No.460463

■20話 賈駆の受難・前編■ 真・恋姫†無双~旅の始まり~

竜胆 霧さん

編集して再投稿している為以前と内容が違う場合がありますのでご了承お願いします

2012-07-27 19:29:49 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2475   閲覧ユーザー数:2291

■20話 賈駆の受難・前編

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チュンチュウ、チュンチュウと囀りを上げる鳥? たち、どうやら今日も何気に変なの混ざっている様だ。

 

起きて姿見たさに周りを見渡せどもやはり変わらぬ景色しかそこにはなくて、鳴いていたはずの鳥? の姿も何処にも見えない。謎だ。

 

明日はきっと見破って見せますと心で呟いながらも日課になりつつある早朝鍛錬へ赴く。

 

人の気配がしてまたかと思いながら覗いてみるとそこにはかごめではなく一刀がいた。朝からイケメンを見ると白けるのは何故だろうか。

 

「今時雨すごい顔しなかったか?」

 

顔に出ていたのかは実際分からないがものすごく鋭い指摘に慌てて顔を平然としたものに取り繕う。

 

「いや、珍しいなーとおもただけヨ」

 

けれど態度まではなおせなかったようだ。仕方がない、今は寝起きだし。

 

「……」

「……」

「完璧に動揺したな?」

「いや、まったく。これっぽっちも、ほんのすこしも、ミジンコよりも動揺しておりません」

「……」

「……」

「はぁ……」

「いや、ほんとだって。とりあえずビックリしただけだから」

「ああ、わかった。とりあえず稽古つけてもらえると助かるんだが?」

「全力でお相手いたします。というか元よりそのつもり」

「それは助かる」

 

一刀が構えたので俺も構えようとしたのだが、クイクイ服をひっぱてくる人が一名……毎度お馴染みかごめさんである。別に気が付かなかったわけではないが隅っこの方でコソコソ何か弄っていたので遠慮したのだが、無意味なものだったらしい。

 

「私、も……」

 

そんな顔で俺を見あげて懇願しないでくれかごめ……一刀を瞬殺したくなっちゃうから。

 

「わかった、すぐすむからな。それまで待っててくれるか?」

「うん…」

 

かごめの返事を聞いて小刀を一本抜きいつものように逆手で構えるのは一緒、前回は手加減で2振りの小刀で相手したが、今日は本気も本気、いつもより腰を落とし、首に的を絞って視線を一刀に向けて殺気を放つ。

 

「いや、そこまで本気にならんくても」

「そろそろこれくらいでもいいかな? って思ってるからこれでいいんです」

「……」

「気を抜けば殺すから」

 

なんて口では言っても殺す気なんて全然ない、とりあえず今は早く終わらせることを最優先するべき時だ。

 

適当な言葉を吐いて一刀を黙らせた後はお互い油断なく距離を保ちつつ隙を伺う。相手の呼吸、力の入れ具合、力の流れ、目で見ているものなど全てを把握していく。

 

そしてわずかな筋肉の動きを見逃さず先手を取って速さを最大限に活用し、距離を一気に詰めて一刀に斬りかかる。

 

ガキンッという音と共に交差する刀、その一瞬で一刀との波紋刀を小刀でひと時動きを止め、その瞬間のみ固定された一刀の手に死角になっている下から蹴りを入れて波紋刀を飛ばす。幸い誰にもあたる事はなく波紋刀が壁に突き刺さった。

 

「一刀は速さでこられたらまだ対応しきれないか」

「捕らえることは出来たんだが、体が反応しなくてな」

「ふむ、てことはもっともっと厳しく行けばこれも耐えられるようになるのか」

 

ニヤリと笑いながら一刀を見る。実際刀で小刀を防ぐぐらいの反応は反射で出来ていたのだし、みっちり鍛えれば出来ない事も無いと思う。そんな時雨の期待に応えるのかのように一刀もニヤリと笑みを返す。

 

「望むところだ」

「おお……、思ったのと違う反応だった」

「俺も成長してるってことだ。時雨のおかげでな」

「別に照れないぞ? あと前の問題点いってなかったからいうが、多対一が一刀は苦手みたいだから。多対一を想定した戦いってのを考えといた方がいい」

 

と問題点を指摘しながらも一刀の方に顏は向けない。友達に褒められのはなんだかこそばゆいのだ。

 

「ああ、わかった」

 

少し笑いながら一刀が了承する。何を笑っていやがると問い詰めたい気持ちも起こるが待っているかごめに申し訳ないので今は保留だ。

 

「それじゃかごめ、準備はいいか?」

 

かごめに呼びかけると依然と形の違う、恐らく改良を加えた銃剣? 外見から言えば弩剣と言ったほうがいいだろうか、そういうものを持って走り寄ってきた。

 

どうやら剣の刃を弩に合わせて小さくし先に取り付け、刺突出来るよう手で持つところを少し工夫したようだ。

 

「時雨、武器……どう?」

「んー、怖いな」

 

一言そういう。正直怖い、これはこの時代にない武器だし。かごめの攻撃は変則的だ……盾からいきなり矢とか剣が出てくると思うととっても恐ろしい。

 

「そう……」

 

褒めたつもりだったのだが言い方が悪かったのか少ししょんぼりしながらも弩剣と盾を構えるかごめに苦笑して、改めて言い直す。

 

「でもそれは敵にするとってことだからな、だからかごめが仲間でとっても嬉しいよ」

 

今度は思いがちゃんと伝わったのか笑顔を見せてくれる。ほっとしながらその様子を見ていたらかごめが突然ハッとした様にビクリと震えた。

 

「いい…から……構え、て」

「わかった、前よりもちょっと強めに行くからな?」

 

これは前の一刀と同じぐらいの手加減でいいだろうかと小刀をもう一振り鞘から抜いて即座に振り抜く。

 

「ッシ、ッハ!」

 

判断がどうしても遅れがちになってしまうかごめの攻撃がくる前に攻撃する。けれど問題なく盾で受け止められたので思わず驚愕して動きを止めてしまう。

 

「いく……」

 

それを見逃さずかごめが刺突用の武器で斬撃……だと思ったら振りぬいている途中にこちらが避けるのを見越して弩剣を振りぬきながら矢を撃ってきた。それに気づき遅れながらも逆方向に回避する。そのまま普通に避けていれば確実に当たっただろうし、受け止めた場合はさらに矢が射出される気がする。面倒くさい事この上ない相手である。

 

そんなことを思っていると追加で斬撃が来る。それに対して右に避けると盾が迫ってきた。小刀ではじいてみれば今度は連弩剣が目の前で俺を狙っていた、心臓に悪くて仕方がない。

 

顔面に飛んできた矢をもう一本の小刀で打ち落とし一旦距離を取る。

 

「本当に恐ろしくなったな」

「あり、がと……?」

 

どうやらかごめは弩剣を両手と片手で使い分けてるみたいだ、両手の場合だと振りぬきながらもう一方の手でトリガーを引き、避けられたり防がれたりした場合でも撃ち殺せることがある。片手の場合は斬りかかった後に盾で強襲、目の前に迫ってくる盾をはじくか受け止めてしまった場合は弩剣が目の前にあるか、見えない個所を撃たれて動きを鈍くされる。

 

この分だとそれを回避した時の反応を利用する手立てもあるのではないだろうか? 思うにその時こそ刺突の出番といった所だろうか。避けられたら致命的だが避けられるものもかなり稀だろう。

 

かごめのスタイルは本当に厄介だ。片手に準備しておいた弩剣で撃つか斬りかかり、隙は盾で埋めていき、恐らくこちらの判断も利用して両手を駆使して武器を使い命を奪いにくる。普通に驚いたりしてると殺されるのは確実だ。

 

そんなことを考えながら唯一の弱点らしい弱点をつくことにした。

 

かごめが両手で斬りかかってくる。この後かごめは勢いあまってなのか、それとも矢を装填してるのかはわからないがほんの少しだけ動きを止める・

 

「ここだ!」

 

その瞬間を狙ってみたものの……瞬時に片手につけてある盾で弾いて撃ってきた、片手で振り回せる盾って厄介でしかない、そして片手で振り回せる弩剣ってもう嫌だ。

 

本当に強いと思う。かごめにもそろそろ実力の一端を見せられるかもしれないと思い殺気を放ちつつ動きを鋭くしていく。

 

「時雨、本気?」

「ああ……すまんがもう少し実力を出してもいいと判断した」

「別に…いい。嬉…しい」

「そっか、なら行くぞ」

 

一刀との時と同じように一気に距離を詰め斬りつける。かごめは少し動きが追い付いていないようだがそれでもいつものように盾で受け流そうともがく、辛うじて間に合うだろうとは思うが今回は斬撃の重さが違うので残念だけれどそれでは防ぎきることは出来ない。

 

ガンッと音を立てて盾が地面に落ちる、その衝撃につられてかごめはビックリしたように尻餅をついて座り込んでしまう。その可愛らしい姿に罪悪感で死にそうになるが泣く泣く首に小刀をはわせる。

 

「あ……負け、た」

 

素直に負けを認めたので小刀を素早く首から離す。本当は死ぬと危ないとか伝えたかったのだが、それを覚悟している瞳を向けられたので何にも言えなかった。

 

「でも善戦してたぞ? 俺の一撃を止めたんだし」

「うん……もっと、強…く…なる」

「ああ、楽しみにしてる」

 

笑いかけながらかごめを立たせて服に着いた汚れを払ってやる。嬉しそうに笑いながらこちらを見ているかごめに癒されていると調練場に闖入者が現れた。

 

「あかん! あかんで、忘れとった! 紀霊ほんますまん。実はな、あのな」

 

いきなり来たと思ったら慌てて伝えたい内容が良くわからないといった状況に嘆息しながら落ち着かせる。恐らく昨日の件なのだろう。

 

「ふう……。それでな、実は詠に頼まれたんや、『紀霊にボクの部屋へ来てって伝えて』ってな、ほんでそれを今さっき思い出してな」

「………」

 

冷や汗が止まらない。あれはいつだっただろうか、絶対昨日の件だけでは済まないだろう。ちゃんとこれまでを思い返してみればわかる、一昨日もすっぽかしてるのだからそれだけで済むはずはないのだ。

 

なんてこった、雇い主たる賈駆の事を忘れているなんて……これはまずすぎる。首になったらとてもじゃないが今まで企ててきた目論見がうまくいかない。これは土下座しかない、それしかない。

 

「すまん、後は一刀と一緒に鍛錬しててくれ」

「うん……」

 

そう答えたかごめを置いて急いで賈駆の元へ急ぐ、遠くで張遼が「ほんますまんかった」と叫んでいるのを聞いて俺が悪いのになと苦笑する。今はただただ急がなくてはいけない。首だけは防がないと……

 

あれ? 賈駆の部屋どこ?

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「全く、こうなるから早いうちに紀霊に頼みたかったのにまさか二日も無視されるなんて思わなかったわ……」

 

賈駆は自分の部屋の中で1人呟く。扉を閉め、窓から離れ、寝台の上に1人たたずみながら愚痴を言う。

 

「ボクをここまで虚仮にするとはいい度胸じゃないの、明日になったら貯まった政務を全部押し付けてやる。実力なんてもうこの際関係ない、問答無用よ」

 

暗い笑みを浮かべ1人ほくそ笑む、これしかやることが無いので仕方ないのだけれど自分で独り言を喋っててだんだん虚しくなってくる。

 

そろそろアレが来る頃合いだとは思っていたのにこうも早く来てしまうなんて予想外だった。こんなことなら自分で紀霊を捕まえてくるべきだったのだ。軍師として自らの過ちを認めないわけにもいかない。

 

けれど行き場のない感情はどうすることも出来ない。自分に一部責任があると言っても紀霊が悪い事には変わりはないのだし、厄介ごとを押し付けても罰は当たらないはずである。

 

「明日よ、明日になったら絶対許さないんだから」

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

何故か何処からともなく次々と現れる侍女たちに半ば恐怖しながら賈駆の部屋の前へとたどり着いたはいいのだけれど

 

「なぁ、賈駆……昨日忘れてたのは悪かったからさ」

「だから違うっていってるでしょ! 今日はダメ、用事は明日でもいいから明日きなさい!」

 

と最初から同じような会話を続けている。ノックをして入ろうとしたらいきなり怒鳴られた上に、扉を全力で押さえつけているようで迂闊に開けることが出来ない。

 

もしかしたらかなり怒っているのでは? これはまずすぎると1人焦っても賈駆が部屋に招き入れてはくれないので何もできない。

 

「わかった」

 

といいつつもこれからの事がかかっているだけに簡単に諦めるつもりは毛頭ない、これは相手を油断させる作戦なのだ。ここであきらめたら明日は首宣言……ありうる。

 

「もう、今は誰も今日はやばいのに、なんであいつ今日に限ってくんのよ」

「?」

 

何を言っているのか良くわからないのだけれどここで引けばすべてが終わってしまうに違いないと確信する。正直後になって俺はどうしてこんなふうに考えてしまったのかと疑問ではあるが、きっと新しく出来た場所を維持したかったのではないかと思う。

 

扉から賈駆が離れたのを確認してから静かに扉を開けた先には賈駆が膝を抱えてベッドに座っていた。

 

「へ?」

 

思わず声を上げてしまい気づかれてしまった。次の瞬間には何かが目の前に飛んできた、受け止めた物は枕だったがどうやら本気で入られたくなかったらしいと今気づいた。

 

完全にやらかしてしまったけれどもうここまで来ると引くに引けない。

 

「あ、あんた! 用事は明日でもいいっていったでしょ!」

「何をそんなに怒ってるかはしらんが俺は今日やる! 明日の分は明日やる。約束忘れて悪いとは思ってるからこそ今日詫びさせてほしい」

「もう……そんなことじゃないの」

 

ちゃんと誠実に謝ろうとしているのだけれど賈駆の顔が優れないのが見て分かる。また失敗してしまったのかと思いつつ質問する。

 

「じゃあどういうこと?」

 

質問した次の瞬間には賈駆の部屋に積み重なっておいてあったほんの山が崩れてきた。慌てて避けて賈駆の元へと歩み寄る。

 

それを見た賈駆は溜息をつきながら答える。

 

「そういうことよ。ボクの周りにいると不幸が訪れるの」

「へぇ……今まではなんともなかったのに?」

 

これは面白いなと不謹慎だけれど思ってしまう、何故不幸が訪れるのだろうか、呪われていた自分は常に訪れていたというのに何か理由があるのだろうか?

 

「突然来るのよ……わかったら出てって」

 

賈駆の言い分に首を曲げる。何故不幸だと出て行かないといけないのか理解できない。

 

「なんで? それぐらいだったら別に構わないけど」

「へ?」

 

賈駆が声を上げると同時に今度は天井が落ちてきた。脆いなオイ、って賈駆の唖然としているカワイイ顔を見逃してしまった事の方が重大か。と脳内冗談はさておき、驚いてるからには説明しておかないといけないんだろうけど何といったものか。

 

「んー、なんて言ったらいいかな……俺はなれてるから大丈夫なんだけど」

 

賈駆の隣に事前に腰を下ろして説明を開始しようとすると隣で賈駆が暴れ始めた。

 

「ちょ、ちょっと誰がボクの隣に座っていいっていたのよ!」

「ん? 今はとりあえず隣にいた方がいいかと」

 

俺も不幸体質だった男だ。というより呪いだったわけだけど。まぁそんなことはどうでもいいが、一人の心細さと寂しさは心得てるつもりである。俺もそうして他人に近づかなくなったわけだし。

 

暴れる賈駆を相手しながら窓の外から小石が飛んできたので手で受け止めて適当にそこらへんに放置する。わが身に襲いかかってるわけじゃないから疑問に思うのだが、どうやったらこんな風に小石が突然飛び込んでくるんだろうか。

と無駄な事を馬鹿みたいに考えていると賈駆が暴れるのを辞めてこちらに目を合わせてきた。

 

「あんた、なんでそんなに反応できるの? というかボクのそばにいたら大変なんだってば」

「傷つかせたくない? 自分のせいで怪我をしてしまう人を見て傷ついて、その事で突き放されて自分も傷ついて。まぁそりゃ大変だよな」

「っな!」

「俺は賈駆ではないし、その気持ちを正確にわかるなんてことは思ってないけど……少なくとも一人が寂しいのはわかってるから」

 

そういって優しく笑いかけ賈駆の頭を撫でてやる。ああ、そうか昔こんなことが俺にもあった。俺が皆を撫でるのはよく夜逃げした両親に不幸な目にあって泣いた時に撫でてもらっていたから……。

 

少し感傷に浸りながらも困った時の撫で撫でが前の両親から受け継いだものだと思うと少し嬉しいと同時に悲しくなってしまう。

 

不幸だからこそその分優しくて、不幸だからこそその分厳しくて……そんな両親が好きだったなと今更ながらに思う。

 

「……物好きなやつ」

「ん? そうかな?」

 

にこやかに対応しながら新たに飛んできた小石を掴む。何で飛んでくるのか本当に分からない。

 

「こんな危ない場所に好き好んでいる奴なんていないわよ」

「そうか? 好き好んで戦場に出てる戦馬鹿もいると思うんだが……」

 

実際こんな不幸より戦場の方が幾倍も命の危険がある、正直ちょっとした不幸でストレスをためるのなんてそれに比べればまだマシである。それに俺は経験から不幸が避けられるものだと理解している。だからこそ気にするなんてありえないと言っていい、逆に賈駆が心配になるぐらいだ。

 

「そ、それはそうだけど……それとこれとは話が別でしょ! ボクの所にいたってなんの面白みもないのに」

「それは違うな……俺は友達が少ないからさ、その数少ない友達を大切にしようって思ってるんだ。そしてそう思ってると見えてくるものがある」

「……なに?」

「そいつの個性だよ、似ているようで少し違う。そして全く違う趣味趣向、考え方動作、性格……どんな些細な事でも結構面白いと思うよ? それに賈駆みたいに可愛い女の子といるなんて幸運じゃない?」

 

昔はこんな出会いなど俺にはなかった。けれど賈駆にはちゃんと友達もいるし仲間もいる、1人だと感じてほしくはない。

 

「っな、な……なにいってのよ! あんた馬鹿じゃないの!?」

「ん? そういえば綾には良く言われるな……」

 

苦笑しながらそう返すと賈駆は諦めた様に溜息を吐いてこちらを見てくる。

 

「はぁ……まぁいいけど、それよりいつまで人の頭を撫でてるつもり?」

 

やっと落ち着いてきたのだろうか、今さらではあるけれど賈駆が少し赤くなりながらも抗議してきた。まあ当然だよなと思い手を離す。

 

「ああ、ごめん。それよりも外に行こうか」

 

突然の提案にキョトンと目を悪くする賈駆を見て思わず笑みが深くなる。昔俺もこう言われてたりしたら同じような反応をしたのだろうなと

 

「へ? あんた私の体質のことわかったんでしょ?」

「そうだけど、それにしてもこんな部屋の中に閉じこもってても気持ちが暗くなるだけだよ。それより街にでも行って楽しもう」

 

賈駆が抵抗を始めるその前に手を引っ張って部屋を出る。

 

「ちょ、待って……待ってよ! 外に行っても皆に迷惑かけるだけじゃない!」

「まぁまぁ、俺がそれは何とかできると思うから大丈夫だよ」

「何いってんのよ、それが出来たならボクは苦労しないよ……」

「いいからって」

 

笑いかけながら街を目指す。途中で飛んでくる色々なものをすべて排除しながら進んでいく。

 

賈駆を笑顔にしてやりたい。前世で俺は一人でいることしか出来なかった。だから家事、鍛錬、勉強、エロゲで気分を晴らしていたけれどやはり虚しかった。そして気晴らしが出来なければどれほど悲惨だっただろうかと考えてしまう。

例え1日といえど賈駆には気分を晴らす手立てがない……なら俺が笑顔にしてやればいいんだとそう思う。

 

時雨は1人上機嫌に歩みを進め、文句を言ってくる賈駆を無視しつつ街へ足取り軽く進んでいくのだった。

 

 

 

―――――――――――――――――――

■後書き■

なんか予想違って絶望した方はすみません。怒られて騒ぎになるルートも検討したのですけど

編集前と同様に私が賈駆に文句言われつつほのぼの和みたいのでこうしました(ぁ

 

そろそろ再掲載の折り返し地点。今で十何万文字といった所でしょうか……@半分長いなー。


 
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