No.460647

英雄伝説~光と闇の軌跡~  125

soranoさん

第125話

2012-07-27 23:11:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:868   閲覧ユーザー数:823

~コーヒーハウス・パラル~

 

「は~、辛かったけどすっごく美味しかったぁ♪トロッとしたヒレ肉とホクホクとしたジャガイモが何ともいえずマッチしてて……うん、今度くる時はミント達も連れてこようっと!」

「食後のコーヒーがまた絶品ですね。サイフォンで美味しく淹れるのは難しいって聞きましたけど……」

食事を終えたエステルとヨシュアはそれぞれ満足げに感想を言った。

「ったく、人のミラだと思ってバカスカ食いやがって……。記者の薄給をなんだと思ってやがる。」

「まーまー。とりあえずご馳走さまでした。それで……やっぱりネタに困ってるわけ?」

文句を言っているナイアルを宥めたエステルは尋ねた。

「フン……。ネタなら腐るほどあるさ。だが、親衛隊のテロ事件だの、アリシア女王の健康不調だの信憑性の乏しい情報ばかりでな。はっきり言っちまえば軍のフィルターを通していない生で新鮮な情報が欲しいのさ。」

「………………………………」

「………………………………」

ナイアルの言葉に2人は黙った。

「ドロシーから、ツァイスでの誘拐事件について少し聞いたが……。単刀直入に聞くぞ。リシャール大佐の尻尾をお前たち、どこまで掴んでいる?」

「何て言うか、ホント直球ねぇ。」

「そう質問してくるという事はある程度、予測できているみたいですね。」

ナイアルに尋ねられ、エステルはナイアルの質問の仕方に感心し、ヨシュアは尋ねた。

「やっぱり大佐はクロか……。ウチの雑誌でインタビューして人気が出ちまった手前、認めたくはなかったが……。反逆者、一歩手前ってとこか?」

2人の言葉を聞き、ナイアルは溜息を吐いた後、尋ねた。

 

「一歩手前どころか、クーデターを目論んでいるわ。」

「デュナン公爵を傀儡(かいらい)にしてリベールを軍事国家にする事を目標としているそうです。」

「おいおい、マジかよ……それにしてもデュナン公爵か……。陛下が不調なのをいいことにグランセル城の主人気取りで好き放題やってるみたいだが……。不思議なのは、軍のお偉方がどうして動かないってとこか……」

エステル達の情報にナイアルは信じられない表情をした後、考え込んだ。

「うーん、それはねぇ。……ねえヨシュア。話しちゃってもいいのかなあ?」

エステルはヨシュアを見て、尋ねた。

「そうだね……。僕たちとしてもできるだけ情報は欲しいところだ。ナイアルさんだったら協力してもらってもいいと思う。」

尋ねられたヨシュアはエステルの提案に頷いた。

「おいおい、なんだよ。そんなに良いネタを持ってんのか?」

2人の会話を聞き、ナイアルは食いついて来た。

「あらかじめ言っておきますけど……。今から話すことは、記事にしたくても出来ないような内容だと思います。」

「心の準備、しといてよね。」

ヨシュアとエステルはナイアルに念を押した。

「クソッ……。何だかヤバそうな話じゃねえか。まあいい、とっとと話しやがれ。」

そしてエステルたちは今までのリシャール大佐や情報部などについてこれまでのことの真相を話した。

 

「……………………………………………………………………………………」

エステル達の話を聞き終えたナイアルは無言のまま、目を閉じていた。

「あーあ、だから心の準備をしといてって言ったのに……」

ナイアルの様子を見て、エステルは溜息を吐いた。

「ありえねえ……。おい……ホントにマジか?」

「残念ながらマジです。空賊事件から、孤児院放火事件、中央工房の襲撃事件に至るまで……。全ての事件に、情報部の特務兵たちが関与していたんです。」

「で、軍の上層部は弱みを握られてモルガン将軍は監禁状態……。親衛隊は無実の罪を被せられてテロリストとして追われてると……」

信じられない様子でいるナイアルにヨシュアやエステルは先ほど話した今までの事件の真相を繰り返した。

「あーもう!繰り返すんじゃねえ!チクショウ……記事にできるわけねえだろ。最近ウチの雑誌にゃあ軍の検閲が入ってるんだ……。ゲラにした時点でお縄だぜ……」

「そ、そうだったんだ……」

新聞社にまで情報部の手が伸びている事を知り、エステルは驚いた。

「仕方がないから、当たり障りのない武術大会の記事で埋めているんだが……。……って、そうか。お前らが大会に参加してるのも何か理由があっての事なんだな?」

「ま、そういうこと。依頼内容にも関わるから詳しくは話せないんだけど……」

「事態を打開するために動いていると思ってもらって結構です。」

「そうか……。……………………………………………………………………………………」

エステルとヨシュアが武術大会に関わっている真の理由を知ったナイアルは目を閉じて何か考え始めた。そしてやがて目を開いて、ある提案をした。

「……よし、決めた。記者としては動けねえが……俺も一肌脱いでやろうじゃねえか。ギルドでも調べられない事を独自のルートで調べてやらぁ。」

「サンキュ、助かるわ。」

「軍を相手にするわけですから、かなり危険な仕事になると思います。それでも協力してくれますか?」

ナイアルの協力にエステルは感謝し、ヨシュアはナイアル自身を心配し、確認した。

 

「くどい、こいつは俺の戦いだ。このままペンが剣に負けるのを見過ごすわけにはいかねえんだよ!」

「ナイアル……」

「分かりました……。どうかよろしくお願いします。」

ナイアルの言葉を聞き、エステルは初めてナイアルを見直し、ヨシュアはお礼を言った。

「おお、任せとけってんだ。それで、具体的にはどういう事が知りたいんだ?」

「そうねえ……。やっぱり軍の動きかしら。親衛隊の人たちは全員捕まっちゃったのとか……。モルガン将軍はどこに監禁されているのとか……メンフィルに関してはリフィア達に頼めば、話してくれるから大丈夫ね。」

ナイアルに尋ねられ、エステルは現在欲しい情報を並べて言った。

「なるほどな。俺もその辺は気になった。それは調べておくとして……他にはあるかよ?」

「……あの……。情報部の人間の経歴なんて調べられないものでしょうか?」

「へっ……?」

「情報部員の経歴だと……?」

ヨシュアの言葉にエステルは目を丸くし、ナイアルは以外そうな表情をした。

「具体的には、中心人物と思われるリシャール大佐とカノーネ大尉、そしてロランス少尉の3人です。この先、彼らと対決するなら詳しい経歴を知っておきたくて……」

「敵を知り、己を知れば百戦危うからずってヤツか。」

「確かに、大佐もそうだけどあの少尉のことは知っておきたいわね。ヨシュアも言ってたけど、明日の試合か明後日の試合で当たることになるかもしれないし……」

ヨシュアの説明を聞き、ナイアルとエステルは納得して頷いた。

「ナイアルさん、お願いできますか?」

「……軍には何人か知り合いがいる。機密情報ならともかく、単なるプロフィールだったら調べてもられるかもしれねえ。よし、何とか当たってみてやるよ」

「サンキュ、助かるわ!」

「よろしくお願いします。」

「なあに、いいってことよ。その代わり、お前たちが優勝してグランセル城に招待されたら色々と話を聞かせてもらうからな。」

「やっぱりそう来たか……」

「分かりました。差し支えのない範囲なら。」

ちゃっかり交換条件を出したナイアルにエステルは呆れ、ヨシュアはナイアルの交換条件に頷いた。

 

「…………にしてもこういっちゃあなんだが、優勝は正直難しいと思うぞ?」

「へ、なんで??」

ナイアルの言葉にエステルは首を傾げた。

「リベールでも選りすぐりの正遊撃士のチームに特務兵達、俺達人間とは遥かに身体能力が違う”闇夜の眷属”のチームもそうだが……なんといっても、メンフィルの”覇王”の側室の一人、”戦妃”――カーリアンがいるからな。お前達のチームにあの”不動”がいるとはいえ、正直勝つのはかなり難しいと思うぜ。」

「実力差が明らかなのはわかっています。でも僕達も依頼の件がありますから、何が何でも勝ってみます。」

「そうよ!それにそんなのやってみなきゃわかんないわよ!」

ナイアルにカーリアンとの実力差を指摘されたエステル達だったが、ヨシュアは決意を持った表情で優勝する事を言い、エステルは強く言い返した。

「はぁ…………”戦妃”の強さを知らないから、そんな事が言えるんだよ。」

2人の言葉を聞き、ナイアルは溜息を吐いた。

「ナイアルさんはカーリアンさんがどれだけの実力を持っているか知っているのですか?」

カーリアンの強さを知っているように語るナイアルを見て、ヨシュアは尋ねた。

「知っているも何も去年の武術大会の優勝者かつ、”百日戦役”後再開された武術大会に毎年出場して優勝しているメンフィルの皇族だからな。王都に住んでいたら嫌でも噂が聞こえてくるぜ。俺も一度だけ試合を見たが……俺みたいな素人でも次元が違う事ぐらいわかるぜ。」

「毎年優勝って………凄いと思うけど、相手がそんな大した事ない相手ばかりだったじゃないの?」

カーリアンの事を語るナイアルにエステルは何気に失礼な事を言った。

「いーや、それはない。なんせモルガン将軍には余裕勝ち、カシウス・ブライトとは激闘の末、あのカシウス・ブライトを地面に膝をつかせたんだからな。」

「と、父さんを!?」

「それは確かに一筋縄ではいかなさそうですね………」

カシウスまで敗北した事にエステルは驚き、ヨシュアは気を引き締めた。

「っていうか、父さんってそんなに強いの??」

「エステル………」

「お前なあ……自分の父親がどんだけ強いか知らないから、そんな事が言えるんだよ………」

カシウスの強さをいまいちわかっていないエステルにヨシュアとナイアルは呆れて溜息を吐いた。

 

「はあ……まあいい。とにかくだ。メンフィルの皇族、武官達は桁違いに強い。”姫の中の姫(プリンセスオブプリンセス)”と呼ばれるプリネ姫でさえ、達人クラスの剣の腕と豊富な魔術が使えると聞くしな。」

「”姫の中の姫(プリンセスオブプリンセス)”??何それ??」

巷に呼ばれているプリネの2つ名を聞いたエステルは首を傾げて尋ねた。

「その名の通り、最も姫らしい女性って事だ。家柄や”聖女”と呼ばれる母譲りの穏やかで優しい性格に容姿も母譲りの上、おまけに文武両道の上、家事能力もかなりのものらしい。他国の貴族や王族達はこぞって縁談を申し込んでいると聞くぜ。」

「プリネってそんなに凄い人だったんだ……そりゃ確かに女のあたしから見ても、プリネは凄く魅力的って事はわかっていたけど……」

プリネの以外な情報を知ったエステルは信じられない様子で呟いた。

「エステル……!」

「へ……?あ、ヤバ!」

うっかりプリネを知り合いのように話すエステルにヨシュアは注意を促し、エステルはヨシュアの意図に気付いてうっかりナイアルの前でプリネの事を話した事を後悔した。

「もうお前達がメンフィルの姫君達と行動している事ぐらいとっくに知っているつーの。」

「あれ?いつばれたの??」

エステル達がメンフィルの皇族と共に行動している事に突っ込まず、すでに知っている風に話すナイアルにエステルは尋ねた。

「ルーアンでお前等と別れてからだ。以前ルーアンでお前達を俺の部屋に泊めた際、お前達言ってただろう。プリネ姫たちの事をメンフィルの貴族だって。3人共聞き覚えのある名前の上、空賊団のアジトの中で人質達を守っていた3人に対してリシャール大佐やモルガン将軍が最大限に敬意をはらっていたからな。気になって調べてみたら、案の定メンフィルの貴族どころか皇族に客将じゃねえか。……ったく、”姫の中の姫(プリンセスオブプリンセス)”どころか”聖魔皇女”――リフィア姫殿下に”魔弓将”――客将エヴリーヌと行動にしているとか、どれだけ規格外なんだよ、お前達は!」

「あ、あはは……」

ナイアルの言葉にエステルは苦笑した。

「彼女達の正体を黙っていたのは謝ります。でも、両親や彼女達からはなるべく自分達の正体を公にしないでほしいと言われているので、わかって下さい。」

「へいへい、わかっているよ。さすがに”ゼムリア大陸真の覇者”とも言われているメンフィルの皇族を勝手に取材して、睨まれでもしたら文字通り俺達が消滅しちまうからな。両親の許可もなく勝手に取材なんてできねーよ。」

ヨシュアに頼まれたナイアルは溜息をつきながら言った。

 

「それにしても、リフィアやエヴリーヌにもシェラ姉やジンさんみたいな二つ名があるんだ。2人はどういった経緯でそう呼ばれているの?」

エステルはリフィアやエヴリーヌの二つ名の由来が気になって尋ねた。

「……ったく、せっかく本人達と行動を共にしているんだから、それぐらい聞けば教えてくれるんじゃないか?」

「あはは……さすがに本人達に自分達の二つ名の由来とか聞きにくいわよ。」

溜息を吐いたナイアルの言葉にエステルは苦笑いをしながら答えた。

「……まあいい。二つ名の由来だが………”百日戦役”で2人は戦場での活躍からそのように呼ばれていると聞くぜ。」

「え!?リフィア達、”百日戦役”でエレボニアと戦ったの!?」

リフィア達が百日戦役に参加した事にエステルは驚き、尋ねた。

「エステル。2人は僕達と同い年に見える風貌だけど、実際2人ともかなり年をとっている事を忘れたのかい?」

「あ………そういえばそうね。すっかり忘れていたわ。」

ヨシュアの言葉にエステルは頷いた。

「続けるぞ。まず客将エヴリーヌが”魔弓将”と呼ばれた一番の由来は、誰にも見えない神速の弓捌きと強力な魔術で敵対する者達を慈悲もかけない魔王のように全て葬って来た事から、そのように呼ばれているらしい。」

「確かに彼女の戦い様を見ていたら、そんな風に呼ばれてもおかしくないと思います。」

「そういえば、エヴリーヌって敵に対しては容赦なかったわよね~。それでリフィアは?」

「リフィア姫殿下が”聖魔皇女”と呼ばれる由来はずばり、彼女が使う魔術だ。」

「へ??」

ナイアルの情報にエステルは首を傾げた。

「………そうか。リフィアは、光と闇。両方の魔術が使えた事ですね。」

ナイアルの言葉から答えを得たヨシュアはナイアルに尋ねた。

 

「ああ。実際リフィア姫殿下が戦場に出ると、一瞬光が輝いた後エレボニア兵達が消滅したり、暗闇がエレボニア兵達を覆った後、暗闇が晴れた頃には全員息絶えたと聞くぜ。後は性格だな。」

「性格??」

「………リフィア姫殿下は敵国の民も自国の民と同じ扱いをしているが、自分に敵対する者は容赦なく強力な魔術で葬って行く事から、そう呼ばれているらしい。」

「そう言えば空賊事件の時も、自国の民でもないボースの人達の事を凄く親身に考えてくれたわね。」

「優しさと厳しさ、光と闇を扱う皇女………まさにリフィアの事だね。」

過去のリフィアの言動や行動をエステルやヨシュアは思い出し、納得した。

「ま、そう言うこった。ちなみにリフィア姫殿下もプリネ姫と同じように各国の王族、貴族から山のような縁談が来ていると聞くぜ。」

「………リフィアは次代のメンフィル皇帝ですからね。彼女の夫になれば、相当な地位が約束されますから縁談が山のように来るのは当然でしょうね。」

「ふえ~………なんだかリフィア達が遠い存在に感じるわ………」

ナイアルの情報にヨシュアは納得し、エステルは呆けた。

「だから、本来なら俺やお前等みたいな平民がそうそう会えるような人物じゃ、ないっつーの!………まあ、プリネ姫を含め、2人に来ている縁談はメンフィル大使――リウイ皇帝陛下が全て断っているらしいがな。」

「え、そうなの?」

「皇族なら政略結婚が当たり前なのに、以外ですね……」

リフィア達の縁談を肉親であるリウイが全て断っている事を知り、エステルとヨシュアは驚いた。

「ああ。エレボニアの帝位継承権が最も高い第一皇子の縁談も、にべもなく断ったのはその業界では有名な話だぜ。」

「あ、あんですって~!」

「あのエレボニアもメンフィルとの関係をなんとか繋ぎを持ちたいんですね………」

エレボニアの皇族の縁談まで断った事をナイアルから聞いたエステルは驚き、ヨシュアはエレボニアの思惑に驚いた。

 

「それで毎回断っている理由が2つあるんだが……一つは聞くと驚くぜ。」

「それってどんな理由?もったいぶらないで教えてよ。」

エステルは期待を込めた表情でナイアルに続きを促した。

「一つ目の理由はプリネ姫達の夫になる条件が”闇夜の眷属”か”神格者”っていう奴である事だ。俺はこの2つの共通点がサッパリわからねえがお前達はわかるか?」

「う~ん……共通点ねぇ………ダメだわ。全然わからないわ。」

ナイアルに尋ねられ、エステルは考えたが思い浮かばなかった。

「……そうか。寿命の問題だよ、エステル。」

「………あ!そうか!そういう事ね!」

「ん?どういう事だ?俺にも教えろよ。」

理由がわかった風に見えるヨシュアとエステルにナイアルは興味津々で尋ねた。

「その前に確認したいのですが………ナイアルさん。”闇夜の眷属”達は僕達人間と遥かに寿命が違う事は知っていますか?」

「ああ。それは話に聞いた事がある。”神格者”っていうのはどういう意味か、サッパリわかんねえんだ。知っているのなら教えてくれるか?」

「”神格者”っていう存在は不老不死の存在ってリフィア達から聞いたわよ。」

「………ハ……………?」

エステルの説明にナイアルはしばらくの間、呆けた。そして我に返ってエステル達に強く尋ねた。

「………って、それ、マジかよ!」

「はい。母が”神格者”であるプリネから、そう聞きました。」

「プリネ姫の母親って……”闇の聖女”か!………ハ~……それは驚きの情報だぜ。道理で年をとっている風に見えない訳だぜ……」

「あたしもそれを聞いて、最初驚いたわよ。あたし達よりちょっと上ぐらいにしか見えないのに、100年以上生きているらしいわよ?」

「あの外見でか………異世界っていう場所はなんでもありなんだな……」

ペテレーネの風貌と年齢が合わない真の理由を知ったナイアルは呆けた。

 

「ねえねえ、それよりもう一つの理由って何??」

「それなんだが……プリネ姫達の夫はプリネ姫達自身が選んだ男しか、認めるつもりはないそうだぜ。」

「へ?それって普通に恋愛して結婚するだけじゃない。それのどこがおかしいの??」

もう一つの理由を知ったエステルは自分達にとっては当たり前の事に首を傾げた。

「エステル………王族の女性っていうのは普通、政略結婚かお見合いで結婚するのが当たり前なんだ。」

「そうなの!?」

ヨシュアは呆れて溜息を吐き、理由を話した。理由を知ったエステルは驚いた。

「まあ、そういうこった。……にしてもわざわざ寿命の事まで考えるとか、エレボニアからは”魔王”と恐れられている割には案外、娘達には甘いんだな………」

「そっかな?あのリウイって人、近寄りがたい雰囲気を持っているけど、優しい雰囲気もあるように感じたわよ。」

「ハハ……そんな事を言えるのはエステルだけだよ………」

「…………ハ………?」

自分一人だけ納得しているエステルにヨシュアは苦笑し、ナイアルは口に咥えていた煙草を床に落とした。

「………そうだ!すっかり忘れていたぜ!そういえばジェニス王立学園でリウイ皇帝陛下とお前、共に親衛達達と戦ってたじゃねえか!ダルモア市長逮捕の件ですっかり忘れていたぜ!」

「あ、リウイとの共闘の事?別に大した事じゃないわよ~。」

「”覇王”を呼び捨て!?お前、自分が何を言っているのかわかっているのか!?」

エステルがリウイの事を呼び捨てにしている事にナイアルは声を上げて、驚いた。

「別にそんなに騒ぐような事じゃないでしょ?あの時のリウイはメンフィルの王様じゃなくて、プリネのお父さんとして戦っていただけと思うわよ?あたしにとってはあの後、プリネに連れられて闇の聖女様と直接お話しが出来た事の方が今までの旅で一番重要な出来事だったわ~。」

「それだけじゃないだろう、エステル?”癒しの聖女”さんとも出会えた事も十分凄いと思うけど……」

「あ、ティアさんね!今頃何をしているのかしら?」

「………もういい。これ以上聞くと眩暈がしてくる上、心臓に悪い。カレーとコーヒー代は払っておくから、先に出るぜ。………何か進展したら、教えてやる。」

エステル達の会話から次々と信じられない人物の名前が出て来て、エステル達の会話があまりにも信じられない内容ばかりで眩暈がしたナイアルは立ちあがって、会計を済ませてフラフラとカフェを出て行った。

「ナイアルの奴、寝不足なのかな?あんなフラフラして、大丈夫かしら?」

(さすがのナイアルさんもメンフィルの重要人物の事を気軽に話すエステルについていけないか……)

出て行ったナイアルの様子にエステルは首を傾げ、ヨシュアは心の中でナイアルを哀れんだ。

 

その後、エステル達はホテルに戻って早めに休むことにした。そして次の日…………!

 

 

 


 
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