No.464726

IS−インフィニット・ストラトス−黒獅子と駆ける者−

トラックに轢かれそうになった女の子を助けて俺はお陀仏になった・・・。・・・って!それが本来の死じゃなくて、神様のミスで!?呆れている俺に、その神様がお詫びとして他の世界に転生させてくれると言うことらしい・・・。そして俺は『インフィニットストラトス』の世界に転生し、黒獅子と呼ばれるISと共にその世界で戦うぜ!

2012-08-04 08:42:09 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2710   閲覧ユーザー数:2597

 

 

 

episode39 転生後の再会 

 

 

 

「作戦終了・・・・と、言いたいが・・・」

 

そして帰還した隼人たちを待っていたのは・・・・浜辺で仁王立ちをして待っていた鬼教師こと千冬であった・・・

 

 

「お前達は重大な命令違反をした・・・。分かっているな」

 

「「「「「「「「「「はい・・・・」」」」」」」」」」

 

と、隼人たちは重々しく返事をする・・・・

 

「帰ったら反省文と特別講習を入れてやる。感謝するがいい」

 

 

 

(はぁ・・・ある程度予想はしていたけど・・・さすがにきつい・・・)

 

 

と、隼人は内心でため息をつく・・・

 

 

 

 

「・・え、えぇと・・・織斑先生」

 

と、山田先生が恐る恐る聞いてきた。

 

「もうそれくらいで・・・・。けが人も居ることですし」

 

「ふん」

 

しかし千冬の怒りが収まるわけではない。ちなみにこれでもまだ序の口・・・

 

 

 

 

「・・まぁ、それにしては・・・・よく生きて帰ったな」

 

「え・・?」

 

すると千冬は照れ隠しのためか後ろを向く。

 

 

 

「・・あの・・織斑先生」

 

「なんだ、神風」

 

と、少し刺々しく千冬は返事をする。

 

「・・実は・・・織斑先生と話したい、と、言ってきた者が居るんですが・・・」

 

「私と・・?」

 

「はい」

 

「誰だそれは・・・」

 

「・・・なんて言うか・・・正体は分からないんですが・・」

 

「・・そんなやつと私が話せと?」

 

「・・・しかし、ある意味では結構有名・・・ですよ」

 

「・・・・・・・」

 

 

千冬は少し考えて・・・・

 

 

 

「・・・仕方が無い。そいつを通せ」

 

「分かりました・・・・。もう来て良いですよ!」

 

と、隼人が叫ぶと、少し離れた海中よりAGE-1が出てきた。

 

 

「救世主・・・だと」

 

すると千冬は少し驚いていた。

 

 

 

 

そしてAGE-1はゆっくりと歩いて来て、千冬の前に来る。

 

 

 

 

「・・まさかお前から話しがあるとは・・・思ってもみなかった」

 

 

 

 

「・・そうでもないだろう」

 

 

 

「っ!?」

 

すると、千冬はその声を聞いて驚愕した。

 

 

 

「・・ま。まさか・・・お前は・・!?」

 

 

するとAGE-1は光に包まれるとアーマーを解除して、パイロットが出てきた。

 

 

 

「久しぶりだな・・・千冬」

 

と、男性は千冬を懐かしそうに見る。

 

千冬と同じぐらいの長身の男性であり、髪の色は黒。その顔つきは・・・・千冬と似ていた・・・いや、瓜二つといって良いぐらいだった。しかし、どちらかといえば成長した一夏の容姿とも言えるかもしれない。服装は半そでのYシャツにネクタイ、紺のジーパンという構成。

 

 

「・・しばらく見ない内に背が高くなったな。俺と同じぐらいか」

 

 

 

「・・・なぜだ・・」

 

「ん?」

 

「・・・なぜ・・・生きているんだ・・・輝春(きはる)!」

 

と、千冬は大きな声で叫ぶ。

 

「おいおい・・。まるで俺が死んでいるみたいじゃないか・・・・・ってか、兄を呼び捨てにするのかよ」

 

 

 

 

「え・・?」

 

そして一夏がそれを聞くと目をぱちくりとさせる。それは周りのメンバーも同じであった。

 

「・・兄・・?あなたが・・?」

 

「そうだ・・・・。俺の名前は『織斑輝春』・・・お前と千冬の兄さ」

 

 

 

「・・・なんだって・・?・・・ち、千冬姉・・・どういうことなんだよ・・・」

 

 

「・・・・・」

 

「なんで・・・教えてくれなかったんだ・・?」

 

「・・・・・」

 

 

 

 

「・・・一夏・・・千冬が言えないのは・・・恐らく俺が死んでいたと思っていたからだろうな」

 

「し、死んでいたって・・・」

 

 

「・・それについては三人で話そう・・・。色々と事情がある」

 

「・・・・・・」

 

「千冬もそれでいいな」

 

「・・・・あぁ」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

隼人はその様子を黙って見ていた・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその夜・・・・・・

 

 

 

 

(よく分からんものだな・・・・・色々とありすぎて一体何がなんだか・・・・)

 

隼人は浜辺に立って、満月を見ていた。

 

海風は少し冷たくて心地よく、左目があった場所に当たって気持ちが良かった・・・・

 

 

 

 

 

 

「・・隼人・・」

 

すると、簪がやって来た。

 

「簪か・・・どうしたんだ?こんな所で」

 

「・・隼人も・・・どうしてここに?」

 

「ちょっとばかり・・気分転換にな」

 

「そう・・」

 

そして簪は隼人に近づくと、あることに気が付いた。

 

 

 

「・・・・眼帯・・外しているの・・・?」

 

見れば、隼人は眼帯を外しており、その下が露出していた。

 

 

 

「・・・・」

 

しかし、簪はそれを見て絶句する・・・

 

 

あの時に撃たれた筈の左目には眼球があったが、その瞳には光が灯されていない。その目の周りには傷跡が残っていた。

 

「義眼だよ・・・・今の左目は」

 

「・・・・・」

 

そして隼人は眼帯をしてから、前髪を眼帯の前にやる。

 

 

 

「・・・・・」

 

「まぁ、別に気にすることは無い」

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

 

「・・・ねぇ・・隼人」

 

「なんだ?」

 

「・・あの時は・・ありがとう・・・助けてくれて」

 

「あれか・・・。当たり前さ・・・生徒会長助手として」

 

 

「・・・どういうこと・・?」

 

「・・・生徒会長の妹を守れないで、助手が成り立たない・・・だろ」

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・って、言っても、一応楯無さんからの願いだからな。使命とかそういうものじゃない。個人的な願いだ」

 

「お姉ちゃんの・・・」

 

「・・それと、俺の個人的な判断だ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・俺にとって・・・・君は大切な仲間だからな・・・」

 

「・・・隼人」

 

 

そして簪は少し頬を赤らめる・・・・

 

 

 

 

 

「・・まぁ、そういうことさ」

 

そして隼人はその場から歩き出した。

 

「どこに行くの・・?」

 

「ちょっとその辺りを散歩さ・・・。織斑先生にばれない程度にな」

 

そうして隼人は背中を向いたまま手を上げて振り、そのまま歩いていった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

そうして隼人はしばらく歩いていって森の中に入り、そこにあった岩に腰掛けた。

 

(もう出てきて良いぞ。ここなら誰も来ない)

 

(分かりました)

 

 

そうして、隼人の目の前に光の粒子が集まっていくと、一人の女性が現れた。

 

 

 

長身の女性で、隼人より少し高く、銀髪を背中の下辺りまで伸ばしており、若干光が灯っていない赤い瞳が特徴的であった。服装は黒のレオタードに黒のミニスカ、黒のニーソックスを左足だけ下げており、黒のブーツと、黒ずくめであった。

 

 

「その姿は?」

 

『これが私の本来の姿です・・・。最初に見せた姿は私のISと思ってください』

 

「なるほど・・・(ってか、どっかで見たような容姿だよな・・・・名前もどっかで聞いたような気がするし・・・うーん・・)」

 

と、隼人はそれを思い出そうにもそれが思い出せなかった。

 

 

 

「・・・とりあえず色々と説明してもらうか・・・。そもそもお前は一体何なんだ?」

 

『私はあなたのサポートを行うための・・・存在と、言ったところですね』

 

「・・俺の身体から出てきたように見えたが・・・なんでだ?」

 

『・・・元々私はあなたの身体の中に居ました』

 

「・・・・・」

 

『あなたの身に危機が迫った時・・・私はようやく意思を発動させた・・・』

 

「俺の危機に・・・?」

 

『はい・・・。私はあなたの力になるために・・・こうして生まれたのですから・・・』

 

 

 

「・・・どうも引っかかるな・・・さっきの言い方」

 

『・・・・・』

 

「・・一体・・お前は・・」

 

 

 

 

『・・かつてこの者が居ました・・・』

 

するとリインフォースは語りだした・・・・

 

隼人は何も言わずに聞いた。

 

 

 

『・・私にとってもその者は全く知らなかった人でした』

 

「・・・・・」

 

『でも、その人は・・・迫ってくるトラックから私を助けてくれた・・・・命と引き換えに・・・』

 

 

「・・っ」

 

そして隼人はそれを聞き、反応する。

 

 

 

 

「・・・・ま、まさか・・・・お前は・・・」

 

『・・・・・』

 

 

「・・・あの時の・・・女の子なのか?」

 

と、隼人は声を震わせながら言う・・・

 

『はい・・・。その通りです・・主隼人』

 

そしてリインフォースは涙を流す。

 

 

 

「・・だ、だが・・俺は君を助けたはず・・・それなのに・・・なんで・・」

 

『・・・・・・』

 

リインフォースは少し考えて・・・・・

 

 

 

『・・・私はあの時から・・死ぬ運命でした』

 

「・・なに?」

 

『・・・あの時の私は重い病に侵されていて、余命は数ヶ月ともう長くはありませんでした』

 

「・・・・・・」

 

『私はふと思ったのです・・・どうせ死ぬのであれば、苦しみを味わう前に・・・楽になろう、と』

 

「・・・・」

 

『そうして・・私は病院を出て、あの場所に向かったのです・・・』

 

「・・あそこか」

 

 

『私は車道の横に立ち、トラックが来るタイミングを見計らっていました』

 

「・・・・・」

 

『・・・そして速く走ってきたトラックに・・身を投げ出しました・・・・・・しかし、その直後に私は後ろから誰かに押されて・・・死ぬことはありませんでした』

 

「・・・・・」

 

『その後私は病院の看護師によって連れ戻されました・・・。その際に・・・トラックの前で血を大量に流して倒れている男性の姿を見て・・・・』

 

「・・・・・」

 

『・・私は悔やみました・・・。私の愚かさのせいで何の罪も無く・・・全く関係の無い人を・・・死なせてしまったことに』

 

「・・・・」

 

『そして・・・・私の身体は衰弱していって・・・それから一ヵ月半後に・・・私は死にました・・・』

 

「・・・・そうか」

 

 

『・・しかし、私は死ぬ前に・・・強く願いました・・・・。もし生まれ変わったら、あの人の力になりたい・・・。人の姿をしていなくても・・いい、と』

 

「・・・そこまで・・・俺のことを・・」

 

『はい・・・』

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

『そして・・・私の前に・・・神が現れたんです』

 

「神・・・?」

 

『あなたをこの世界に転生させた・・・神です』

 

(・・・そうか・・・やっぱりあんたがあの子を転生させたのか)

 

 

 

(そうです)

 

と、隼人の頭の中で神の声がする。

 

(あの子を転生させたのはあなたを転生させて少しした時でした)

 

(・・・だが、なんで転生させたんだ?あの子は・・・)

 

(・・私のミスで死んでいない・・・)

 

(あぁ。俺はそうだが、お前のミスで死んでいない者をそう簡単に転生させても良いのか)

 

(本来であれば駄目ですが・・・・。状況が状況ですので・・・)

 

(・・・バインドのこと、か)

 

(はい。状況が予想以上に深刻でしたので、あなたをサポートする者が必要でした)

 

(それで・・あの子を)

 

(そうです。あなたを助けたいという強い想い・・・・・私はその想い打たれて・・・特例としてあの子を転生させたのです・・・。あなたと共にある・・意思として)

 

(・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・主隼人』

 

「・・なんだ?」

 

するとリインフォースは隼人に話しかける。

 

『私はあなたと共に・・戦っていきます・・・。ずっと・・・これからも・・』

 

そして隼人の前に方膝を地面に着けてしゃがむ。

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

「・・お前がそういうのであれば・・・俺は別に構わない」

 

『・・・・・』

 

「・・これからもよろしく頼む・・・リインフォース」

 

『こちらこそ・・・』

 

 

 

「・・それにしても・・・お前の名前って長いな・・」

 

『そうでしょうか?』

 

 

 

「・・・だから・・今度からはリインだ」

 

『リイン・・・・?』

 

「省力しただけだが、呼びやすいし、親しみやすいからな」

 

『・・・ありがとうございます・・・主隼人』

 

「それに、主隼人って言うのはやめろ。堅苦しいのは苦手でな・・・。普通に隼人と呼んでくれ」

 

『・・分かりました・・・・・隼人・・・・これでよろしいでしょうか?』

 

「それでいい」

 

そして隼人はリインの頭を撫でると、なぜか触ることができた。

 

 

「・・・?実体化している?」

 

『はい。このように戦闘でなければ完全な実体化が可能です・・・。ですが、まだ実体化が完全ではないので、戦闘までは無理です』

 

「そうなのか・・・まぁ、今はいいけどな」

 

そうして手を差し伸べると、リインはその手を取って、光になって隼人の身体の中に入る。

 

(そういえば、融合すれば別の変化とかあるのか)

 

(はい。能力の変化はもちろん、外見にもそれなりな変化があります)

 

そうしてリインは融合をすると、隼人の髪の色が黒から銀に変化して、瞳の色も赤に変わる。

 

「・・・ふむ・・こんな風に変わるのか」

 

隼人は立ち上がると近くにあった水溜りに映る融合時の自分を見た。

 

(融合はお前のタイミング次第か?)

 

(そうです・・・。そうじゃないと隼人が困りますので)

 

(まぁ、そうだよな・・・・。もういいぞ)

 

(わかりました)

 

そうしてリインは融合を解除して、早との髪の色と瞳の色が戻る

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――」

 

「――――――」

 

 

 

「・・?」

 

すると、近くで話し声がしてきて、隼人はその声のほうに歩いていくと・・・・

 

 

 

 

「・・・ほぅこれはこれは・・・・」

 

そして木の陰から前を見ると、そこには一夏と箒の姿があった・・・・

 

何かを話しており、ここからでは聞こえないものも、二人の状況から何の話をしているかはある程度分かった。

 

「・・・・・」

 

そうして隼人は気の陰に隠れて極力気配を消して、その様子を見守った・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

一方一夏と箒が居る岩場とは別の岩場に、ティアは端末を扱っていた。

 

 

 

(報告・・・・・。銀の福音との戦闘記録・・・・。第一戦では織斑一夏と篠ノ之博士の妹、篠ノ之箒の二名による先制攻撃を行ったものも、バインドの出現によって織斑一夏は重傷を負って撤退・・・・。その後自分を含めた専用機持ちの独断による福音の討伐戦の開始・・・。連携によって福音は翼を失うが、その直後に第二形態移行が起こり、その圧倒的な性能に専用機持ちは苦戦したものも、その後第二形態移行した白式を纏った織斑一夏が現れ、専用機持ち全員の奮闘によってこれを討伐・・・・その後別固体のバインドが出現したものも、救世主の出現でこれを撃破・・・・)

 

そうしていくつかのデータを添付して、そのレポートを送信した。

 

 

 

(・・つらいもんだね・・・こういうのって・・・)

 

 

 

そうしてティアは端末の電源を切って、スカートのポケットに入れる。

 

 

 

「でも・・・もう時間が無いんだ・・・」

 

そしてティアは旅館に戻っていった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・」

 

千冬は静かに息を吐いて旅館の廊下を歩いていた・・・・

 

(正直・・・あいつが生きていたことは・・私も嬉しいさ・・・。だが・・・)

 

あの後一夏と輝春とで話しをして、色々と真実を聞かされた。

 

 

 

なぜ輝春が死んでいると言われたのか・・・・

 

なぜ生きていたのなら戻ってこなかったのか・・・・

 

なぜISを扱うことができるのか・・・・

 

 

 

 

「・・・・・」

 

そして千冬は部屋の戸に手を掛けようとした時・・・・

 

 

 

「ここいいらっしゃいましたか、織斑先生!」

 

すると慌てた様子で山田先生がやって来た。

 

「どうした・・・そんなに慌てて?」

 

「じ、実は・・・・先ほど・・・上層部より機密通信を・・・受けたので・・」

 

「なに・・?」

 

「ここでは話せる内容ではありません・・・。外で話しましょう」

 

「分かった」

 

そうして二人は旅館の外に出た・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、一体何の伝達だ?」

 

「・・・これを見てください」

 

そして山田先生は端末を渡して、千冬は端末を手にして画面を見る。

 

 

「・・・これは・・」

 

そしてその内容を見て千冬の表情は険しくなる・・・・

 

 

「・・特務任務レベルB・・・・後日午後一時より作戦を開始されたし・・・・。軽く言ってくれる・・・」

 

千冬はガリッと歯軋りをする。

 

 

画面には『海賊バシリスタの討伐』とその関連データが表示されていた・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃・・・・・・

 

 

 

 

 

「くそ・・・・やってくれるぜ全く!」

 

と、一人の女性・・・・オータムは愚痴って壁を蹴る。

 

「あの野郎・・・今度会った時には徹底的に叩きのめしてやる!」

 

 

 

 

 

「・・・・?」

 

すると左の通路側から鎖の当たる音がした。

 

そしてその音はどんどん近づいて来て、光が当たっているところに音も元が現れた。

 

「・・ベータか」

 

「・・・・・」

 

するとそこには一人の女の子が居た。

 

黒く艶のある髪を腰の位置まで伸ばしており、背丈はそれなりには高い方である。格好としては頭以外をすべて覆う全身スーツを着用しており、色は青味が入っているグレーと紺のラインが入っていた。その上に薄いブラウンのコートを羽織っていた。両手にはなぜか錠と鎖が付けられており、両足には余裕があるが同じように鎖と錠が付けられていた。その顔はとある人物と瓜二つであった・・・・

 

「なんか用か」

 

「・・・・・」

 

 

「けっ!・・相変わらず無口な野郎だな」

 

「・・・・・」

 

「・・その顔を見ているとムカつくんだよな・・・あの野郎と同じ顔だからな」

 

 

「・・・・・」

 

 

 

 

 

「だったら・・・どうするんだい」

 

すると、ベータの後ろから一人の男性が現れた。

 

少しボサついた金髪をしており、格好としてはよくあるような科学者のもので、薄い緑のシャツにネクタイ、その上に白衣、茶色のズボンというものだ。三十代ぐらいと思われるが、その顔はどこか狂気に満ちている。

 

「ドクターか」

 

「・・もし殴りかかろうという考えはやめておいたほうがいいよ。命が惜しければね」

 

「・・・前から思っていたんだが・・・何で錠や鎖をそいつに着けているんだよ。趣味がわりいな」

 

「勘違いしないで欲しいものだね・・・。これはあくまでもベータのリミッターみたいなものだよ・・・。まぁ、気休め程度だがね」

 

「・・・・・・」

 

「まぁ、ベータはこの状態でも君とは対等以上に戦えるのだよ。仮にベータに鎖と錠が無い状態であれば、君は一瞬で命を落とすことになる」

 

「・・・・・」

 

「しかし、私はそんなことは言わない・・・。今のところはね」

 

「・・・・しかし、何だってあんなやつのクローンなんか作りやがったんだよ。あんたに何の得があるんだ」

 

「あるとも・・・・。・・・何せ・・・ベータのオリジナルは・・『特異点』だからね」

 

「特異点?なんだそりゃ」

 

「・・・特異点・・・それは人類の進化の形」

 

「人類の進化ぁ・・?」

 

「そう。特異点は通常の人間にはない優れた能力を持った存在・・・・。つまりは人類進化の申し子なのだよ」

 

「・・・・・」

 

「だが、それはいつ現れるのかは分からない。一年後か・・・十年後か・・・それとも一世紀後か・・・。だが、仮に特異点の能力を持っていたとしても、覚醒しなければ意味が無い」

 

「・・・・・」

 

話が難しいのか、オータムは話に追いつきれていなかった。

 

「・・・そこで、私は特異点を再現すべく、特異点の人間よりDNAを採取して、クローンを作ろうと計画を立てたのだよ」

 

「で、あいつを選んだってわけか」

 

「本来であれば彼の両親のDNAを採取する予定だったのだよ。二人は偶然が生んだ特異点同士の夫婦だから・・・。だからこそ採取したかったのだが・・・君が消し炭にしてくれたからね」

 

「あぁそうかい・・・。悪かったな」

 

「・・まぁ、あの二人の子供である彼なら、特異点としての能力を受け継いでいると考えたのだよ」

 

「・・・・・・」

 

 

 

「だが、完全なクローンが中々できなかった・・・・。だから、この子の完成までに・・どのくらいの失敗作ができたか・・・」

 

「・・・無駄になったってわけだな」

 

「失礼なことを言うね・・・。あの子達はこの研究を成功させるための土台となってくれたのだよ」

 

「・・・へ理屈を」

 

 

「だが、そんな失敗を乗り越えてベータが完成したのだよ・・。クローンとして・・・そして私が同時に研究していた・・・・『戦闘機人(バトルヒューマロイド)』としてね」

 

「・・・・マッドサイエティストが」

 

「君もそうだろう?」

 

 

「・・・・けっ」

 

そうしてオータムはその場を後にした・・・・

 

 

 

 

「・・・ベータ・・先に研究室に行きなさい。調整を施そう」

 

「・・分かった・・・ドクター」

 

そうしてベータは鎖の音を立てながら通路を歩いていく・・・・

 

 

 

 

「相変わらずあなたも研究熱心だこと」

 

すると、男性の後ろから一人の女性がやって来た。

 

「これはこれは・・ミススコール・・・。あなたから会いに来てくれて光栄です」

 

と、男性はスコールと呼ばれる女性のほうを向きお辞儀をする。

 

「それにしても、あなたの研究結果は上々らしいわね」

 

「えぇ・・・。ベータは予想以上に力を発揮してくれましたよ」

 

「そう・・・。それは良かったわね。それで、残りも今後投入していくと?」

 

「えぇ。私の子供達はもう少しで目を覚まします。そして『ナンバーズ』と名乗った彼女達は、亡国機業に大きく貢献してくれますよ」

 

「それはありがたいわね・・・。ところで、例の物はどうなったの?」

 

「もちろんあなたの言う通りに完成させましたよ。先日目を覚ましましたからね・・・」

 

「そう・・・」

 

「何せ、タイプMはかつて最強と呼ばれた女性のDNAを元に作られたクローンですから、あなたの計画を大いに進めてくれるでしょう」

 

「・・・・・」

 

「・・しかし、持ち主の影響が強く、結構扱いづらい人材になってしまいましたがね」

 

「構わないわ。その為にあなたには言っておいたはずよ」

 

「えぇ。もちろん監視用のナノマシンは既に注入済みです。もし命令違反を起こすようであれば、いつでも始末をしても構いませんから」

 

「・・そうならないことを祈っておきましょう」

 

そうしてスコールは男性に頭を下げて、そのまま歩いていった・・・・

 

 

 

 

 

 

 

後書き

まさかの千冬と一夏の兄が登場(もちろんこの作品オリジナルですが・・・・)。しかしこの作品は様々なクロスがあって混乱しているとコメントにありましたが・・・基本的にはISとガンダムシリーズがほとんどで、一つ二つか他作品から用語かキャラクターがあるだけ・・・なはず・・。

さて次回、あの組織が登場します(亡国機業じゃないよ)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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