~レイストン要塞・研究棟前~
「はあ、せっかく王都で大きな作戦があるのに……。こんなところで爺さんの見張りなんてな。」
「ぼやくな、ぼやくな。王国のため、そして理想のため大佐の手足となって働くこと……。それが情報部の隠密隊員、『特務兵』の使命なんだからな。」
入口を守っている黒装束の男達――特務兵の一人が博士の見張りをしている事に溜息をついている所をもう一人の特務兵が慰めていた。
「フン。てめえらそんな大層な肩書だったのかよ。」
そこに聞き覚えのある声が聞こえたため、特務兵達は声がした方向を振り向いた。
「なに……?」
振り向くとそこには武器を構えたエステル達がいた。
「ば、馬鹿な……!」
「アガット・クロスナー!?」
目の前にいる人物に特務兵達は信じられない表情をした。
「遅ええっ!」
そして驚いている特務兵達の隙を狙って、アガット達は先制攻撃を仕掛けた!
「か、覚悟して下さい!ええいっ!」
「「ぐわっ!?前が……!」」
「「ギャン!?」」
ティータの導力砲で煙幕弾を放つクラフト――スモークカノンによって特務兵や特務兵達が調教した狼の魔獣は視界が真っ暗になり、うろたえた所を
「行きますわよ!雷よ、走れッ!…………ハァッ!」
「「「「ギャァァァッ!?」」」」
フィニリィは槍の切っ先に溜めた雷を震う魔術――大放電を特務兵達に放った!フィニリィの魔術によって特務兵達は叫び声をあげたところを
「はぁぁ、せいっ!」
「くらいやがれっ!」
「「ぐはっ!?………」
エステルとアガットはそれぞれクラフト――金剛撃とスパイラルエッジを放って、特務兵達を気絶させた。
「やあっ!」
「せいっ、はっ!」
「はっ!そこっ!」
「「ギャッ………」」
残りの狼の魔獣にティータが導力砲で攻撃し、そこにヨシュアは一体に近付き、クラフト――双連撃で一体を葬り、フィニリィは槍に雷を宿らせて素早く2回攻撃するクラフト――電磁連槍撃で残りの一体を葬った。
「ケッ……ざまあ見やがれ。散々コケにしてくれた借りは返してやったからな。」
「フフ、力を取り戻しさえすればこのような者共、私の敵にはなりませんわ!」
電光石火で特務兵達を倒したアガットは気絶している特務兵達を見て、弱冠気分が晴れた。また、フィニリィもプリネと契約したお陰で力を取り戻したので気分がよかった。
「個人的な恨みが入りまくってるわね~。」
エステルは苦笑しながらアガットを見た。
「ここからは時間との勝負だ。一刻も早く博士を連れて脱出しよう。」
「はいっ!」
そしてエステル達は研究棟の中に入った。
~研究棟内~
「また来おったか……。いい加減にせい!何もいらんと言うたじゃろ……」
ドアが開き、誰かが入って来た事に気付いた博士はまた軍関係者と思い、振り返りながら怒鳴った時、そこにはエステル達がいた。
「お、おじいちゃん……」
「ティ、ティータ!?はて……わしは夢でも見ておるのか?」
博士は今にも泣きそうな表情をしているティータを見て、驚いた。
「おじいちゃああん!よ、よかったぁ……。無事でいてくれてぇ……。……うううう……。うわぁああああああん!」
博士が無事である事に安心したティータはついに泣きだして、博士に抱きついた。
「こりゃ、どうやら夢じゃないようじゃな。それにお前さんたちは……」
「やっほー、博士。わりと元気そうじゃない?」
「マードック工房長の依頼で博士の救出に来ました。」
「なんと……。ここに潜入したのか。さすがカシウスの子供たち……。常識外れなことをするのう。」
博士はレイストン要塞に潜入したエステル達を見て、感心した。
「よお、爺さん。悪いがとっとと脱出の準備をしてくれや。あんまり時間がないんでね。」
「なんじゃ、お前さんは?ガラの悪そうな若造じゃの。ニワトリみたいな顔をしおって。」
「ニ、ニワ……。あんだと、このジジイ!?」
博士の言葉に一瞬呆けたアガットだったが、我に返った後博士を怒った。
「クスクス、言い得て妙ですわね。」
「あはは、博士ってばうまいことを言うわね~!」
「お、おじいちゃん。失礼なこと言っちゃダメだよ。この人はアガットさん。ギルドの遊撃士さんでお姉ちゃんたちの先輩なの。」
アガットに対する博士の言葉にフィニリィやエステルは笑い、ティータは慌ててアガットの事を説明した。
「ほう、お前さんも遊撃士じゃったか。そういや前に、カシウスから聞いたことがあるのう。いつも拗(す)ねてばかりいる不良あがりの若手がおると。」
「あ、あんのヒゲオヤジ……!」
「まあまあ、アガットさん。博士も、詳しい話は後にして急いで脱出の準備をしてください。何か持っていくものはありますか?」
カシウスに対して怒りを抱いているアガットを宥めたヨシュアは博士に尋ねた。
「そうか……。ならば、『カペル』の中枢ユニットを運んで行ってくれんか?下手に置いていったらまた連中に悪用されそうじゃ。」
「わかりました。」
ヨシュアは機械についている装置を外して、博士に渡した。
「わしはそいつを使って『黒の導力器』の制御方法を研究させられていたんじゃ。構造そのものは解析できなかったが、データと制御方法は弾き出してしまった。これで連中は、いつでも好きな時に例の現象を起こすことができるじゃろう。」
「そっか……」
特務兵達が導力停止現象をいつでも起こせる事を知ったエステルは複雑そうな表情をした。
「すまん、エステル、ヨシュア。せっかくお前さんたちが届けてくれた品物じゃったのに……」
「どうか気にしないでください。ティータの身の安全を盾にされたら従うしかないのは当然でしょう。」
「むしろ、あたしたちの方が博士たちを巻き込んじゃったみたい。」
頭を下げて謝る博士にヨシュアとエステルは慰めた。
「だーっ!ウダウダ言ってるヒマはねぇ!準備もできたし脱出するぞ!爺さんは、ギックリ腰にならない程度に急ぎやがれ!」
「フン、言いおったな……。まだまだ若いモンに負けん所を見せてくれるわ!」
「も、もう、2人とも……」
ティータはまた言い合いを始めた博士とアガットを見て、ティータは苦笑した。
「全くもう、揃いもそろって……ここが敵地である事が理解していますの?脱出するなら急いだほうがいいですわよ!」
博士やアガットの言い合いを呆れた表情で見ていたフィニリィは脱出を促した。そしてエステル達は脱出するための小型の船を確保するために波止場へと向かった………
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第110話