No.462061

かかわったら最後までの段のあと

しんさん

公式アニメの放送終了後の話です。
頑張るらんきりしんと、ちょっと無茶を言いつつちゃんと先輩している竹谷が格好良かったので続きを考えてみました。
竹谷が早業を見せていますが雰囲気でお読みください。

2012-07-29 22:43:35 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:984   閲覧ユーザー数:984

 

取り戻した巻物を大切そうに仕舞い直すと感謝の言葉を述べて去っていく法師に手を振り、三人はぞろぞろと歩き出した。

きり丸は大きく背伸びをする。その横で乱太郎が疲れた顔で満足そうに笑い、しんべヱが腹を擦りながら、お腹が空いたねと力なく言った。

「それにしても竹谷先輩、無茶言うよなぁー」

「ああ、あれはね…」

唇を尖らせたきり丸に、乱太郎が苦笑を浮かべる。

「ほんと無茶言うよね。頑張ってもダメならもっと頑張れってさぁ。ぼくらをなんだと思ってるのって感じだよ、もう」

相槌を打ちながらしんべヱが大きく頷いた。

「困ってる人が居たら助けてあげたいけど、わたしたちにも出来ることと出来ないことがあるもんね」

「だろ~? 確かに先に関わったのはおれたちだぜ? 法師のおっちゃんも困ってたし。先輩の言ってることは確かに正論で、それはその通りだけどさ。だからってこう、もうちょっと俺たちのこと理解してくれても良いと思うんだよなぁ。もっとやる気が出ること言ってくれるとかさ。ほら、物で釣るとか!」

「おいしいお団子やお饅頭とか!」

「そうそう、お駄賃とか!」

きり丸が力強く主張すれば、すかさずしんべヱがそれに乗る。

「「ご褒美がないとやる気がでな~い~」」

最後は手を合わせながら声を揃えてふざける二人に、乱太郎は笑いながら言った。

「もう、きり丸としんべヱったらすぐ調子に乗るんだから。二人の気持ちもわかるけど、わたしたち別にご褒美が欲しくてあの盗賊を追いかけた訳じゃないでしょ」

「まーなぁー」

「お願いされて思わず追いかけてたんだよね」

ね、と乱太郎が二人の顔を見れば、きり丸はあっけらかんと返し、しんべヱがのどかな顔で頷く。

二人が乱太郎の言葉に納得すると、その場に和やかな雰囲気が漂う。

気を取り直したように歩き出そうとした三人に対して、背後からいきなり声をかけられた。

「よし、無事にあの人の巻物を取り戻せたみたいだな。三人とも頑張ったじゃないか。偉いぞ」

その声に驚いた三人が目を飛び出させながら振り返れば、とっくに立ち去ったはずの竹谷が頭の上から三人の顔を覗き込むようにして立っていた。

「竹谷先輩!!」

「ひ、ひどいですよ竹谷先輩っ!」

「いきなり声をかけられたらびっくりするじゃないですか…!」

口々に喋り出す三人を宥めながら竹谷が困ったように頬を掻く。頬を膨らませるしんべヱを抱き上げながらきり丸の頭に手を乗せた。

「驚かせて悪かったよ。でもな、お前ら。仮にも忍たまが人の気配に気付かないようじゃダメだぞ」

「はい…」

先輩の顔で優しく叱る竹谷に乱太郎がしゅんと眉を下げる。

「…それでも後ろからなんて人が悪いですよ」

竹谷の手を振り払えないままのきり丸が、下から窺うように抗議する。その言葉に竹谷はくしゃりと顔を歪ませると、がしがしときり丸の頭を撫で回しながら笑った。

「そうは言っても敵は気なんて遣ってくれないしな。まぁ、何事も経験だと思ってそんな顔するなよ。ほら、機嫌直せって。頑張ったご褒美にうどんをご馳走してやるから」

その言葉に大人しく抱えられていたしんべヱがぱぁっと顔を輝かせた。

「ありがとうございます竹谷先輩!!」

竹谷は懐から手拭いを取り出すと、だらだらと溢れ出すしんべヱの涎を拭ってやる。竹谷の手が離れるときり丸は然り気無く距離を取り、少し離れた位置で乱れた髪を直しながら戸惑ったように唇を尖らせた。

「ちょっと竹谷先輩、何するんっすか…! お陰で髪がグチャグチャになったじゃないですか」

普段は飄々としたきり丸の年相応の表情に竹谷は嬉しそうに笑った。

「悪い悪い、思わずな」

「もう、悪いじゃないですって…。こうなったらきつねうどん、ご馳走してもらいますからね!」

「おーおー。お手柔らかにな」

竹谷はカラカラと笑いながらしんべヱを下ろしてやる。にこにこと笑っている乱太郎に笑い返すと、さあ、と三人を促す。

「よーし、お前ら行くぞ」

「「「はーい!」」」

竹谷の言葉に三人は元気よく返事をした。

「ところで竹谷先輩」

ぽてぽて歩きながら乱太郎が竹谷を仰ぎ見た。

「ん? どうした」

竹谷が乱太郎の顔を見下ろしながら応えれば、乱太郎は竹谷を見ながら不思議そうに首を傾げる。

「竹谷先輩はどうしてこんなところにいたんですか?」

その問いに竹谷が合点が言ったように頷く。

「ああ、今度生物委員会で蛙の観察大会をやるんだよ。それでいい観察場所を探していたんだ」

「へぇー」

「うえー……。委員長代理ってそんなことまでするんすか…? 」

しんべヱがぽけーと相槌を打ち、きり丸が驚いたように声を上げる。タダ働きを連想したのか、自分のことでもないのに嫌そうな顔をして首を振った。そんなきり丸を見て乱太郎が小さく笑うと再び顔を上げて竹谷を見る。

「蛙の観察大会なんて楽しそうですね。私も参加したいです」

「いいよ。乱太郎も来るか」

軽い口調で竹谷が言う。

「生物委員じゃなくてもいいんですか?」

「おう、乱太郎が良ければな。どうする?」

乱太郎はこくこくと頷く。

「 行きたいです!」

「じゃあ詳しいことが決まり次第、乱太郎にも連絡するな。きり丸としんべヱはどうする?」

竹谷が残りの二人に訊けば、目を輝かせたしんべヱが勢いよく手を上げた。

「はいはーい!おやつは幾らまで大丈夫ですかー」

「しんべヱ、おやつは程々にな。あと、自分で歩かなきゃダメだぞ?」

「はーい」

竹谷はしんべヱに釘を指すときり丸を見る。

「きり丸?」

「いや、おれはいいで……」

断ろうとした言葉を止めると、きり丸は思い直したように少しだけ考え込み、再び口を開いた。

「やっぱり行きます。おれも参加していいですか?」

「三人一緒、だな」

乱太郎としんべヱをちらりと見てどこか照れ臭そうに言ったきり丸に、竹谷は嬉しそうに笑った。

 

 

 
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