はやてと出会ってから約一週間。俺は何度もはやての家に遊びに行ったり、学校をサボって図書館に行ったりした。サボったら怒られたけど、はやては会える嬉しさが勝ったのか、あまりそこまでキツく言わなかった。
そして6月4日にはやての誕生日だということで、ささやかな誕生日パーティーをはやての家でやることにした。もちろんはやてはこの事を知らない。ちょっと驚かそうとしてみた。ちなみに、誕生日ははやての担当医の石田先生に聞いた。
ケーキはムサシとコジローに頼んだら5号の1ホールを作ってくれた。
・・・食べきれるかな?
ともかく夜中の8時にはやての家に行って、呼び鈴を鳴らした。
「はーい、どちらさんですか?」
はやてが可愛らしい顔をドアからひょこっと出した。
「よっ、はやて。」
「れ、零冶!?こんな時間にどしたん?」
当然はやては驚く。
「お前の誕生日を祝いに来たんだよ。」
そう言うと、はやては一瞬固まったがすぐに元に戻り、テンパる。
「うぇ!?零冶、ウチの誕生日を知ってたん!?」
「ああ、この間はやての担当医の石田先生から聞いたぞ?それよりも早く上がりたいんだけど・・・迷惑だったか?」
「え?ち、違うんよ!!ただ、ちょっとビックリしたし、その・・・・嬉しかったんや。そ、それよりも早く上がってぇな!」
「お、おい!」
俺ははやてに引っ張られて家の中に入った。
そしてはやての手作り料理を堪能した後にケーキを渡した。そこには‘はやて 誕生日おめでとう’と、チョコレート板にホワイトチョコで文字が書いてあった。
ちなみに、この文字は俺がムサシとコジローに頼んで書かせて貰った。意外と難しくて5回ぐらい失敗した。
「はやて、誕生日おめでとう。」
そう言うと、はやては突然泣き出した。
「え!?ど、どうしたんだ、はやて!?なにかマズかったか!?」
さすがに泣かれるのは予想外で俺もテンパった。
「・・・ぐすっ、ううん・・・違うんよ。ウチ、今までずっと一人やったから・・・誕生日を祝ってくれる人が殆どいなくて寂しかったから・・・とっても嬉しいんや。」
・・・そうか。随分と寂しい思いをしてきたんだな。
「ウチ・・こんな体やから、学校にも行けなくて友達もおらんのよ。」
そうか・・・。でも、それは間違ってるぜ?
「何言ってんだ?友達なら目の前にいるじゃないか。」
そう言うとはやてはパッと顔を上げる。
「・・・え?零冶・・・・ウチと友達になってくれるん?」
「おいおい、今更だろ?一緒に話して、家に遊びに行って、誕生日を祝ってる時点でもう友達だろ?」
「・・・うぅ、あり・・・がとうな・・・零冶。・・・うう、・・・うあああああああん!!!」
俺の言葉にはやては俺に抱きついて再び泣いた。・・・今度は今までの寂しさを表すかのように、大声で・・・。
しばらくしてはやてが泣き止んだ。恥ずかしそうに俯いている。
「うぅ・・・・・零冶に抱きついて泣いてしもうた////」
「まぁ、気にするな。それより蝋燭の火を消したほうがいい。」
「あ、うん。・・・ふぅーー。」
そして蝋燭の火をはやてが消して、二人でケーキを食べた。
食べ終わった後は俺も後片付けを手伝った。はやては自分でやると言ったが、さすがにご馳走になっておきながら何もしないというのは忍びないと言って手伝った。
片付けが終わると、もう夜中11時過ぎだった。
ムサシとコジローには遅くなると言っているので大丈夫だが、さすがにこんな時間までいるのは迷惑だと思い、帰ろうとした。
「それじゃ、そろそろ帰らないと迷惑だろうから俺は帰るよ。」
と言って帰ろうとしたら、
「ま、待ってや!!」
服を掴まれて引き留められた。
「そ、その・・・迷惑なんかあらへんから、今日は・・・・その・・・泊まっていって欲しいんや。その、また一人でなるのが寂しくて・・・怖くて・・・。」
そっか。それなら泊まっていくのもいいのだが、その・・・・・・倫理的に大丈夫だろうか?俺、一応精神年齢が20超えているんだが・・・?
「でも、男女が一つ屋根の下で寝るのもなぁ・・・。」
「零冶はそんなことせん人やから大丈夫やろ?それともそういうことする人なん・・・?」
ゔっ、そういう風に聞くのはズルイ・・・。
「・・・分かった。今日は泊まるからそんな顔をしないでくれ・・・。」
「ホンマ!?よっしゃ!!ならもっとお話しよ!」
俺がOKを出すとはやては笑顔でガッツポーズをとった。
「はいはい。」
「・・・なぁ、零冶。もう一個お願いがあるんよ。」
「ん?どうした?」
「零冶のこと・・・零冶兄ぃって呼んでええかな?」
・・・何故に?今までの流れで一体どういう思考したらそうなるんだ?
『あらあら、さすがは
ちょっ!いきなり声を掛けるな、クシャナ!ビックリするだろ!?それと節操がないってどういうことだよ!?
『・・・朴念仁。』
っく!何故か返す言葉が見つからない!!とりあえず、こいつは無視だ。
「なんか、零冶を話してると・・・同い年に見えんのや。なんか、お兄ちゃんが居るみたいな感じなんや。・・・ええ?」
俺が兄貴・・・か。そんな資格が、俺にまだあるのだろうか?
だが、はやての寂しそうな顔を見ると俺はどうしても断れなかった。
「・・・まぁ、はやてが良いなら構わないよ。」
「っ!うん!これからよろしくな!零冶兄ぃ!!」
それから俺たちは他愛ない話をした。
そろそろ深夜0時になるので寝ることにした。俺は居間で寝るといったら、一緒の布団に寝ようと言い出した。
「・・・だから、一緒に寝て欲しいんや!折角、兄妹みたいになったんやから・・・少しぐらい・・・甘えてもええやろ?」
もっと別な方法で甘えろよ!!展開が早すぎだろ!?・・あぁ、はやての目尻に涙が!!
「わ、分かった!!分かったからもう泣くな!」
取りあえずまた泣かれるのは困るので一緒に寝ることにした。
「えへへ~、ウチにもお兄ちゃんができたんやなぁ。ずっと寂しかったから、なんか嬉しいな。・・・なぁ、零冶兄ぃ。・・・これからウチと一緒に住まへん?一人暮らしなんやろ?」
一緒に・・・か。そうだな。もしかしたら悪くないかもしれないな。
「・・・・・・あぁ。はやてがそうして欲しいなら一緒に住もう。」
「えへへ、ありがとな・・・零冶兄ぃ。」
そうして眠りにつこうかという時、突然本棚にある一冊の本が動き、光った。それは俺とはやての目の前に浮いて、本に巻き付けられていた鎖が千切れ、本が開いた。
「「なっ!?」」
[マスター!魔力を感知しました!]
ルナから警告してきた。
[封印を解除します。]
そうして本からデバイスのような声がした。
[起動。]
そして本の光が強くなり、何かが現れた。それは・・・
「闇の書の起動を確認しました。」
「我ら、闇の書の主を護る守護騎士。」
「夜天の主の元に集いし雲」
「このヴォルケンリッター。何なりと御命令を」
う゛ぉるけんりったー?何だそれは?それにコイツら・・・かなりの魔力が感じられる!
「・・・お前ら、一体何者だ?」
俺はルナにいつでも封印解除出来るように頼む。
「なっ!?貴様こそ何者だ!?」
ポニーテールの女が剣を出し、手を掛ける。
「・・・俺ははやての兄だ。」
「主の・・・兄上?」
少しだけ警戒が緩む、が
「おいシグナム!こいつの言うことを信じんのかよ!?めっちゃ怪しいぞ!似てない上に魔力もあるぜ!」
今度は赤髪の小さい女の子が言う。・・・・・・とりあえず、
「本から出てきたお前等に言われたはくない。」
「「「「うぐっ!?」」」」
どっからどう見ても不審者はあちら側だろ?
「で、ですが・・・あなたが主のお兄さんという証拠がありません!」
金髪の女が言ってきた。簡単なことだ。
「そんなこと、はやてに聞けばわかるだろ?」
そう言ってはやての方を向くと・・・
「きゅ、きゅぅ~~。」
目を回して気絶していた。
念のために、あの後はやての行きつけの病院に行ってはやてを石田先生に診せたら、ただ気絶していたらしい。とりあえず何もなくて良かった。
だが、その後に問題が起きた。俺はともかく、こいつら四人の事を先生に聞かれたのだ。とりあえずはやての遠い親戚ということで無理矢理、かなり無理矢理に押し通した。
それからはやてが一向に目が覚めないのでそのまま病室で寝かせた後、俺たちは山に来た。
「さて、はやてが気絶したおかげで俺がはやての兄ということが証明できなくなった訳だが・・・。どうやったら信用してもらえるかな?」
「ふんっ!最初っから力尽くでやるつもりだろうに!丸腰で挑もうとは我らも甘く見られたものだな!」
「はっ!だったらコテンパンにしてやるよ!」
「・・・仕方ないですね。」
「・・・。」
さっきから無口なんだよなぁ、この男。とりあえず封印を解除して鎧と斬魔刀を装備する。
「「「「っな!?」」」」
ビックリしたか?徒手でも倒せる自信があるが、未知数の戦力と戦うにはちょうどいいだろう。
「貴様、魔導師・・・いや、騎士だったのか!?そ、それに何だその巨大な剣と禍々しい鎧は!?」
ポニーテール・・・面倒くさいからポニーでいいや。ポニーが俺に聞く。・・・騎士?騎士ってあの騎士か?
「生憎、騎士などというご立派な精神を持ち合わせていない。あえて言うなら俺は、戦と血に酔いしれる・・・狂戦士だ!!」
俺の眼が少し朱く輝く。
「「「「っな!?」」」」
俺は軽めに先制攻撃を仕掛ける。
む、避けられた。だが、まだ終わってない!
斬り下ろしから体を回転させての切り払い、そして斬り上げ、その勢いで跳躍して回転しながら斬りつける。全て避けられたがこれは想定内だ。
「っく!」
「くそっ!こいつ、速ぇ!」
「よ、避けるので精一杯なんて!」
「むぅ!」
ふふふ、なかなか楽しめそうだ。
「・・・さぁ、もっと殺し合おう!」
そして縮地を使い、ポニーの目の前に接近、そのまま斬魔刀を叩きつけるがギリギリで防がれた。
「ぐぅぅぅ!!!お、重すぎる!!」
「シグナム!!っく、アイゼン!!」
[了解した!]
「シュワルベフリーゲン!」
女の子が4個の鉄球のようなものをハンマーで撃ち出す。俺はシグナムと呼ばれたポニーを蹴り飛ばして、鉄球を瞬時に斬り裂く。
「なっ!?斬り裂いた!?くそっ、これならどうだ!アイゼン、カートリッジロード!!」
「カートリッジロード!」
ガシュンッと音がして薬莢のようなものが排出された。そして女の子の魔力が急激に上がった。
なるほど、あの薬莢は弾丸の代わりに魔力を封じているのか。
「くらえぇ!ラケーテン・・・ハンマー!!」
鉄槌を俺に向かって振り下ろす。それを俺は斬魔刀を片手で打ち付けて吹き飛ばす。
・・・む、少し手が痺れた。やっぱり片手じゃ無理があったか?
「うわあああああ!!!」
「っく、ヴィータ!!」
「そんな・・・ヴィータちゃん!?」
人のことを心配している場合か?
「え?きゃあ!!」
俺は金髪の女に跳躍して接近し、体を斜めに回転させながら蹴り飛ばす。が、
「ぐぬぅぅ!そう簡単にはやらせんぞ!!」
男が俺の蹴りを両手を交差して防いだ。そして俺は一旦距離を取る。
「ザフィーラ、ありがと!」
「ああ。・・・だがシャマルよ、そう何度も守れんぞ。今の一撃で腕が痺れた。」
「なっ!?ザフィーラが!?」
「・・・マジかよ。」
少し手を抜いたんだが・・・この程度か?まぁいい。今度はアレを試させて貰おうか。
「
「いかんっ!皆、避けろ!!」
俺は闇を操り、槍の形状に変化させてそれを四本投擲した。最初はシグナムが防御しようとしたが、突然回避をした。くくくっ、回避で正解だ。この槍は誘導が効かず、直線にしか投擲できない。だが、貫通力と威力に長けているので一本でも当たるとシールドにヒビを入れるほどの威力がある。
「おいシグナム!なんで避けなきゃいけねぇんだよ?」
「・・・私の感だが、あれは恐らく貫通力に長けた魔法だ。防御をしていたら危なかった。」
「ほぅ、それなりの修羅場は見てきたようだな。」
少しは楽しめるだろうか?
「黙れ!今度はこちらからだ!レヴァンティン!!」
[了解した主!カートリッジロード!]
シグナムの剣から薬莢のようなものがまた排出された。
「いくぞっ!!飛竜一閃!!!」
それからシグナムの剣の刃が別れ、鞭のように俺に襲いかかってきた。
ほぅ、連接剣か・・・まさかあんな空想上かつ扱いの難しい剣の使い手に会えるとはな。・・・だが
「甘いな・・・影忍流屠殺術、轟天!!」
「なにっ!?」
俺は迫り来る刃を叩き落とした。さすがにこの威力ではあの連接剣も刃がたたないだろう。
「ば・・・馬鹿な!?私の攻撃を・・・叩き落としただと!?」
「さて、今度はこちらだな?もう飽きたし・・・・・終わらせようか?」
俺は殺意をやつらに飛ばした。
「「「「っ!!?」」」」
そして俺は手を夜空に掲げた。
「我が頭上にあるのは幾多の槍、それは我に仇なす者を等しく、無慈悲に死を与える死の雨なり。さぁ、耐えてみせろ・・・・・・対軍魔法、
ドドドドドドドドドドドッ!!!!!
「なっ!?ぐあああああ!!!」
「ちょ!?うあああああ!!!」
「きゃあああああ!!!」
「ぬおおおおおおおお!!!」
火、水、氷、雷、土、風、光、闇、ありとあらゆる属性の幾千もの槍が四人を襲う。そして辺りは空爆があったかのような有様になっていた。
「・・・やりすぎたか?」
『
・・・すまん。
「お~い、生きてるか~?」
取りあえず生存確認だ。あの魔法は威力を抑えたものの、デバイスを使っていないから非殺傷設定なんて都合の良いことなんてできない。
「くぅぅ・・・ふ、不覚・・・。」
「っつぅ~、ったく・・・なんて魔法を使いやがるんだ!」
「ま、まさかデバイスを使わずに・・・あれだけの魔法を行使するなんて・・・。」
「むぅぅ、さすがに俺ももうダメかと思ったぞ。」
お、生きてたな。まぁ効果範囲は広くして密度を薄めたからな。
「さて、そろそろ帰るぞ?」
「「「「・・・・・・は?」」」」
俺の言葉に四人は首を傾げた。
「いや、だから帰るって言ったんだけど?」
やっと意味を理解したのはシグナムだった。
「お、おい待て!!貴様は我らを殺すつもりじゃなかったのか!?」
「・・・は?何で殺さなきゃならないんだ?」
次に理解したのはシャマルだった。
「え?で、でも貴方は私たちを敵と見なしたから、ここに連れてきて戦ったんじゃないの?」
「いや?俺はただ、最近対人戦闘していなくて感覚が鈍り始めてたから模擬戦相手を探してたんだよ。そしたらお前たちが現れて、ついでに魔力も高かったから丁度良い相手だと思って、お前たちの力量を試すついでに軽く模擬戦感覚でやったんだけど?」
「「「「・・・・・・・・。」」」」
ん?何か四人が絶句しているんだが?まぁ、とにかく家に帰ろうかね。
「ほら、さっさと行くぞ。」
四人はしばらく呆然としていたが、俺が家に連れて行った。
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A’s編 第二話 騎士と狂戦士