7.狂おしき目覚め
刑夜side
グレモリーのトンデモ発言の後、オレたちは部室に置かれているソファーに座っている
全員座ったところで部長専用であると思われる豪華なデスクに寄りかかるように座っていたグレモリーが口を開いた
「改めて言うわね。私たちは悪魔なの」
その言葉にまた驚いているイッせーを横に、オレは納得をしていた
グレモリーたちの違和感の正体が何なのかこれでわかった
「信じられないのは仕方ないわ。でも事実よ。
昨夜あなたたちが見た黒い翼の男がその証拠よ」
昨日のことを思い出したのかイッセーは息を呑んだ
そりゃあ、忘れられねぇほどの出来事だからなぁ
「あの男は堕天使。元々は天界で神に仕えている天使たちの中で、邪な感情を持ったために冥界に堕とされた者たちの成れの果て。
そして、私たち悪魔の敵でもあるの」
ほぉ、てっきりオレは手を組んでると思ってたぜ
どうやらいろいろと事情があるようだな
「私たちと堕天使は太古から冥界の覇権を握るために争っているわ。今では冥界は悪魔と堕天使の二大勢力となっていて二つに分かれているわ。悪魔は人間と契約を結んでその代価をもらって力を溜め、堕天使は人間を操って悪魔を滅ぼそうとしているの。そして天使たちは神からの命により悪魔と堕天使を容赦なく倒そうと第三勢力となっていて、三すくみになっているわ」
どこも変わらんな
お互い気にいらねぇから潰す
人間と大差ねぇな
「いやいや何言ってるんですか先輩。俺はどこにでもいる高校生ですよ。そんな事言われても信じられませんよ」
イッセーの反応は当然だろう
こんな事言われても否定すんのは当たり前だ
でもオレは転生ってもんを経験しているから信用できるがなぁ
そう思っているとグレモリーはイッセーを黙らせる一言を発した
「天野 夕麻」
「……!?」
「あの日あなたは彼女とデートしていたでしょ」
「……悪い冗談はよしてくださいよ。こんな状況でそんな話をされたら余計訳がわからなくなります」
イッセーにとってはとても辛ぇことだからなぁ
オレはともかく、自分以外は覚えていない彼女を語られてんだからなぁ
だがそんなイッセーをさらに追い詰める気なのかグレモリーは懐から一枚の写真を取り出してイッセーに見せ付ける
その写真にはイッセーとあの女が写っていた
それを見て言葉を失ってしまったイッセーをよそにオレは自分の中で何かが渦巻く感じがした
「この子よね?
天野 夕麻ちゃんは」
グレモリーの言葉にイッセーはただ頷くしかなかった
これでもう否定することはできなくなったっていうことか
「この夕麻ちゃんは、いえ、これは堕天使。昨夜あなたたちを襲った男と同じ存在よ。そしてこの堕天使はある目的のために一誠、あなたに接触をしてきたの。その目的が果たされたから彼女は周囲から自分の存在を抹消させたの」
「その目的って」
目的というのがイッセーは気になったのかその疑問を口にした
「…………あなたを殺すという事よ」
「なっ!?」
目的はわかったが…………何故イッセーなんだ?
その訳がわからねぇ
イッセーになるかあるというのか
「なんでっ!?どうして夕麻ちゃんが俺をっ!!」
「落ち着いて一誠。仕方なかったのよ。……いいえ、運がなかったのよ。」
「運がなかったって!納得できませんよ!!」
そんな理由じゃぁ誰だって納得できねぇよ
オレも結果的には死んだ訳だしよぉ
だが変だ
殺されたオレたちは今こうして生きている
一体こいつは何をしやがった
オレがそういう視線をグレモリーに向けると
「悪いんだけど、先に説明したい事があるから待ってちょうだい」
その視線に気づいたグレモリーはそんな事を言ってきた
「じゃあ、続きね、彼女があなたに近づいたのはあなたの身に眠る物が一体なんなのか調べるため。そしてそれが何なのかわかって確定されてしまったの。
あなたが|神器《セイクリッド・ギア》を宿す者である事が」
神器……何だそりゃぁ
聖遺物とは違ぇのか
「神器というのはね、特定の人に宿る規格外の力の事なんだよ。歴史上名前が残る活躍をした人たちの多くはみんな神器を身に宿していたんだよ」
「現在でも神器を宿している人たちは確認されていますのよ。ほら、世界で活躍している方々がいらっしゃるでしょう?
あの方々の多くも身に神器を宿していますわ」
木場と姫島がオレたちにわかるように説明してきた
…………規格外ねぇ
オレとしてはかの水銀が作り出した聖遺物の方が規格外だと思えるんだが
そう考えているとグレモリーが
「一誠、左手を上にかざしてみてちょうだい」
なんて言ってきた
「え?」
「いいから早く」
イッセーは戸惑いながら左手を上に上げる
「目を閉じてリラックスして。そしてあなたが一番強いと思うものを想像してみて」
「い、一番強いものですか」
そう言いながらイッセーは考えていると
「…………ドラグ・ソボールの空孫悟ですかね」
…………はっ!
前世で見たあの某龍玉の主人公を思い出しちまったぜ
なかなか似ているからよぉ
「じゃあ、それを想像してみて、そしてその人物の最強だと思う姿を思い浮かべながらその姿を実際にやってみせて」
…………何故だろう
この後何が起きんのかわかってきたぞ
オレが冷や汗を流してその一連の行動を見ていると
「…………ド・ラ・ゴ・ン・波ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
イッセーがマジでやりやがった
…………ホントにやるとは思わなかったぜぇ
「さあ、一誠。目を開けてみて。これで神器が発現するはずよ」
そう言われてイッセーはゆっくり目を開けていくとイッセーの左腕が光りだし、その光が収束して
いつの間にかイッセーの左腕には赤い色をした籠手が填められていた
「な、なんだぁこりゃあぁぁぁぁ!!」
それを見たイッセーは叫びを上げた
ほぉ、これが神器っていうやつか
「無事に発現できたようね。おめでとう一誠。それは正真正銘あなたの神器よ。それに一度発現できればいつでもあなたの意思でだすことができるわ」
そう言ってグレモリーは微笑みだす
イッセーは今だに自分の左腕に装着された赤い籠手を見ている
「ふふっ、じゃあ話の続きをしましょうか」
その言葉を聞いたイッセーは赤い籠手を消してソファーに座る
「ああ、その前に刑夜。何かわからないことがあるかしら」
話を再開する前にグレモリーがオレに聞いてきたがそれに対してオレは
「いや、今のところ大体わかってるからいいぜ」
きっぱり断った
「そう、……ふふ」
オレの返事を聞き、何故かグレモリーは笑いだしてきやがった
「……いきなり笑いだしやがって、どうしたんだよ」
「ああ、ごめんなさいね。ただあなたらしいと思っちゃって」
「はぁ?長い付き合いでもねぇのに知った事を言うんじゃねぇよ」
「ふふ、それもそうね」
そう言いながらまだ笑いやがるグレモリー
ホント何がおかしいんだか
「ふふ、話を折って悪かったわね。じゃあ、続きといきましょうか。一誠の神器を危険視したのか天野 夕麻は一誠を殺す事にしたんだけどその時に刑夜、あなたが乱入して一誠は逃げる事はできたけど待ち伏せしていたほかの堕天使に殺されたの。でもその死に際にこれによって私を呼んだのよ」
と言ってグレモリーはある一枚の紙を取り出してきた
何々ぃ?
…………『あなたのお願い叶えます』だぁ?
すっげぇ怪し過ぎる……
新手の勧誘にしかみえねぇ
「このチラシは私たちが配っている物なの。このチラシに施されている魔方陣で私たちは召還される仕組みになっているの。あの日人に化けてチラシを配っていた私たちが使役している使い魔から偶然にも一誠はチラシを受け取っていたのよ。そして死ぬ直前で一誠は私を呼び出した。本来なら朱乃たちが呼ばれるんだけど、私を呼び出すほど願いが強かったのね」
ふうん、ようするにイッセーのおかげでオレも助かったってぇことか
「召還された私は死ぬ寸前だった一誠を見て、瞬時に神器所有者として堕天使に殺されたということを理解したわ。それにもう治すのは不可能な状況だったから私はあなたを悪魔として転生させることで救うことにしたのよ」
そう言った後グレモリーはオレを見てきた
「そして一誠を悪魔として転生させた私は一誠が逃げてきたところが気になって、向かってみたら刑夜、死に掛けのあなたを偶然見つけて一誠と同様に救ったの」
「ようするに、オレはテメェの気まぐれで助かったってことか」
「悪く言えばそうなるわね」
「まあそれでも……感謝しているがな」
オレがそんな事を言うとグレモリーが意外なものを見るような目をしてきた
…………なんだよその顔は
しかもほかのやつらも同じように見てくるしよぉ
「…………んだよ、その顔はよぉ」
「いえ……あなたがお礼を言うとは思えなかったのよ」
ほかのやつらも頷いていやがる
「失礼なやつらだなぁ、オイ。気まぐれでもオレはこうしてテメェに救われたんだ。感謝ぐれぇはするだろうが」
「そう……、じゃあ受け取っておくわ」
そう言った後グレモリーたちの背中から翼が生えてきた
その翼は堕天使共とは違い、コウモリのような翼だった
そう思っているとオレとイッセーの背中からもグレモリーたちと同じ翼が生えてきた
アァ……そうかぁ……これでオレも……
「改めて挨拶するわね。まず祐斗」
「はい、前にも言ったけど木場 祐斗って言うよ。二人と同じ二年生で、僕も悪魔だよ」
そうさわやかに言う木場
「………塔城 小猫……一年生です。よろしくお願いします。…………同じく悪魔です」
相変わらず静かに言う塔城
「三年生であなたたちの先輩の姫島 朱乃ですわ。この部活の副部長もやっていますし、これでも私も悪魔ですわ」
ニコニコと笑いながら言ってくる姫島
「そして私は彼らの主であり、グレモリー家の次期当主でもあるリアス・グレモリーよ。よろしくね、刑夜、一誠」
そして紅い髪を優雅に揺らしながら言うグレモリー
…………人外かぁ…………
改めてグレモリーが挨拶した後ふとイッセーが
「あれ、そういえば刑夜にも神器はあるんじゃないですか?」
と思った事を言ってきたのでそれを聞いたグレモリーが
「そうね、刑夜にも神器があるのか見てなかったわね」
と納得してきてオレに顔を向けて
「じゃあ、刑夜。あなたの神器がどんなものなのか見てみましょう」
なんて言ってきやがった
…………確か自分の中で一番強い存在を思い浮かべんだよなぁ
そう思い浮かべていくとふとある男が浮かんでくる
…………あの白き吸血鬼の姿が…………
その瞬間ある衝動が体中を駆け巡ってきた
…………この感じは…………まさか…………
「なぁ、グレモリー……、少し広ぇところでやらしてもらうぞ……」
「え?別にいいけど」
オレはグレモリーの了承の言葉を聞き、あの大きな紋章の中心に立った
そして目を閉じてまた思い浮かべる
そうしている内に体中の血が速く駆け巡っていくことがわかってきた
…………アァ、そうかぁ……そういうことだったのか……
オレは本当はこんなことを望んでいたのか…………
オレの中で渦巻く渇望に気づいたオレはもう興奮が抑えられねぇ
だからこそオレは右腕を前にだし、肘を曲げ胸の前に構えて
あの言葉を紡いだ
side out
三人称side
魔方陣の中心に立った刑夜を見ていたリアスたちは彼のいや、この場の空気が変わった事を察知した
そして警戒しながら彼を見ていると彼の周囲から紅い魔力のようなものが集まりだしていくのが見えてきた
それがだんだんと速くなっていき、ついに彼が発動の言葉を紡ぎだした
『形成(Yetzirah)』
そう彼が言いだした瞬間紅い魔力のようなものが爆発し、
----彼の右肩、右肘、手の平などの体中から体を突き破って漆黒の杭が現れた
「「「「「……!!?」」」」」
この光景を見たリアスたちは驚愕した
彼の体からでてきた杭を見て全員がこう思った
あれは何なんだ?
あれは本当に神器なのか?
そう思いながらさまざまな反応をみせる
祐斗はその禍々しさを感じて冷や汗を流し
小猫は本能的にその凶悪性を理解して体を震わせながら怯え
朱乃は笑みを消して、困惑し
一誠は顔を青くしながら見ていた
そんな中ただ一人、リアスだけは反応は違った
初めは驚いていたがそれが嘘のようにその顔には歓喜に満ちていた
自分の思っていたことが正しかったのを理解して刑夜を見ていた
そして、この状況を作り上げた刑夜はというと
彼の目は本来白いはずであるところが黒く染まり、紅い瞳はさらにギラギラと光り輝き、
その顔にはまるで狂ったような笑みが浮かばれていた…………
今このとき、白き吸血鬼が目覚めた…………
side out
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遅くなりましたがどうぞ。