~港湾区・倉庫~
「はぁ、なんか最近タルいよな。色々と鍛えてみたけど強くなった実感はないし……」
「フン……。まさか今更、街道をうろついてる魔獣に苦戦するとは思わなかったぜ。」
「あー、なんでも最近、魔獣が狂暴化してるらしいよん。以前の2~3倍は強くなってるんじゃないかってさ。」
エステル達が来る少し前倉庫内でディン達はテーブルで最近の事を話していた。
「なるほど、そういうことか。……仕方ねえ。久々に街に繰り出すとするか。どうだ、北区の『ラヴァンタル』に行かねえか?」
「あー、2階のカジノが新装オープンしたところか。いいねぇ、色っぽいディーラーの姉ちゃんもいるらしいし。へへっ、あわよくばお触りなんかしちゃったりして。」
「それだ!カルナの姐御も留守みたいだし少しくらい羽目を外してもいいだろ。」
ロッコ達が騒いでいたその時
「……何が構わないってんだ?」
アガットとエステルが倉庫に入って来た。
「ア、アガットさん!?」
「……げっ…………」
アガットを見たディンは焦り、ロッコは顔を顰めた。
「まったく、てめえらは……。ちったあマシになったと思えばすぐにタルみやがって……」
「や、やだな~。ただの冗談ですってば。って、そこにいるのは……」
睨みながら呆れている様子のアガットを見て焦ったディンだったが、隣にいるエステルに気付いた。
「新人遊撃士のエステルちゃんじゃん!?」
「ども、久しぶりね。武術大会で戦って以来かな。」
「あー、そうだな。」
エステルに気付いたレイスははしゃぎ、エステルに挨拶をされたロッコは頭をボリボリかきながら答えた。
「いや~、俺たちあれから決勝戦まで観戦したんだけど。マジ凄かったよ。あんたのこと惚れ直したもん♪」
「あはは……ありがと。でね、今日訪ねたのはギルドの用事でなんだけど……。えっと、あなたたちの中で『白い影』を見た人っている?」
レイスの言葉に苦笑したエステルはロッコ達に尋ねた。
「それって……」
「……だよなぁ。」
エステルの言葉を聞くと3人は顔を見合わせて頷いた。
「あ、やっぱり知ってるんだ。」
「だったら、とっとと知ってることを話しやがれ。手間を取らせるんじゃねえぞ。」
「……ちょっと待てや。アンタ、少し調子に乗りすぎなんじゃねえのか?」
アガットの物言いに頭に来たロッコは言い返した。
「……あ?」
反抗して来たロッコを見てアガットは意外そうな表情をした。
「うざいんスよ、アンタ。勝手にチームを抜けて遊撃士なんかになったクセに。都合のいい時だけ話を聞かせろっていうわけか?ふざけんなって感じなんだよな。」
「お、おいロッコ!」
ロッコの態度にディン達は慌てた後、諌めようとした。
「へっ、あいかわらず鼻っ柱だけは強いヤツだぜ。だったら、何をすりゃあお前は満足するってんだ?土下座でもしろってか?」
「………………………………。ここで……俺たちと勝負してもらおうか。」
「な、何でそうなるんだよっ!?」
「おいおい、なに熱くなってんのよ。」
ナイフを構えてアガット達と戦おうとしているロッコを見たディンとレイスは焦って止めようとした。
「るせえ、これはケジメの問題だ。アンタらが勝ったら知っている情報を教えてやる。俺らが勝ったら……二度とデカイ面するんじゃねえぞ。」
「ヘッ、いいだろう。どの程度強くなったのか、この重剣で確かめてやろう……。3人とも、気合い入れて来いや!」
「とほほ……。どうしてこんな事に……」
「でも、エステルちゃんとまた戦えるのはラッキーかも♪」
アガット達と戦う事にディンは溜息を吐き、レイスはエステルを見て嬉しそうにしていた。
「そ、そんなもの?まあいいわ。こっちも手加減はしないわよ!」
レイスの言葉に戸惑ったエステルだったが、棒を構えてアガット共にロッコ達と戦い始めた!戦いはエステル達の有利で終わったが、ロッコ達は意外にも武術大会以上に粘った。
「くあ~、さすがに強いぜ。」
「白旗白旗、お手上げッス!」
「……クソッ…………」
戦闘が終了し、地面に跪いているディンとレイスは溜息を吐き、ロッコは悔しそうにしていた。
「でも、一般人にしてはかなり強い方だと思うけど。こんな場所でたむろしてないで、遊撃士でも目指してみたら?」
「なに……」
「お、俺たちが遊撃士?」
「あ、ありえねぇって!」
エステルの提案にロッコ達は驚いた。
「でも、あたしみたいな小娘だって遊撃士やってるくらいなんだもん。あなた達だって、その気になれば十分なれると思うわよ。」
「「「………………………」」」
エステルの言葉を聞いたロッコ達は少しの間考えていた。
「コラ、安請け合いすんな。遊撃士ってのは傭兵じゃねえ。切った張った以外の仕事も多い。それはお前も経験してるだろうが。」
「うーん……。それはそうなんだけど。」
アガットの注意にエステルは今までの仕事を思い出しながら答えた。
「そ、そうだよなぁ。オレら、ケンカくらいしか能がないし……」
「そんな上手い話、あるわけないよな~。」
「………………………………。とりあえず、約束は約束だ。アンタらの知りたいことを教えてやるよ。」
「おう、話してもらおうか。」
「さっきも言ったけど、あたしたち、『白い影』を目撃した人たちを探しているの。あなたたちの仲間でもいるって聞いたんだけど……」
「ああ、いるぜ。今日は来ていないがベルフって名前のヤツだ。」
「1年前に入ったヤツでね。アガットさんも、顔くらいは知ってると思いますけど……」
「ああ、あいつか。前の事件で取り調べた時にちょいと話したくらいだな。」
ディンに言われたアガットは放火事件の時の事を思い出していた。
「ベルフのやつ、ここ数日ほどこの倉庫に来てないんだよね~。幽霊を見たショックで家で寝込んじゃってるのかも。」
「ええっ!?そ、それってひょっとして呪いとかタタリなんじゃ……」
レイスの話を聞いたエステルは驚いた後、身を震わせた。
「それは知らねぇが……。すげぇビビってたのは確かだ。元々、良いとこのボンボンで気が小せえヤツなんだ。」
「フン、まともな家があるのに不良なんかやってんのか。まあいい、詳しい話は本人から聞くから家を教えろや。」
ベルフという人物の育ちを聞いたアガットは呆れた後、尋ねた。
「えーと。市長邸の右隣にある家ッス。ノーマンってオッサンの家でベルフはそこの長男なんですよ。」
「市長邸の右隣にある家、と。情報提供、どうもありがと。それじゃあ場所も分かったし、ベルフって人を訪ねてみようか。」
手帳に情報を書いたエステルはアガットに確認した。
「ああ、そうするか。それじゃあな。ヒマだからって悪さするなよ。」
「フン、余計なお世話だ。」
「お疲れさまっす。また来てくださいよ。」
「頑張れよ~、エステルちゃん♪」
その後エステル達はベルフに事情を聞いた後、ベルフの住んでいる家を出た時、関所に仕事と聞き込みに行っていたミントとちょうど合流できたので、ミントを加えて残っている目撃者がいるマーシア孤児院に向かった………
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第187話