私の文才じゃこれが限界なんですから。」
華琳「それに私にしては、賊の対する動きが遅すぎる気がするんだけど?」
sei 「あ~、それにはちょっとした理由があるんで、それは後でということで。」
華琳「そうなの?それならいいのだけど、まああとは」
sei 「あ、あの~、なんで魏√突入っていうめでたい時なのに、そんな不満ばかりを?嬉しくないんですか?」
華琳「そ、それは・・・、その・・・、魏√だと・・・、一刀と(/////)」
sei 「!! ああ、なるほど、これで一刀とイチャイチャ確定ですものね。
つまりはその照れかく、ぶふぅぅぅーーーー!!!」
華琳「黙れ!それ以上は言うな!!次、次にいくわよ。」
sei 「いたた、いきなり右ストレートはどうかと思いますよ。」
華琳「ふん。次はコメントについてよ。
前は黄巾√、今回は独自勢力ではないかとのコメントがきてるわね。」
sei 「う、私があっちこっちに話を伸ばしすぎたせいで混迷しましたね。
あらためて、それらの話を期待していた皆様には申し訳ないですが、自分の作品は魏√です。」
華琳「まあ、貴方が頑張って、斬新な話にすれば問題ないんじゃない。」
sei 「・・・ま、前向きに善処します。」
華琳「はぁ~、その発言だけで十分わかったわ。まあ、応援してくれる人もいるのだから頑張りなさい。」
sei 「それじゃ、きりもいい所で今回はこれで終わりとなります。」
華琳「次回は私達との話を書くのかしら?」
sei 「はい。魏の初期メンバーの拠点パート的なものを書きたいと考えています。」
華琳「ということは、私・春蘭・秋蘭・桂花の4人ということね。」
sei 「はい。次話では、一刀に色んな意味で頑張ってもらおうと思ってます。」
華琳「色んな、ねぇ~。」
sei 「色んな、です。」
華琳「まあいいわ。それじゃ、次回の話で逢いましょう。」
sei 「皆さん、また次回で~。」
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賊の手から風を助け出した一刀は、そのまま村へと戻ることに。
闇からは立ち直ったが、まだ心の傷は癒えていない一刀。
そんな一刀の前に、ある人物達が現れる。
まあ、今回はあとがきで色々言い訳してますが、あまり気にせず読んでくださいw
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