~明久SIDE~
Fクラスの人が復活してしばらくすると、先生が教室に入ってきた。
「えー、今日からこのクラスの担任になる……福原慎です。よろしくお願いします」
(先生、何を探してたんだろう?)
(多分、黒板に名前を書こうとしたけどチョークがなくて書けなかったんだろう)
(実際チョークなかったしな)
チョークがないなんて……。先生は僕達に勉強をさせる気はあるの……?
「それでは、自己紹介をお願いします」
そう言うと、1人が立ち上がった。あれは……
「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」
「やっぱり秀吉だ!久しぶり!」
「あ、明久!?雄二も!お主らがなぜFクラスにおるのじゃ!?」
「色々ありまして……」
そう言って僕達は答えをはぐらす。はぐらされた秀吉は頬を膨らませていたけど。
そしてまた次の人が立って自己紹介をした。
「……土屋康太。よろしく」
あれ?どこかで聞いたことがある名前だな。あとで雄二に聞こう。
しばらくは知らない人ばっかりだったけど、聞いたことがある女子の声が聞こえてきた。
「………です。趣味は吉井明久を殴ることです☆」
「え!?」
驚いて僕は声の主の方を見た。そこにいたのは去年のクラスメイト、島田美波さんだった。
理不尽な理由で暴力を振ってくるから苦手なんだよね、島田さんて。
「ハロハロ~♪よろしくね、よ……ヒッ!!」
「…………(ニコニコ)」←表面上の笑顔で島田さんを見ながら拳を握っている
島田さんは僕に向かって手を振ろうとしていたけど、兄さんが怖すぎたのか怯えていた。
そんなことをやっていると、すでに僕の番になっていた。
「吉井明久です。よろしくお願いします」
攻撃されるかと思ったけど、さっきの兄さんの攻撃が効いたのか、何もしてこなかった。
僕が座ると、僕の前にいた兄さんが立ち上がった。
「言いたいことはさっきと同じだ。以上」
『イエッサーーーーーッ!!』
まさか皆して同じ返事をするなんて……。凄いけど、そんなに怖かったのかな?
そして自己紹介は続き、残りが雄二だけとなった、その時だった。
ガラッ
「あの、遅れて、すみま、せん……」
『え?』
教室の扉が開き、そこに立っていた人物を見て、皆(僕、兄さん、雄二を除く)が驚いていた。
なぜならば……
「丁度よかった。自己紹介をお願いします」
「は、はい!姫路瑞希といいます。その、よろしくお願いします」
そこにいたのがピンク色のロングヘアーで、Aクラス上位の成績の、姫路瑞希さんだったからだ。
「はい!質問です!」
「は、はい!なんでしょう!?」
「どうしてここにいるんですか?」
Fクラスの男子が質問をした。確かに、質問したくなるよねぇ。
「その、振り分け試験の最中、高熱を出してしまいまして……」
「あぁ~そう言えば俺も試験の時、熱(の問題)が出たせいで」
「あぁ化学だろ。確かにあれは難しかったな」
「俺は試験の時、弟が事故にあって……」
「黙れ一人っ子」
「試験前日の晩、彼女が寝かせてくれなくて……」
「今年一番の大嘘をありがとう」
(((バカばっかりだ……)))
今の会話を聞いて、僕、兄さん、雄二は呆れることしかできなかった。
姫路さんが僕達の席の近くに来たので、体調のことを聞いてみることにした。
「姫路さん、体調は大丈夫……みたいだね」
「あ、はい。おかげさまで。それから、あの時はすみませんでした」
「僕が勝手にやったんだから、気にしないで」
「ん?どういうことだ?」
気になったのか、兄さんが聞いてきた。そっか、兄さんはこの時まだいなかったんだよね。
「実は僕、姫路さんと一緒に途中退席しt(ナデナデ)って兄さん!子供じゃないんだから頭撫でるのやめて!」
「スマンスマン。そういう優しいところを見てると撫でたくなるんだよな」
「もう……」
兄さんてば、こういう時にいつも頭をなでるんだから。恥ずかしい。
「明久、ちょっといいか?」
「え?うん」
すると雄二が真剣な、だけど困ってるような顔で僕を呼んだ。
そして僕達は先生が教卓を取り入っている隙に、廊下へと出た。
*
「それで、どうしたの?」
「いや、今思ったんだがな?『あの事』を達成するには、姫路がいるとまずいんじゃないか?」
「え?……あ、そっか!」
雄二に言われて気がついた。僕達が『あの事』を達成するには、姫路さんがいると達成することができない。なら、一体どうすれば……?
「……私に考えがある」
「「うわっ!?」」
僕達が悩んでいると、今はAクラスにいるはずの翔子さんが現れた。
「めんどくさいからツッコミとかは全部見逃す!翔子、さっきのはどういうことだ!?」
「……そのままの意味。2人とも、耳貸して」
そう言われ、僕達は疑問に思いながらも翔子さんの話を聞いた。
その発想には、驚きを隠せなかったけど……。
「……確かにそれなら、『あの事』を達成できるね」
「だな。翔子、その案もらうぞ」
「……構わない。そのために用意した考えだから」
僕達は翔子さんにお礼を言って、先生が来る前に教室へと戻った。
*
「お待たせしました。それでは坂本君、君が最後ですよ」
先生は新しい(?)教卓を持ってくると、雄二にそう言った。
雄二は前に出ると、僕とアイコンタクトを交わして、皆に向かって言う。
「代表の坂本雄二だ。代表でも坂本でも好きなように呼んでくれ」
雄二は間を置くと、AクラスとFクラスの設備の差について話した。
「……不満はないか?」
『大ありじゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!』
「そんな中で、聞きたいことがある。明久」
僕は雄二の言葉にうなずき、皆に『あの事』を教える。
「僕と雄二は『学力が全てじゃない』ということを証明したいと思っている。だけど、よく考えてくれ。このクラスには姫路さんに続いて、かなりの有力者がいる」
「俺たちは考えた。そんな中で試験召喚戦争をしても結局は学力に頼ることになってしまう。ならどうするか?」
雄二がそう言うと、兄さんが話に加わってきた。
「つまり、召喚獣の操作能力で勝とう、ってことか?」
「そうだ。それなら皆にでもできるだろう?」
『た、確かに……』
『それってつまり、俺でもAクラス代表を討ち取れるってことか!?』
『それってスゲーんじゃねーか!?』
よし。だんだん皆の士気が上がってきてる。あともうひと押しだ!
「そうだ!僕達で文月学園の歴史に新たなページを載せてやろうじゃないか!」
『おぉーーーーーーーーーーーーっ!!』
皆のこの反応を見て、僕達は互いを見て笑いあった。
さあ、Aクラス対Fクラスに向けての試験召喚戦争の幕開けだ!!
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「自己紹介の話だ!」
「僕と雄二が引き金を引くよ!」
「「それでは、どうぞ」」