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真・恋姫†無双~だけど涙が出ちゃう男の娘だもん~[第18話]

愛感謝さん

無難な人生を望み、万年やる気の無かったオリ主(オリキャラ)が、ひょんな事から一念発起。
皆の力を借りて、皆と一緒に幸せに成って行く。
でも、どうなるのか分からない。
涙あり、笑いあり、感動あり?の、そんな基本ほのぼの系な物語です。
『書きたい時に、書きたいモノを、書きたいように書く』が心情の不定期更新作品ですが、この作品で楽しんで貰えたのなら嬉しく思います。

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2012-07-31 20:24:44 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3756   閲覧ユーザー数:3409

真・恋姫✝無双~だけど涙が出ちゃう男の()だもん~

 

[第18話]

 

 

ボクたちは今、兗州(えんしゅう)西部の東郡へ来ていました。

兗州は豫州の上方に位置する州で、上に冀州・左に司隷・右に青州と徐州に囲まれています。

冀州へ援軍に行くにも、この兗州を平定しないと背後から襲われる可能性がありました。

黄巾党は数十万の軍勢を数個に分けて、多方面から司隷へ攻撃を仕掛けているからなのです。

 

 

 

豫州の長社での葬儀の後、華陽国からの補給別動隊と工作隊の到着を待ってから兗州に向かいました。

別動部隊の到着を待っていたのは、捕虜の糧食を確保する為です。

更には、補給別動隊の護衛をして来た部隊に捕虜を監視させて、工作隊が持て来た投石機や破城槌などの攻城兵器を受け取る為でした。

元々、ボクは賊徒を捕虜にする事を決めていました。

だからその為の糧食を、別個に確保して貰っていたのです。

華陽軍本体の益州出発には間に合いませんでしたが、数週間遅れで合流出来たのには助かりました。

でなければ長社で足止めを喰らうところでした。

 

ボクたちが補給別動隊を待っている間に、朱儁・皇甫嵩・曹操の軍は汝南方面に賊徒討伐へ向かって行きました。

曹操は去り際に『いずれ又、どこかで逢いましょう』とか言っていました。

でもボクは、曹操を笑顔で見送りながらも出来れば遭いたくないなぁと思っていました。

だって。好き好んで胃に穴を開けたがる人なんて、いるわけ無いと思います。

 

豫州から兗州へ入ってからも、賊との戦闘が何度かありました。

しかし、捕虜を引き連れての賊徒征伐は進軍速度に支障をきたします。

打開策を軍師たちに相談したところ、黄巾党の賊に奪われている城郭都市を奪還して橋頭堡にしてはどうかと言われました。

ボクはその案を採用して、拠点探索を軍師たちに任せることにしました。

ある時の戦闘後に、数人の賊を軍師たちは捕虜にせず放逐します。

理由は、賊の逃走路から賊軍の拠点を探る為のようでした。

 

ボクは諸葛亮・龐統・周泰のトリオにかかれば、どんな秘密や隠し事も出来無いことを今回の件で知りました。

周泰がある時、ボクには理解出来ない情報を持ち帰って来たのです。

それは賊首領の一人の内股にホクロがあるという情報でした。

でも、そんな情報に何の価値があるのでしょうね?

そもそも何処(どこ)でそれを確認して来たのやら、ちょっと聞くのが怖い気がします。

 

ボクは心の内で密かに決心しました。

今度から風呂に入る時は、もっと周囲に気を配ろうと。

 

 

 

 

「あれが、卜己が居た街なのかい?」

「はい」

 

ボクが眼下にある城郭都市を見ながら問うと、周泰は肯定だと答えてくれました。

 

 

何度目かの賊との戦闘を倉亭で行なった時、賊首領の一人である卜己を生け捕りにすることが出来ました。

卜己から聴き取った情報と周泰たちの集めた情報を裏付けにして、周泰に効率良く賊の撹乱工作をさせていたのです。

卜己の率いる軍は当初、数万規模だったそうでした。

それをボクたちは、情報を撹乱させ賊を分散させる事で各個撃破していきました。

情報撹乱の間者には、長社で捕虜にした者から百名ほど選んで遣わせたそうです。

間者希望者が多数出たそうで、軍師たちは選抜するのに大変だったみたいでした。

選抜者には罪が比較的軽微で、尚且つ家族が一緒の捕虜になっていた者を選んだそうです。

恩赦による家族全員の刑期短縮を条件にしたので、頑張ってくれたのかも知れませんね。

その辺の匙加減(さじかげん)は軍師たちに任せてあるので安心していました。

駄目元とやってみたら、良き結果に結びついてくれたので良かったです。

 

 

「敵状視察もすんだし、そろそろ本陣に戻ろうか?」

「はい」

 

今回のボクの目的は、周泰と親衛隊数騎を伴っての視察でした。

夜を待ってからの攻撃になるので、昼の内に確認したかったのです。

もっとも。ボクが周泰の敵状視察に付いて来ただけなのですけどね。

 

 

 

「どんな調子かな? 桔梗」

 

ボクは華陽軍の待機場所に戻って来て、厳顔に準備の進み具合を聞きました。

攻城戦で使用する投石機の組み立てを、彼女の指揮の元にやって貰っていたのです。

厳顔は自分の部下に彼是(あれこれ)と指示した後、ボクの方にやって来ました。

 

「まあ、(おおむ)ね順調と言ったところですかな」

「何か問題でもあるのかい?」

「いやなに。投石機の飛距離が、どれ位なのか計り兼ねているようでしてな」

「ああ……。なるほどね」

 

投石機の試射は済んでいましたが、実戦での使用は今回が初めての事です。

だからボクは、今回の戦闘で改良点を弾き出していこうと思っていました。

皆もそれは理解していますが、やはり実戦という事で不安なのかもしれません。

今回使用する投石機は、トレビュシェット式3台とバリスタ式5台です。

言い方が面倒臭いので、トレちゃんとバリちゃんに改名しました。

ちなみに、カタパルト式はカタちゃんです。

『私たち、投石機3姉妹で~す♪』って、何か語呂が良いと思いませんか?

しかしこの名前は皆には不評で、トレ式・バリ式・カタ式投石機という名前で呼ばれるようになってしまいました。

可愛いと思ったのですけれどね?

残念です。

 

「取り敢えずの微調整は、石の重さでするしか無いんじゃないかな?」

「……まあ、それしか無いのでしょうな」

 

ボクが自分の考えを言うと、厳顔も了承してくれました。

彼女自身も、その方法しか思いつかないようでした。

 

「ところで。朱里の方は、どうなんだい?」

 

ボクは諸葛亮の姿が見当たらないので、もう一つの準備の進捗(しんちょく)具合を厳顔に聞いてみました。

 

「ああ。向こうは、(とどこお)りなく終わったそうですぞ」

「じゃあ。後は夜を待って始めるだけなのかな?」

「そういう事ですな」

 

ボクが最終確認をすると、肯定との答が厳顔から返ってきました。

 

「それじゃあ、皆を集めてから始めようか」

 

ボクは戦闘を始めるべく、皆を集めるようにと告げました。

さて、どんな結果になるのでしょうね?

 

 

 

 

日が暮れて夜の闇が深くなって来たので、ボクたちは松明に火を点けてから敵城の前に陣取りました。

 

重装歩兵隊を前面に展開させて敵の突撃に備えつつ、そこにバリ式投石機を並べて石撃ちします。

投石機には、敵からの矢避けに鉄板の盾が付けられていました。

石を撃つ時に、矢や火矢で狙われないようにする為に改良したところです。

歩兵隊の背後に弓隊を展開させ、歩兵隊の援護と城壁に居る敵を討たせます。

弓を改良してあるので、後方からでも十二分に威力を発揮する筈です。

城壁の高さを活かした敵の矢の飛距離にも、負ける事無く応戦するでしょう。

 

弓騎兵と重装騎兵は弓隊の左右後方に展開させて、有事の際に敵を撹乱して貰おうと思っています。

今回の敵城攻略戦に出番は無いと思いますけれど、念の為です。

弓隊の後方、騎兵隊に挟まれる形で親衛隊とトレ式投石機を展開させました。

親衛隊には、ボクや投石機の石撃ちを担当する工作隊の護衛を任せました。

偵察隊を放っているので、背後から敵に襲われる事はないとは思います。

でも念には念を押そうと思い、配置しました。

 

軍の配置や運用は厳顔や諸葛亮に任せてあるので、問題は無いでしょう。

彼女たちが裏をかかれるのなら、誰がやっても同じ結果になるだろうとボクは思っていました。

賊の捕虜たちは、監視の部隊と待機場所に留守番です。

武器が無いとはいえ、流石に合流されたくありませんしね。

 

 

 

「刹那様、別動隊の準備が整いました」

 

攻城戦の準備が整って待機していると、周泰がボクの所へ報告しに来てくれました。

彼女には、別動隊の道先案内を頼んでいたのです。

ボクは彼女の言葉を聞いて、戦闘を始めるべく厳顔に告げます。

 

「じゃあ、そろそろ始めようか? 桔梗」

「ふふふっ。承知しました」

 

厳顔は喜々として返答してくれました。

何か楽しそうですね?

 

 

今回の攻城戦で軍師たちが立てた策の概要は、こんな感じでした。

まず、第1軍を南門に展開させて攻城戦を仕掛けます。

ですが、それは敵を南門に集中させる(おとり)で、残りの2軍を反対側の北門から破城槌を使用して突撃を仕掛けるのだそうです。

 

別動隊の第2軍の指揮を黄忠・軍師に龐統(ほうとう)を据え、別動隊の第3軍の指揮は魏延・軍師に呂蒙を据えました。

本当は龐統を魏延の軍師にしたかったのですが、魏延の手綱を自分では取れないと駄目だしされました。

呂蒙で軍師が務まるのかな? と疑問に思っていましたら、諸葛亮達が大丈夫だと太鼓判を押しました。

何でも学校で司馬徽に師事しているそうなのです。

軍略・兵法などは自分達も舌を巻く程の成長ぶりで、問題は無いとのことです。

もはや『阿蒙』で無いのなら大丈夫だろうと、ボクは納得しました。

 

こちらの大凡(おおよそ)の兵数を敵側も把握しているでしょうから、足りない分は偽兵の計を使いました。

竹を使用して、横にした時に人の高さ位になる長方形の立体を組み立てます。

その竹の横に長い所に松明(たいまつ)数本を等間隔で(くく)り付けて、多数の篝火(かがりび)があるような仕掛けを作製しました。

その松明に火を点ける事で、兵の数を水増しして偽兵としたのです。

夜の闇夜の遠目では、それは(あたか)も何名もの兵が居るように見える事でしょう。

その仕掛けを諸葛亮の指揮の元、昼間に作って貰っていたのです。

 

 

「撃ち方、始めー!」

 

厳顔の号令で、一斉に石が投石機から放たれていきました。

バリ式投石機から放たれた石は、轟音を上げて勢い良く城壁上の凹凸を敵兵ごとブチ抜きます。

トレ式投石機からの投石は、綺麗な放物線を描きながら城門を超えて街の中へと落ちていきました。

 

「え~と、朱里さん?」

「はい?」

「トレ式投石機の狙いは、城門だった筈だよね?」

「……はい」

 

ボクは街の中へと消えていった投石を見て、傍らに居る諸葛亮に狙いを変更したのか確認してみました。

でも、ボクの勘違いでは無かったようです。

 

「……次の投石は、もっと重くした方が良いみたいだね?」

「……そのようですね」

 

諸葛亮も、投石機の投石能力に驚いているみたいでした。

まあ、嬉しい誤算なのですから良い事にしましょう。

 

 

それからは、互いに弓矢を使用しての攻防戦の展開でした。

敵は負けじと、矢で一斉に応戦してきます。

ボクたちは盾で敵の矢を防ぎつつ、投石と矢で敵を迎え撃ちました。

バリ式投石機で城壁上の凹凸を壊していったので、敵は徐々に身を隠す場所を失って行ったようです。

のこのこと敵が身をのり出してきたら、それを弓隊で狙撃して討っていきました。

 

トレ式投石機は、城門に狙いを定め直して投石していきました。

重い石が無い場合は、投石の数を増やして絨毯爆撃の様に撃ちだしていきます。

その為に城門は、見る間にその(てい)をなさ無くなっていきました。

敵は城壁上の凹凸が残っている所に弓兵を増強したのか、徐々にですが放たれる矢の数が増して来ました。

そろそろ頃合いかな? と思っていたところ、敵側に動揺が走ったのを確認出来ました。

矢を放つ統制が取れずに、いきなり散発的になったからです。

 

黄忠たちが城を占拠するまでの間は、暫く矢の応酬が繰り返されていました。

しかし、それも直ぐに鳴りを潜め、賊が降伏し出しました。

 

「どうやら、勝てたようだね?」

「はい。これで橋頭堡を獲得出来ました♪」

 

ボクが諸葛亮に話しかけると、笑顔で答えてくれました。

賊の完全降伏・武装解除させた時には、いつの間にか朝日が昇っていました。

 

 

 

 

橋頭堡を築いてから2~3日は、将兵達と賊の傷の手当てや都市の現状把握であっと言う間に過ぎて行きました。

少し落ち着いて来た頃から、軍を3交代制にして兗州東郡周辺の賊を征伐していきます。

1軍を賊征伐に振り向け、残りの軍は城郭の修理を捕虜にさせる監督や休息を取らせる事にしました。

全体の計画は諸葛亮と龐統(ほうとう)が、補給や実務管理は黄忠と呂蒙が行ないます。

賊征伐は厳顔と魏延が行ない、その対象の賊捜索を周泰が行ないました。

その間ボクは何をする事も無く、のんびり御茶を飲みながら優雅な休息を取っています。

優秀な部下を持つ事は本当に素晴らしい事だと、しみじみ実感しているボクでありました。

 

 

 

「刹那様。兗州の東部方面から、救援要請の使者が来ました」

 

今日も優雅に午後の御茶と洒落(しゃれ)込もうとしたら、魏延が部屋にやって来ました。

しかも優雅さとは無縁の救援要請と聞いて、ボクの意識は天国から現実へと引き戻されます。

 

「……救援要請って、どこの軍から?」

 

今現在、兗州にはボクたちしか官軍は居ない筈です。

ボクは不思議に思って魏延に問いました。

 

「いえ。官軍からでは無く、村人からです」

「はい?」

 

ボクは要領を得無いので、魏延に詳細を確認しました。

それによると、厳顔と魏延が付近を警邏中に村人が接触して来たとの事。

その村人の村が最近になって賊の襲撃が多くなってきたとの事。

何回かは撃退したものの次回の襲撃には耐えられそうにも無いので、救援を要請しに来たという事らしいです。

 

「ふ~ん、そう。で? その村人は、今どうしているの?」

「朱里と雛里が、別室で詳細を聞いています」

 

まあ、事情聴取が終われば村人を連れて来るでしょう。

慌てる事はありません。

でも、どうやらボクの束の間の休息は、終わりを告げたのかもしれません。

 

(短い春でしたねぇ……)

 

ボクは優雅であった休日の日々を名残惜しみつつも、どことなく新たな戦いの到来を予感していました。


 
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