その後エステル達は城まで見に行き、遊撃士の紋章を隠して旅行者を装って城門を守っている兵士達から色々な情報を手に入れて話合っているところフィリップを連れたデュナン公爵が城から出て来て、武術大会を行っている王立競技場(グランアリーナ)に観戦に行った。兵士達からデュナンが女王代理を務めている事を
知っていたエステル達はデュナンの動向を調べるため、グランアリーナに向かった。
~グランアリーナ・観客席~
「うわぁ……。いっぱい入っているわね~!」
「うん……。すごい熱気だね。予選からこの数っていうことはかなり大きなイベントみたいだ。」
「人が一杯いて、凄いね!ツーヤちゃん!」
「うん。本当に人がたくさんいるね………」
チケットを買ってグランアリーナに入ったエステル達は観客席に行って、ほぼ満席になっている観客席を見て驚いた。
「予選試合、どこまで進んでいるのかな。」
エステルがそう呟いた時司会の声が聞こえて来た。
「お待たせしました。これより第~試合を始めます。」
「あ……始まったみたい。」
「それじゃあ、どこか空いている所に座ろうか。」
「わかった。ほら、ミント、ツーヤ。はぐれないためにもいっしょに手を繋ぎましょう。」
「うん!」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて……」
そしてエステル達は空いている観客席を探して、座った。
「南、蒼の組。国境警備隊、第~部隊所属。~以下4名のチーム!」
片方の門から兵士達が現れた。
「あれっ……。試合って1対1じゃないんだ?」
「うん、団体戦だったみたいだね。僕の記憶だと確か個人戦だったはずだけど……」
団体戦である事にエステルは驚き、ヨシュアは首を傾げた。
「北、紅の組。遊撃士協会、グランセル支部。クルツ選手以下4名のチーム!」
そしてもう片方の門からクルツ達が現れた。
「あっ、カルナさんたちだわ!」
「危うく見逃すところだったね。」
「カルナさんって、どれだけ強いんだろうね、ツーヤちゃん!」
「正遊撃士だから少なくとも兵隊さんには負けないとあたしは思うな。」
クルツ達の登場にエステル達は興味津々でクルツ達を見た。
「これより武術大会、予選第4試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」
審判の言葉に頷いた両チームは開始位置についた。
「双方、構え!」
両チームはそれぞれ武器を構えた。
「勝負始め!」
そして兵士達とクルツ達は試合を始めた!試合は終始クルツ達の有利で運び、結果はクルツ達の勝利となった。
「勝負あり!紅の組、クルツチームの勝ち!」
「やったあああーーっ!すごいわ、カルナさんたち!」
「凄っごいいーーっ!カルナさん達って、凄く強いね、ツーヤちゃん!」
「うん。それにほかの遊撃士の人達も凄く強いね。遊撃士の人達の動きはとても参考になるよ。」
「うん、いい勝負だったね。軍人たちもいい動きだったけど連携攻撃と役割分担の上手さで遊撃士チームには及ばなかったな。」
試合がクルツ達の勝利で終わった事にエステル達が興奮しているところ、また司会の声が聞こえて来た。
「……続きまして、これより第5試合を始めます。南、蒼の組。チーム『レイヴン』所属。ベルフ選手以下4名のチーム!」
片方の門からかつてルーアンで操られていた不良集団――レイヴンの下っ端達が現れた。
「あ、あの連中!?」
「ルーアンの倉庫街にいた不良グループのメンバーだね。なるほど、普通の民間人にも開かれている大会なのか……」
「はあ、場違いもいいとこだわ……。戦闘や武術のプロが集まっているのにあんな連中が敵うわけないじゃない」
「なんか複雑な気持ちだね、ミントちゃん………ルーアンに住んでいた人達が出場したのは嬉しいけど、よりにもよってあの人達だなんて………」
「うん………確かクラムに酷い事をしようとしていた人達なんだよね?ミント、そんな人達は応援できないよ……」
レイヴンの登場にエステルは溜息を吐き、ヨシュアは驚き、ツーヤやミントは複雑そうな表情をした。
「北、紅の組。隣国、カルバード共和国出身。武術家ジン選手以下1名のチーム!」
「ジ、ジンさん!?」
「また知り合いか……。世間は狭いって感じだね。でも、1人で出場なんてさすがに不利だと思うけど……」
「確かに……。いくら相手がチンピラでも囲まれちゃったらマズイかも。」
アガットを助けるための薬の原料をとりに行く時、手伝ってくれた遊撃士――ジンの登場にエステル達は驚き、また1人で出場している事に驚いた。その時、司会の説明が聞こえて来た。
「ジン選手は今回の予選でメンバーが揃わなかったため1名のみでの出場となります。著しく不利な条件ではありますが本人の強い希望もあったため今回の試合が成立した次第です。みなさま、どうかご了承ください。」
「これより武術大会、予選第5試合を行います。両チーム、開始位置についてください。」
審判の言葉に頷いた両チームは開始位置についた。
「双方、構え!」
両チームはそれぞれ武器を構えた。
「勝負始め!」
そしてジンとレイヴンの下っ端達は試合を始めた!
「「「「オラァッ!!」」」」
レイヴン達は同時に襲ってきたが、ジンは余裕の笑みを浮かべた後、何かを溜める動作をした。
「こおぉぉぉぉ、奥義………………」
するとジンの両手から大きな闘気でできた弾ができた。
「破っ!雷神掌!!」
ジンの両手から放たれた闘気の弾はレイヴン達に命中して、爆発した!
「「「「グワァァァァ!?」」」」
まともにジンの技を受けてしまったレイヴン達は悲鳴を上げた後、その場に倒れて立ちあがらなくなった。
「ワァァァァァァ!!!」
観客達はたった一人で圧倒的にレイヴン達に勝利したジンに歓声をより大きくあげた。
「勝負あり!紅の組、ジン選手の勝ち!」
「ひゃっほーーっ!さすがジンさん、圧倒的!」
「余計な心配だったみたいだね。あの巨体で、動きも速いし、技のキレも凄まじいものがある。ただ、さすがに本戦になったら1対4は厳しいとは思うけど……」
「うーん、確かに……」
その時、また次の試合の組み合わせのアナウンスが入った。
「……続きまして、これより第6試合を始めます。南、蒼の組。王国正規軍所属、第~部隊所属。~以下4名のチーム!」
片方の門より、また王国軍の兵士達が現れた。
「北、紅の組。異世界の国、メンフィル帝国出身。冒険家リフィア選手以下2名のチーム!」
もう片方の門からは何と、リフィアとエヴリーヌが現れた。
「リフィア選手はジン選手と同じように今回の予選でメンバーが揃わなかったため2名のみでの出場となります。著しく不利な条件ではありますが本人の強い希望もあったため今回の試合が成立した次第です。みなさま、どうかご了承ください。」
少女2人だけの出場にざわめいている観客達に司会は説明をした。
「リ、リフィア!?い、いつのまに出場手続きをしちゃったんだろう……」
「彼女達の用事ってこの事だったんだ……」
リフィアとエヴリーヌの登場にエステルとヨシュアは驚いた。
「あれ?ご主人様はいませんね。リフィアさん達が出場するならいっしょに出場するかと思ったのですが……」
「あ、ツーヤちゃん。試合が始まるみたいだよ!」
プリネを探していたツーヤだったが、ミントに言われてプリネを探すのをやめた後、すでに所定の位置についているリフィア達を見た。
「双方、構え!勝負始め!」
そしてリフィア達と兵士達は試合を始めた!
「例え相手が女子供であろうと大会に出ている上、相手は”大陸最強”を誇るメンフィル帝国の出身だ!油断や手加減はするな!行くぞ、お前達!」
「「「イエス、サー!!」」」
隊長らしき人物の声に部下達は頷いて、リフィア達に攻撃をしようとしたが
「フフ、その心意気は評価しよう!だが!相手が余達だったのが残念だったな!エヴリーヌ!」
「オッケー!久しぶりにやっちゃおうか、キャハッ♪」
リフィアの言葉に頷いたエヴリーヌは弓を虚空にしまい両手を掲げ詠唱を開始した。またリフィアもエヴリーヌと同じように詠唱を始めた。
「「……我等に眠る”魔”の力よ、我等に逆らう者達に滅びを!………血の粛清!!」」
「「「「グワァァァァ!?」」」」
リフィアとエヴリーヌが協力して放った魔術は兵士達の上空から魔力でできた槍が雨のように降り注ぎ、それに命中した兵士達は断末魔を上げた後、倒れた。
「死なぬよう、手加減はしてある。安心せよ!」
「エステル達との旅のお陰で昔と比べてかなり手加減できるようになったから、リウイお兄ちゃんに『成長したな』って褒めてもらえるかな?キャハッ♪」
倒れて、ピクリともしない兵士達にリフィアやエヴリーヌはそれぞれ勝ち誇った笑みで言った。
「しょ、勝負あり!紅の組、リフィアペアの勝ち!救急部隊!今すぐ来てくれ!」
「オオオオォォォォォォォォ!!!」
観客達は見た目とは裏腹に圧倒的な強さを見せたリフィア達に驚愕した。ピクリともしない兵士達を見て審判は驚いた後、リフィアの勝ちを宣言した後、ピクリともしない兵士達をすぐに治療しないとまずいと思い、救急部隊を呼んだ。
そして救急部隊がやって来て、担架に一人一人乗せて、医務室に運んで行った。
「す、凄っ………!」
「リフィア達の魔術は手加減してもすさまじい威力とはわかっていたけど、今のは今まで見た魔術でも最高の威力だな………」
「ふえ~………ミント達もがんばらないとね、ツーヤちゃん!」
「うん。(あれがあたしが目指すべき領域………ご主人様のお傍にいるためにも今まで以上にがんばらないと!)」
リフィア達が見せた魔術にエステルやヨシュアは驚き、ミントははしゃぎ、ツーヤは決意の表情でリフィア達を見ていた。
そして次の試合の組み合わせのアナウンスが入った……………
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