No.462857

~貴方の笑顔のために~ Episode3 一刀の決意

白雷さん

三十年の時を経て、一刀は彼女をようやく目にすることができた。
しかし、堂々と前をむいて道を進む彼女に一刀はある決意をする。

2012-07-31 16:20:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:17300   閲覧ユーザー数:13529

~一刀視点~

 

風が吹いている。  目の前に広がる広野。

それはあのときの、以前自分が飛ばされて来た時の景色と同じ景色がそこには広がっていた。

 

帰ってきた・・・やっと。やっと俺はここに。

今、帰るから・・

 

そう思いながら俺は、魏への道を歩いていた。

 

 

~その頃魏では~

 

 

「華琳さん!」 

 

「ごきげんよう。華琳」

 

二人の女の子、劉備と孫策が華琳を見つけて呼びかける。

 

「久しいわね、二人とも」

 

今日は年に一度の祭りの日

魏を会場にして、三国同盟記念を祝う日であった。

 

「調子はどう?」

 

「あのね。こんど国で私塾をつくることになったの。

 他の国から勉強したい人をたくさん集めていろんなことを

 教えていければいいなって思ってるんだ!」

 

華琳の問いに桃香は照れながらこたえる。

 

「へぇ、面白いことを考えるわね。」

 

「だから華琳さんのところからもいろんな技術を教えられる人を、

 何人か派遣してほしいんだけど。」

 

照れながら桃香は“だめ?”という風に様子をうかがう。

 

「こちらからも学びたいものを寄越してかまわないなら

 考えてあげてもいいわよ」

 

「もちろん、大歓迎だよ」

 

「けれど桃香、公に運営するならもはや私塾ではないわよ?」

 

「うーーん・・・だけど公塾っていうのもなんか違うなぁ~って

 思うんだけど・・・。なんかいい名前ないかなぁ?」

 

とまゆをよせ、うーんと唸り始める。

 

「そうね、それなら“学校”とでも名付けたらどう?」

 

(そうね、私はまだ、彼のことが・・・)

 

「学校・・?」

 

「学ぶところ・・・か。良いかもしれないわね」

 

雪蓮は納得がいったのか、“うんうん”と頷いた。

 

「学校・・・・。うん、いいかも!

 朱里ちゃんにも話してみますね!」

 

その後も三人は、政治・経済などなど雑談交じりに長々と話していた。

 

そんな三人に声をかけたのは、周瑜と公孫賛の二人である。

 

「・・・・大陸の女王たちがそろって何を話しているのか

 と思えば、・・・なに?

 その面白みのない話題は・・」

 

「そうだぞ、そういうのは会議場かもっと公式の場でやれよ」

 

「ふっそれもそうね・・・

 そろそろこの話はおわりにしましょうか。・・・

 今日の宴は桃香、あなた主催でしょう?」

 

「はい♪それじゃぁみなさん行きましょう」

 

桃香は先導して皆を会場へとつれてゆく

 

「・・・えぇ!」

 

華琳も頷き、皆のところへと歩きだす。

 

そのとき、華琳の頬をふと風が撫でる。

立ち止り、風を追うように空を見上げる。

 

“素晴らしい国をつくってくれ”

一緒にこの天をつかみとった、

いまだ忘れぬ彼の言葉を華琳は思い出した。

 

「一刀・・・」

 

空を見上げ愛する彼の名を呼ぶ。

 

「一刀・・・。私は私の物語でうまく主役をしているわ。

 あなたは・・・どう?うまくやってる?

 あなたがいなくなったあの日、魏は抜け殻のようになって

 しまったわ。天下を手に入れて、一皮むけて

 中身だけ飛んでいって・・・

 残されたのが私たち・・・。

 でもね一刀。みんな強くなった。

 悲しみは薄れることはないけれど、みんな一歩一歩

 前に進んでる。

 貴方の言葉通り、これからも皆で素晴らしい国をつくるわ・・・・」

 

そういう華琳にこたえるかのように風が吹き、

木の葉がフッと落ちてきた。

 

 

「次に会えたときは、別れてからの話、

 たくさん聞かせてもらうわよ。

 だから・・・だからね、一刀、いつかまた会える時まで

 私も胸を張って生きるわ。

 私らしく、あなたに笑われないようにね・・・。

 じゃぁね!また会いましょう、一刀!」

 

心から愛する者への再開を誓い友の元へと歩き出した。

 

 

~一刀視点~

 

・・・やっと城についた。

さて、どうするかな・・・。

ここで表からいってもなんか味気ないしな。

ちょっと気配を消して驚かせよう。

 

そう思った俺は、気配を消して城内へしのびこんだ。

 

そして木の上に隠れ、

昔、華琳とよく話したその庭を伺っていると

その先にこの三十年間思い続けた彼女がいた。

 

あっ・・・かっ華琳・・・。

 

 

涙が頬を伝わった。

 

ん?劉備さんや孫策さんもいるな・・・。

今日は何かあるのだろうか??

とりあえずこの半年仲良くやれてるみたいで良かった。

 

思わぬ人の登場に一刀は華琳に話しかけるタイミングを

つかめないでいた。

 

そのようにタイミングを伺っていると、

そこに居た一団は

劉備を先頭に別の場所へと移動を始め

華琳だけがその場にのこっていた。

 

(今だなっ)そう思った俺は

 

「かり・・」

 

華琳に声をかけようとした。

けれど、華琳が何か言っているのに気が付き、

声をとどめた。

 

「一刀・・・。私は私の物語でうまく主役をしているわ。

 あなたは・・・どう?うまくやってる?

 あなたがいなくなったあの日、魏は抜け殻のようになって

 しまったわ。天下を手に入れて、一皮むけて

 中身だけ飛んでいって・・・

 残されたのが私たち・・・。

 でもね一刀。みんな強くなった。

 悲しみは薄れることはないけれど、みんな一歩一歩

 前に進んでる。

 貴方の言葉通り、これからも皆で素晴らしい国をつくるわ・・・・」

 

 

華琳、俺は、なんなんだろうな。君と別れて、君たちと別れて、

なにひとつ君たちのことを考えていなかった。自分のことだけだ。

ただ自分が君にあいたいがために・・

だけど、皆は、色々と乗り越えて必死に前へ進んでいる。

勝手に消えて、みんなに迷惑かけて、

それでもみんな、消えた俺を心に刻んでくれて、

素晴らしい国を創ろうと努力して・・・・

それなのに・・・皆が立ち上がれたときに

俺は会いたいからという自分勝手な都合であうのか?

また消えるかもしれないと貂蝉にいわれたのに・・・

また俺はあの時みたいに、結局は悲しませてしまうだけなのではないだろうか・・

 

そう思うとやり切れない気持ちになった。

 

そんなことでみんなの、華琳の涙を見るのは

もういやだ・・・・だから俺は・・この世界に戻ってきた

責任を、果たそう。俺の今の存在意義。

そして、今度こそ俺が何をしてもこの世界にいれる、そんな方法を・・

その努力を俺はしなくてはいけない・

 

 

そう思った一刀はそう決意をするのであった。

 

北郷一刀その存在をひと時捨てるため、

一刀は身を隠すことにする。

漆黒のマントと、仮面をかぶり、街を出たのである。

 

 

ある時は賊を倒し、またあるときは、医術により人を助ける。

そんな日々が続いていた。少しでも彼女たちの支えになりたい。

そんな少しの気持ちから。

そんなこんなで華琳のもとを去ってから2月程経った。

 

 

「あの、いつもありがとうございます、名前だけでも教えてくださらないでしょうか?」

 

とある村の宿泊先で食事をしていると、二度ほど賊から助けた

老人がそこにはいた。

それだけではない。一刀の周りにはたくさんの人が集まり、

お礼をいっていた。

 

「申し訳ありません、自分には今名乗っていい名前が、ないのです。」

 

老人たちがその答えに不思議そうな顔をしている。

 

「自分には大切な人がいます。でも俺は、その人には到底及ばない。

 その人ははるか先まで見ていて、俺なんかは自分のことだけしか考えられない。

 だから、決めたんです。その人の隣に今度は胸を張ってたって居られるように、

 そして今度は自分自身の力で彼女を支えたいと。

 だから、俺はきめました。

 そんな男になるまで、彼女にはあってはいけないと。」

 

酔っぱらっている者たちは一刀の話になにか思いがあったのか、

俺もあの頃はと涙を流しながら話していた。

 

「お前さん・・」

 

老人が話をし始めようとしたとき、なにやら外が騒がしいことに

なんにんかが、がいらだちを覚える。

老人をはじめ、話で盛り上がってる者たちは、文句を言いながら

何事かと、外へ出ていった。一刀もそれに続き、様子だけでも

と思い、見に行った。

 

「これ、騒がしいぞ。静かにせんかい」

 

老人が店の近くの川岸にたまっている人に言う。

そして、何があったのかと店にいたものが進んでいく。

 

川岸にいた集団は老人たちが進む道をあけるかのように、左右へと

わかれた。

 

「っ!」

 

そこには、鎧を着た人が倒れていた。なんでも川から流れてきた人を

ちょうど通りかかった数人が目撃し、救出したらしい。

 

そして、その鎧の格好に一刀が驚き、その兵士に歩み寄る。

(これは、この鎧は蜀のものだ、 しかしなぜ?)

 

「おい、聞こえるか?何があったんだ!」

 

一刀がそう言いながら彼の意識を取り戻そうと体を揺さぶる。

 

「・・ここは・・?」

 

そのかいもあってか、彼は意識をかすかに取り戻した。

 

「すまんが、何があったんだ。 見るからに何か大変なことがあったのどろう?

 あなたは、蜀の鎧をきているのだが」

 

「・・ちょ・」

 

「ちょ?、すまない、よく聞こえない」

 

よく聞き取るために一刀は彼の口元に耳を当てた。

 

「・・張任、謀反・・劉・・様・・危ない」

 

かすかにそういうと彼は意識を手放した。

 

(張任・・謀反、彼は確かにそういった。そしてよく聞こえなかったが

 おそらく劉備様が危険といいたかったのであろう

 張任・・まさかっ!)

 

そう思う一刀は知っている歴史をたどる。

 

張任。

かつての劉璋配下の武将。

正史では“老臣は決してニ君に仕えるつもりはない”

といい劉備に下ることはなく益州攻略時に死んだとされる。

 

しかしまぁ正史とは違くなっているんだな・・・

 

そう思いながら一刀は張任に関する事柄を思い出す。

 

そう、確か張任が絡んでくる戦いで、有名なのは、

落鳳坡の戦い・・・演義では劉備の代わりに危険な間道

を進んだ劉備軍軍師鳳統が張任配下の伏兵に

劉備とまちがわれ射殺される。

 

華琳の友を、一緒に歩むものを死なせるわけにはいかないっ!

 

(正史とは違うが、念には念をだ)

 

そう思った一刀は落鳳坡にある白帝城へと馬を走らせていった。

 


 
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