No.463545

武装神姫「tw×in」 第六話 戦略×固有=

風麦梟さん

ただこういった物語において、必ず主人公が勝つ、という筋書きはどうも物語をつまらなくしていると思い、前回は敗北という結果を出してみました。
そして、今回は…

2012-08-01 22:55:15 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:439   閲覧ユーザー数:434

『いつもの戦い方で行くよ!』

「了解、マスター!」

スレイニはランチャーを取り出して構える。照準を前にいるカレンへ向けて、

「いけぇ!」

引き金を引いた。

このランチャーはエンルの扱う青白い光線を放つ物とは違い、弾丸は赤い火球となってカレンへ向かう。

「甘いですわ」

カレンは余裕でターン、火球をひらりと避けてしまう。

「そんな見え見えの弾丸が、当たるとお思いですの?」

思っていない。それはオレもスレイニも同意見だ。

「今度はこちらから行かせて頂きますわ」

言うとカレンは新たな武器を取り出す。

その名はエアロヴァジュラ。イーダ型仕様の大剣だ。

その柄を両手で持ってカレンは一気に振るいつつスレイニとの間合いを詰めた。

『回避だ!』

縦に振るわれる大剣をスレイニはターンせず、見切ってステップでかわす。

「それでは二振り目はかわせませんわよ!」

もちろん、それをスレイニもオレも分かっている。

「そっちもね」

ステップ後、スレイニはランチャーの銃口をカレンに向けていた。

銃口とカレンの距離、僅か数センチ。

「当たれ!」

そこで引き金を引いた。

「きゃあ!」

その距離で外れる訳もなく、火球はカレンに命中、吹き飛ばしてダウンを奪った。

『今の内にリロードだ』

「分かってますよ」

スレイニは倒れているカレンを見つつランチャーのリロードを完了させる。

コレがスレイニのバトルスタイル。普通なら遠距離の相手に使うランチャーを距離を問わずに扱い、一撃で重いダメージを与える戦法。

一つ欠点を言えば、ランチャーは三発でリロードする必要があるので、その隙をつかれないようにするのが重要だ。

などと考えてる間に、カレンが起き上がる。

「そういえば、そのような扱い方をしていましたね。ですが、分かった以上次はそうそう上手くいくとは思わないで下さいな」

カレンはダブルナイフを取り出した。大剣より威力は劣るが、その分手数が多く攻撃動作が少ない武器だ。

カレンの武器はライフル、ダブルナイフと、大剣エアロヴァジュラの3つか。バランスの取れた選択だな。

「行きますわよ!」

ダブルナイフを持ったまま突撃してきた。

『応戦するんだ!』

「了解!」

スレイニは小剣を取り出して待ち構える。

 

ギィン!

 

互いの刃がぶつかり鋭い音を奏でた。

次いで攻撃をしたのは連撃に適したカレン。スレイニはそれをいなしていく。

「腕は落ちてないようですわね」

「カレンもね、本当に久しぶりなの?」

「貴女こそ」

「アタシは一応二人のトレーニングの手伝いしてるからね、小剣は振ってたよ」

二人共、バトルしながら会話してる。結構余裕あるんだな。

「ですが、私も負ける訳にはいきませ、んわ!?」

言葉の途中、カレンはサマーソルトキックを放った。急な攻撃に驚いたが、スレイニの回避が間に合いダメージにはならなかった。

だがキックから更に追撃、両手のナイフで前を切り裂いた。

「うわ!」

スレイニに直撃し、背中から倒れる。

「っう……いきなりレールアクションか、油断した」

今のはダブルナイフのレールアクション、しかもアタックチェインでの発動。急過ぎてガード指示出来なかった。

「っ……!」

起き上がるスレイニの目の先にはカレンが、ダブルナイフを握る両手をふるふると震わせていた。

そして、

「ちょっとマスター! 今のどういうことですの!?」

急に怒鳴り出した。

あー、やっぱりか。

「うわぁ……ひょっとして今の……」

その声に、起き上がったスレイニは苦笑気味。

「まだ会話の途中でしたのに、あぁしては攻撃と会話が終わってしまうに決まっていますでしょう?! なぜそれが分からないんですの!」

実は今の攻撃、カレンの意思ではない。現在カレンにライドしている東太の行動だ。

神姫にライドすることで、マスターは自分で神姫を動かすことが出来る。ただその際に神姫とシンクロしていないと、今のようになる。特にイーダ型は性格が高貴だからよく怒る、それに漏れずカレンもお冠だ。

「ですがあれほど攻撃の際には指示をと言いましたのに、もうお忘れですか!」

オレは指示重視で、移動とかは皆まかせだけど、東太は自分でも攻撃したいんだよな。

普通、相手神姫マスターの声は聞こえないんだけど、何か想像出来るな……

 

 

「ちょっとマスター! 今のどういうことですの!?」

 

『いやぁ、わりぃわりぃ』

 

「まだ会話の途中でしたのに、あぁしては攻撃と会話が終わってしまうに決まっていますでしょう?! なぜそれが分からないんですの!」

 

『で、でもよ、攻撃しないとバトル勝てないだろ?』

 

「ですがあれほど攻撃の際には指示をと言いましたのに、もうお忘れですか!」

 

『うっ……スミマセン』

 

 

うん、多分こんな感じだろうな。

コレだけを見たら神姫とのシンクロ率が低くて、イコール、バトルが弱いという事になるだろうけど……コレで強いんだから凄いよな。

要はアレが東太とカレンのバトルスタイル。普通の攻撃の中に突如、(カレンも)予想だにしないアタックチェインを放つ。完全(自身の神姫カレンにすら)奇襲攻撃型。

しかしアレはアタックチェインレールアクションによる攻撃。普通よりもスキルポイントの消費が激しく連続打ちは出来ないのが難点であり、こちらには攻める隙である。

『今の内に攻めるぞ』

「了解」

スレイニはライフルを向けて引き金を引く。カレンに避ける動作をさせもせずに命中した。

言い争っているところ悪いけど、これもバトルだから。

「よそ見してるならアタシ達が勝っちゃうよ」

「くっ……マスター! 次からは事前に言って下さいね!」

カレンは大剣を構えてこちらへ攻めてきた。大剣のスーパーアーマーを利用したライフルガードか。こちらにも両手武器があれば対抗するけど、無いから出来ない。

だから避ける。

『ジャンプで後ろを取るんだ!』

スレイニはその場でジャンプ、空を切った大剣を振るうカレンの背中側に回った。

ランチャーを構え、引き金を引かずにチャージをしつつ狙いを定める。武器の中にはこうしてチャージをすることで威力が上がるものがある。

「いけぇ!」

威力と速度の上がった弾丸がカレンへと放たれた。

「ふふっ」

しかしカレンは軽く笑い、その場でターンをして緊急回避した。

「背後を取られたら必ず攻撃が来るのは当たり前ですわ」

カレンはこちらを向き、ダブルナイフを構えて攻めてきた。

「くっ、今のが決まれば決定打になったのに」

スレイニは小剣を構えて交錯する。

確かに、今のでカレンの体力を削れれば決められたかもしれない。

だが、今とさっきの交錯でお互いにダメージを受けてるのは事実。決め手となる大きな一撃を当てた方が、おそらく勝つ。

 

そう……きっとそれを4人共分かっている。

 

だから今は近接交錯だけしかしていない。

スレイニのランチャー戦術も、東太の奇襲戦術も、アタックチェインもレールアクションも使わない。

今はただ互いにスキルポイントを貯める時間だった。

 

 

そして、時は経った。

 

 

「マスター! 準備完了だ!」

スレイニが伝えた。

カレンとの間合いを開ける。

『決めるぞ、スレイニ!』

「了解!」

一度のバトルで使えるレールアクションの種類は4つまで。その設定も武装同様に変更可能で、多くある種類のどれでもセットすることが出来る。

レールアクションは大きく分けて三種類。

1つは通常では出来ない移動をする、移動用レールアクション。

1つは通常では出来ない攻撃をする、武器指定攻撃レールアクション。

そして、神姫を含め条件を満たした武器及び武装を装備して初めて使える、神姫固有のレールアクション。

 

スレイニとカレンはその条件をこなしていた。

 

 

『「レールアクション!」』

 

 

オレとスレイニの声が重なる。

瞬間、スレイニの武装が変化を始めた。

スレイニのリアとレッグパーツに付けられたタイヤが地面につき、サドルにスレイニが腰を下ろす。手に持ったランチャー、最後の1ピースであるスーパーシルバーストーンを装着。

これで変形完了、前輪一つに後輪二つの、アーク型トライクモード。ここから放たれる無敵の突進技が、スレイニ、アーク型の固有レールアクション。

その名も、

「ロード、ファイター!」

スレイニはハンドルを握る。高速走行、ハイスピードトライクの性能をフルに生かして瞬時に加速し、前へと飛び出した。

その向かう先にはカレン、彼女もまたちょうど今変形を終わらせた。

先ほどのチェインアタックレールアクションで使った分も貯めたのでこちらより時間が掛かっていたんだ。

カレンもこちらと同じくトライクモード。しかし彼方は前輪が二つで後輪が一つ、加速よりも機動力に優れた構造の、高機動、ハイマニューバトライク。そこから繰り出される無敵の突進攻撃がイーダ型の固有レールアクション。

その名前は、

「スリルドライブ!」

カレンが加速、曲がることなくただ真っ直ぐに、スレイニへと向かった。

お互いを止めるものはなく、ただ真っ直ぐに……

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

 

 

ガギィィィィィン!!

 

 

二人は激突した。

スーパーアーマーさえ砕く二人の攻撃は同じ威力で、どちらが押し押されるでもなく均等な激突を続ける。

「負け……るかぁぁ!」

「負けま……せんわぁぁ!」

咆哮と共に二人は力を込める。これに押し負けた方が、バトルの敗者にもなると知っているから。

 

 

 

その瞬間、激突中ずっと削られていた体力が―――

 

 

 

バチン!

 

 

 

「うわっ!」

「きゃあ!」

 

同時に切れた。

二人のトライクモードが解除され、弾かれて宙を舞い、地面に落ちた。

 

 

 

 

 

フィールドの沈黙が拡がる。

 

これは……まさか……

 

 

 

 

 

 

その時、フィールドアナウンスが、そのまさかを宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

DRAW

 


 
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