翌日になって俺はいつもより早く学校に行った。別に登校して授業を受ける訳じゃ無い・・・というか出来るわけが無い。今更どの面下げていいのか分からない。今日は転校届を出しに来ただけだ。理由は家の都合とだけ記した。もちろんそんなことは嘘だ。もうあそこには戻れない。
「・・・・・この件が終わったらどうしようか?」
このまま逃げて静かに暮らしたいが・・・フェイトやなのはから蒐集してしまった。確実に管理局は俺たちを追うだろう。だから、どうにかしてはやてを管理局の目から逸らす必要がある。
「ミッドチルダでの破壊活動・・・。それなら・・・・」
別に民間人を殺すわけではない。いくら俺でもそこまで腐っていない。狙うのは研究機関だ。司法と行政が一体化している組織である管理局ならば、腐るほどの違法や外道な研究をしている場所があるだろう。
「ただ・・・そうなるともう、はやてと一緒にいられない。はやては悲しむだろうか・・・?」
でも、それが最善なのか、最良なのかは分からない。
「だが・・・それがはやての為なら・・・妹を守る為なら俺は・・・躊躇わない。」
俺は決意した。それがはやての為なら・・・と。しかしその時、
「・・・零冶君?」
後ろから声を掛けられた。
しまった!考え事をするあまり、周りに気を遣っていなかった!クソッ!ルナは家に置いてきてるし、ここでの召還は人目に付く可能性がある。
俺はゆっくりと後ろを振り返るとそこには・・・リンディ提督がいた。
「・・・リンディ提督!?何故ここに!?っく!」
俺は咄嗟に逃げだそうとした、が
「ま、待って!!」
杖を向けられるのではなく、呼び止められた。俺はつい足を止めてしまう。
「・・・・・・。」
「・・・どうして零冶君が闇の書の主に?どうしてあなたがフェイトさんとなのはさんを傷つけるような事をしたの?私、今でも信じられないわ。一体何の目的で蒐集しようとするの」
「・・・フェイトやアルフ、そしてなのはにも言った。お前達に話しても意味は無い、と。」
「でもそれじゃあ、零冶君は「一つだけ言っておくぞ、リンディ提督。」っ!」
俺はリンディ提督の言葉を遮って言う。これ以上ここに留まるのは危険すぎる。一応周囲にサーチャーは無かったが、用心するのに越したことは無い。
「今更言っても無駄だろうがな。もし再び管理局が俺たちの邪魔をするというのなら・・・全力を持って排除する!」
「っ!?どうして!?せ、せめて理由を聞かせてもらえないかしら!?」
「無駄だと言っているだろう?今回の件でリンディ提督と俺は絶対に相容れない。貴女は最善を選び、俺は最良を選ぶ。九を救うために一を犠牲にすることなど、俺には出来ない!あいつを失うわけにはいかないんだ!・・・話はこれまでだ。それじゃあ失礼するよリンディ提督。もう会わないことを願うよ。」
「零冶君!?」
俺は一方的に会話を終わらせて逃走する。
Side フェイト
「うぅ・・・・ここ、は?」
「あ!よかった!目を覚ましたんだね、フェイト!」
目が覚めると隣でアルフが心配そうに私を見ていた。
「ここはアースラの医務室よ、フェイト。」
「あ・・・るふ・・・?それに・・・・お母さん!?どうして此処に!?うっ!!」
私は目の前にお母さんが居るのに驚いて起き上がろうとしたが、体中に激痛が走ってベッドに倒れ込む。
「まだ動いてはダメよ!あなたのリンカーコアはかなりダメージを負っているからしばらく安静にしないとダメよ?それに、娘が倒れたって聞いたら居ても立ってもいられないわ。」
そっか、リンカーコアに・・・・・・っ!?
「お母さん!れいじ・・・・零冶は!?」
「・・・・・。」
お母さんは俯いて黙っている。
「早く零冶に闇の書について知らせないと!」
「あのね、フェイト。零冶k「さっき、・・・嫌な夢を見たの。」っ!」
最悪な夢だった。これまでで一番の悪夢だった。
「零冶が守護騎士たちと行動を共にして・・・・私たちと戦う夢を・・・。・・・お母さん?」
お母さんはさっきから私を悲しそうに見つめていた。そして重々しい雰囲気で私に言った。
「・・・フェイト、よく聞きなさい。フェイトとなのはちゃんを倒してリンカーコアから魔力を蒐集したのは・・・・・・・・零冶君よ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
「・・・・え?何を・・・・言ってるの?・・・お母さん?」
嘘だよ・・・・・零冶は・・・私たちに杖を向けるなんて・・・・っ!?
『俺は自分の意思でここにいる。』
私の頭に映像が流れる。
『お前達に何言っても無駄だ。』
零冶が守護騎士たちと一緒に行動して
『俺たちの邪魔をするものは全て・・・・』
私たちにデバイスを向けて・・・・
『排除する!!』
襲った事を。
「あ・・・・あぁあ・・・あ。」
う・・・そ・・・零冶が・・・・。
「・・・・やっと思い出したわね?」
「う・・・うぅ・・・そんな、零冶が・・・・。」
信じたくなかった。零冶が・・・・守護騎士たちといるなんて・・・。
「・・・・いいのよ、泣いても?我慢しないで泣きなさい。」
お母さんは私を優しく抱き留めた。
「ううぅ・・・・うあ・・・・・・うあああああああああああ!!何で!?何で零冶は私たちと戦うの!?どうして守護騎士たちといるの!?うああああああああ!!」
「辛かったわね?大好きな人と戦うのが・・・・とても辛かったわね。」
私は少しの間お母さんに抱きしめられて泣き続けた。
Side なのは
「零冶君・・・来ないね?」
「うん・・・・。」
翌日、私たちは学校の校門で零冶君を待つことにした。でも、零冶君は来なかった。もうそろそろ予鈴が鳴っちゃう。
「フェイトちゃん・・・・教室に行こう?もしかしたら遅れて来るかも知れないから・・・・?」
「・・・・うん。」
フェイトちゃんはまだ待っていたいみたいだけど・・・そろそろ行かないとアリサちゃん達が心配しちゃう。
教室に入ってもやっぱり零冶君はいなかった。そしてHLが始まった。
「は~い、みんなおはよう。」
「「「「おはようございます。」」」」
「みんな、今日はちょっと残念なお知らせがあるの。」
なんだろう?何か嫌な予感がする・・・。
「黒澤零冶君が家の都合で余所の学校に転校することになりました。」
「「「「っ!!?」」」」
・・・転校?そんな!?どうして!?
「せ、先生!一体どういうことなんですか!?」
「詳しい理由を聞かせて下さい!!」
アリサちゃんやすずかちゃんも突然の事態に驚いている。
「う~ん、先生も詳しいことを知らないのよ。今日朝早くに黒澤君が学校に来て突然に転校することを言って帰っちゃったのよぉ。先生も何が何だかよく解らないのよねぇ。」
「そ、そんな・・・。」
「れ、零冶君・・・・。」
二人ともすごく落ち込んでる。
「ねぇ、すずか!何か知らないの!?」
「知らないよ!私だって驚いてるんだから!」
私たちはいつものメンバーで屋上でお昼ご飯を食べていた。でも、そこには一人足りない・・・。
「・・・あのバカ、何で一言も言わずにいなくなっちゃうのよ!どうして・・・・・・せめて一言くらい言えばいいのに!」
アリサちゃんの目に涙が浮かぶ。
「・・・・零冶君・・・・どうして・・・・うぅ・・・ぐすっ・・・・!」
すずかちゃんはかなりショックだったのか、泣いてしまった。
「・・・・・・一つだけ、心当たりがあるよ。」
「「っ!?」」
「ふぇ、フェイトちゃん!?」
もしかして魔法のことバラしちゃうの!?
(大丈夫だよ、なのは。魔法のことは言わないよ。)
(う、うん。)
フェイトちゃんも二人に黙っておくのは辛いんだろうなぁ。
「そ、その心当たりってのは何なのよ!?」
「それは・・・言えない。・・・でも、私となのはが零冶を必ず連れ戻すから、待っていて欲しいの。」
「でも、私たちだって・・・。」
すずかちゃんも納得してないみたい。
「お願い!私となのはを信じて!」
「「・・・・・・・・・・・・・。(コクリ)」」
二人はあまり納得してないみたいだけど、何とか頷いてくれたみたい。
「・・・必ず連れ戻してきて!あのバカに文句を言ってやるんだから!!」
「そうだね、ちょっとO☆HA☆NA☆SHIが必要みたい・・・・・・ふふふ。」
・・・すずかちゃん、怖いよ。
「うん!必ず連れ戻すから!」
私たちはもう一度零冶君に会わないといけない!必ず連れ戻すんだから!
Side out
「・・・・・・・はやて。」
「零冶、今は静かに眠らせてやれ。」
「・・・・ああ。」
俺たちは今、病院にいる。はやてが倒れたのだ。思ったよりはやての体調が悪かったようだ。これじゃあ闇の書を完成させても、はやてが保たない。
「今日の蒐集は中止だ。対策を練る。」
俺たちは病室を後にして一度家に帰った。
「・・・で、どうすんだよ?」
「主はやてが倒れてしまった以上、闇の書を完成させることは危険だ。」
「ああ。今、600ページまで集まっている。あと50ページを蒐集し、はやての体調がよくなったら完成させて例の計画を発動する。」
例の計画、それははやてを救うための計画。
「それが一番いいだろう。しかし、管理局はどうする?」
ザフィーラが今一番の問題点を指摘した。
「しばらく外出は控えた方がいいだろうな。行くとしてもはやての見舞いや買い物ぐらいにしておいた方が良い。取りあえず、ご飯はムサシとコジローに頼むことにしよう。」
「わかった。みんなも異論は無いな?」
全員が頷き、俺たちはムサシとコジローが作ってくれたご飯を食べることにした。
「・・・・ごめんね?レン、おに・・い・・・ちゃんと一緒・・・に・・いられ・・ないみたい。」
ああ、またこの夢か・・・・最近、本当によくみるな。
「だから・・・・お・・にい・・・ちゃんも・・・し・・・あ・・・わ・・せ・・・・・・・に。」
俺の大事なたった一人の妹。俺たち兄妹はあの組織の中で出会ってから、何をするもいつも一緒だった。
一緒に仕事をして、ご飯を食べて、一緒に寝た。それほどまでに仲が良かった。
「家族や兄弟ってのはただの幻だよ。」
俺の目の前にいつの間にか少年が立っていた。その少年は美しい銀髪がとても目立っていた。
・・・・・・・え?お前は・・・誰だ?何故、俺の夢に・・・?それに・・・幻とは?
「ボクは君であって君はボクだよ。それ以上でもそれ以下でもないよ、ふふふ。」
お前が俺で・・・・俺が、お前?
「そうだよ。ねぇ、いつまでも“君”じゃ嫌でしょ?零冶君って呼んでいいかな?」
え?あ、ああ。
別に断る必要も無かったので俺は了承した。
「それじゃ、零冶君。君は八神はやてのことを妹と思っているみたいだけど、それは止めておいた方がいいよ。」
・・・・どういう意味だ?
突然訳の分からない事を言い出す少年に俺は困惑する。
「そのままの意味だよ。家族や兄弟なんてモノは所詮名前だけさ。上辺だけの関係だよ。」
何!?違う!俺とはやては上辺だけの関係じゃない!!実の家族同然の関係だ!!
「君は今、誰の事を言っていたのかな?」
・・・・・は?そんなもん、
「本当に“八神はやて”の事を想っているのかい?君は・・・・・死んだ儀妹を八神はやてに被せてるんじゃないのかい?」
少年は笑って言う。
っ!?違う!俺は
「別にいいんだよ?ボクはそれで零冶君を軽蔑したりなんかしないよ?さっきも言ったけど家族なんて所詮、幻想に過ぎないモノさ。結局、信じれるのは自分だけ。ボクは零冶君しか、零冶君はボクしか信じられないんだよ。」
違う・・・・そんなことは・・・・・・。
「違うって言い切れる?なら元の世界の君の家族の事は知ってる?知らないでしょ?零冶君は物心が付いたときには親に捨てられたのだから。」
っ!?それがどうした!!貧しくて子供を捨てる親なんかがいても珍しくないだろ!?
「珍しくないさ。でも君の親は貧しくなかった。むしろ裕福な家庭だったんだよ?」
な!?どういうことだ!?
「君の親はとある大富豪の子だったんだ。でもその家庭には既に子共がいたんだ。つまり、君には姉と兄がいたんだ。」
俺に・・・兄姉が・・・?
俺は兄姉が居るなんて知らなかった。物心が付いたときには一人だったから。
「そうだよ。でも、その家庭にもう子供は必要なかったんだよ。既に跡取りがいたからね。」
っ!?まさか、そんな理由で・・・・俺は・・・。
俺の頭の中に嫌な考えが浮かぶ。
「そう。君の考えている通りだよ。本当の理由は、親は君を組織に・・・」
「売ったんだよ。」
・・・・そん・・・な・・・。俺は・・・売られたのか?捨てられたのでは無くて、売られた・・・・?
俺は真実を知って呆然とする。
「だから言っただろう?親や兄姉なんてただの幻さ。ボクも零冶君と同じで、兄に売られたんだ。それ以来ずっと復讐の時を待ってたんだ。ボクを殺して、黒澤零冶という人間に生まれ変わらせて封印したんだ。そしてボクは深層意識に封印されていたから、零冶君という新しい人格が出来てしまったんだけどね。それでも魂はボク自身だから、同じ存在と言っても過言じゃ無いよ。」
こいつも・・・売られたのか?俺と・・・同じ?それに同じ存在?
「そうだよ。ボクも零冶君も同じ境遇なんだ。そして同じ存在。僕らは一心同体なのさ。」
お前は、一体・・・。
俺は震えながら問う。
「ああ、ボクの名前を教えていなかったね。ボクの名前はロキ。最強の神にして最凶の神と言われてたよ。」
Side リンディ
「フェイトさん、なのはさん。黒澤零冶君の事について・・・・聞かせて貰えるかしら?」
私は戦闘があった二日後にフェイトさん、なのはさんに新しく設置した拠点(マンション)に来て貰った。もちろんクロノやエイミィ、アリアさんとロッテさん、ユーノ君やアルフさん、プレシアさんもいるわ。できればもっと時間をおいて聞きたかったわ。大切な友人に襲われたら誰でもショックだしね・・・。でも、こちらには時間がない。向こうの様子からすると、かなり蒐集が完了していると思われるわ。
「「はい!」」
ところが、思ったより二人は落ち込んでいなかった。少し安心したわ。
「まずはこの映像を見て欲しいの。」
モニターに映像を出すと、そこには漆黒の竜と白銀の竜が戦っている姿が映っていた。
「こ、これはあの時の!?」
ユーノ君が目を見開いて驚く。
「ええ、これはユーノ君やアリアさんたちが戦った竜よ。」
「・・・大きい。」
なのはさんが声を漏らす。
「でも、通常の竜種と同じぐらいだわ。この程度の大きさならAA魔導師なら倒せるのではないかしら?」
プレシアさんが質問する。私もそこが一番気になっていた所だ。
「とんでもねぇよ!こいつらにはAAA魔導師だって勝てやしないさ!あたし等が為す術も無くやられたんだぜ!?」
「ええ・・・・アレには勝てないわ。」
クロノの師であるアリアさんとロッテさんでも勝てない程の強力な竜。そんなのが二体もいるなんて・・・。
「それにコイツ、あたし等に念話で話しかけて来やがったんだ。」
「「なっ!?」」
私とプレシアさんは驚いたわ。いくら竜といっても会話が出来る個体はまずいない。召喚士でも意思を感じ取るのが精一杯だったはずだわ。それを召喚士でもない彼女たちに念話を送りつけて会話するなんてあり得ないわ!
そして映像が流れ、最後に魔法陣の中に消える場面が映し出されると、
「あ!?」
突然フェイトさんが声を上げた。
「リンディ提督!今のところをもう一度映してください!」
「わ、わかったわ。」
私は急いでもう一度竜が魔法陣の中に消える場面を映し出して停止させた。フェイトさんはじっと何かを真剣に見つめていた。
「・・・・やっぱり。これ、零冶が召喚した竜だ。」
これを零冶君が!?
「どうしてそんなことが解るの?」
「以前私が零冶とジュエルシードを狙って戦ったとき、召喚した二体の巨大な狼型の魔獣が出てきた魔法陣と同じだったんです。」
「あ!思い出したよフェイト!あの化け物みたいに強い奴等の事だね!」
アルフさんが手をポンッと叩いて言う。
「そういえば、あの竜は・・・自分は零冶に仕えているって言ってたわ。」
ロッテさんも思い出したように言った。
「あ、頭が痛くなってきたわ・・・。それほどまでに強力な個体を少なくとも4体はいるってことかしら・・・。」
私が頭を抱えているとフェイトさんが、
「あ、その・・・零冶は100体近く居るって言ってました・・・。」
「「「「「「「「・・・・・。」」」」」」」」
更に追い打ちを掛けて、全員が言葉も出なかった。しばらくして皆はやっと立ち直った。
「零冶君が言っていた戦力って、このことだったのかしら・・・?」
「あ、あり得ます・・・艦長。」
エイミィも少し震えていたのが分かるわ。
「あ、でも中には強力すぎる個体がいるから地球じゃ全部召喚するのは無理だっていってました。それと召喚するときは詠唱が必要みたいです。」
フェイトさん、それ・・・気休めにもならないわよ。
「と、とにかく零冶君の事は後にしましょう。いくら考えても時間の無駄みたいだし・・・。」
プレシアさんが顔を引き攣らせながら言った。
「そ、それじゃあ、なのはさん達のデバイスについて話しましょう。・・・エイミィ。」
「はい艦長。なのはちゃんとフェイトちゃんのデバイス、レイジングハートとバルディッシュは損傷が激しくて修理に時間が掛かるみたいです。」
「そっか・・・・。」
「・・・・。」
フェイトさんとなのはさんは落ち込んでいた。
「と言うわけで、二人には少し休暇を出したいと思うの。」
「「休暇?」」
二人は首を傾げる。
「どうしてこんな時期に?」
「仕方ないだろう?君たちのデバイスは修理中だし、リンカーコアも損傷しているんだ。休まないと倒れるぞ?」
なのはさんの質問にクロノが呆れて答えた。クロノの言う通り、リンカーコアが損傷しているので3日程休まないとリンカーコアが使い物にならなくなるかもしれない。そうなったら、魔導師としての命は消えてしまうも同然だわ。
「「・・・分かりました。」」
二人とも納得してくれたみたい。取りあえず、重要な事は一通り話して二人を家に帰した。
Side out
あれから一週間後、俺たちははやての容態を見つつ、蒐集を行った。現在は620ページまで埋まった。そして今日も2ページほど蒐集してから寝た。
「あ!お久しぶりです、零冶君。」
目が覚めると辺りは真っ白な風景になっていて、目の前に何処かで見たことある女性と若い男性がいた。
こいつ、何処かで・・・・あ。
「あ!!お前、あの時の駄女神!!」
「誰が駄女神ですか、誰が!!」
思い出した。こいつ、俺を転生させた駄女神のマリアだ!
「そこ!聞こえていますよ!!」
俺は口に出してはいないが、ここは神界なので思考が読み取られる。
「ま、まぁまぁ二人とも。それくらいにして・・・。」
俺とマリアの喧嘩にイケメン青年が止めに入った。
何かむかつくなぁ。
「いや、そんな事でむかつかれても困るんだけど・・・。まぁいいや。・・・初めまして黒澤零冶君。僕の名前はオーディン。一応神様なんかをやっているよ。」
へぇ、神様なんだ。もっと年老いた爺ぃを想像してたんだけどな。まぁいいや。こいつ、あれだよな?俺をコーヒーで殺しやがった奴だよな?取りあえず、
「あはは、よく言われるよ。これでもbぶべらっ!?」
「お、オーディン様!?」
一発殴らせろ。
「い、いや・・・もう殴ってるから。」
細かいことを一々気にするな。
「で、俺を此処に呼んだ理由は何だ?」
オーディンは立ち上がり、鼻血を垂らしながら真剣な表情で聞いてきた。
「君は、ロキという名前を知っているかい?」
ロキ?
「ああ、あいつなら俺の夢に出てきて話をしたが?」
俺の言葉に二人は暗くなる。
「・・・そうか。もうそこまで封印が解けてしまったか。実は君に話しておきたいことがあるんだ。」
俺はオーディンから説明を受けた。曰く、ロキはオーディンが自分を暗殺するように企てた事を恨んでる。しかし、それは勘違いであり、過激派の下級神が仕向けた策謀らしい。
そして死ぬ直前に絶望と恨みや憎しみにより邪神化して、世界を滅ぼして復讐しようとした。オーディンはやむを得ず、ロキを殺そうとしたが何度も復活するため、封印をすることにした。そして人間に転生させて封印した。
ロキはその時深層意識で眠っていたらしいので、表の人格が居ないために新しい人格、つまり今の俺が創られた。それからは俺が今まで体験してきたことと同じだ。
「ロキは、弟はとても良い子だった。明るくて素直で、いつも僕に付いて回っていた。しかし、愚かな過激派の下級神が人間を滅ぼすためにロキの邪神化を狙っていたんだ。ロキは元々の力が僕を凌ぐほどのモノだったから狙われたんだろうね。もちろん、その下級神は八つ裂きにしたけどね。」
つまり、ロキは勘違いでオーディンを恨み、世界を滅ぼそうとしてるのか?面倒臭いなおい!
「だから、頼む。僕ではまともに話を聞いてくれないんだ。ロキと同じ魂で構成されている君ならロキは信じてくれるかも知れないんだ!」
いや、まぁ断る理由はないからいいけど。
「本当か!?ありがとう!どうかロキを頼む!!」
凄い勢いで俺に頭を下げるオーディン。神が頭を下げていいのだろうか?
「頭を上げてくれ。もう用はないんだろ?それじゃ、一つだけ教えてくれ。・・・俺を産んだ親は本当に、組織に・・・売ったのか?」
「「・・・・・・。」」
そうか、それが答えか・・・。
「そうか。分かった。別に構わないさ。親は選べないからな。それじゃ、俺はもう行くぜ?」
「・・・ああ。どうかロキを・・・弟を救ってくれ!」
「ご武運をお祈りしてます。」
そして俺の視界は真っ白に染まっていった。
「行ってしまいましたね。」
「ああ。彼なら大丈夫だろう。何せ、僕のもう一人の弟なのだから。」
「・・・ろ。・・・・き・・ろ。・・・起きろ。」
誰かが何かを言っている気がする。とても眠いけど、起きなた方がいいだろう。
「ん・・・うぅ・・・、シグナム?」
目を覚ますとシグナム達が心配そうに俺を見ていた。
「零冶!良かった、目が覚めたか。」
「・・・みんな、一体どうしたんだ?」
俺が何があったか聞くと、
「っ!!一体どうした、じゃない!!朝起こそうとしても一向に目が覚めないから心配したんだぞ!!」
え?今何時だ?・・・げっ!正午じゃねぇか!?
「零冶君、心配したんですよ?」
シャマルは優しく言うが、目が全く笑っていなかった。そしてヴィータがアイゼンを構えて振り上げる。
って!?ちょっと待て!!
「ま、待てヴィータ!それは洒落にならないぞ!」
「・・・うるせぇ。あたしが・・・・どれだけ心配したと・・・・思っているんだあああああああ!!!」
「ま、待て!ラケーテンハンマーはマジでヤバイかrぎゃああああああああああ!!!!」
「さて、それじゃあはやてちゃんの見舞いに行きましょ?」
「おう!行こうぜ♪」
「うむ!」
「・・・・ああ」
「・・・・・・・・・。(ピクピク)」
ヴィータだけではなくシャマル、ザフィーラ、シグナムによるお仕置きで俺は燃え尽きていた。そんなことは全く気にしていないシグナム達は俺を引きずって、はやての見舞いに行った。
「あ!みんな来てくれたんか?って、零冶兄ぃ!?一体どしたん!?」
引きずられている俺を見てはやては驚く。
「気にしないで下さい、主はやて。少し皆でお仕置きをしただけですから。」
「ええ、みんなにとっっっても心配を掛けたバツよ♪」
シャマルとシグナムは実に良い笑顔で行った。そしてはやては苦笑している。
「そ、そうなんやね。零冶兄ぃ、あんまり心配掛けたらアカンで?」
いや、別に心配掛けたくて掛けたんじゃねぇから!
「いや、俺は「チャキッ」すいませんでした!!」
いい訳をしようとしたら後ろで不穏な音がしたので全力で土下座した。それはそうと、今日は少し蒐集することをはやてに伝えなければならなかった。
「はやて、今日も少しだけ蒐集するから、もう行くね?明日も見舞いに来るから。それとヴィータとザフィーラ、シャマルははやてに付いてもらうことになってるから。それじゃ行こうか、シグナム。」
「ああ。」
「いってらっしゃい、零冶兄ぃ。無理せんといてな?」
「分かってるって。」
そして俺たちは病室を後にした。
前回、フェイト達と戦った砂漠に今俺たちは着ている。ここのモンスターは質が良いからかなりのページが集まるからだ。俺たちは蒐集を行い、630ページまで埋まった。
今回はこれまでにして、俺たちは帰ろうとした時、
[マスター!転移魔法を感知!!敵数5目の前に転移してきます!さらに結界が発動しました!転移による逃走は不可能です!]
っち!長居し過ぎたか!?
そして俺たちの目の前に5人の魔導師たちが転移してくる。
「「零冶(君)!!」」
「零冶・・・悪いが君を拘束する!」
「大人しくしな!レイジ!!」
「なのは達を泣かせた罪は重いよ、零冶!」
現れたのはフェイト、なのは、クロノ、アルフ、ユーノだった。
まったく、これだけの豪華メンバーを一気に投入したとなると、リンディ提督も本気のようだ。
「どうする、零冶?数では不利だぞ?」
「はっ!俺には仲間達がいる。数など関係無い。」
『ならば
突然、クシャナが申し出た。
珍しいな、お前から言い出すなんて。
『あら?
いいだろう。
「零冶、あのフェイトという奴は私に任せろ。」
『ならば私はなのはちゃんの相手をしましょうか。』
二人がなのは達の相手を申し出た。
・・・もしかして、気遣ってくれているのか?
『べ、別にそんなことはありません事よ?ただ、弱い方を相手にしても・・・つまらないだけですわ!////』
そ、そうか。でも・・・ありがとうな。
『ふ、ふんっ!何の事だか解りかねますわ。』
「分かった。任せた、シグナム。そして・・・ありがとう。」
俺が礼を言うとシグナムは少し笑って言った。
「気にするな。」
「みんな、零冶に詠唱させちゃダメだ!全力で止めるんだ!」
「「「「うん!!(あいよ!!)(分かった!)」」」」
5人が一斉に俺に向かった。
「させるかっ!!はあああああああ!!!」
それをシグナムがたった一人で時間を稼いでくれる。
「っ!邪魔をしないで!!」
「私たちは零冶君に話があるの!!」
フェイトとなのはがシグナムに高火力の砲撃を撃つ。シグナムはそれを躱し、他の三人の攻撃を捌いている。
「我が意に集いし友よ。その身体は鋼で覆われ、あらゆる刃を拒む。」
シグナムに5人の相手は無理だ。しかし、シグナムは全力で俺の時間を稼いでくれる。だが、5人の猛攻はシグナムを徐々に追い込む。
「クソッ!邪魔だ!!」
「ああもう!!ちょこまかうるさいよ!!」
「させるかああああああ!!!」
クロノとアルフも必死に倒そうとしているがシグナムは粘る。
「その爪は全てを斬り裂き、翼は竜巻を起こし、尾は大木を薙ぎ倒す。」
「チェーンバインド!!」
「なっ!?」
しかし、とうとうシグナムはユーノのバインドに捕まってしまった。
「今だ!フォトンランサー!!」
「しまっ!?零冶!!」
フェイトの放った攻撃は一直線に俺に向かってくるそして、直撃した・・・・・訳では無かった。
そこにはルナがシールドを張って、俺を守ってくれていた。
[私のマスターには指一本触れさせません!!]
「なっ!?」
ありがとう、ルナ。おかげで助かったよ。
「古の龍よ、我が前に立ちはだかる敵を吹き飛ばせ!来い!クシャルダオラ!!」
「しまった!遅かったか!!」
俺の前に魔法陣が展開され、そこから凜々しくも美しい鈍色に輝く甲殻の纏ったのクシャナが現れる。
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第十二話 悲しみと過去とロキ、そして遭遇