◆ 第15話 ぬことはやて ◆
くつろぐために温泉に行ったはずが結局疲れただけだった気がするのは気のせいなんだぜ?
どうも、いまだフェイト嬢に会うことができず、死亡フラグに戦々恐々しているみぃです。
そして、今日はおとなしく翠屋の看板ぬことして働いているところである。
先ほどランチタイムが終了した翠屋ではゆったりと時間が流れていく。
現在お客さんは渋いおじ様や優雅なお茶を楽しむおばさ……いやさ、お姉さまばかりである。
うむ、言い直したことに他意はないのですよ。めいびー。
それはさておき、店内から漂ってくるコーヒーのいい香りにぬこはなんだか眠くなるばかりです。
コーヒーのにおいで眠くなるぬこはなかなかすごいと思うのだが、どうか。
と、いい感じにまどろんでいるとどこかから聞き覚えのある関西弁が聞こえてきた。
「あれ? みぃくんやん。なんでここにおるん?」
おぉ、誰かと思えばはやて嬢ではないか、お久しぶりです。
ぬこがなんでここにいるかって言われましても……看板ぬこですもの。
最近、全然働いてる気がしないけども。看板だからお飾りでも問題ない……! そう言い聞かせています。
「あっ、もしかしてみぃ君が翠屋の看板猫さんなんか! そやったらそう言ってくれればいいのに……」
また無茶をおっしゃる……
ご主人みたく魔法がつかえるならともかくぬことお話できる人なんて……3人ほどいたな。
いまさらだがあの人たちは何者なんでしょうかねぇ。
『これも従者の嗜みなれば』とか何とか鮫島さんが言ってたんだが、それだとお母様に関しては説明がつかないしなぁ。
そこんとこどうなんだろうね?)
「ふぅん、よーわからんなぁ」
(ですよねー)
「ん?」(ん?)
互いに顔を見合わせる。なんか一瞬会話が成立したような……?
「アレ? 今なんか声が聞こえたような……」
(もしかして、この声ですか?)
「そう! その声や! って、アレ? 誰もおらへんな」
(志村ー、前、前)
「誰が志村や。前ってみぃ君しかおらんし?」
(そう、そのみぃは話すことができるんだよ……!!)
「な、なんやってーーっ!?」
それにしてもこのはやて嬢。ノリノリである。
だがしかし……
(どうでもいいですけど、この声他の人には聞こえないから変な目で見られてますよ、はやて嬢)
まぁ、実際は小さい女の子が猫と話してるーなんて微笑ましげな眼差しなんだが。
ぬこがそう言うと、慌てて周りを見て恥ずかしそうにうつむいてしまった。愛い奴め。
さて、今の反応を見る限り魔導師というわけではなさそうですねぇ。
フェイト嬢みたくややこしい事態になりそうもなくて助かりますな。
そんなことを思ってると小さな声ではやて嬢が話しかけてきた。
「あんな、みぃ君ってホントに話せるん?」
(話せますよー。んと、どっかでゆっくり話します?)
「えっと、そうやな。ちょっとシュークリーム買ってくるから待っててな」
(了解ですよー)
そう言って店内に入っていくはやて嬢。
それにしても、ご主人といいはやて嬢といい順応するの早くね?
普通ぬこと会話できるって知ったらもっと驚くべきだとぬこは思うんだ。
若干ぬこは悔しいです。
「おまたせ。んで、どこでお話しするん?」
(そうさね、近くの公園とかどうでしょ?)
「ん。それじゃ、そこに行こか」
というわけで到着したのは、以前恭也さんにたい焼きをおごってもらったあの公園である。
今日はあのたい焼き屋さんはいない様だ、残念。まぁ、お金ないから買えないんだけど。
「そういえばこの公園、チーズ味とか変なたい焼き出してるたい焼き屋さんがあるんよ」
あれは邪道やな!なんて力強く主張するはやて嬢。
それは聞き捨てならん。あなたは今、ぬこを敵に回しましたよ!
(バカな! あの素晴らしきたい焼きを食べずに貶めるか! あのチーズと生地とのハーモニー……ぬこは大好きだよ!)
「何を言ってるんや、たい焼きの中身はあんこと相場は決まってるんよ!
カスタード? チーズ? ハッ、いつからたい焼きは洋物になったん!?」
(何を言うか! これは進化である! 伝統? 歴史?
それもいいだろう、否定はしない。だが、そのような固定観念に縛られ続けることは保守ではなく停滞だと知れいッ!!)
と、なぜか魔法の話そっちのけでたい焼き談義に突入してしまっていた。
で、結局は。
「はむはむ、自分の好みを人に押し付けるのはあかんな」
(むぐむぐ、ですよね。ぬこもあんこ食べれればいいんだけど、うまうま。このとおりぬこですから)
「(でも、シュークリームの方がうまい!)」
こういう結果に落ち着きました。
やはり、お母様のシュークリームはうまい。海外での修行は伊達じゃないですな!
「……はっ、結局なんでお話できるか聞いてない!」
(そういえばそうですね。まったくしっかりしてよね)
「誰のせいや、誰の」
(むぁーやめろー顔を引っ張るんでない)
「ふはは、いとやわらかし。たてたて、よこよこ」
このまま無限ループに突入してしまうとまずいので強引に話を戻すことに。
「はぁ、つまり魔法っていうもんがあって、みぃ君はそれでお話しとるわけやな」
(まぁ、かいつまんで言うと。詳しいことはぬこも知ったばかりなんで、聞かれても困るのであしからず)
「んで、私にもそれが使えるかもと」
(Exactly その通りでございます)
ジュエルシードとかいろいろ端折って、はやて嬢に説明する。
そのはやて嬢はと言うと、納得できない……と言うか、実感が湧かないんだろう首を傾げている。
そりゃそうですよね、会話ができるようになっただけで、ぬこだって実感湧いてないんですもの。
「ふーん、実感わかんなぁ」
(そんなもんですよー。というわけで、ぬこの話はこんなとこなのです)
「そっかーなんかもっとこういう話は秘密にせんとあかんと思っとったけど、そうでもないんやな」
(ま、魔法使えないのにこんなこと言ってたら頭のかわいそうな子だと思われて終わりだから、別にいいんじゃないかと思って話した訳です)
別にユーノも秘密にしろって言ってなかったし?
もし罰則とかあってもぬこは知りません。説明責任を果たしていないユーノが悪いよ!
「ほぉー、何も考えてないかと思っとったわ」
(失敬なっ!)
その後はまったりと二人でおしゃべりをして過ごしたのである。
翠屋のお仕事を放っておいて何やってんだと言うことなかれ。
向こうでも基本まったりするだけだから、やってることは同じなんだなーこれが。
それに考え用によっては、これもお客さんのアフターケアといえる。よって何の問題もないよ!
「それじゃ、そろそろ帰るわ。図書館で借りてきた本も読みたいし。また今度話そうな」
(そうですな、次はぬこから会いに行きますかね。あのぬこたちにも会いたいし……
っと、そうだったもう1つ言っておかなきゃならんことがありました。
もしも、道端に青い宝石が落ちてたらそれは絶対触ったりしちゃダメ、絶対。
これはダチョ○倶楽部的なネタフリじゃないよ!)
「押すなよッ!絶対に押すなよッ!っていうやつやな。
まぁ、なんやよー分からんけど分かったわ。じゃあ、またなー」
(ういうい、またです)
ということで、はやて嬢への説明は終了したのだった。
本人はよく分かってなかったかもだが、ジュエルシードの注意もしたしこんなとこでいいだろう。
魔法なんて早々出くわすことなんてないしねぇ。
そう考えながらはやて嬢を見送ったぬこなのでした。
そして、ぬこは後々このときの説明で厄介ごとに巻き込まれるとは
微塵も思っていなかったのであった。
◆ あとがき ◆
読了感謝です。
幕間、というかA'sへの布石のお話。
布石といってもただ魔法という存在を知ってしまったというだけ。
原作でもそうだけど、割とすんなりと魔法を受け入れてしまうはやては素敵です。
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