赤壁の戦い
正史では、呉の老将、黄蓋の活躍により魏王曹操は蜀呉連合に敗れる。
しかし、赤壁における策の全貌を知っていた天の御使い、北郷一刀は
これを曹操に告げ、魏の敗北を阻止。
赤壁での勝利を手に入れた。
勢いを乗せた曹魏は呉、そして蜀を破り見事大陸統一を果たしたのだった。
魏王曹操は、劉備、孫策に、それぞれの領地(蜀、呉)を
おさめることを提案。
もとより天下三分の計を考案していたため蜀、呉
ともにこれを承諾。
こうして乱世は終わりを告げたのである
その晩のこと
戦場であった蜀の地で三国同盟の宴が催されていた
三国の将も兵も、たがいに酒を交わし親交を深めあう
憎しみ、悲しみ、それらすべてが消えたという訳ではないが
笑いがあふれる宴の席を見
「平和になっていくだろう」
と一刀はそう思うのであった。
そしてそのなかにはやっぱり、この人生を何度かけても
いい人が沢山いて、その人たちの笑顔をみると自然と微笑みがこぼれる。
しかし、なぜか一刀の目からはしずくもこぼれ落ちていた。
正史の流れを大きく変えてしまったこと、
そして今強く感じる己の喪失感
以前、占い師の許子将に告げられた
<大局には逆らうな。逆らえば身の破滅>
という予言
これらのことから、一刀は自分はもうこの世界にいられないことを
悟っていた。
彼は、自分が流していた涙を微笑みで押し殺し、
一人森へと歩こうとしていた。
そんな一刀の様子に、ただならぬ不安を感じた
曹操(華琳)は彼に声をかけ森へとともに歩きだした。
城の周りの賑やかな喧騒とは裏腹に、小川の周辺は
虫の音しか聞こえない静寂な雰囲気をたたえていた。
空には満月と満天の星
そんな中、一刀の気配が薄れていくことを感じたのか、
華琳は一刀に話し始めた。
それは彼女にとってはあまりにも残酷だった。
けれど彼女には彼が拒否の答えを返すという希望があった。
~華琳視点~
「・・・かえるの?」
違う、よね。違うっていいなさいよ・・
「あぁ・・そうみたいだ」
なんで、なんでなのよ、一刀。
「そぅ、でも私は後悔していないわ。
私は私のほしいものを目指し歩んできたんだもの。
誰に恥じるも、誰に詫びるもないわ」
これは私の言葉?それとも王としての言葉?
「あぁ、それでいい。」
すこしは否定しなさいよ。
「あなたは後悔しているの?」
「後悔してたら、歴史を変えるようなことは最初からしてないよ」
なんで一刀は、どこまでも一刀なの、そんなこといわれたら私っ、
「えぇ・・」
なぜか拳がふるえてる、ずっと強く握っていたのかすこし、痛い
「きみにあえてよかった」
まだ、だよね、まだいてくれる、よね、一刀。
「当然よ。私を誰だとおもってるの?」
「誇り高き魏の・・・いや・・・大陸の王」
「それでいいわ。」
「これからは、劉備や孫策がいる。彼女たちとちからをあわせて
俺の知る歴史以上の素晴らしい国を創ってくれ」
そんなのあなたがいなきゃ意味がないじゃない!
「えぇ、あなたが、その場にいなくて死ぬほど悔しがるような
最高の国にしてみせるわよ」
私はなにを言っているの!一刀が真面目に話しているとうのに・・
「ははっ・・・そう言われると帰りたくなくなるな」
じゃあ、なんとかしなさいよ。
「帰らなければいいじゃない」
「でも・・・もぅ終わりみたいだ」
おわりって、おわりってなによ・・
「どうして?」
「大陸が平定されたことで、俺の役割が終わったから」
貴方の役割なら山ほどある、たとえなくても私が、
私があなたのことをっ、
「終わりにしなければいいじゃない」
「曹操の夢みた願いがかなったんだ。
それをみていたおれも終わらないと」
何、なんなのよそれは。私の夢?願い? 一刀、あなたはそれをしっているの?
今、私が天よりも欲しいものが。
「だめよ。認めないわ」
「俺だって認めたくないよ」
「だったら・・・!」
「でも・・・やっぱり・・無理みたいだ」
やめてっ、そんなこといわないでよ
「どうしても逝くの?」
「あぁ」
「恨んでやるから」
「はは・・・怖いな。でも嬉しいとも思える。」
「っ・・・逝かないでっ・・・」
「さようなら、誇り高き王。」
いやっ
「一刀・・・」
「さよなら、寂しがり屋の女の子」
そんなこと、あなたしか知らないんだから
「一刀・・・」
「愛していたよ、華琳――――――」
私もっ私もあなたのことが!
「一刀っ・・・!」
そう叫んでも彼の返事はない。
そのことで、彼の気配が完全に消えてしまったことを悟る。
「か・・ずと!?」
いままでは怖くて振り返ることができなかったが
意を決してふりかえる・・・しかしそこに彼の姿はなかった。
「・・・ば・・かぁ・・ばかぁ・・・」
嘘、でしょ。一刀・・・
「ずっと・・ずっと側にいるって・・いったじゃない・・」
なんなのよ、なん、で・・一刀っ
「本当に、消えちゃ・・うなんて・・なん・・で・・一緒にいてくれないの?」
私をみてくれたじゃない、王としてのわたしじゃなくて
女の子としてのっ!
ずっと、ずっと一緒にいてよ、寂しいよ、一刀・・
「うう・・・うわあぁぁぁああん・・・」
この日覇王曹操は、一番欲していたものを失った―――――
これは物語の1つの終わり
そして人々は再び歩きだす
それは、新たな物語の始まりである
自然と目から流れる涙。自分の中にこんなにも流せるものがあるのか
と思うくらいにあふれてくる涙。
彼女は、今、こんなにも自分の中に彼、北郷一刀がいたことを
知ったのっだった
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自分の命をかけてでも、曹操の人生を支え続けた天の御使い、北郷一刀。しかし、歴史を変えるということはやはり大罪であったのかもしれない。
それは、大切な人との別れと言う罰を生んだ。
しかし、あの満月の夜は決して終りではなかったのである。
それは新たな物語のはじまりであった。