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IS インフィニット・ストラトス ~転入生は女嫌い!?~ 第三十六話 ~新たな戦いの前触れ~

Granteedさん

第三十六話です。
更新が遅れてすみません、やっと夏休みに突入!
更新速度の方もなんとかなるかも……

2012-08-01 22:30:00 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:10427   閲覧ユーザー数:9890

~???~

 

「・・・・・い。おい・・・クロウ」

 

・・・誰だ?

 

「早・・・・。・・・く。・・・気づいて・・・くれ」

 

・・・良く聞こえない。

 

「・・・クロウ。・・・クロウ」

 

・・・お前は・・・誰だ?

 

~寮・自室~

 

「う・・・ううん」

 

クロウが自室で目を覚ます。部屋には朝日が差し込んできており、起床する時間だとクロウに伝えていた。あの夢のせいでお世辞にも目覚めのいい朝とは言えないが。

 

「・・・しかし最近変な夢を見るようになったな」

 

学年別トーナメントから約一ヶ月が過ぎた。あの後シャルロットは女性ということもあり、クロウとは別部屋に移動となった。何でもシャルロットの同室の相手はあのラウラだとか。

 

「あいつも十分貧乏くじの素質があるな・・・」

 

「(うわああああああ!!!)」

 

クロウが一人呟いていると、部屋の外から大声が聞こえてくる。気になりクロウが廊下に顔を出すと一夏の部屋のドアが開けっ放しになっていたので、入っていった。

 

「おい一夏、どうかした・・・か・・・」

 

クロウが一夏の部屋を覗くと、そこには俗に言う修羅場が展開されていた。

 

「あ、ク、クロウ。おはよう・・・」

 

「お、おう一夏」

 

「おはようございます。クロウ」

 

まず部屋には一夏、ラウラ、箒の三人がいた。部屋の主であるはずの一夏は何故かベッドの隅に退避している。そしてラウラと箒の状況だが、箒はあろうことか真剣を手にしており、振り下ろしかけた状態で停止していた。その原因はラウラがISの右腕を部分展開し、AICで箒の刀を止めているからだった。今はクロウが入って来たことで場の空気も変わり、箒は真剣を下ろし、ラウラはISを解除している。

 

「あーまあ、言いたい事は沢山あるがとりあえずラウラ」

 

「何ですか、クロウ」

 

「服を着ろ」

 

そう、ラウラは何故か全裸で部屋にいたのだった。ちなみにクロウは大人の対応として顔を背けている。余談だがラウラの口調は少しずつ改善されつつあった。クロウの事を名前で呼ぶようにはなったが、まだ敬語は抜けきれていなかった。まあクロウといては段々と直してくれれば良い、と考えていたのであまり気には留めていなかったが。

 

「そ、そうだぞラウラ!早く服を着てくれ!!」

 

部屋の隅から一夏の悲痛な叫びが聞こえる。しかし当のラウラは全くぶれなかった。

 

「しかしクロウも無粋です。夫婦の寝室に入ってくるとは」

 

「ふ、ふーふ!?」

 

「・・・あのなラウラ。夫婦ってのは結婚した男女のことなんだぞ?」

 

クロウは顔を背けながら訂正を入れ、箒はラウラの放った一言にいち早く反応する。ラウラは何故か誤った知識を身に付けており、先月から一夏はラウラに振り回されっぱなしであった。

 

「しかし、クロウ。私の嫁を嫁と呼んでおかしい事はないと思いますが?」

 

「・・・おい一夏。ラウラの事は頼んだぞ」

 

「ちょ、ちょっとクロウ!押し付けないでくれ!!」

 

「もう貧乏くじは勘弁してくれ!!」

 

クロウと一夏が朝っぱらからぎゃあぎゃあ言っていると、さらなる客がドアから顔をのぞかせた。

 

「ねえ一夏、こっちにラウラが来て・・・ってやっぱりいた!!」

 

顔をのぞかせたのはラウラのルームメイトであるシャルロット・デュノアであった。大方朝からラウラが部屋にいなかったので、探しに来たのだろう。

 

「何でラウラ裸なの!?とにかく服を早く着て!!」

 

と言いつつラウラに服を着せていくシャルロット。その様子はまるで母親と娘の様だった。

 

「シャルロット、お前も貧乏くじを引いたな」

 

「え?あははは・・・。まあもう慣れたよ、同じ部屋になってからはいつもこんな調子だしね」

 

「お、ラウラ。眼帯外したのか?」

 

いつもは眼帯で隠している左目の“越界の目(ヴォーダン・オージェ)”をあらわにしている。

 

「ええ、クロウが綺麗と言ってくれたので。どうですか?」

 

「おう、俺はいいと思うぞ。一夏はどうだ?」

 

クロウが部屋の隅に避難していた一夏に話題を振る。ちなみに箒は先程の夫婦宣言により固まっていた。

 

「ああ俺もいいと思う。その目綺麗だしな」

 

「そ、そうか。綺麗か・・・」

 

一夏の言葉を聞き、顔を赤く染めるラウラ。シャルロットが自室に戻るべく、服を着終わっているラウラを連れていく。

 

「じゃあみんな、また後でね」

 

「さて、もう終わった様だし、俺も部屋に戻るぞ。一夏も箒も早く学校に行く準備をしろよ」

 

言いつつ部屋から出ていくクロウ。ドア越しに一夏の断末魔が聞こえるがクロウは気にしない。

 

「(一夏!さっきの言葉はどういう事か説明してもらおうか!!)」

 

「(待て箒!さっきのは間違いだ!!)」

 

「(何が間違いと言うのだ!大人しく白状しろ!!)」

 

「(ちょ、ちょっと待て箒!話せば分か、ギャァァァー!!)」

 

まあどうせいつも通り無事?に教室に来るだろう、と思いながら、クロウは自室に戻っていく。

 

 

~教室・SHR(ショート・ホーム・ルーム)~

 

学生の日課である授業も終わり、現在放課後のSHR。教卓では千冬が生徒に連絡をしている。

 

「ああそれと、来週から校外特別実習期間だが、全員忘れ物などしてくれるなよ。三日間だけとはいえ、あちらでの自由時間で羽目を外しすぎない様に」

 

千冬の言葉を聞いた瞬間、教室が一瞬にして騒ぎだす。ちなみに行く先は海。女子生徒にとっては海に行く、というだけでテンションが上がる要因となる。

 

「海かぁ~、楽しみだね!!」

 

「水着、何着ていこうかな~!!」

 

「ねえ、今日買い物に行こうよ!!」

 

「静かにしろ!!詳細は明日のSHRで話す、それでは解散!!」

 

千冬の号令で終わるSHR。クロウ達も今日の特訓に行こうと席を立つが、何故かクロウだけが千冬に呼ばれる。

 

「ああ、それとクロウ・ブルーストは終わった後、寮の宿直室まで来い。分かったな?」

 

「ええ、分かりました(はて?何かあったっけか?)」

 

クロウに言い残すと、教室から出ていく千冬。一夏達は揃って首をかしげている。

 

「なあクロウ、今日って何かあったっけ?」

 

「いや、何も知らん。皆は何か知っているか?」

 

「「「知らない(な)(よ)(ですわ)」」」

 

箒、シャルロット、セシリアが声を揃えて言う。とにかく呼び出された以上、クロウとしては行かない訳にはいかない。

 

「ともかく行ってくる。特訓は先にやっててくれ」

 

「分かった。じゃあ後でな、クロウ」

 

「ああ」

 

クロウは宿直室へ、一夏達はアリーナへと歩いていく。

 

~寮・宿直室~

 

クロウは今、男子寮にある宿直室のドアの前に来ていた。もちろん千冬から呼び出されたからである。クロウはドアをノックして、来訪を告げる。

 

「(コンコン)千冬、いるか?俺だ」

 

「クロウか?は、入ってくれ」

 

ドアを開けて入るクロウ。部屋にはスーツ姿の千冬が備え付けの椅子に座っていた。

 

「呼び出してすまないな。と、とりあえず座ってくれ」

 

千冬にすすめられるがまま、クロウはベッドに腰を落ち着ける。何故か千冬は顔を赤くして、クロウから顔を逸らしていた。

 

「んで用件は何だ、千冬?」

 

「な、なあクロウ。お前次の日曜日は空いているか?」

 

「ん?ああ、まあ今の所は何も無いな」

 

「そ、そうか。ならば・・・」

 

千冬はそこで一旦言葉を切り、深呼吸する。クロウは何を言い出されるのか、と身構えていた。

 

「次の日曜日、私の買い物に付き合ってくれないか?」

 

千冬は顔を真っ赤にしながら言葉を絞り出す。クロウとしては、来週が臨海学校ということもあり、ありがたい申し出だった。

 

「ああ、別にいいぞ。でも一つ問題があるんだが」

 

「な、何だ?」

 

「俺、この世界の金持ってないんだよ・・・」

 

そう、クロウはこの世界の金銭を持っていなかった。IS学園は、特殊国立高等学校のため、食費・光熱費等の代金は学園側が負担していたのだが、クロウは自分で自由に使えるお金を全くと行っていいほど持っていなかったのである。しかし千冬はそんなクロウの切実な問題をあっさりと片付けてしまう。

 

「ああ、そういえばまだ渡していなかったな」

 

そう言うと千冬は自分の机の中を開け、何かを探し始める。しばらくすると千冬の手には、一冊の小さい冊子の様な物が握られていた。

 

「お前の預金通帳だ。受け取れ」

 

「は?ちょ、ちょっと待て千冬。何だこれ?」

 

「ああ、この学園に入学する時に、お前を特待生扱いで入学させる、と言っただろう?特待生には毎月、学園側から奨学金が出るのだ。渡すタイミングが無かったのでな、今の今まで忘れていた」

 

千冬がクロウに通帳を手渡す。クロウはまだ訳が分からず、ぼんやりしていた。

 

「そうか、ありがとな」

 

何の気無しに、クロウが通帳を開く。しかし、中身を見た途端クロウは固まってしまう。そんなクロウを見て、千冬が心配そうに声をかけた。

 

「お、おいクロウ。どうした?」

 

「・・・な」

 

「な?」

 

「なんだこりゃああああああ!!!」

 

クロウは通帳に記載されている金額を見て、驚愕する。なぜならそこには、世界一周どころか、十周は出来る様な金額が書いてあったのだ。

 

「何だこの金!?これが俺の金か!?マジで!?」

 

「あ、ああ。その通りだが?」

 

クロウの豹変ぶりに若干引き気味の千冬だが、クロウの暴走は止まらない。

 

「そうか、これは夢だ。千冬、試しに俺の頬をつねってくれないか・・・」

 

「お、おいクロウ!戻ってこい!!」

 

魂が何処かに行ってしまっているクロウを引き戻すべく、千冬は思いっきりクロウの頬をつねる。

 

「イテテテテテ!!マジか!!これは夢じゃねえのか!!」

 

「だ、大丈夫かクロウ!?」

 

「あ、ああ。しかしこれ程の金を学生に与えるなんてな。この学園はどうなってんだ?」

 

「まあ、ここは他の学校とは違うからな。・・・そ、それより私と一緒に行ってくれるか?」

 

「ああ、いいぜ。断る理由もないしな」

 

正気に戻ったクロウは、あっさりと承諾する。対照的にさっきは普通の顔をしていた千冬だったが、再び顔を赤くしてしまう。

 

「は、話は以上だ。戻っていいぞ」

 

「おう、じゃあな」

 

立ち上がり、ドアに向かうクロウ。クロウが取っ手に手をかけた時、再び千冬がクロウを呼び止めた。

 

「ま、待てクロウ。一つ言い忘れていた」

 

「ん?何だ?」

 

「この話は絶対に誰にも言うな、一夏はもとより、篠ノ之達にもだ」

 

「?別に隠しておくことでもないんじゃないか?」

 

「う、うるさい!これは教師命令だ!いいか、絶対に言うなよ!!」

 

「わ、分かったよ。じゃあな」

 

扉が開き、出ていくクロウ。部屋には顔を赤くした千冬がなにやらブツブツつぶやいている。

 

「・・・やった、とうとうやった。クロウとのデート!!」

 

いきなり椅子から立ち上がり、ガッツポーズを取る千冬。その顔は勝利者の笑顔だった。

 

「あいつはどう思っているか知らんが、どこからどう見てもこれはデートだろう!」

 

実際、誘われた当のクロウは“俺も買いたい物があったしちょうど良かったな”程度にしか思っていなかったのだが、千冬の精神衛生上、知らぬが仏というものだろう。

 

「ふふふ、これであの小娘どもに差をつけてくれる!!!」

 

その日、千冬の部屋から一人笑い続ける声が聞こえたらしい・・・

 


 
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