~レマン自治州・遊撃士協会・ル=ロックル訓練場~
遊撃士達の訓練所であるル=ロックル。そこでエステルはアネラスと特訓をしていた。
「いくわよ、アネラスさん!烈破―――無双撃ッ!」
エステルはSクラフトをアネラスに放った!
「わわっ、さすが強烈だね。でも……今度はこっちの番だよっ!剣技―――八葉滅殺ッ!」
エステルの攻撃を刀で防ぎきりながらも、最後の一撃で後退してしまったアネラスは驚いた後、猛烈な連撃のクラフト――八葉滅殺をエステルに放った!
「くっ……!」
アネラスの猛烈な連撃をエステルは防御するだけで精一杯だった。そしてアネラスはさらに連撃を続けた!
「まだまだ~っ!」
(くっ……このままじゃ持たない……。それなら……!)
アネラスの攻撃を防御しながら自分の劣勢を悟ったエステルはアネラスが刀を振り下ろした瞬間、横にずれて回避した!
「え、うそっ……」
「もらったああっ!」
攻撃を回避され、驚いているアネラスの隙をついて、エステルが強烈な一撃をアネラスに放った!
「きゃうっ……」
エステルの攻撃を寸前で刀で防御したアネラスはその場で跪いた!
「あいったあ~っ……」
「だ、大丈夫、アネラスさん?治癒魔術、かけようか?」
痛みに顰めているように見えるアネラスを見て、エステルは慌ててかけよって声をかけた。
「あはは、大丈夫だよ。何とかガードも間に合ったしね。」
エステルの言葉にアネラスは苦笑しながら平気な顔で立ち上がった。
「はー、でも参っちゃったな。とうとうエステルちゃんにあの技を返されちゃったか~………」
「えへへ、まぐれよ、まぐれ。今までコテンパンにされた分、ちょっとくらいは返せないとね。」
「ふふっ。やる気だね、エステルちゃん。それなら、ついでだからもう1セット付き合ってくれる?」
「うん、望むところよ!」
そして2人がまた特訓を始めようとしたその時
「あらあら、2人とも元気ねぇ。」
一人の女性がエステル達に声をかけた。
「あ、管理人さん。お早うございま~す!」
「管理人さん、おはよう!」
女性――ル=ロックルの管理人であるフィリスにエステル達は朝の挨拶をした。
「はい、おはよう。エステルちゃん、アネラスちゃん。朝ゴハンができたから呼びにきたんだけど……。うーん、お邪魔だったかしら?」
「あ、そうなんだ。アネラスさん、どうしよう?」
「うーん、そうだね。ゴハン冷めたらもったいないし、今朝はこれで上がりにしよっか。管理人さん、クルツ先輩はどうしてます?」
「クルツさんならミントちゃんの朝のお勉強を終わらせた後、演習の準備があるって先に済ませちゃったわよ。何でも今日の演習はかなりハードなんですってね?」
「え……」
「そ、そんな風に先輩が言ってたんですかっ?」
フィリスの言葉にエステルとアネラスは身震いした。
「うん、朝食はしっかり取っておくようにとの伝言よ。2人とも、いっぱい食べてしっかりスタミナをつけてね♪」
そして2人は宿舎に戻って、ミントと朝食をとり始めた。
~ル=ロックル・宿舎~
「はあ……。けっこうお腹いっぱい。訓練前にこんなに食べたらまずいような気がするけど……」
「えへへ……ミント、つい朝ごはんの目玉焼きを4つも食べちゃった!」
満腹になり、後の事を考えたエステルは苦笑し、ミントは無邪気な笑顔で大好物の卵料理をたくさん食べた事を嬉しそうに言った、
「ふふ、管理人さんの料理ってホントおいしいもんね。でも、訓練と違って途中でバテるわけにもいかないし、ちょうどいいんじゃないかな?」
「うん、確かに。やっぱりスタミナは基本よね。それにしても……。ここに来てからもう3週間か。正直、あっという間だったな。」
アネラスの言葉に頷いたエステルは時間が経つ速さに驚いていた。
「ふふ、エステルちゃんとミントちゃん、ものすごく頑張ってたもんね。私も一緒に訓練しててホント、いい刺激になったよ。特にミントちゃんは、あの厳しいクルツさんが褒めていたよ?『こんな優秀で賢い娘が遊撃士になってくれるとは思わなかった』って。」
「えへへ………」
「えへへ……。そう言ってもらえると嬉しいな。」
アネラスの言葉にミントとエステルは、親娘揃って照れていた。
「でも、クルツさんが訓練教官として来てくれたのも驚いたけど……。まさかアネラスさんがあたしと同じ訓練を受けるとは思ってもみなかったわ。」
「んー、私も正遊撃士になってから半年くらいの新米だからねぇ。シェラ先輩からエステルちゃんとミントちゃんの話を聞いて渡りに船だと思ったんだ。前々からこの訓練場のことは先輩たちに聞いて興味があったし。」
エステルの言葉にアネラスは訓練に来た経緯を思い出し、言った。
「そっか……。でも、こんな場所があるなんてギルドも結構大きな組織なのね。最初、父さんたちから話を聞いたときはあまりピンとこなかったんだけど………まさか、仕事用の服もついでに変える事になるとは思わなかったわ。」
そう言ってエステルは正遊撃士になった祝い代わりに新しい仕事服をシェラザードに買ってもらい、すでに着こなしている自分自身を見た。
「なるほど……。その服って、シェラ先輩のお祝いプレゼントだったんだね。いいな~。可愛い服を買ってもらえて。」
「とっても似合っているよ、ママ!」
「う、うーん……。丈夫な生地を使っているし、動きやすくっていいんだけど……。こういう女の子っぽい服ってあたしには似合わないかも……」
アネラスとミントに褒められたエステルは苦笑しながら答えた。
「そんなことないとミントは思うけどな……」
「うんうん!ミントちゃんの言う通りそんなことない!とってもよく似合ってるってば。それに遊撃士でも女の子にオシャレは必要だよ。否、遊撃士だからこそオシャレには気を使わなくちゃ!」
ミントの言葉にアネラスは何度も頷いた後、熱弁を始めた。
「ア、 アネラスさん?(あっちゃ~……スイッチが入ったみたいね………)」
真剣な表情になっているアネラスを見て、エステルは心の中で溜息を吐いた。
「そうだ、エステルちゃん。リボンとか付けてみる気ない?すごく似合うと思うんだけどなぁ。」
「あ、賛成!ミントとお揃いのリボンにしよう?ママ!」
「え、遠慮しときます。ていうか……相変わらず、アネラスさんって可愛いものに目がないわね。」
アネラスとミントの提案をエステルは苦笑しながら答えた後、アネラスに言った。
「もちろん!可愛いことは正義だもん!シェラ先輩みたいな格好いいお姉さまにも憧れるけど……。やっぱり可愛く着飾った年下の女の子に勝るものなし!ぬいぐるみなんか抱いてたらぎゅっと抱きしめたくなるよ~♪ミントちゃんもすっごく可愛いし、不謹慎だけど私、この訓練に来てよかったと思っているよ?毎日ミントちゃんに会えるしね!」
「えへへ……ありがとう、アネラスさん!」
「ねえねえ、エステルちゃん。今夜もミントちゃんを貸してもらってもいい?また、一緒に寝たいのよね~。」
「ダメよ~!昨日一緒に寝たばかりでしょ?今夜からはあたしのベッドに戻ってもらうんだから!」
「ぶー……エステルちゃんのケチ。」
「えへへ………」
エステルとアネラスの会話を見ていたミントは思わず、可愛らしい笑顔で笑った。
「ミント?どうしたの?」
「えへへ……ママ、以前と同じようにとっても明るくなったなって思って、ミント、とっても嬉しいんだ!」
「ミント…………あ~ん、もう!この娘ったら本当になんて素直で健気で、可愛い娘なのかしら!」
ミントの言葉に感動したエステルは思わず、自分の横に座っていたミントを抱きしめた。
「えへへ……苦しいよ~、ママ。」
抱きしめられたミントは口とは正反対に嬉しそうに抱きしめられていた。
「あー!エステルちゃんばっかり、ズルイ!私にも抱きしめさせてよ~!」
「残念でした~。これはミントの隣に座っている人だけの権限よ~♪」
「むう……じゃあ次は私がミントちゃんの隣に座るんだから!」
エステルに言われたアネラスは頬を膨らませた後、次の食事の時はミントの隣に座る事を決めた。
「フゥ、それにしても……。初めて会った時と較べるとエステルちゃん、変わったよね。」
「えっ?」
気を取り直したアネラスの言葉にエステルは首を傾げた。
「最初はいかにも新人君で初々しい印象しかなかったけど……。今は、初々しさを残しながらぐっと頼もしくなった気がする。それって結構スゴイことだよ?それにミントちゃんも最初はとっても可愛い後輩ができたなって思ったけど、今では一人前の準遊撃士になったなと感じているよ。」
「や、やだなぁ……。アネラスさん、おだてないでよ。」
「そうだよ~。ミント、まだ依頼はちょっとしか受けた事ないのに。」
アネラスの言葉にエステルとミントは照れた。
「そういえば、アネラスさん。そろそろ演習の時間じゃない?」
「あ、そうだね。いったん部屋に戻ろうか。それじゃあ、また後でね~!」
エステルの言葉に演習が近い事に気付いたアネラスは準備をするために自分が泊まっている部屋に戻って行った。
「そういえば……今日はミントはどうするの?」
「うん!クルツさん、朝ご飯が終わったら、ママ達と一緒に来てほしいって言われたよ?」
「そうなんだ………じゃあ、一緒に戻って準備をしましょうか!」
「はーい!」
そしてエステルとミントは2人が一緒に泊まっている部屋に戻って行った………
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第178話