~グランアリーナ~
「フフ……貴女との手合わせするのは嬉しいけど、武器はそれでいいのかしら?貴女の得物じゃないでしょ。よかったら、剣を一本貸しましょうか?」
「私に施しなど必要ない!……なければ、作ればいいだけの事!」
カーリアンの申し出を断ったリンは強く否定して言った後、棒を戻し腰にさしていたルーアンでテレサに貰った折れた剣を鞘から出して、構えた。
「ハ?そんな折れた剣を出して何をする気?」
カーリアンはリンが出した折れた剣を見て、首を傾げた。
「我に眠りし命の炎よ……我が前へ!!」
リンがそう叫ぶと、壊れた剣に炎が宿り、欠けた部分は炎の刃と化して炎剣と化した!その炎は選ばれし者しか使えないと言われる聖なる炎!その炎の呼び名は……!
「まさか………”聖炎剣”!?」
カーリアンは剣に宿る炎を見て、リンの得意技を思い出して驚いた。
「我が奥義、聖炎剣!その身に刻め!!ハァッ!」
そしてリンは炎剣でカーリアンを攻撃した!
「くっ!?」
炎が宿った剣と打ち合えば、炎が自分を襲う事をわかっていたカーリアンは一端後退して回避した。
「ブラッシュ!!」
リンは後退したカーリアンに剣を震って炎が宿った衝撃波を出して放った!
「それぇっ!!………熱っ!?」
カーリアンも双剣を震って衝撃波を出して、リンの技を相殺したが炎は消し切れず、アリーナに吹いていた追い風によって消し切れなかった炎がカーリアンを襲い、カーリアンは炎の熱さに呻いた。
「これでも喰らえ!光霞!!」
「ちょっ!?」
続けて放ったリンの魔術がカーリアンに命中し、カーリアンは呻いた。
「剛震突き!!」
そしてリンはすかさず、突きの構えをしてカーリアンに突進した!
「くっ!?」
リンの技を双剣で防御したカーリアンだったが、剣に宿る炎の熱さを間近で感じて呻いた。
「やってくれるじゃない……!どーりゃーっ!!」
「くっ!?」
そしてカーリアンは双剣に力を込めて、リンを後退させた。
「冥府斬り!!」
後退して武器を持った片手を上げたまま硬直しているリンにカーリアンはすかさず、自分の持つ技の中でも強烈な威力を持つクラフトを放った!
「一刀両断!!聖炎剣・剛!!」
しかしリンは上げたままの剣を両手に持ち、豪快に攻撃してカーリアンの技と打ち合った!
「嘘ッ!?」
両手から伝わる力によってさらに威力を増したリンの技の威力にまけたカーリアンは驚き、吹っ飛ばされ、空中で受け身をとって着地をした。そしてリンは剣を再び構え直し、剣に力を込めた!
「真なる焔よ、燃え上がれっ!!」
リンが叫ぶと、リンが持っている剣により一層炎が燃え上がり、炎によって剣の長さが2倍になった!
「ウオォォォォォッ!!」
そしてリンは炎の長剣を両手で構えて、叫びながらカーリアン目掛けて走った!
「フフ……面白いじゃない!!」
自分目掛けて襲いかかるリンを見て、カーリアンは不敵な笑みを浮かべた後、大技の構えをした。
「真なる焔の剣!!」
リンはカーリアンに接近すると炎の長剣を右方向から袈裟斬りに斬った!!
「激しいの、行くわよ♪………白露の桜吹雪!!」
「うあぁっ!?」
カーリアンのSクラフトが命中したリンはダメージに呻いた後、吹っ飛ばされた。
「はっ!」
しかし空中で受け身をとって、ヨシュア達の所に着地した。
「くっ……無傷ではいかなかったようね………」
カーリアンは火傷した片腕を抑えて呻いた。リンを吹っ飛ばす瞬間、軌道がずれたリンの炎の長剣がカーリアンの腕を掠ったため、カーリアンの腕を火傷させたのだ。
「………時間のようだ。私達の力を使いこなしてみるがいい!」
そしてリンは目を閉じた。すると持っていた剣からは炎がなくなり、ただの欠けた剣になり、髪や瞳も元のエステルに戻った。
「みんな、おまたせ!!」
「エステル!!」
「どうやら目覚めたようだな。」
「フッ……待っていたよ、エステル君♪」
元のエステルに戻った事にヨシュアは安心し、ジンやオリビエもヨシュアと同じようにエステルに近寄って声を掛けた。
「3人共、あたしが抜けている間に大分怪我したみたいね。今、回復するわ!オーブメント駆動!……ラ・ティアラ!」
エステルがアーツを発動させると、エステル自身を含め、ヨシュア達の傷がある程度治った。
「んっふふ~、愛と真心を君たちに!それっ!」
さらにオリビエが放ったクラフト――ハッピートリガ―で自分達の傷を完全に治癒した。
「エステル………その………さっき、手に持っている剣や棒を別の武器と化して戦った事は覚えているかい?」
ヨシュアは言いにくそうな表情でエステルに尋ねた。
「あ、うん。なんて言ったらいいのかな?あたしが戦っているはずなのに、あたしはそれを見ていたような感じだったの。」
「ほう………では、先ほどのような戦い方は無理か?」
エステルの説明に驚いたジンは尋ねた。
「うん。………でも、なんか力がみなぎって来たわ!……………ハァッ!!」
そしてエステルは自分自身に溢れだすほどの力に気付き、それを解放した!すると、栗色の髪は美しい黒髪に輝く金が混じり、片方の瞳は翡翠、もう片方の瞳は紫紺の瞳のオッドアイに変わった!
「エ、エステル!?」
ヨシュアはまた異様な姿になったエステルを見て、驚いた。
「大丈夫よ、特になんともないわ!だから安心して、ヨシュア!」
異様な姿になったエステルはいつもの笑みを浮かべて、ヨシュアに言った。
「そう言えば、さっきのこの剣………折れた部分を炎で欠けた部分をカバーしてたわね……さっきのを見たお陰である事を閃いちゃったわ!(確かパズモの一番最初の主の人の剣の形状ってこんな形かな?)魔力よ………刃と化せ!!」
エステルは自分の頭の中でパズモから聞いたパズモの一番最初の主の剣を思い浮かべ、剣に魔力を込めると、欠けた部分がエステルの魔力によって、光の刃と化し、また魔力が剣を覆い、剣の形状も変わった!その剣には僅かながらエステル以外の魔力――パズモやテトリに残っていた前の主の魔力が宿っていた!
(嘘!?その剣は…………その神気は…………天秤の十字架(リブラクルース)!?)
エステルの身体の中にいたパズモはエステルが持っている剣の形状や剣に籠っている懐かしい僅かな神気を宿した魔力に驚いた。
「さあ!みんな、行くわよ!!」
そしてエステルは片手に棒を、もう片方の手に剣を構えて号令をかけた。
「了解!」
「おう!」
「フッ……それでは反撃開始と行こうか!」
エステルの号令に答えたヨシュア達はそれぞれ武器を構え、カーリアン目掛けて突撃を始めた!
「………………………」
一方カーリアンは再び異様な姿になって武器を構え、突撃して来るエステルから、ラピスとリンが武器を構え、突撃して来る幻が一瞬見え、エステルを凝視していた。
「フフ…………最高に面白くなって来たじゃない!楽しませてもらうわよ!!」
カーリアンは好戦的な笑みを浮かべた後、再び双剣を構え、自分目掛けて突撃してくるエステル達に向かって、走り出した!
そして英雄と英雄の力を宿した少女と仲間達の戦いが始まった…………!
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~武術大会・決勝戦~中篇(後半)