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魔法少女と竜と漆黒の狂戦士と A’s編

第十六話 フェイト達との決着、夢幻

2012-08-02 12:56:07 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6987   閲覧ユーザー数:6209

俺は突貫して、シグナム達も俺に続く。シグナムはリンディ提督、ヴィータはクロノ、シャマルはユーノ、ザフィーラはアルフに仕掛けた。そして俺はなのはとフェイトの二人に二発の魔力弾を撃って少し離れた所に移動する。

 

 

「「零冶(君)!!」」

 

 

 二人は俺を追ってきて正面に降り立った。

 

 

「何で話を聞いてくれないの?リンディさんは違うって言ってるのに!」

 

 

「リンディ提督はそんなことしないよ!」

 

 

 二人はまだそんなこと言っているのか・・・。

 

 

「そんなことはどうでも良いんだ。問題は俺たちが管理局と話をしている際に攻撃を受けた事だ。あの場で俺を攻撃して始末、もしくは行動不能にして得をする奴は誰だと思う?どう考えても管理局しかいないだろう?」

 

 

「「そ、それは・・・。」」

 

 

 二人も少しは理解しているようだ。なら、これからどうすべきなのか解るだろう。俺は二人に向かってルナを構えた。

 

 

「っ!・・・どうしても話し合いじゃ、ダメなんだね?」

 

 

「ああ。」

 

 

「・・・なら、一つだけ約束して!もし、私達が零冶に勝ったら・・・私達の所に戻ってきて!そして、皆で一緒に学校へ行くの!!」

 

 

 フェイトが要求したことは俺に全くメリットが無かった。でも、それでも良いと思った。何故なら・・・俺は絶対に負けないからだ。

 

 

「・・・いいだろう。俺とお前達の真剣勝負だ。召喚はしないでおこう。なら・・・いくぞ!カオスショット!!」

 

 

 ごめんな・・・フェイト、なのは。俺は絶対に・・・負けられないんだ。

 

 

 俺は二人に魔力弾を撃ち込む。なのはは上空に、フェイトは右に回避した。そしてフェイトがサイスフォームで突っ込んでくる。

 

 

「零冶!」

 

 

 俺はフェイトの攻撃をバレットで受け止めた。その隙に、なのはが12発の魔力弾を撃ち込んでくる。フェイトを横に蹴り飛ばし、同じく魔力弾を連射して相殺した。

 

 

「甘い。その程度で俺を倒せると思ってrぐあっ!?」

 

 

 突然、俺の後ろから魔力弾が数発襲いかかってきた。

 

 

「・・・甘いのは零冶君だよ。私達が何も成長してないと思ってたら・・・。」

 

 

「大間違いだよ!!」

 

 

 二人の怒涛の攻撃が始まる。その連携は俺が想像を軽く越えていた。たった1週間でここまで連携が上がるものなのだろうか?ましてや、2日程は魔法が使えないはずだから、実質的に5日程しか練習期間はないのだ。

 ・・・恐ろしいほどまでの成長力だな。もしかしたら、いつか・・・追い抜かれるかも知れない。

 

 

「ぐうぅ!!こんな短期間で成長し過ぎだろ!?」

 

 

「私達はただ零冶に戻ってきて欲しいだけ!」

 

 なのはの魔力弾の嵐を紙一重で避け続けるとフェイトが上空から斬りつける。

 

 

「バカな!?この魔力弾の嵐の中を突っ込むんで来るだと!?」

 

 

 普通の奴ならまずやらない。だが、フェイトは突っ込んできた。それも真っ直ぐに・・・・・まさか!?

 

 

「まさか断続的に撃ち出している20個もの魔力弾を全て制御しているのか!?」

 

 

「当たりだよ、零冶君。ちょっとキツいけどね!」

 

 

 今撃ち出している魔力弾は20個。一発が着弾する度に新しい魔力弾を生成、撃ち込んだ。そして撃つ度に新しい魔力弾を生成する。

 

 

「くっ!事前情報なんか役に立たねぇな!「はあああ!!」ぐぅ!?」

 

 

 なのはの魔力弾の嵐とフェイトの高速近接戦闘を同時に相手するのは少しばかりキツい。身体能力だけでは勝てない可能性がある。なら、こちらもそれ相応の技を見せないとダメなようだ。

 

 

「キャニスターバレット!!」

 

 

「え!?きゃあっ!!」

 

 

 キャニスターバレット、高密度な魔力弾を生成し発射する。撃ち出された魔力弾の中には散弾の様に広がる魔力弾を複数あり、少し進んだあとに炸裂する仕組みになっている。中距離での命中率が上がり、至近弾ならシールド張っても簡単に吹き飛ばされる威力がある。おれはそれを三発撃ち出した。キャニスターバレットはなのはの魔力弾を相殺し、フェイトを吹き飛ばした。普通なら一撃で気絶する威力だ。できればこれで気絶して欲しい。

 

 

「フェイトちゃん!?「自分の心配をしたらどうだ?」っ!?」

 

 

 俺は僅かな隙を見逃さずに上空へ退避した。そして照準をなのはに合わせて言った。

 

 

「耐えられるか?・・・ブラスティハウリング!!」

 

 

「っ!エクセリオォォォン・・・バスターーー!!!」

 

 

 二人の砲撃はぶつかり合い、拮抗する。だが力はなのはが上みたいで、徐々に押され始めた。ブラスティハウリングの本当の力はここからだ。

 

 

「・・・叫べ!」

 

 

 ■■■■■■■■■■■ーーーーー!!!

 

 

「きゃあああああ!!」

 

 

 この世全ての絶望や怨嗟のような悲鳴がなのはを襲う。それを聞いたことにより制御に集中できず、指向性を失った魔法は霧散してしまう。さらに、なのはを砲撃が襲うことで吹き飛ばされてしまう。今のでかなりのダメージを負ってしまっただろう。これで気絶してくれれば良いのだが・・・。

 

 

「っく!はああああ!!」

 

 

 気絶したと思ったフェイトが再び突っ込んできた。やはりダメだったようだ。俺はフェイトに再びキャニスターバレットを数発撃ち込む。

 

 

[フラッシュムーブ!]

 

 

 するとフェイトが縮地紛いの事をして後ろに回り込もうとする。しかし、所詮紛い物だ。士郎さんがやっていた神速にも劣る。

 

 

「デュアルソード!」

 

 

 ガキンッ!

 

 

「!?なんで!?」

 

 

 俺はルナを夜天連撃【黒翼】に変えて×にして受け止める。

 

 

「遅いよ。これで終わってくれ・・・影忍流暗殺術、夜天強襲!」

 

 

「え!?消えた!?」

 

 

 俺はその場から姿を消した。いや、正確には相手の死角へ移動して消えたように見せただけだ。さらに周囲を闇で包み込んで真っ暗にする。この魔法は術者にも効果があるが、俺は竜眼に変えて位置を確認することができる。そして跳躍してフェイトを頭上から斬りつける。

 

 

[ディフェンサー!]

 

 

「え?バルdきゃああああっ!!」

 

 

 上空から斬りつけて高速で移動しながら無数の斬撃を繰り出す。相手を恐怖のどん底に突き落とす技、それが俺が教えられた影忍流だ。斬撃が終わり、闇が晴れるとフェイトのシールドは砕け散り、傷だらけで膝を着いていた。

 

 

「う、うぅ・・・強すぎる。」

 

 

「ふぇ、フェイトちゃん・・・大丈夫?」

 

 

 なのはも肩を押さえながらフェイトの下に寄る。

 

 

「残念だったな・・・なのは、フェイト。・・・もう諦めてくれ。これ以上お前達を傷つけたくない。」

 

 

 俺はフェイト達ににバレットを突きつける。

 

 

「・・・・・・だ。」

 

 

「・・・ん?」

 

 

 フェイトは俯いて何かを呟いた。

 

 

「・・・・やだ・・・嫌だよ!諦めたくなんて無い!私は零冶に戻ってきて欲しい!!また一緒に学校へ行きたいよ!!だから・・・だから、諦めることなんて絶対にできない!!」

 

 

 フェイトは涙を流しながら叫ぶ。

 

 

「私も嫌だよ!今は零冶君とは敵対してるけど・・・でも!それでも私の大切なお友達だもん!!」

 

 

 二人は傷つけた俺を今でも友達と認めてくれる。一緒に居たいと言ってくれる。そんな二人の言葉に俺は涙を流しそうだった。だが何故、二人は俺を友達と認めてくれるのか俺には理解出来なかった。

 

 

「っ!?・・・バカ野郎!俺は二人を傷つけたんだぞ!?何でそこまで言ってくれるんだ!?何で友達だって言うんだよ!?さっさと諦めろよ!!」

 

 

 聞いたら余計辛くなりそうなのに、俺は二人に聞いてしまった。我慢できなかった。そして二人は優しい瞳で俺をみつめて言った。

 

 

「簡単なことだよ・・・ね?フェイトちゃん。」

 

 

「うん・・・だって零冶は私達のことを大切にしてくれてるから。」

 

 

「っ!?だから、何でそう思うんだよ!?俺は二人を傷つけたって言っているだろ!俺はお前達の事なんて何とも思ってないんだよ!!」

 

 

 俺は二人の言葉に余計に混乱した。

 

 

「ううん・・・だって零冶君、ずっと私達の事を遠ざけていたもん。」

 

 

「そして零冶は私達を巻き込まないようにするために、ずっと一人で抱え込んで解決しようとしてた。」

 

 

「っ!!ち、ちが「違わないよ。」!?」

 

 

「戦いの時だって、零冶君は私達を一撃で倒そうとしてた。それは、私達を傷つけないようにする為だったんだよね?」

 

 

「おれ・・・は・・・・。」

 

 

 俺の中で理性が言うなと叫ぶ。だが、楽になりたい気持ちもある。話したらどれだけ楽になるだろうか?俺が葛藤している時、突然後ろのドアが開いて誰かが倒れ込みながら出てきた。

 

 

「零冶兄ぃ!!」

 

 

「「「はやて(ちゃん)!?」」」」

 

 

「どうして此処に・・・っ!」

 

 

 出た来たのははやてだった。周りをよく見てみると此処は病院の屋上だった。戦いに夢中で気付かなかったらしい。はやては身体を引きずって上がってきたのだろう。服が汚れていて少し破けていた。。そして俺ははやてを抱き起こした。

 

 

「零冶兄ぃ、どういうことや!?何でなのはちゃんやフェイトちゃんと戦っとるんや!!っていうかその姿・・・なのはちゃん達も魔導師やったんか!?」

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 俺は言えなかった。はやてに魔導師から蒐集した、なんて言えるはずがない。でも、フェイト達と戦っている姿をはやてに見られてしまった。言い逃れはできない。

 

 

「何で黙っとるん?ちゃんと説明・・・っ!?零冶兄ぃ!!まさか・・・魔導師から蒐集したんとちゃうやろうな?」

 

 

「・・・ごめん。」

 

 

 俺はただ謝るとしか出来なかった。

 

 

「何でや!?ウチと約束したやろ!何で約束を破ったんや!?」

 

 

 はやては信じられないと言った顔をしていた。

 

 

「管理局に気付かれて蒐集活動に支障出ていて、今年中に間に合わないかも知れなかったんだ。・・・はやてを助ける為だったんだ。もう失いたくはなかったんだ!だから「バチンっ!!」」

 

 

 俺が理由を話すとはやては俺の頬を思いっきり叩いた。はやてを見ると、目から涙が溢れていた。

 

 

「零冶兄ぃのバカ!!そんなことをして・・・誰かを犠牲にしたり迷惑を掛けたりして助かってもウチは嬉しくない!」

 

 

 どうして解ってくれないのだろうか?俺はもう失いたくないのに・・・。あんな辛い思いをするのは嫌なのに・・・。

 

 

「それに、いつになったら、ちゃんとウチを見てくれるんや!?零冶兄ぃは義妹さんを・・・・レンさんしか見てないやんか!」

 

 

「っ!?違う、俺は「違わへん!!」なっ!?」

 

 

 はやては今まで我慢していた気持ちを吐き出した。

 

 

「零冶兄ぃはウチを見る時、いつも誰かを重ねて見てた。いつも遠い目をして、ウチを見てくれへんかった!ウチをレンさんと重ねて見てたんやろ?そんなんは嫌や!!ウチは・・・ウチはレンさんの代わりやない!!」

 

 

「っ!!!」

 

 

 俺ははやてに言われてようやく解った。俺は自分で気付かないうちに、はやてをレンと重ねて見ていた。ずっとあの時の事が忘れられずにいた。でも、レンはもういないんだ・・・何年も前に死んだんだ。それを認められなくて、はやてを見ていなかった。

 ああ・・・俺はは今まで何をしてきたのだろうか?はやてをこんなに悲しませて、フェイトやなのはを傷つけて、三人を泣かせて・・・・最低な男だな俺は。

 

 

「はやて・・・ごめん・・・ごめんな、はやて。俺が間違っていたよ。俺はずっとレンのことが忘れられなかった。あいつは俺の全てだったんだ。暗い闇の底から俺を連れ出してくれたあいつが死んだ事を認められなかったんだ!だけど、それは間違いだったんだな・・・。」

 

 

「あ・・・。」

 

 

 俺ははやてをギュッと抱きしめた。

 

 

「「ああーーー!!」」

 

 

「本当にごめんな。」

 

 

 はやても俺の背中に腕を回して抱きついた。フェイト達が何か言っているが俺は聞こえない。

 

 

「これからは、ちゃんとウチを見てくれる・・・?」

 

 

「ああ、これからはちゃんと見るよ。だから、許してくれるか?」

 

 

「うん、ええよ。許してあげるよ、零冶兄ぃ。」

 

 

 はやてはこんな俺を許してくれた。これからはちゃんとはやてを見て、レンの死と向き合って行こうと決めた。そして俺はなのは達に向き直る。2人は俺を見ると微笑んでくれた。そして、俺も笑おうとした時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザシュッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かはっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「・・・え?」」」

 

 

 

俺の胸から魔力で構成された刃が突き出ていた。後ろを見ると、仮面の男が立って刃を突き立てていた。

 

 

[マスターーーー!!!]

 

 

「悪いな。だが、貴様は我々の計画に邪魔なんだよ。だから・・・ここで死ね!」

 

 

 ズルッと刃が引き抜いた後、もう一人の仮面の男が現れた。

 

 

「アリっ・・・おい!何をしている!何故殺すんだ!?そんな予定はなかったぞ!!」

 

 

「今ここで殺さないと、後で厄介なことになる!だから始末したんだ!」

 

 

「だからといって、殺すことはないだろう!!」

 

 

 どうやら俺を殺すのは予定外らしい。言い争っている今がチャンスだ。俺は震える手を無理矢理押さえ込み、バレットを俺を刺した仮面の男に向けた。そしてバレット本来の実弾を魔力で物質化して一発だけ装填する。そして引き金を引いた。

 

 

 ガウゥン!!

 

 

「がっ!!あ・・・ああああああ゙あ゙あ゙あ゙!?」

 

 

 放たれた弾丸は僅かに逸れて、仮面の男の腕に直撃して腕を吹き飛ばした。

 

 

「なっ!?大丈夫か!?っく!一旦退くぞ!」

 

 

 仮面の男達は逃走した。

 

 

 っち、外したか・・・。本当なら殺すつもりだったのだが・・・まぁ、いいだろう。

 

 

 俺の胸から大量に出血し、吐血した血がはやてに掛かる。

 

 

「・・・え?れい・・・じ・・にぃ?」

 

 

 はやては未だに何が起こったか理解出来ないみたいだった。

 

 

「ゴホッ・・・は・・やて・・・。」

 

 

 息が出来ない。どうやら、肺をやられたらしい。魔法で止血しようとしても、痛みと失血で頭が上手く働かない上に、声もまともに出せない。これでは魔法が使えない。取りあえず、魔力を流し込んで細胞を活性化させて止血を試みた。

 

 

 こんなことなら無詠唱魔法の練習をしとけば良かった。

 

 

[マスター!しっかりして下さい!!ああ・・・血がこんなに・・・。マスター!!]

 

 

 ルナが珍しく取り乱していた。

 

 ああ、そういえば・・・こんなに慌てているルナは初めてみたなぁ。

 

 

「れ・・・れいじ?い・・・いやあああああああああ!!零冶!!零冶ぃぃ!!!」

 

 

「う・・・そ?ね・・ぇ、零冶・・君?あ・・・零冶君!!しっかりして零冶君!!しっかりしてよっ!!!」

 

 

「・・・え?あ・・・・・・い・・いや・・・いやぁ・・・・いやあああああああああ!!!零冶兄ぃ!?零冶兄ぃぃぃ!!!」

 

 

 はやてはやっと理解したようだ。泣き叫びながら俺の名前を呼び続ける。

 

 

「・・・はや・・て・・・ゴホッ!」

 

 

「零冶!しっかりして零冶!!」

 

 

「お願い!死んじゃダメだよ!!零冶君!!」

 

 

「零冶兄ぃ!零冶兄ぃ!!どうして・・・いや、嫌ぁぁ!!」

 

 

 三人とも取り乱しているみたいだ。そういえば、この光景・・・どこかで見たことがある気がする・・・。

 

 

「「「「零冶(レイジ)(君)!!」」」」

 

 

 そこに、リンディ提督達が現れた。

 

 

「リン・・・ディて・・いと・・く?」

 

 

 俺はシグナム達の事を聞こうとしたが、上手く声が出ない。

 

 

「喋らないで!!すぐに治療するわ!!」

 

 

 リンディ提督は回復魔法を俺に掛けてくれた。が、出血が酷いために意識が朦朧としてきた。このままじゃマズイ。一度眠って、傷の回復に専念しないと本当に死んでしまう。

 

 

「は・・やて・・・、ごめ・・・ん・・・少し・・だ・・け・・・寝る・・・な・・・・。」

 

 

 ああ、思い出した。レンが死ぬ時と一緒の光景じゃないか。

 

 

 俺はそのまま眠りについて、身体を休止状態にして回復力を極限までに高める。10分もすれば起き上がれるぐらいには回復するだろう。

 

 

「零冶(君)!!」

 

 

「零冶兄ぃ・・・?なあ・・・零冶・・兄ぃ・・起きてよ?・・・零冶兄ぃ・・・零冶兄ぃ!・・・零冶兄ぃ!!・・・い・・いや・・・・・いやああああああああああ!!!」

 

 

 寝る直前に、俺ははやての叫び声を聞いた気がした。

 

 

 

 

 Side はやて→???

 

 

 ウチは何が起きたか理解できへんかった。気がついたら零冶兄ぃの胸から剣が出ていて・・・血が・・・いっぱい出た。そして零冶兄は

 

 

「は・・やて・・・、ごめ・・・ん・・・少し・・だ・・け・・・寝る・・・な・・・・。」

 

 

 と言って、ピクリとも動かへんようになった。その姿はまるで死人のようやった。それを見た瞬間、ウチの何かが目覚めるような感覚がした。

 

 

[封印解除・・・闇の書・・起動]

 

 

 そしてウチの意識はなくなってしもうた。

 

 

 

 

「やはりこうなってしまったか。一体いつになったらこの連鎖は終わるのだろうか・・・。主よ、私の中でゆっくりと眠るといい。そこには苦痛も苦悩もない。それと・・・。」

 

 

 私は主の義兄、零冶の下に歩み寄る。

 

 

「っ!?覚醒してしまったのね!?」

 

 

「っ!ここは通さないぞ!」

 

 

「「零冶(君)は渡さない!!」」

 

 

 ふむ、なにやら騒がしいのがいるな。たしか名前は・・・リンディ、クロノ、フェイト、なのはと言ったか?私の邪魔をしないでもらおうか。

 

 

「邪魔だ。」

 

 

「「「「きゃあっ!!(うあっ!!)」」」」

 

 

 私は4人を吹き飛ばし、再び零冶の下に歩み寄った。

 

 

「零冶・・・お前も私の中で眠るといい。もう辛い思いをしなくて済むぞ・・・。」

 

 

 私は零冶を回収して中に取り込んだ。

 

 これで彼にやっと安らぎを与えられる。私の主を救おうとしてくれて・・・ありがとう。

 

 

「さあ、後は主の願いを聞き届けるために奴等をっ!!?」

 

 

 ―――ドクンッ 

 

 

 私の中で何かが起きた。

 

 

「っぐ・・・あああ・・・あ!!」

 

 

 ―――ドクンッ!

 

 

 頭が割れるように痛い。何かが・・・何かが私を侵食している!?バカな!?

 

 

 ―――ドクンッ!!

 

 

 そして、私の頭の中で声が響いた。

 

 

『悪いけど、僕の目的のためにその身体・・・貰っちゃうね。』

 

 

 誰だ!?私の身体を奪おうとするのは!!

 

 

『僕?僕はロキっていうんだよ。まぁ、今から消える君には関係無い事だけどね。』

 

 

 巫山戯るな!私の身体を返せ!!

 

 

『無理だよ。僕には目的があるからね。大丈夫、君と似たような目的だよ。』

 

 

 私と似た目的・・・だと?

 

 

『うん。僕の目的は・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――人類の殲滅と神々の復讐だよ

 

 

 

 

 

 

 Side out

 

 

 

 Side なのは

 

 

 ついに闇の書が覚醒してしまった。今私達の前にいるのは、長い銀髪を腰まで伸ばした綺麗な女の人の姿をおした管制人格だった。でも、その人の目はとても悲しい目をしていた。まるで、絶望して全てを諦めたような目だった。

 

 

「やはりこうなってしまったか。一体いつになったらこの連鎖は終わるのだろうか・・・。主よ、私の中でゆっくりと眠るといい。そこには苦痛も苦悩もない。それと・・・。」

 

 

 そう言って管制人格さんは零冶君に近づいていった。みんな、彼女の前に立ちふさがった

 

 

「闇の書!?覚醒してしまったのね!?」

 

 

「っ!ここは通さないぞ!」

 

 

「「零冶(君)は渡さない!!」」

 

 

 何をする気か知らないけれど、この人に零冶君は渡さない!

 

 

「お前等も私を闇の書と呼ぶのだな・・・。・・・邪魔だ。」

 

 

「「「「きゃあっ!!(うあっ!!)」」」」

 

 

 私達は簡単に蹴散らされてしまった。そして管制人格は零冶君の下に歩いて行った。

 

 

「零冶・・・お前も私の中で眠るといい。もう辛い思いをしなくて済む・・・。」

 

 

「あ!零冶君!」

 

 

「零冶!!」

 

 

 なんと零冶君はあの人に取り込まれてしまった。

 

 

 一体どんな魔法なんだろう?そんなことより、零冶君を助けなきゃ!!

 

 

「っぐ・・・あああ・・・あ!!」

 

 

 管制人格さんは私達を攻撃しようとした時、突然苦しみだした。

 

 

「な、何なの!?もう暴走し始めたの?クロノ君。」

 

 

「わからない・・・でも、あまり良いことじゃなさそうだ。」

 

 

 管制人格さんは頭を抱え込んで膝を着いてしまった。

 

 

「ぐ、・ああ・・・あ・・・・・う・・・うあああああああ!!」

 

 

 そして黒い霧みたいなのが管制人格さんを包み込んだ。そして、霧が晴れると

 

 

「・・・ふぅ、やっぱり肉体があるって良いね。久しぶりに地面を踏んだよ。」

 

 

 零冶君と似た男の子が居た。でも、髪の色は零冶君と違って白銀で綺麗な髪だった。でも、瞳の色は一緒だった。

 

 

「あなたは・・・誰?それに・・・零冶君は?」

 

 

 リンディさんが恐る恐る聞いた。すると男の子は人懐っこい笑みを浮かべて答えた。

 

 

「僕?僕の名前はロキっていうんだよ?この地球では結構有名な名前なんだ。闇の書だっけ?あれの主導権を乗っ取って、身体を借りてるんだけどね。」

 

 

 ロキ?地球で有名?そんな人居たっけ?俳優さんとかかな?

 

 

「ロキ・・・・・・・ロキ!?もしかして、あのロキかい!?」

 

 

 ユーノ君が突然大きな声を上げた。ちょっとビックリしたの。

 

 

「ねぇユーノ君、知っているの?」

 

 

「え!?なのはは知らないの!?ロキって名前は地球の神話に出てくる悪神の名前だよ!」

 

 

「悪神って酷い言い方だなぁ。僕は普通の神様なのに・・・。」

 

 

 ロキ君は少し落ち込んでいた。

 

 

「・・・・ふぇ?ふええええええ!?神様なの!?」

 

 

「・・・・・。(ポカ~ン)」

 

 

「・・・嘘でしょ?」

 

 

「あ、ありえない・・・。神様が本当にいるなんて・・・。」

 

 

「・・・おいおい、何の冗談だい?」

 

 

 フェイトちゃんは放心していて、リンディさんは額に手を当てて信じられないといった表情をしていたの。クロノ君やアルフさんもあまり信じられないみたい。

 

 

 お~い、フェイトちゃ~ん。

 

 

「っは!?か、神様なの?」

 

 

 あ、フェイトちゃんが戻ってきた。

 

 

「うん、一応そうなってるよ。」

 

 

「・・・・それでロキ・・・様、零冶君は何処へ行ったのかしら?」

 

 

 リンディさんは零冶君の行方について聞いた。

 

 

「あ、ロキでいいよ。あまり堅苦しい呼び方は好きじゃ無いんだ。えっと、零冶君の事だったね?零冶君は今、僕の中で眠って貰っているよ?」

 

 

 え?じゃあ、まだ生きているの!?

 

 

「じゃ、まだ生きているのね!?」

 

 

「うん。ちゃんと生きているよ。僕が彼を死なせる訳無いじゃないか。」

 

 

 ロキ君はコロコロと笑っていた。でも、あの笑顔・・・何だか怖いの。

 

 

「・・・?それはどういう意味かしら?・・・何故ロキ君が零冶君を死なせないと言い切れるのかしら?」

 

 

 あ、そういえばそうだ。ロキ君と零冶君ってどんな関係なんだろう?

 

 

「ふふ、説明が面倒だからいろいろ省くけど、僕は彼で、彼は僕なんだよ。・・・解らないかな?簡単に言うと、彼は僕の魂から出来た新しい人格・・・ま、同じ存在みたいな感じと思ってくれたらいいよ。」

 

 

 ・・・え?それって・・・

 

 

「・・・つまり、彼もロキ君と同じ神様っていうことになるのかしら?」

 

 

 リンディさんはさらに頭を押さえて言ったの。大丈夫かな?

 

 

「う~ん・・・まぁ、そういう認識で構わないよ。」

 

 

「・・・はぁ。・・・で、最後にもう一つだけ質問させて貰っていいかしら?」

 

 

「うん、いいよ。」

 

 

「ロキ君・・・あなたの目的は何?」

 

 

 ロキ君は無邪気な笑みを浮かべて言ったのはとんでもなく恐ろしい事だった。

 

 

「目的?僕の目的はね・・・人類の殲滅と僕を裏切った神々への復讐だよ。」

 

 

「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 

「人類の・・・殲滅?」

 

 

 みんなは呆然としていたけど、リンディだけは何とか聞き返せたみたい。

 

 

「うん、そうだよ!愚かな人間共と僕を裏切った忌まわしき神々をこの世界から殲滅して、僕と零冶君だけの世界を創るんだ!」

 

 

「ふ・・・巫山戯るな!!人の命を何だと思ってるんだ!!」

 

 

 クロノ君が怒ってロキ君に怒鳴った。

 

 

「人の命?そんなもの、そこら辺の石ころ程度としか思ってないよ?」

 

 

「なっ!?」

 

 

 ロキ君は爽やかな表情で酷いことを言ったの。

 

 

「さて、お喋りはこの辺にしよっか?皆ここで殺してあげるよ。あははっ!」

 

 

 ロキ君は無邪気にも笑い出した。私とフェイトちゃんは怒りで震えていたの。いや、みんなも怒りに震えてた。

 

 

「・・・させない。絶対にそんなことさせない!!」

 

 

「うん、そんなこと絶対に許されないよ!人の命を石ころ同然なんて、絶対に許さない!!」

 

 

 私とフェイトちゃんがデバイスを構えた。それに続いて皆も構える。

 

 

「へぇ、僕の邪魔をするんだ?いいよ、ちょっとだけ遊んで上げるよ?あはははは!!」

 

 

 私達は一斉にロキ君に魔力弾を撃って攻撃した。一応全部当たったみたいだけど、手応えが全然無かった。

 

 

「ふ~ん、こっちの世界の人間って面白いね。普通に魔法が使えるんだもん。ちょっと期待してもいいかな?」

 

 

 煙が晴れるとロキ君は障壁を張って、擦り傷一つ無く平然と立っていた。

 

 

「じゃあ、今度はこっちの番だね?いくよ!」

 

 

 私達はこのとき思い知らされた。・・・神の力というものを。

 

 

 

 

 Side out

 

 

 

 

 Side グレアム

 

 

「な、何だこれは!?」

 

 

 アリアとロッテから闇の書が覚醒したことを知らされて私は封印するために開発したデバイス、デュランダルを持って封印しようとした。しかし、そこにいるのは闇の書の管制人格ではなく、リンディ提督含めた6人をまるで子供の遊びのように楽しみながら蹴散らしている一人の少年だった。

 

 

「ば、バカな!?AAA級魔導師6人が刃が立たないなんて・・・。」

 

 

「こんなの想定外だわ・・・。」

 

 

 アリアとロッテも驚愕していた。しかし、一体何が起こっているのだろうか?闇の書の管制人格が急に苦しみだしたと思えば、いきなり少年に変わってしまっていた。しかも、彼は地球の神様だとか巫山戯たことを言っていた。もう何が何だか理解できない。だが、一つだけ理解出来ることがある。それは、彼には絶対勝てないということだ。

 

 

「・・・だが、やるしかない。私は闇の書を封印するために10年以上待ったのだから。」

 

 

 リンディ提督達の方を見ると、まだ、戦いが始まって5分も経ってないのに既にリンディ提督、ユーノ君、アルフ君が倒れていた。残りの3人は何とか持ちこたえている。そして、なのは君が後方で射撃体勢を取っていた。そこでフェイト君とクロノ君が離脱して、なのは君が集束魔法を放った。

 

 

「・・・凄い魔力だな。彼女はいつかエース級にまでたどり着けるだろう。」

 

 

 しかし集束魔法をまともに受けたはずの少年は何とも無いかのようにその場に立っていた。もはや、呆れて声も出なかった。そして、少年は突然こちらを見た。

 

 

「なんだか覗き見している人がいるね?邪魔だから消えて貰おうかな?」

 

 

「「「ぐ、グレアム提督!?」」」

 

 

「っ!?」

 

 

 っく!見つかったか!それならば一刻も早く封印しなければ!!

 

 

「っ!永遠の眠りにつけ!エターナルコフィン!!」

 

 

 私は既に詠唱を完成させていたので、すぐに魔法を行使することができた。そして彼は為す術も無く凍りづけにされた。実に呆気なかった。

 

 

「・・・やった・・・ついに封印することが出来た。」

 

 

「そ、そんな!?グレアム提督!何故!?」

 

 

「れ、零冶君!!」

 

 

「すまない・・・だが、こうするしかなかったのだ。」

 

 

 そう、これでいい。これでいいのだ。闇の書の暴走は誰にも防ぐことはできない。だからこうするしかn「ピシピシッ!」!?

 

 

「な!?そんな・・・バカな!?」

 

 

 凍りづけにして封印したはずなのに、氷が割れていく。

 

 

「ふふふ、こんなもので僕を倒せると思っているの?」

 

 

 少年は無邪気な笑顔を浮かべながら出てきた。私は信じられなかった。理論上なら闇の書を完全凍結できる程の魔法だったはずだ。

 

 

「ぐはっ!!?」

 

 

「「お父様!?」」

 

 

 私は少年に蹴り飛ばされ、壁に激突した。アリアとロッテが私に駆け寄ってくる。その間に彼はなのは君とフェイト君も倒していった。

 

 

「あーあ、つまらないなぁ。もう終わりかぁ。ま、いいけど。」

 

 

「う、うぅ・・・零冶君、お願い目を覚まして!」

 

 

「戻ってきて・・・零冶!」

 

 

 なのは君とフェイト君は涙を流して零冶君の名前を呼んだ。

 

 

「あはは、無駄だよ。そんなことで零冶君は出てこないよ。じゃ、まずは二人から殺してあげるね。」

 

 

 そうして、少年は二人に近づいて、いつの間にか持っていた剣みたいな物を振り上げて、

 

 

「じゃあね。」

 

 

 振り下ろした。

 

 

 

 

 Side はやて

 

 

 

「・・・ん・・・ここ・・・ウチの部屋?」

 

 

 あれ?おかしいなぁ・・・さっきウチは病院の屋上にいたはずなんやけど。

 

 

「あ、おはようございます主はやて。」

 

 

「え?」

 

 

 扉の方を見るとシグナムが立っていた。

 

 

「今日の朝食は私が作りました。早く食べないと冷めますよ?・・・どうかしましたか?私の顔に何か付いてますか?」

 

 

「え?あ、いや・・・何でもないんや。気にせんでええよ。」

 

 

「そうですか。では早く行きましょう。皆が待ってますよ。」

 

 

 ウチはシグナムに急かされて行こうとして異変に気付いた。

 

 

「あれ?」

 

 視線がいつもより高かったんや。不思議に思うて足元を見ると、ウチは自分自身の脚で立っていた。

 

 

「・・・え!?ウチ・・・自分の脚で立っとる!?」

 

 

 

「何を言ってるのですか?いつも自分で歩いているじゃないですか。」

 

 

 シグナムは少し笑いながら言った。

 

 

「え!?あ・・・・そ、そうやったな。」

 

 

 今何かおかしいと思ったけど急にそれが何か解らんようになってなんか納得してしもうた。

 

 

「さぁ、早く行きましょう。」

 

 

「う、うん。」

 

 

 取りあえず、シグナムと一緒にリビングに行った。

 

 

「遅いぞ、はやて!」

 

 

「あら、寝坊でもしたのかしら?」

 

 

「まぁ、子供ならこれぐらいの時間が丁度良いだろう。」

 

 

 リビングに行くとヴィータ、シャマル、ザフィーラが待っていた。そしてシグナムが席に着いて、ウチも席に着くように言われたから席に着いた。

 

 

「それじゃあ、いただきます。」

 

 

「「「いただきます。」」」」

 

 

 シグナムが言った後に皆も続いて言った。でも、ウチはこの光景に何か違和感があった。

 

 

 なんやろ?誰かもう一人いた気がするんやけど・・・。

 

 

「なぁ、シグナム。」

 

 

「なんですか?」

 

 

 

「なんか、誰か足りない気がするんや。もう一人おったような気がするんやけど・・・。」

 

 

「?何を言っているのですか?みんな此処にいますよ?」

 

 

「そうだぞ、はやて。みんなここに居るじゃねぇか。」

 

 

 シグナムとヴィータは皆いるって言うたんやけど、ウチはずっと気になっていた。

 

 

「いや、確かにおったんやけど・・・、何か忘れとる気がするんや。何か・・・・。」

 

 

 ―――――はやて

 

 

 すると、ウチの頭に突然映像が浮かんだ。一人の男の子がウチを呼んでいる映像が。

 

 

 ―――――はやては優しいな

 

 

 男の子がウチの頭を撫でている。その人は同い年ぐらいだけど、強くて・・・優しくて・・・お兄ちゃんみたいな人。

 

 

 ―――――ああ!みんなで一緒に遊園地に行こうな!

 

 

 ■■■と病室でウチと約束した。とても大切な・・・約束。

 

 

 ―――――ゴホッ・・・は・・やて・・・

 

 

 ■■兄ぃが倒れて血を吐いていた。ウチは理解出来ずに呆然と立っとった。

 

 

 ―――――は・・やて・・・、ごめ・・・ん・・・

 

 

 そして零冶兄ぃは目を閉じて動かなくなった。

 

 

 っ!?

 

 

「・・・・零冶・・・兄ぃ。」

 

 

 ピシッ

 

 

「そうや。零冶兄ぃがおらんのや。」

 

 

 ピシピシッ

 

 

「とても優しくて・・・強くて・・・お兄ちゃんみたいな人が・・・。」

 

 

 ピシピシピシッ

 

 

「ウチの大切な零冶兄ぃがおらんのや!!」

 

 

 ピシピシピシピシッ・・・パキャァァァン!!

 

 

 ウチが居た家の風景は壊れ、真っ暗な世界が広がった。そして、

 

 

「お待ちしていました、我が主。」

 

 

 銀髪の綺麗な女性が立ってウチを待っていた。会った事無いけど、ウチはこの人を知っている気がする。

 

 

「待ってた?」

 

 

「はい。今、闇の書の制御はロキという人物の支配下に置かれています。」

 

 

 なんやて!?ってか、ロキって誰や!?

 

 

「ど、どうしたらええの!?」

 

 

「落ち着いて下さい。身体は乗っ取られていますが、彼の力の大半は闇の書の防衛プログラムの暴走を食い止めるのに使っています。さらに、闇の書の事を完全に熟知しておらず、一部の権限が使用可能になっています。その使用可能になっています。それが管理者権限です。」

 

 

「管理者権限?確か、零冶兄ぃが言ってたやつだったやな?それで守護騎士プログラムを切り離したらええの?」

 

 

「はい。」

 

 

 女性は頷いた。そういえば、名前を聞いてなかったなぁ。

 

 

「なぁ、アンタの名前はなんていうん?」

 

 

「・・・私に名はありません。」

 

 

 少し残念そうに言った。よっしゃ、それなら、

 

 

「ウチが名前を贈ったる!」

 

 

「・・・え?」

 

 

 とびっきりの名前を贈ったる!もう闇の書の管制人格なんて嫌な呼び方はさせんで!

 

 

「・・・・・・リィンフォース・・・・そうや!祝福の風、リィンフォースや!」  

 

 

「リィン・・・フォース?・・・私の名前?」

 

 

「そうや!祝福の風って意味や!皆に祝福を贈るっていう想いを込めたんや!」

 

 

「・・・あり・・がとう・・・ございます、主!」

 

 

 そう言うと、リィンフォースは涙を流しながらお礼を言った。

 

 

「気にせんでええよ!それじゃ、リィンフォース!行こうか!」

 

 

「はいっ!」

 

 

 

 Side out

 

 

 

「此処は・・・?」

 

 

 目が覚めると俺はベッドで寝ていた。何故だろうか?俺は病院の屋上で・・・・・あれ?思い出せない?

 

 

「お兄ちゃ~ん!朝だよー!」

 

 

 俺が思い出そうとしていると、部屋の外から少女と思わしき声が聞こえた。

 

 

「・・・お兄ちゃん?」

 

 

 俺の事をそう呼ぶ人物は一人しか思い当たらない。しかし、アイツは死んだはずだ。もうこの世に居ないはず・・・

 

 バンッ

 

 

「お兄ちゃん!!って、起きてるじゃん!もう、起きてるなら返事ぐらいしてよね!」

 

 

 そこには死んだはずの義妹、レンが立っていた。

 

 

「・・・レン・・・お前・・・死んだはずじゃ・・・?」

 

 

「はぁ!?何言ってるの?頭でもぶつけた?」

 

 

 俺は困惑した。アイツは撃たれて死んだはずだ。俺の目の前で死んで・・・あれ?死んだ?誰が?

 

 

「あ、そうか・・・。」

 

 

 レンは何かに気付いたようで、俺の下に近づいて・・・俺を抱きしめた。

 

 

「きっと怖い夢をみたんだね、お兄ちゃん。大丈夫だよ。レンは此処に居るよ?何処にも行かないから・・・。」

 

 

「あぁ・・・・・・レン。」

 

 

 あぁ・・・コイツは間違いなくレンだ。綺麗な薄紫の髪、美しい碧い瞳、少し低めの慎重、華奢な体、そして優しい臭い・・・俺の知っているレンと同じだ。

 

 

「もう大丈夫?」

 

 

 レンは優しい瞳で俺を見て言った。

 

 

「ああ・・大丈夫だ。ありがとう、レン。」

 

 

「うん・・・それじゃ、早く降りてきてね!ご飯が出来てるから!」

 

 

 レンはとびっきりの笑顔で俺に言った。

 

 

 下に降りてリビングに行くと、和食の朝食が並んでいた。ソレを見た瞬間、一瞬俺は知らない家の風景が頭を過ぎる。

 

 

「・・・?どうしたの?」

 

 

「ん?あ、ああ、何でも無いよ。それよりも・・・今日は和食か?」

 

 

「うん!お兄ちゃん、和食が好きでしょ?だから、今日は和食にしてみたの!」

 

 

「っ!?」

 

 

 また、頭に変な映像が流れた。知らない女の子が俺に向かって笑いかけている。・・・誰だ?

 

 

「じゃ、いただきます!」

 

 

「・・・ああ、いただきます。」

 

 

 俺はレンと談笑しながら食べた。朝食は普通に美味かった。だが俺の知ってる味じゃない。その時、また頭に映像が流れる。今度はハッキリと・・・。

 

 

『零冶兄ぃ。』

 

 

 女の子が俺の名前を呼ぶ。

 

 

「どうしたの?お兄ちゃん?」

 

 

『早く帰って来てな、零冶兄ぃ。』

 

 

 とても優しく、強い女の子。そして、大切な女の子。

 

 

「ねぇ、お兄ちゃんったら!」

 

 

『今度、皆で遊園地に行こうな!』

 

 

 約束した。必ず行くって。

 

 

「どうしたの?お兄ちゃん!!」

 

 

『い・・いや・・・いやぁ・・・・いやあああああああああ!!!零冶兄ぃ!?零冶兄ぃぃぃ!!!』

 

 

 はやてを守るって誓った。この命に替えてでも!

 

 

「お兄ちゃんっ!!」

 

 

「っ!?れ・・・ん・・・?」

 

 

 俺は気付いてしまった。思い出してしまった。もう、レンは死んでいる事を・・・。

 

 

「・・・・・お兄ちゃん・・・・思い出したの?」

 

 

 レンは少し寂しそうに聞いてきた。

 

 

「・・・ああ・・・思い出した。」

 

 

「そっか・・・・。あ~あ、もうちょっとだけお話したかったなぁ~。まぁ、お兄ちゃんとまた話せただけでも良かったしね・・・。」

 

 

 レンは軽い感じで言ってたが、本当はかなり残念そうだ。

 

 

「レン・・・本t「ストップだよ、お兄ちゃん。」え?」

 

 

 レンは俺が言おうとしたことを止めた。

 

 

「お兄ちゃん、今謝ろうとしたでしょ?」

 

 

「え?あ、ああ。」

 

 

「やっぱり・・・。あのね、私が死んだのはお兄ちゃんのせいじゃ無いよ?あれは組織が悪いんだから。」

 

 

 レンは全然気にしてない様に言った。

 

 

「でも、俺はお前を・・・守れなかった。」

 

 

 ずっと悔やんでた。目の前でレンを死なせてしまった事を。

 

 

「それでも、だよ?それに、私は幸せだったんだよ?だって、こんなに強くて、優しくて、ちょっとだらしないお兄ちゃんと・・・大好きなお兄ちゃんと一緒に居られた事が。本当に幸せだったよ?」

 

 

「・・・レン。」

 

 

「だから・・・ね。そろそろ、お兄ちゃんも幸せになろうよ?もう、十分苦しんだでしょ?さすがに綺麗さっぱり私の事を忘れて、とは言えないけど・・・。でも、何時までも死んだ人の事を想い続けるのは良くないよ。」

 

 

 レンは本当に優しい。そして・・・厳しいな。

 

 

 そして、俺の前に映像が現れた。そこにはフェイト達がロキにやられている姿が映っていた。

 

 

「フェイト!なのは!」

 

 

「お兄ちゃん、行ってあげて。お兄ちゃんには守るべき人たちが居るでしょ?」

 

 

「・・・・ああ。そうだな。」

 

 

 だがその前に・・・俺は最後に一つだけ、今までずっと言いたかった言葉がある。

 

 

「レン・・・・・・。一つだけ言わせてくれ。」

 

 

「私も、言いたいことがあるの・・・。」

 

 

 俺たちは一度、深呼吸して言った。

 

 

「「愛しているよ、レン(零冶)。この世界中の・・・誰よりも。」」

 

 

 俺たちは互いに抱き合って・・・口づけを交わした。そして、多少、名残惜しかったがお互いに離れた。そして、俺の後ろに光りの扉が現れた。

 

 

「いってらっしゃい・・・零冶。」

 

 

「ああ、行ってきます・・・レン。」

 

 

 俺は一度も振り返ること無く、扉の中に入っていった。 

 

 

 

 

「バイバイ・・・零冶。・・・また、来世で会おうね。」

 

 

 レンは寂しさが残る笑顔で言ったが、俺には聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 俺は夜天連刃【黒翼】でロキの剣を防いだ。

 

 

 ガキンッ!!

 

 

「俺の大切な友人に手を出してんじゃねぇよ、ロキ。」

 


 
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