No.464496

乱世を歩む武人~第二十四話~

RINさん

いつから不定期更新に翌日がないと錯覚していた?


桂枝の天敵が現れるお話。

2012-08-03 22:23:06 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4370   閲覧ユーザー数:3729

劉備さんたちを益州に送り届けて数日。

 

袁紹、袁術が徐州を取り合い平定しているこの間、この陳留にはつかの間の安息があった。

 

そしてその間に私がなにをしているのかというと・・・

 

桂枝

「なぁ・・・俺行かないとダメ?」

 

一刀

「いや・・・やっぱ仲間なんだしちゃんと挨拶しておけよ。」

 

 

桂枝

「まぁ・・・それもそうか。」

 

 

北郷に連れられて張三姉妹への屋敷へと向かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

董卓軍からこちらにきたにあたりもう随分経つが私は張三姉妹に会ったことは一度もなかったのだ。

 

先日、領内で若者が集まり暴れているという話がでたときに張三姉妹を派遣することで抑えようという提案が出た時にそれが判明。

 

それを聞いた北郷が「ならば紹介するから会いに行こう」と言い出し今に至る。

 

 

 

 

 

 

一刀

「しかしなぁ・・・まさか一度も面識がないとは思っていなかったよ」

 

桂枝

「ああ、基本城のなかにいるし一応経費計算中に「数え役満☆姉妹」ってちょくちょく見るから名前だけは・・・って感じだな。」

 

一刀

「あ~そっか・・・そうだよな。内勤だと見る機会は少ないよな」

 

納得したように頷く北郷。

 

桂枝

「なぁ、そういや「しすたーず」ってどういう意味だ?」

 

一刀

「ああ、天の国での姉妹って意味だよ。ソッチのほうが呼び方がいいだろ?」

 

桂枝

「むぅ・・・わからん感覚だ。」

 

そうこうしているうちに目的の場所についた。

 

一刀

「着いた着いた。おーい、誰かいるか?」

 

北郷につられて小屋に入ると台帳とにらめっこしているメガネの女性、暇そうに足をぶらぶらさせている赤髪の女性と緑髪の女性がいた。

 

緑髪の女性

「あ、一刀じゃん、ちぃに会いに来たの?」

 

赤髪の女性

「あー!一刀。いいところにきたー♪」

 

楽しそうに駆け寄ってくる二人の女性。

 

なるほど自分自身を見世物にしているだけあり容姿が整っている。

 

一刀

「うーん、悪いところにきたかな?」

 

赤髪の女性

「ぶー。どうしてそんなこと言うのー?」

 

一刀

「んー・・・経験?」

 

赤髪の女性

「ひどーい!ぷんぷんっ」

 

駆け寄ってきた女性は満面だった笑みを一転させ頬を思い切りふくらませる。

 

なんというか・・・表情豊かな人だなぁ。

 

緑髪の女性

「で、そっちの人はだれなのよ一刀?」

 

ここでようやくこちらに視線が向く。

 

一刀

「ああ、この人は荀攸。今日はこの人を紹介するためにきたんだ。」

 

桂枝

「初めまして、荀攸と申します。以後お見知りおきを」

 

一応どのような人なのかを知らないので正式な礼をする。

 

一刀

「いや・・・そんなかしこまった礼をする必要ないって。敬語もいいから。」

 

桂枝

「ん?そうなのか。」

 

なるほど、別にそういう気遣いはいらない人達なのか。主人が直接雇っていると聞いていたから身分などを気にする可能性を考慮していたのだが・・・

 

赤髪の女性

「ふーん・・・へー・・・ほー・・・」

 

なんだろう、すっごい見られてる。

 

赤髪の女性

「うん、コレなら余裕で合格だよ♪」

 

・・・何やら合格したようだ。にっこりと笑顔を向けられているがなにが何やらといった所。

 

緑髪の女性

「えー!天和姉さんこんなのが・・・でも・・・うん、ありかも」

 

こちらも何やらウンウン頷いてる。

 

桂枝

「よくわからないが・・・とりあえず北郷。彼女たちを紹介してくれるとありがたい。」

 

正直名前もわからない状況なのでせめて名前くらいは教えて欲しい所。

 

一刀

「あ・・ああ、そういやそうだったな。彼女たちが張三姉妹で赤髪の子が天和、緑の子が地和、そして座っている子が人和だ。」

 

天和

「よろしくね、荀攸さん♪」

 

地和

「よろしくしてあげる!」

 

人和

「人和です。よろしくお願いします。」

 

三者三様な反応、しかし・・・困ったな・・・

 

桂枝

「なぁ北郷・・・察するところこの名前って真名だよな?」

 

一刀

「そうだけど・・・あ、そうか。う~んどうしようかな・・・」

 

天和

「なになに?何の話?」

 

一刀

「いやな・・・荀攸は真名に対してこだわりがあってさ・・・あんまり人を真名で呼ばないんだよ。」

 

地和

「なにそれ!ちぃ達の真名を呼ぶことに何の不満があるっていうのよ!」

 

桂枝

「不満・・・ではないが私の矜持に関係する問題なので・・・」

 

彼女たちの事情は無論知っている。もと黄巾賊首領であったことも、今は名前を捨てていることも。

 

だがしかし・・・真名は想定していなかった。芸名を新たにつけて活動していると思っていたのだ。

 

一刀

「お前の矜持もしってるけどさ・・・流石にこの三人を名前で呼ぶわけにはいかないだろ。こいつらだけ特別って訳にはいかないかな?」

 

確かにそうだ。名前で呼ぶわけにはいくまい。そんなことをしてもし世間に広まろうものなら主人への非難に、強いては姉貴たちへの迷惑のかかる可能性がある。

 

桂枝

「・・・そうだな。自分の矜持で他に迷惑をかけていたら話しにならん。というわけなので、改めてよろしくおねがいしますね。天和さん、地和さん、人和さん」

 

ならば自分の矜持よりそちらを優先すべきだと判断する。まぁ真名を預ける気はないが。

 

天和

「よろしくね~。荀攸♪」

 

そういってこちらを向いてにこやかな顔を向けてきた。

 

なんだろう。この人とはあまり関わらないほうがいいと、全力で離れろと私の中の何かが告げているような気が・・・

 

人和

「あの・・・荀攸さんってひょっとして最近来た桂花さんの弟の名前じゃ」

 

桂枝

「ええ、たしかに桂花は姉の名前ですが・・・」

 

人和

「やっぱり。丁度よかった、コレ見ていただけませんか?」

 

そういって渡してきたのはひとつの台帳。記入者がきっちりしているのがよくわかる隙のない台帳だ。ただ・・・

 

桂枝

「・・・累計だけでてないんですね。」

 

人和

「どっかの誰かが「暇だー」っていいながらそろばんで遊んでいたせいで割れてしまって・・・」

 

天和

「あはは~♪」

 

そういって明後日の方を向き始める天和。なるほど彼女か。

 

人和

「荀攸さんは計算が得意だとお聞きしています。もしよろしかったらこれの計算をしていただけないでしょうか?」

 

桂枝

「ええ、構いませんよ。どっちにしろこっちに回ってくるものですし。」

 

そういって台帳をパラパラとめくる。経費やその他の記述に関しても特に問題はなさそうだ。

 

桂枝

「ん~と・・・これならすぐですね。」

 

人和

「え?」

 

驚いている人和さんを横目にサラサラと累計を書いて行く。

 

桂枝

「・・・こんなもんかな。で、コレをこっちで預かればいいですか?」

 

人和

「え・・・ええ。お願いします。・・・・あの、本当に今計算したんですか?」

 

桂枝

「ええ、もちろん」

 

なにを言ってるんだこの人は?計算もせずに台帳に記入なんてしないだろう普通。

 

一刀

「はは・・・信じられないかもしれないけど本当に計算してるよ。荀攸が今まで計算間違えたって話は聞かないし大丈夫。」

 

地和

「噂どおり・・・なんてものじゃないわね。まさに「曹魏の歩く算盤」と言われるだけはあるわ。」

 

驚愕の眼差しを向けられた。・・・ちょっと待て

 

桂枝

「なぁ北郷、「曹魏の歩く算盤」って俺のことなのか?」

 

北郷

「そうだよ。知らなかったのか?曹操軍の数字を一手に引き受けいるすごいやつがいるって文官から伝わって街にもそう噂が流れてきたんだ。」

 

・・・なんということでしょう。いつのまにか変な呼び名がついているじゃありませんか。

 

天和

「へぇ~頭もいいんだー・・・ねぇねぇ荀攸ぅー、まだ時間あるしどっか連れてってー」

 

桂枝

「はい?」

 

地和

「うわー、お姉ちゃん本気で気に入ったんだ。」

 

天和

「うん!なんかいい雰囲気してるんだーこの人。だから気に入っちゃった♪」

 

突然の申し入れ。重役的な扱いをせよとは言われているが・・・いいのだろうか?

 

一刀

「なぁ荀攸、少しの間でいいから付き合ってやってくれないか?その間に人和達と次の舞台の予定たてちゃうからさ。」

 

彼女たちの責任者は北郷だ。さすがに監督役にこう言われては仕方ない。・・・未だに逃げたほうがいい気がするのは何故だろう。

 

桂枝

「それは構わんが・・・行くところなんて思いつかないぞ?」

 

天和

「大丈夫、私がいきたいところに行くだけだから。」

 

それは一人でいけばいいんじゃないだろうか?とかいっちゃいけないのだろう。

 

桂枝

「そうですか・・・ならばお伴させて頂きましょう」

 

天和

「決~まり♪いこいこ♪」

 

腕をとれてグイグイと引っ張られる。

 

桂枝

「ちょ・・ちょっと引っ張らないでくださいって・・・」

 

天和

「えー・・・やだ♪」

 

察してはいたが・・・この人自由人だ。しかも一度決めたら他人の意見は聞かない種類の人だ。

 

こういう人には逆らっても無駄なんだよな・・・とあきらめた私は彼女と一緒に街へとでていった。

 

 

 

 

 

天和

「ねぇ荀攸。私楽しい所にいきたい。」

 

街に出たと思えば唐突に彼女がこう言ってきた。

 

記憶違いじゃなければ「私のいきたいところに行く」と言っていたのだが・・・まぁ言っても無駄だろう。

 

とりあえず一般的な見識で考えてみると女性は大抵買い物が好きだったはず。

 

桂枝

「う~ん・・・ならば小物屋にでも行きましょうか?」

 

姉ならば本屋で確定なんだが流石にそういう人でもないだろうと判断。武人でもないしならばコレが一番無難なはず。

 

天和

「小物屋かぁ、それもいいんだけど・・・そうだ!服!」

 

桂枝

「服?」

 

天和

「うん、新しい服が欲しい!」

 

なるほど・・・服か。周りにそういうことに興味を持ってる人がいないから非常に困るところだがいきたいというのならば仕方ない。

 

桂枝

「そうですか・・・じゃあ行きましょう。手持ちは大丈夫なんですか?」

 

天和

「え?無いよ?」

 

桂枝

「え?・・・あぁ、服屋に知り合いがいるんですね。」

 

人に見られるのが商売の彼女たちだ、知り合いがいても全然不思議ではない。

 

天和

「え?いないよ?」

 

だがそんなことはなかった。

 

桂枝

「・・・それでは服を買えないのでは?」

 

天和

「え?わたしが払うの?」

 

桂枝

「え?誰が払うんですか?」

 

天和

「荀攸・・・払ってくれないの?」

 

涙目でこちらに訴えかける天和さん。あれは間違い無く演技だろう。それはわかっている。

 

天和

「ねぇ荀攸・・・お願い。」

 

もはや涙が零れそうなくらい瞳がウルウルしている。これがもし高圧的な態度だったら間違いなく断れたのだろう。しかし・・・

 

桂枝

「・・・ふぅ、わかりましたよ。」

 

天和

「本当!やった!ありがとう荀攸!」

 

涙目の女性というものはとことん心臓に悪くみえるものらしい。とてもじゃないが断れなかった。

 

・・・こんな卑怯な頼み方をされたのは生まれて初めてだ。

 

天和

「じゃあ行こ。あっちにいいお店があるから♪」

 

桂枝

「はいはい・・・」

 

これはしばらくやられそうだなぁ・・・そんなことを考えつつ言われるままに服屋へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天和

「ん~、お腹いっぱい、ありがとう荀攸♪」

 

桂枝

「いえ・・・お気になさらず。」

 

服屋をでてからも大変だった。小物屋にいけばせびられ点心屋の前を通ればせびられと一日中引っ張りまわされていたのだから。

 

天和

「こんなにいっぱい食べたの久しぶり!いつもは人和ちゃんに止められちゃって食べられないんだもん。」

 

桂枝

「まぁそりゃそうでしょうよ・・・」

 

季衣たちほどじゃないがこの人も結構食べるもんな・・・さっきの桃まん5個は食べてたし。

 

ふと気がつくと天和さんはジーとこちらを見つめてきていた。水のような透き通った目がまっすぐにこちらを見ている。

 

天和

「ねぇ・・・なんで?」

 

桂枝

「なんで・・・とはなにがですか?」

 

天和

「一刀の紹介とはいえ私達初対面だよね?なんでこんなに優しくしてくれるの?」

 

桂枝

「・・・そういえばそうですね。」

 

まったくもって意識しなかったがそういや初対面だった。・・・いや、ちょっと待て。

 

桂枝

「それをいうなら初対面の人にこんなにたかるのはどうなんですかね?」

 

天和

「あははっ!だって荀攸ってなんとなく頼みやすいんだもん♪なんっていうのかなー。荀攸ってあんまり頼みごと断らない人でしょ?特にお姉ちゃんみたいな人の。」

 

桂枝

「・・・否定できませんね。」

 

確かにこういう霞さんにもにた自由な人にはよく振り回されることが多い。

 

天和

「やっぱり!あとはね、荀攸からは「弟!」っていう空気が流れてるの。だからお姉ちゃんとしては色々頼みやすいなーっておもっちゃうんだー」

 

桂枝

「・・・別にあなたの弟というわけではないんですけどね。」

 

しかし・・・言わんとすることはなんとなくわかる。しかし確かにこの人の纏う空気はいわゆる「姉」としての雰囲気。物心ついた時から姉がいる私には逆らいづらい非常に厄介なものだ。

 

人としての相性を考えると彼女は私にとっての天敵なのだろう。・・・だから離れろと勘がいっていたのか。

 

天和

「そういうことだから・・・またよろしくね♪」

 

桂枝

「ハハ・・・まぁそんなに会うこともないでしょうけどね。」

 

天和

「えー!なんでよ!私に会うのそんなにいやなの!?」

 

桂枝

「イヤイヤ、ただ仕事上会う機会も少ないだろうなーと」

 

天和

「ぶーぶー、いいもん。また一刀に引っ張ってきてもらうんだから」

 

桂枝

「やめてくださいって・・・」

 

そんな雑談をしながらコレ以上の面倒事にならないといいなぁ・・・と思いつつ彼女を屋敷に送り届け今日という日は終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~翌日~

 

現実は非情だったらしい。昨日の出来事は今ココで間違いなく惨事とつながることを私は確信している。

 

桂花

「さて・・・なにか言いたいことはある?桂枝」

 

桂枝

「・・・イエ、アリマセン」

 

今私は姉の前で正座をさせられている。姉は仁王立ちで眼前に立ち、今にも殺しますと言わんばかりの殺気をだしている。

 

「ん~?どうしたんですか桂枝さん?この世の終わりみたいな顔してますが」

 

あとからひょっこりと風が執務室に入ってきた

 

「風、これを」

 

稟が風に瓦版を渡す

 

「んー・・・「大人気美少女歌手、男との密会現場・・・」おや、桂枝さんの似顔絵まで載ってますねー」

 

桂枝

「いや、別に密会とかじゃなくてね・・・ただ普通に一緒に歩いていたらいつの間にかそうなっていたというか。」

 

桂花

「問!答!無!用!」

 

そういいながら姉は私の左腕を取り

 

桂枝

「痛い痛い痛い!」

 

関節をキめにかかった。

 

桂花

「全く!アンタはすぐに問題を起こしてーーーっ!」

 

桂枝

「いや、この問題は別に姉貴の迷惑には「うるさーーーーいっ!」ギャアアアアアアアアアアア」

 

「あ、今いい音しましたねー」

 

「・・・腕が外れたのでは?」

 

 

 

政務室には絶叫が響いたという。

 

 

 

 

あとがき

 

というわけで天和回でした。これで移転は全て完了となります。長かった・・・。

 

現在日常のネタに非常に悩んでおります。「~との話が見たい」とか見てみたい話がありましたら是非コメントしていただけるとありがたいです。

 

ご意見・ご感想お待ちしております。

 

 

 


 
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