No.464992

英雄伝説~光と闇の軌跡~ 251

soranoさん

第251話

2012-08-04 21:11:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1143   閲覧ユーザー数:1060

~メンフィル帝国・帝都ミルス郊外・メンフィル軍演習場~

 

「…………………………」

青空の下、立派な角を持ち、足には炎を纏わせ、骨のような翼を持つ巨大な獣――エヴリーヌ、ディアーネと同じ”深凌の楔魔”の序列第七位の獣の魔神――カファルーは何かを待つかのように青空を見上げていた。

「っと。到着~。」

そこにエステル達を連れたエヴリーヌが転移して来た。

「あはは……”転移”ってやっぱり慣れないわね………」

「うん……なんか身体が持ち上がるみたいで、変な気分……」

エヴリーヌと共に転移したエステルは苦笑し、ミントは頷いた。

「あたしはいつか習得してみたいわ…………遊撃士の仕事に大いに役立つだろうし、あたしと同じ”人間”のレンができるんだから、不可能ではないはずよ………」

「う~ん……”転移”魔術かあ……物体の”転送”をいつか成功させれば、似たような事をできるかな……?」

「ったく。やっぱり爺さんの孫だな……」

一方シェラザードは考え込み、ティータは考え込んだ表情で呟き、アガットは呆れた表情で溜息を吐いた。

「おや………?先客がいるようだね。」

「へ………?」

オリビエの言葉に気付いたエステルは自分達を見ているカファルーに気付いた。

「ま、魔獣!?」

「それも今までにないクラスの強さを感じるぞ………」

カファルーを見てシェラザードは驚き、ジンは真剣な表情をした。

 

「カファルー。何やっているの?」

カファルーを警戒しているエステル達とは逆にエヴリーヌは呑気に話しかけた。

「へ!?エヴリーヌの知り合い!?」

「ん。カファルーはエヴリーヌと同じ”深凌の楔魔”の魔神だよ。」

驚いているエステルにエヴリーヌは答えた後、カファルーに話しかけた。

「カファルー。この娘が前に話した”エステル”だよ。」

「……………………………」

エヴリーヌに話しかけられたカファルーは何も答えず、エステルを見ていた。

「えっと………何も答えませんね………」

「あたしをずっと見続けているようだけど、何なんだろう??」

黙っているカファルーを見たクロ―ゼは戸惑い、エステルは首を傾げた。

「カファルー。まだリウイお兄ちゃんの考えている事には賛成できないの?お兄ちゃんのお陰でエヴリーヌ達はみんなと生きていけるんだよ?」

「………………………」

エヴリーヌに尋ねられたカファルーは何も答えなかった。カファルーはエヴリーヌと違い、未だ人間と自分達が共存すべきかをメンフィルに来てからずっと考えていた。そして旅から帰って来たエヴリーヌの話を聞き、カファルーは自分達と人間の”共存”の見本かのように振る舞う人間――エステルに興味を持っていたのだ。そしてカファルーはエステルを見極める為、ある行動をとった。その行動とは……!

「グオオオッ!」

「わっ!?」

カファルーはいきなりエステルに口から巨大な炎の玉を吐いて攻撃した!攻撃に気付いたエステルは驚いたが、回避した。

「ちょっ、ちょっと!何のつもり!?」

回避したエステルはカファルーを睨んで、武器を構えた!

「グルルルル…………」

「まさか、カファルー。……………ラーシェナの時のようにエステルに力を貸すべきか見極めようとしているの?」

一方エヴリーヌは驚いた表情でかつての事を思い出して、カファルーに尋ねた。

「………………」

エヴリーヌの問いに答えたのか、カファルーはエヴリーヌに視線を向け、軽く頷いた。

「……………そう。エステル。カファルーはエステルを戦いによって見極めようとしている。ラーシェナのように力を貸すべき者かどうかを。」

「へ!?そのラーシェナっていう人の事はわかんないけど、もしかして契約をしてくれるの!?」

エヴリーヌはカファルーを見つめて静かに頷いた後、エステルに説明し、説明されたエステルは驚いて尋ねた。

 

「契約できるかはエステル次第だよ。カファルーはそう簡単に倒せる相手じゃないし。下手したら死んじゃうよ、エステル。」

「じょ~と~じゃない!いつか”魔神”とも契約したいと思ってたもの!こんな絶好の機会、逃す訳にはいかないわ!……あたし1人で戦えばいいの?」

エヴリーヌに言われたエステルは不敵な笑みを浮かべて答えた後、尋ねた。

「ううん。エステルが今までの旅で契約した守護精霊達やミントなら一緒に戦っていいと思う。カファルーは人間と闇夜の眷属――他種族との”共存”が本当にいいのか見てみたいだろうし。」

「そっか……みんな!カファルーとはあたしとミント達だけで戦うわ!」

エヴリーヌの説明に頷いたエステルは仲間達を見て言った。

「正気!?エステル!相手は”魔神”よ!?」

「お、お姉ちゃん!?大丈夫なの……?」

「あの獣……ハンパじゃない強さだぞ……」

エステルの言葉を聞いたシェラザードは驚き、ティータは心配し、アガットは警戒した表情でカファルーを見ていた。

「大丈夫よ!このくらいの試練を越えなきゃ、”結社”や”執行者”達を倒せないわ!」

「ハハ……エステルらしいと言えば、らしいな。」

「フム、そうだね。ではボク達はエステル君達を信じて観戦するとしよう。」

エステルの言葉にジンは豪快に笑い、オリビエは頷いた後シェラザード達を促した。

「お姉ちゃん………ミントちゃん…………」

「お気をつけて、エステルさん、ミントちゃん………」

「エステル……死ぬんじゃないわよ………」

ティータやクロ―ゼは心配そうな表情でエステルとミントを見て、シェラザードはエステルに声をかけた後、アガット達と共に下がった。

 

「ミント!いいわね!?」

「うん!成長した事で新しく得たミントの力、ママにも見せてあげる!」

エステルに尋ねられたミントはリフィアから授けられた神剣――エスぺランサーを鞘から抜いて、戦闘態勢に入った!

「……みんな!力を貸して!」

そしてエステルはパズモ達を召喚した!

(フウ………ついに”魔神”までもが興味を持つなんて…………厳しい戦いになるけど、私達の”共存”を見せてあげましょう!)

(クク……今度の相手は獣の”魔神”か…………!新たに得た力を試す相手として、絶好の相手だ……!)

「ぴ、ぴええええ~!今度の相手はよりにもよって”魔神”だなんて………!こ、怖いですけどエステルさんの為に頑張ります!」

「あなたが結んだ光と闇の”絆”の力………見せてあげましょう!」

召喚されたパズモは溜息を吐いた後決意の表情になり、サエラブは不敵な笑みを浮かべ、テトリは怖がりながらも武器を構え、ニルは微笑んだ後、武器を構えた!

「あたしの名はエステル!エステル・ファラ・サウリン・ブライト!カファルー、あたし達の力……見せてあげる!」

「グオオオオオオオオ――――――――ッ!!」

エステルが棒を構え名乗り出ると、カファルーは辺りを響き渡らすほどの雄叫びを上げた後、戦闘態勢に入った!

「みんな!行くわよ!」

 

今ここに、”最強”の存在に挑む戦いが始まった…………!

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
2
1

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択