(木之子学園内・競技グラウンド)
升太達ら全員は、レースを行う競技グラウンドに到着した。30分前に放送が流されていたので、ナス研(ナスノヨイチ研究部)部員を含む観客と、ナス研のスタッフはすでに到着しており、人数分の競技生物“ナスノヨイチ”の手入れと、グラウンド整備と、レース用機材が部室から運ばれて、設置されていた。
学歩:うんうん、さすがナス研スタッフ、観客も集めてくれたし、設置も迅速、しかもちゃんと“オッズ表”(払い戻し倍率表)まで取りはからってくれたようだ
1番:神威学歩教授
2番:咲音メイコ様
3番:工藤海斗教授
4番:初音ミク教授
5番:鏡音レン教授
6番:鏡音リン教授
7番:巡音ルカ教授
8番:勇気めぐみさん
9番:古河ミキさん
10番:重音テト様
11番:升太
メイコ:ちょ! このレース、“賭け試合”なの!? 言ってくれれば、レースに出ないで、観客に回ったのに・・・。しかもあのオッズ表、なかなかいい感じになっているし・・・
<連勝複式>
一番人気:1-2(2.1倍)
二番人気:1-7(3.0倍)
三番人気:1-10(3.5倍)
四番人気:2-7(4.0倍)
五番人気:2-10(5.1倍)
六番人気:7-10(8.1倍)
七番人気:7-9(10倍)
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メイコ:“ルカさん-ミキさんで10倍馬券・・もといナス券(?)”なんて、なんて美味しい・・・ミキさん、この騎手の中で一番若いのを知っている私達だったら、絶対取る自信あるわ!
テト:というか、大学の敷地内で賭事やっていること自体、問題だと思うけどね
升太:ミキさんが“さん”で、メイコさんとテトが“様”なのに、オレは敬称無しかい・・・・。しかも、“海斗さん-オレ”のオッズでほぼ最低人気の万馬券・・・
学歩:えー、誤解していると思うが、ここでお金を賭けたレースはやらんよ。あれは、おもちゃのチップを使った、ゲームだ。勿論チップは換金できないよ。観客の内々でやっているかもしれない“チップの量で夕飯おごり”とかそういうのは、目をつむっているよ
ナスーーーーーーーーン!!!!!
学歩:お、出発ゲート前で、ナスノヨイチが嘶いている(いなないている)ようだ。我々も早くレース準備をしよう
升太:しっかし、あのナスノヨイチ、やっぱり変な生き物だよなぁ。お盆の牛の姿なのに牛でもないし、馬でもない・・・
一行は出発ゲート前のナスノヨイチが待機しているエリアに移動した。
ナスーーン! ナスーーン!
ナスッナスッナスッ!
升太:これ・・・本当に僕たちでも乗れるんですか?
学歩:大丈夫だ。中央のくぼんでいる場所に、またぐようにして乗って、手綱を握れば、それでOK
ミキ:あの・・・どうやって走らせればいいんですか? やっぱり手綱をバシバシとかやるんでしょうか?
学歩:いや、ナスノヨイチに搭乗した時点で、ナスノヨイチは手綱で、騎手と意志疎通出来るようになる。騎手が走れといえば、走ってくれる。勿論、走る以外の命令も出せるよ。でもそれは程々にしてくれよ。やりすぎるとレースが無効になっちゃうから
メイコ:程々って事は、“妨害行為”は、常識の範囲内で許されているわけね。うー、腕が鳴る
学歩:だから、程々にね・・・・・
その頃、ミキは一番乗りで、頭の位置に自分と同じ“アホ毛”があるナスノヨイチに騎乗し、手綱を握った。
ミキのナスノヨイチの声:ナスーン、ナスーン、一緒に頑張りましょう!
ミキ:凄い、本当に意志疎通出来る!
ミキのナスノヨイチの声:私の特技は、アホ毛を回転させて、短距離を飛ぶことが出来ます。いざという時に使って下さい
ミキ:わかった! 頑張ろうね!
その後、各自、自分と同じ特徴を持ったナスノヨイチに騎乗して、手綱を握った。
学歩のナスノヨイチは、ナス色のままであり、額に“楽”の文字が浮かんでいる。特技は『とにかく楽勝で勝てるくらい高速走行できる』事だった。ただし、少し猪突猛進気味である事が難点。
メイコのナスノヨイチは、すでに酔っぱらっていて体が赤いのだが、特技が『高速移動』のため、フラフラの軌跡ながら非常に速いのだった。
海斗のナスノヨイチは、白色であり下に両端を垂らしている“青いマフラー”が特徴で、両端を高速回転させることで、“ホバリング移動”できるのだった。ただし観客のアイスにつられてしまうのが欠点であるが。
ミクのナスノヨイチは、体がネギ色であり、ミクと同じく“ツインテール”風のジェットエンジンのエクステンションを付けていた。飛行型に変形することで、ジェットエンジン飛行が出来る。ただ、ネギに目がないことと、ジェットエンジン飛行になると、ほぼ直線飛行しかできなくなるので、使い所が難しい。
レンのナスノヨイチは、全身が黄色で、後方の体毛で“髷(まげ)”を結ってあり、これを回転させることで、“短時間のプロペラ走行”ができるようになっている。動きはそれほど速くないが、プロペラ走行時でも“小回り”が効くので運動性能的に有利であった。
リンのナスノヨイチも黄色だが、頭部の下に大きな“ローラー”を装備しており、動きが全機種中低速だが、“ローラープッシュ”しながら進む恐怖の移動方法を持っている。ある意味“ダークホース”扱いだった。
ルカのナスノヨイチは、体毛がピンク色で何故か“割り箸形状の足が8本”あった。その8本の足を駆使して、タコのジャンプ型の高速移動が可能な特殊機体だった。
めぐみのナスノヨイチは、体が緑色でゴーグルを装着しており、そこから水鉄砲(通称、目からビーム)攻撃が出来て、相手をスリップできる“攻撃型”の機体だった。走行速度は並。
テトのナスノヨイチは、濃赤色で、顔の下に2枚の“死神の鎌”のようなバンパーが取り付けてあり、前を走る機体の足に引っかけて転ばせる事が出来る。走行速度は並。
最後に升太のナスノヨイチは、赤色で何故か頭部に“ツノ”が付いていた。だが、それ以外、まったく装飾がない。走行速度は並より3倍速いのだが、攻撃も特殊走行もできない。そしてかなりピーキーな操作を要求される。
各自、搭乗し終わり、走行練習をしていたとき、ナス研ブラスバンド隊の演奏する“レース開始曲”が流れてきた。
パーパラパー パパパ パーッパラー パパパ パラッパー パパパ パー!!!!
そして、スピーカーから“レースアナウンス”が聞こえてきた。
アナウンス:皆様お待たせしました!!! これよりナスノヨイチ研究部の新歓レース“20年後再会記念 グレードワン”を開始いたします! アナウンスはちょび髭と蝶ネクタイのナス研アナウンス係の千葉です。各ナスノヨイチがゲートに入りましたら、レースを開始いたします!! コースは反時計回りで400m競技トラック2周となります。それでは各ナスノヨイチ、ゲートに入って下さい
各ナスノヨイチ達がゲートに入っていった。
升太:なるほど、800m競争か・・・結構“短期決戦”だなぁ
ミキ:うーん、さすがにアホ毛プロペラで中央ショートカットは出来ないみたいね
海斗:こら! ナスノヨイチ! 客のアイスはいいから静かにしなさい! あとでとっておきのアイスをあげるから!
ミク:頭の前にネギを吊しておくって作戦が出来なかったから、後はジェットエンジンミクか・・・・
テト:ふふふ。全員死神の鎌の餌食になってもらうわよ!
めぐみ:水鉄砲スリップの餌食、最初は誰がいいかなぁ♪
ルカ:この8本足、特殊なんだけど、本当に速いのかなぁ・・・
リン:全員、のしイカ行きだから、勝つのは私よ!
レン:リンのローラーにだけは気を付けないと。特に出走直後が危ないな・・・・
メイコ:ううう、自分の機体だから文句言えないけど、酔っぱらっていて本当に走れるのかな? こいつ?
学歩:ふふふ、ナス研顧問として、負けられないのだよ! 沽券(こけん)に賭けて!
アナウンス:全員入りましたね。では、3,2,1,スタート!!!!!
パーン!!
ガチャン! と音がして、ゲートが開いた!
ナスーーーーーーン!。
各ナスノヨイチが勢い良くスタートしていった!!! 遂に最終チャレンジの火蓋が斬って落とされたのだった!
リン:さぁ、まずは海斗さん! 覚悟しなさい!
海斗:ちょ! まだマフラーホバリングの準備が! くそ! 脱出!
ペラン
海斗のナスノヨイチ:ナスン・・・・・・
海斗のナスノヨイチは、リンのローラーで“のしイカ”にされてしまった。その横に残されて、呆然とたたずんでいたのは、海斗だった。
海斗:すまぬぅ。あとで空気入れて、アイスあげるからな・・・・
アナウンス:おおおっと! レース開始直後、早くも脱落者が出ました! 海斗さん残念無念! それでもレースは続行してます! まだまだ団子状態! そしてこれから序盤の第1ストレートから第1コーナーに入っていこうとしております!
(第1コーナー)
ミキ:コーナーは素直に曲がった方がいいみたいね
リン:さぁさぁ、二人目の獲物よ~。ミキさん、さらば!
リンのナスノヨイチはコーナー手前でインにつけており、そこから曲がるモーションをしないで直線走行して、ちょうど手前を走っていたミキのナスノヨイチを狙って、ローラープッシュしてきた!
ミキ:アホ毛コプター!!
リン:な!
ミキは速度を落として、アホ毛を回転させて空中に逃げた。リンのナスノヨイチは低速ながらも曲がる事をしていなかったため、そのままコーナーの観客の中に突っ込んでいってしまった!
観客:うわ! 危ね!
観客はさらっと逃げたので、ローラーの餌食にはならなかった。そしてナスノヨイチはそのまま進み、壁にぶつかって停止した。
リン:(@□@)
アナウンス:おおっと! 先ほど海斗さんを撃破したリンさんが、今度はリタイアしてしまった! このレース、序盤から荒れております! 空中で回避したミキさんは地上に降りて、再び走り始めました!
ミキ:空中で止まっちゃったから追い上げなくちゃ!
(第2ストレート)
ミク:ミク~ん! ツインテールジェットエンジン、スタートミク!
ミクのナスノヨイチ:ナスン! ガキーーーン!
ミクのナスノヨイチは、必殺装置のジェットエンジンを変形させて、ノズルを後方に向け、ジェットエンジンを点火させた!
ゴゴゴゴゴ!!
ミク:ゴォミク!
ミクのナスノヨイチ:ナスン!
第3コーナーにいるネギを持った観客:シャリシャリ、行け行け! ゴーゴー!
ミクのナスノヨイチ:キュピ━━━━(゚∀゚)━━━━ン!! ナスーーーーーン!!!!!!
ミク:ちょ! こら! そっちはコーナー・・・・
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!
ナスノヨイチは猛スピードで第2ストレートを飛んでいった、そう、トップの学歩のナスノヨイチの横を風のように追い越していった。だが、第3コーナーを曲がる事をせず、そのまま、ネギを食べていた観客の中へ突っ込んでいって、観客からネギを奪って止まったのだった。当然、猛スピードから急停止したのだから、ミクさんは驚いて手綱を放していたため、慣性の法則により、第3コーナーの先の先へすっ飛ばされ、その先にあったプールへ飛び込んでしまった。
ザブンッ!!!・・・・・・・・・プカァ~
ミク:/(×□×)\
アナウンス:おおっと! ここでミクさん、脱落! ジェットエンジンはあったものの、ナスノヨイチの制御を誤ってしまった! レースは混戦模様だ! 集団は第4コーナーに差し掛かっているぞ!
(第4コーナー)
メイコ:うーん、しっかしこの酔っぱらいナスノヨイチ、まともに真っ直ぐ走ってくれないわね・・・。速いから先頭集団にいるけど、これじゃまずいわね・・・
レン:ビュンビュン! このナスノヨイチ、小回り効くねぇ~。カーブなんてなんのその! メイコさん、追い抜くよ~
メイコ:くぅ~
レンのナスノヨイチがフラフラ走っているメイコのナスノヨイチを追い抜こうと、後方で準備していた。しかし・・・
メイコのナスノヨイチ:ナス~、ういっく・・・・ふらら・・・・ふらら・・・・
メイコのナスノヨイチは、今までのフラフラより、ランダムに千鳥足になるような走り方に変わってしまった!
レン:ちょ! 酩酊(めいてい)?? これじゃ、軌跡が読めないよ!
メイコのナスノヨイチ:うぃ~、ばたん
メイコのナスノヨイチはレンの走行ライン上に倒れて寝てしまった。
レン:ちょ! 危ない!
メイコ:うわ!!!!
ガチャン!!!! バタンバタン!!!!
メイコ:(@△@)
レン:(×○×)
アナウンス:おおおおおっとぉ! 第4コーナーで再びアクシデント! 酩酊になったメイコさんのナスノヨイチがレンさんのナスノヨイチと衝突!! 二人とも走行不能で、リタイアだ! 係員が急行して、コース外に移動してます!
(第3ストレート)
集団は3つに別れ始めていた。トップグループが、学歩、ルカ。第2集団がミキ、テト。第3集団がめぐみ、升太であった。升太は並の3倍速いから、トップグループにいるはずだったが、集団を追い抜く際の技術が巧くいかず、結局ビリ集団にとどまっていた。めぐみは第2集団くらいにいるはずなのだが、何故かビリ集団だった。
めぐみ:ふふふ・・・・コースもあと1周。そろそろ武器を開放する時ね。撃てる水鉄砲は4発。前の4体を迎撃するにはちょうど良いわ。では。オープン・ザ・ゴーグル!!
めぐみのナスノヨイチ:ナスーン!
ナスノヨイチのゴーグルの中央から2門、水鉄砲を発射する砲身が現れた。
めぐみ:いくわよ~、ショット!
バシュッ!
ミキ:うわ! なになに!?
テト:ちょ! なにこれ!?
ゴロン! ゴロン!
第2集団のミキとテトのナスノヨイチは足下に水鉄砲を喰らって、スッ転んでしまった! しかし、体勢を立て直せるので、リタイアではなかった。
めぐみ:次行くわよ! ショット!
バシュ!
学歩:うわっ!
ルカ:ちょっ!
ゴロン! ゴロン!
先頭2体が倒されてしまった。学歩のナスノヨイチは体勢を立て直せるのでリタイアではなかったが、ルカのナスノヨイチは8本の足が絡まって動けなくなってしまった!
ルカ:くぅ~、悔しいぃ!
めぐみのナスノヨイチは、体制を立て直し中の第2グループを横切ろうとしていた。
めぐみ:悪いわね、じゃーねー
テト:そうはいくか! 死神の鎌バンパー、オープン!
ガキーン!
めぐみ:うわ!
ゴロン!
テトのナスノヨイチは倒れていながらも、装備の“死神の鎌2つで構成されたバンパー”を引き出し、めぐみのナスノヨイチの足に引っかけた! 当然めぐみのナスノヨイチは、思いっきりスッ転んでしまったのだった!
アナウンス:おおっと! ここでまたまたアクシデント! 水鉄砲攻撃で倒されたテトさんと、追い抜こうとしためぐみさんが組み合ってリタイア!! その横を“漁夫の利”のように追い抜いていく、升太さん!!
升太:あ、あの、すんません、先に行かせて貰いますね
テト:升太! 私の分も頼むよ!
升太:わかった!
アナウンス:これで集団構成が変わったぞ! 升太さんを先頭に、起きあがった学歩さんとミキさん、の順番の3つに絞られたぁ! 3体は2周目に入り、第5コーナーを過ぎ、第6コーナーを越えて、第4ストレートに突入したぁ! これで残りはトラック半周になったー!
(第7コーナー)
升太:今までは“追い抜く”事が巧くいかなかったから、ビリだったけど、“先頭”のままなら、そんなこと関係ない! これで逃げ切りだ!
学歩:そうはさせるか! 絶対抜き去る!
ミキ:私も頑張りますよ~!
ナスーン!
アナウンス:各ナス、正攻法で走っております! レースは最終コーナーを過ぎて、最終ストレートに突入した! 升太さん、学歩さん、ミキさん、各ナス、ほとんど横一線になってます! しかし、わずかに升太さんがリードか!
学歩:負けられん!
ミキ:もうちょっと!
升太:逃げ切ってくれ!
パーン!!
係員:ゴール!
アナウンス:残った3選手ともに、ほとんど同時にゴールしてます! どうやら写真判定になるようです!
(5分後)
升太:誰が一位だ?
学歩:ほとんど同時だったからなぁ
ミキ:私、最後は頭、突きだしていました
アナウンス:おおっと! 判定結果が出たようです!
写真判定係:えー、写真判定の結果を申し上げます。各ナスノヨイチ、騎手共に、全員同時でした
升太:え!? じゃあ、引き分け?
写真判定係:しかし、突きだしていたミキさんの頭部にある“アホ毛”が、わずかに先にゴールしていたので、このレース、ミキさんの勝ちとします!!!!
ミキ:やったぁ!!!!!!!!
学歩:あ、アホ毛・・・・・・
升太:アホ毛に負けた・・・・・
写真判定係:尚、2着は、升太さんのナスノヨイチについている“ツノ”が、ごくわずかですが、学歩さんより先にゴールしていたので、升太さんとなりました!
升太:ほっ。2着になれた・・・
学歩:ぬぉぉぉぉぉ・・・・3着・・・・・・残念無念・・・・
アナウンス:それでは、ナスノヨイチ研究部の新歓レース“20年後再会記念 グレードワン”の勝者は、ミキさんと決定し、結果、ミキさん-升太さんの組み合わせなので、
『9-11』
が当たり券となりました!
観客:そんな組み合わせ、予想しているヤツ、誰もいないっての!!!!!
(競技グラウンド横)
観客も帰り、ナス研の部員達が片づけに負われていた。
学歩:うむ。新歓チャレンジの最後は、結局、ミキさんが勝利を飾りましたな。いやはや
ミキ:有り難うございます!
ミク:ミク~、来年の“ミキさんの新歓チャレンジ”が楽しみミクね
升太:ぬぉぉ、最後の挑戦でも勝てなかった・・・
リン:まあまあ。みんなで挑戦したんだから、いいじゃないの。楽しかったし
海斗:危なく、“のしイカ”になりそうだったけどね・・・
メイコ:ナスノヨイチ、丈夫よね。空気入れたら、元に戻ったわね
学歩:ナスノヨイチをナメたらいかんぜよ
レン:さて、これで20年前から続いた、“升太君の新歓チャレンジ”は終わったわけだ。皆さん、ご苦労様でした
ルカ:そうね~、やっとこ終わったわね~。いやー、我が事ながら、私たちって、“もの凄くのんき”よね~
めぐみ:ははは、そうね。20年間で1つの行事を終わらせたんだから。まぁ各自、ここの教員になりたかったわけで、まぁ結果オーライよね
テト:・・・・・・・・
メイコ:さて、それじゃ、私たちは各自の研究室に戻るとしますか。あ、升太君、また何かあったら、私たちの研究室とか部室棟の部屋にでも遊びに来てね。いつでも歓迎するわ
海斗:そうだな。来年の“ミキさんの新歓チャレンジ”には、また升太君にも参加して欲しいしな。“先輩”ということでね
升太:はい、楽しみにしてます
めぐみ:それじゃ、ばいば~い♪
升太、テト、ミキ以外の教員メンバーは全員、帰っていった
ミキ:あの、私もそろそろお暇(おいとま)しますね。凄く楽しかったです!
升太:こちらこそ、楽しかったよ。僕は普通通り、テトと大学・・・えっと、昼食の時に食堂にいるから、遊びに来てよ
ミキ:はい! それじゃ、さよならです!
升太:そんじゃね~♪
ミキも校門の方へ歩いていった。
升太:・・・・結局、テトと僕だけになっちゃったな。さて、とりあえず・・・どこ行く? まだ僕の部屋に帰るには早いしなぁ
テト:・・・・・・私と“部室棟屋上部屋”に来てくれない?
升太:? 部室棟屋上? そう言えば、あの世界では、君のお父様のデスさんと会ったんだっけな。いいよ、僕も“20年経過した部室棟”を見てみたいからね
テトと升太は、(結局位置は変わっていなかったが)地図看板を頼りに、部室棟へ向かった。
***
(部室棟・1F玄関)
升太:懐かしいなぁ、桜の木から移動して、アノ世界では、ここからスタートしたんだよね。チャレンジ。最初はびっくりしたよ
テト:・・・・屋上部屋へ行きましょう
升太:あ、ああ、わかった
(部室棟・屋上部屋前)
升太:そうそう、ココを通って、屋上に入ったんだったね。で、今のここに、なんかあるの?
テト:・・・・・入って
升太:あ、ああ、いいけど・・・
ガチャ バタン
二人が屋上部屋に入ってランプをつけてドアを閉めた。
升太:あのときは急いでいたから良く覚えてないけど、なんか変わってない気もするなぁ
テト:・・・・・ハッ!!!!
ビューーーーーーーーーン・・・・・・・・・パァァァ・・・・・パ!
部屋の空間がねじ曲がった感じがした後、部屋の片隅に、2本の“死神の鎌”が現れた。
テト:・・・・・あなたの挑戦は、まだ終わってないわ
升太:ちょっ・・・テト! どういうことだ!
テト:あなたの挑戦は、“冥界”にあった部室棟からスタートした・・・・
升太:そうだけど、あのとき中止された2つの部を含めて、20年後の今、ちゃんとチャレンジは終わったじゃないか!
テト:終わって無いわ。もう1つ、“あの時、中止された部”が残っている・・・・・・
テトは部屋に出現した、2本の“死神の鎌”を取りに行った。
升太:ま・・・まさか・・・・
テト:私はあのとき、ちゃんと言ったはず。“中止にせざるを得ない”って・・・・・
升太:ちょ・・・ちょっと待ってくれ・・・・まさか・・・・“最後の部活”っていうのは・・・・
テトは1本の死神の鎌を握りしめ、もう1本を升太の方へ放り投げた。
テト:ここだけを一時的に“冥界にある異世界”にしたわ。現世の人間は、現世にある部屋を通り抜けられる
升太:ま、待ってくれ! その先は言わないでくれ!
テト:さぁ、その死神の鎌を握り、私と闘って勝ちなさい! 最後の部活は、永遠の部長である私の部活、“格闘研究部”よ!!!!!!!!
(続く)
CAST
主人公・墓火炉 升太(ぼかろ ますた)=升太:とあるボカロマスター
案内役 兼 格闘研究部部長・重音テト:重音テト
工学部・生物化学科教授(料理研究部顧問)・初音ミクさん:初音ミク
建築学部・建築学科教授(技術研究部顧問)・鏡音レンさん:鏡音レン
建築学部・建築学科教授(模型研究部顧問)・鏡音リンさん:鏡音リン
理工学部・考古学科教授(温泉&お酒研究部顧問)・咲音メイコさん:MEIKO
経済学部・経営学科教授(アイス品評研究部顧問)・工藤海斗さん:KAITO
工学部・植物科学科教授(バトルマスター研究部顧問)・巡音ルカさん:巡音ルカ
社会学部・人文歴史科教授(アイドル研究部顧問兼永遠のアイドル)・勇気めぐみさん:GUMI
農学部・農学科教授(ナスノヨイチ研究部顧問)・神威学歩さん:神威がくぽ
木之子学園高等部3年生・古河ミキ:miki(SF-A2 開発コード miki)
アナウンス:ちょび髭&蝶ネクタイの千葉さん
観客、ナス研スタッフ:エキストラの方々
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○ボーカロイド小説シリーズ第8作目の”おいでませ! 木之子大学・部室棟へ♪“シリーズの第9話です。
☆初めて、ボカロキャラ以外の“ボカロマスター”を主役に、UTAUのテトをヒロインに持ってきました。
○ノリはいつもの通りですが、部室棟という今までと違った場所での対決をメインにしているのがウリです。
○部室棟や大学のモデルは、私の母校です。
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