~グランアリーナ~
「く、くそ………」
「選り抜きの特務部隊を代表する我々がまさか2回戦で敗退するとは……」
気絶から目覚めた特務兵達はすでに勝負が終わっている事を知り、悔しがった。
「へへ~んだ!セリカ達と激しい戦いを生き抜いたボクが君達なんかに負ける訳ないよ!」
「リウイ様の………使い魔として………私もそう簡単に………負けません………」
「ウフフフフ!精霊王女であるこの私(わたくし)の力、思い知ったかしら♪」
悔しがっている特務兵達を追い打ちをかけるかのようにペルルやフィニリィは得意げに胸を張り、マーリオンは淡々と答えた。
「………癒しの闇よ。…………闇の息吹!!」
一方いつもの姿に戻ったプリネはロランスの傷を魔術で回復した。
「………何故、俺に治癒魔術を………?」
傷がなくなり、立ち上がったロランスはプリネが自分を回復した事がわからず、尋ねた。
「………体が勝手に動いただけです。深い意味はありません………………………」
「………………………………………」
プリネとロランスはお互い見つめ合ったが、やがて踵を返し、2人はそれぞれ背中を向けて、控室に戻って行こうとしたところを
「………プリネ姫。」
ロランスがプリネに背中を向けたまま、静かでよく通る声でプリネを呼び止めた。
「…………なんでしょうか?」
一方呼び止められたプリネも同じようにロランスに背中を向けたまま、答えた。
「カリン・アストレイ………この名を”ハーメルの悲劇”を知る貴女に知っていてほしい………」
「……メンフィル皇女として、罪なき犠牲者のその名、覚えておきましょう…………」
そして2人はそれぞれ自分達がいた控室に戻った。
~グランアリーナ・観客席~
「やったーーーー!!プリネさん達も勝ったね、ツーヤちゃん!」
「うん……!ご主人様が先生を酷い目に合わせた人達に勝てて、本当によかった……!」
一方プリネ達の勝利にミントとツーヤは喜んでいた。
「うむ!さすがは余の妹だ!」
「………勝ったのはいいけど、この後、大丈夫かな?次の相手はあいつだよ?さっきの戦いで結構”力”を使った影響が出なければいいけど………」
ミント達と同じようにプリネ達の勝利にリフィアは自慢げにいたが、エヴリーヌは冷静に次の試合の事を言った。
「それは大丈夫だ!ホテルの部屋を出る前に、これと同じ物をプリネに渡したからな!今頃、これを使っているだろう!」
エヴリーヌの疑問にリフィアは得意げに懐からある紋章入った護符を出した。
「それは…………それなら、次の試合も全力を出して、大丈夫そうだね。」
エヴリーヌはリフィアが見せた護符――癒しの女神(イーリュン)の力の一部が封じられている聖なる護符――イーリュンの息吹を見て、納得した。
~グランアリーナ・選手控室~
「おめでとう、プリネ!」
「まさか仮面の隊長にまで勝つなんて……正直、驚いたよ。」
アリーナから戻って来たプリネにエステルとヨシュアは称賛の言葉を贈った。
「フフ、ありがとうございます。………みんな、御苦労さま。次の試合は私一人で挑みますから、戻ってもらって大丈夫です。」
「そっか。……実は今の戦いで結構疲れちゃったんだよね………がんばってね、プリネ!」
「例え相手がカーリアン様とはいえ…………今はプリネ様の勝利を………祈っています………」
「…………後は貴女に任せますわ。その代り、無様な戦いをしたら許しませんからね?」
プリネの言葉に頷いたペルル達はそれぞれプリネに応援の言葉を贈った後、光となってプリネの身体に戻った。
「え……プリネ、もしかして次は1人で戦うの!?」
使い魔達を戻した事を見たエステルは驚いて、尋ねた。
「はい。ペルル達も疲れていたようですし、無理はさせられません。」
「フム。貴女自身はどうなんだい、レディ。先ほどの戦い、ほとんど余裕が見られなかったようだが……」
「そうだな。体力もそうだが、魔力?だったか。それもかなり使ったんじゃないのか?」
オリビエとジンはプリネとロランスの戦いを思い出し、プリネ自身の状態を尋ねた。
「ジンさんはともかく……まさかアンタがその事に気付くなんて………なんとなく答えがわかるけど、なんでわかったの?」
エステルはオリビエをジト目で見ながら、オリビエがプリネの状態を言いあてた理由を尋ねた。
「ハッハッハ!このオリビエにかかれば、女性の事は何でもお見通しさ!」
「やっぱりか……」
「予想通りの答えだね………」
得意げに語るオリビエを見て、エステルとヨシュアは呆れて溜息を吐いた。
「フフ………大丈夫ですよ。ホテルの部屋を出る際、リフィアお姉様からこれを渡されましたから。」
エステル達とオリビエのやり取りに微笑んだプリネは懐からイーリュンの息吹を出した。
「何ソレ??」
「護符のようだけど………イーリュン教の紋章が入っているね。」
エステルとヨシュアは初めて見る道具に首を傾げた。
「まあ、すぐにわかります。」
そしてプリネはイーリュンの息吹を天井に向けて掲げた。すると護符が光を発し、プリネに癒しの光を纏わせて消えた。
「よし。……これで体力、魔力共に万全です。」
「へっ!?ねえ、プリネ。今使った道具って何なの??」
プリネが完全回復した事に驚いたエステルは尋ねた。
「今のは”イーリュンの息吹”という道具で、イーリュンの力の一部が封じられた護符なんです。使えば例え戦闘不能であろうと一気に傷や体力が回復する上、魔力も完全に回復してくれるイーリュン教が出している薬の中でも最高峰の治療道具なのです。」
「ほえ~………」
「凄いな。まさにイーリュン教の秘薬……はおかしいか。とにかく凄い道具だね。」
イーリュンの息吹の効果を知ったエステルとヨシュアは驚いた。
「フム……それにしては今まで聞いた事がない回復道具だね。そんな効果があれば、噂にもなると思うんだが………」
オリビエはイーリュンの息吹が一般に出回っていない事に首を傾げた。
「それは当然です。この道具はこちらの世界では滅多に手に入らない道具なので、一般には出回っていないんです。傷や体力の回復だけでしたら、”治癒の水”があれば十分ですし。」
「そうなんだ………」
プリネの説明を聞き、エステルは呆けた。
「エステル。僕達はリフィア達といっしょに観客席で応援しようか。」
「そうね。……がんばってね、プリネ!決勝で会うのを楽しみにしているよ!」
ヨシュアの提案に頷いたエステルはプリネに応援の言葉を贈った。
「ありがとうございます。精一杯がんばってみますね。」
エステルの応援の言葉をプリネは微笑みながら受け取った。そしてエステル達は控室から出て行った後、プリネは受付に次の試合は1人で挑む事を伝えた後、控室で静かに待っていた。そして数時間後、試合開始のアナウンスが入った。
「皆様……大変長らくお待たせしました。これより第六試合のカードを発表します。
南、蒼の組―――メンフィル帝国出身。旅人プリネ選手以下1名のチーム!北、紅の組―――メンフィル帝国出身。メンフィル帝国軍所属。闇剣士カーリアン選手以下1名のチーム!」
「…………………よし!」
静かに待っていたプリネは気合を入れた後、アリーナに向かった…………
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第128話