No.459993

IS学園にもう一人男を追加した ~ 48~50話

rzthooさん

・・・

2012-07-26 22:38:13 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2030   閲覧ユーザー数:1981

48話

 

 

 

 

 

獅苑SIDE

 

 

獅 「・・・」

 

ついに、やってきた学園祭1日目。

だが、それは同時に、俺の首はギロチンにかけられるのと同期だ。

 

一 「おーい、まだかー?」

 

一夏の声が余計に腹が立つ。

つか、ちょっと笑ってないか?

 

獅 「・・・はぁ」

 

まぁ、ここで何を言っても、この状況は変えられない。

とりあえず、着替えてさっさと、終わらせよう。

 

獅 「・・・」

 

更衣室の取っ手に手をかけ、一度深呼吸して、ドアを開く。

 

全 「・・・」

 

すると、ドアの前に立っていたラウラとシャルロット以外の、1組全員が俺の凝視して面を食らっている。

 

全 「・・・きゃ、きゃああああぁ!」

 

だが、次の瞬間に女子達の叫びに近い歓声が上がる。

 

女1 「やばい・・・死にそう」

女2 「駄目! ここで、死んだら接客してもらえないわよっ!」

女3 「そうよっ! 死ぬのは、その後でいいじゃない!」

一 「いや、死んだらマズイでしょ・・・」

セ 「なんか、負けた気分ですわ」

箒 「・・・」

シ 「やっぱり、凄く似合ってるね」

ラ 「姉上は、何着ても似合うからな」

 

ああ、逃げたいなぁ。前の時は仕方ないとしても、まさかクラス全員にこんな姿を見られてしまうとは・・・

 

本 「ギリー、ぐっじょぶっ!」

獅 「・・・はぁ」

 

あ~、めんどい・・・

 

 

一夏SIDE

 

 

という訳で、学園祭が開催された。

現在、1年1組の『ご奉仕喫茶』は、開店1分で満席。

さらには、廊下にも長蛇の列を作っており、最後尾の人は2時間待ちの状態である。

 

シ 「いらっしゃいませ♪ こちらにどうぞ、お嬢様」

 

そんな中、シャルは開店からずっと、ニコニコしたまま、接客をこなしている。

ちなみに、班には時間帯に2チームに分かれて、調理班・雑務班・接客班の3種類が存在している。

調理班は呼んで字のごとく、調理する班。

雑務班はクレームや、客の誘導。

接客班は俺、箒、セシリア、シャル、ラウラ

そして・・・

 

獅 「いらっしゃいませ。席に案内いたします」

 

獅苑である。

 

獅 「何かあれば、お申し付けください」

女客1 「は、ははいぃ!」

 

おそらく、営業スマイルなのであろうが、その笑顔にすべての客を魅了していた。

しかも、普段のギャップもあるせいか、すでに10人以上の客を気絶させている。

 

一 「まさに、魅惑のデスキラー・・・」

獅 「・・・黙れ」

一 「いっ!」

 

横を通った獅苑に、思いっきり足を踏まれる。

 

獅 「はぁ・・・」

 

カーテンで線引きされた控え室に入っていく獅苑。

 

一 「・・・」

鈴 「獅苑、大変そうね・・・」

一 「お、鈴か・・・チャイナドレス?」

 

テーブルに座っていたチャイナドレス姿の鈴。

これまた、かなり凝ってる服だな・・・

 

鈴 「そうよ、あたしのクラスは『中華喫茶』やってんの。でも、客はほとんど、こっちに持ってかれて、暇でしょうがない・・・ほら、執事なんだから、注文取りなさいよ」

一 「はいは・・・かしこまりました、お嬢様」

鈴 「う、うむ、くるしゅうないわ、よ?」

 

鈴はお嬢様になりきったつもりなのだろうか、何かが色々と間違ってる。

 

鈴 「うーん、そうね・・・じゃあ『執事にご褒美セット』で」

一 「・・・お嬢様、当店のおすすめの『ケーキセット』は、どうでしょうか?」

鈴 「誤魔化そうとしない。『執事にご褒美セット』で」

一 「・・・かしこまりました」

 

とりあえず、セットを取りに、キッチン前へ。

 

調理班1 「はい、どうぞ」

 

すぐに、パッとセットが手渡され、俺は鈴のテーブルに戻る。

 

鈴 「結構、早いじゃない・・・で、このメニューって、どういうのなの?」

一 「・・・ご説明させていただきます」

 

そう言うと、俺は鈴の向かい側に座る。

 

鈴 「な、なんで、座るのよ・・・いや、まぁ、別に構わないけど。それで?」

一 「このメニューは、"執事である自分が、お嬢様に食べさせる"というものです」

鈴 「はい?」

一 「・・・だから、執事に食べさせられるセットだよ」

 

俺自身も恥ずかしいセットメニュー。

つか、鈴相手に普通に話してもいいだろう。

 

鈴 「っ!? へ、へぇ・・・」

 

ボッと顔を赤くした鈴は、ニヤケながらポッキー1本を指でつまむ。

 

鈴 「じゃ、じゃあ、その・・・あ、あーん」

一 「あ、あーん」

 

ポキッと、ポッキーが弾ける。

 

鈴 「食べさせてあげたんだから、あたしも・・・」

箒 「お嬢様、当店ではそういうサービスは行っておりません」

 

言いよどむ鈴に割って入ってきた箒。

その表情は、とても怖い。

 

鈴(? 「そうなんだ、分かっ「何ですか、この料理はっ!?」・・・な、何っ!?」

 

廊下側、いや、グラウンドから轟く怒号。

すると、周りの客もクラスの皆も廊下に出て、様子を見に行く。

 

箒 「私達も行こう」

一 「ああ」

鈴 「そうね」

 

3人で、教室を出る。

 

鈴 「あっ・・・」

 

すでに、窓の方に人だかりができている中、鈴がセシリア達を発見。

 

一 「おいおい、これはどうなってんだ?」

シ 「何か、どっかの国の官僚が、グラウンドに構えてる店に文句言ってるみたいで・・・」

セ 「本当、下らないですわ」

 

いや、確かに下らないけどさ・・・

 

一 「・・・俺、ちょっと、見てくる」

箒 「あ、一夏・・・」

 

俺は人の波を掻き分けて、窓からグラウンドの様子を伺う。

 

官 「こんな飯を私に食わせるなんて・・・かまいません、壊しなさい」

女子1 「ちょ、ちょっと、やめてくださいっ!」

 

官僚の命令に、ボディーガードらしき、黒服3人が店を素手や蹴りで壊し始める。

その店員である女子は、何とか止めようとするものの、訓練された人には敵わず、腕で吹き飛ばされる。

 

女子1 「う、うぅ・・・」

 

女子の目からは涙が零れ出し、泣き崩れ、他の店員が泣いてる女子を慰める。

そんな中でも、破壊行為は行われており、周りの人達は、相手が国家の官僚のせいか、手は出せず、ただ見守るだけ。

それに、教員もいつ来るかは分からない。

 

一 「く、くそっ!」

 

俺はグラウンドに急ぐため、体を反転。

すると、次の瞬間には、顔面を踏まれる。

 

獅 「借りるぞ」

 

獅苑の声と共に、踏まれた感覚は消え、窓の方に目をやる。

 

一 「・・・飛んでる」

 

メイド服の戦士が、ありえない跳躍力で、騒動現場の中心に降り立つ。

 

一 「ここ、3階ですよ~・・・」

 

 

獅苑SIDE

 

 

官 「何ですか、あなた・・・?」

獅 「いや、とりあえず、制裁を」

 

ヴォンッと、官僚を殴り飛ばす。

 

官 「え、へ・・・?」

 

まさか、殴られるとは思ってもみなかったのか、今の状況を官僚は何が何だか分からないようだ。

だが、それも一瞬。

 

官 「っ!? この者をひっ捕らえなさい!」

ボ 「はっ!」

 

【10秒、お待ちください】

 

 

 

 

 

獅 「終わり・・・」

 

案外、ボディーガードって、楽だな。

急所一撃で、気絶とは・・・

 

官 「そ、そんな・・・」

獅 「・・・あ、さっきの破壊活動は、録っておきましたから」

官 「え?」

 

プラプラと、携帯の録画機能で録られた、映像を官僚の目の前で流す。

 

獅 「・・・じゃ」

官(教 「ちょ、ちょっと待っ「さ、行きましょう」・・・ちょっと、待ってください! 私を誰だと思って・・・」

 

教員が官僚と気絶しているボディーガードを回収。

 

獅 「・・・直しますか」

女子1 「ぇ・・・?」

 

散らばった食材やら、機材を拾い上げ、洗ったり、元に位置に戻し始める。

 

獅 「・・・あなた達の店だろ」

女子1 「あ、ありがとうございます!」

 

店員一同が、気力を取り戻し、店の修理を始める。

 

招待客1 「お、俺も手伝います」

招待客2 「わ、私も!」

 

次々と手伝いに参加する人々。

 

(もう、大丈夫か・・・良いウサ晴らしになった。風紀委員会に感謝だな)

 

 

弾SIDE

 

 

(おいおい、すげぇもん見ちまったぜ、俺・・・)

 

メイド女戦士が屈強な男3人を一撃で仕留めた。

まさに、アニメや漫画でしか見ない、シチュエーション。

 

弾 「すごかったよな、蘭!・・・あれ? 蘭?」

 

あっれ~? さっきまで一緒にいたはずなのに・・・

 

弾 「おーい、らーん! どこに行ったー!」

 

辺りを見渡しても、人人人人人。

 

弾 「らーん! お兄ちゃんはここにいるぞー!」

[ゴツンッ]

虚 「きゃ・・・」

弾 「あ、すみまs・・・」

 

俺は絶句した。

ぶつかった相手は、むちゃくちゃ美人、いや、可愛い!

 

虚 「すみません、大丈夫ですか?」

弾 「は、ははいっ! だ、大丈夫、ですっ!」

虚 「うふふ、変な方・・・あ、招待券見せてもらえる?」

弾 「は、はいっ!」

 

ポケットから、クシャクシャになった招待券を見せる。

 

虚 「配布者は・・・あら、織斑君ね。お友達かしら?」

弾 「は、はいっ!」

 

ヤバイ、さっきから返事しかしてない。

何か話題を・・・

 

弾 「あ、あのっ!」

虚 「何かしら?」

弾 「今日は、良い天気ですね!」

虚 「そうね」

 

・・・会話終了。

 

(くぅ、俺って奴は・・・俺って奴は・・・)

 

 

一夏SIDE

 

 

蘭 「一夏さーん!」

一 「お、来たのか、蘭・・・あれ、弾は?」

蘭 「お兄は・・・その内来ます」

一 「そうか」

 

どこかで、迷子になってないといいけど・・・

 

4人 [ジ~・・・]

鈴 「あ、誰かと思ったら、蘭じゃない。ちょっとは身長伸びた?」

蘭 「む、鈴さんに言われたくありません!」

 

2人がいがみ合ってる中、こちらを睨みつけていた4人が近寄ってくる。

 

箒 「一夏、誰なんだ?」

セ 「説明、ありますわよね」

一 「あ、ああ、中学時代の俺の友達の妹」

ラ 「なるほど・・・」

シ 「あ、だから、鈴と親しいんだね」

 

短い説明で、4人は納得したようだ。

 

蘭 「それにしても・・・に、似合ってますよ、一夏さん」

一 「お、そうか? ありがとう」

蘭 「・・・///」

 

ん? なんで、顔を赤くしてるんだ?

 

シ 「また、ライバルか・・・」

セ 「本当、困りものですわね」

鈴 「・・・相変わらず、ね・・・じゃあ、あたしのクラスで飲んでく?」

ラ 「それもいいな、ちょうど休憩時間だ」

一 「そうだな、じゃあ行くか」

 

ゾロゾロと二組の教室に入っていく。

 

(そういえば、弾は・・・ま、大丈夫か)

 

 

獅苑SIDE

 

 

獅 「ふぅ・・・」

 

やっと、休憩時間だ。

俺は控え室のイスにもたれかかり、メイド服のリボンを結わく。

ボタンも第二まで外し、服の中に手で風を送り込む。。

 

本 「ギリー、おつかれ~」

獅 「本当、お疲れ・・・」

 

今の俺の状態を見た本音は、苦笑いしながら緑茶のペットボトルを差し出す。

 

本 「飲んでいいよ~」

獅 「・・・ありがと」

 

ゴクッゴクッと、4分の1を飲み干し、手の甲で唇を拭う。

 

獅 「あ~・・・」

本 「あらら~、これは重症だねぇ」

獅 「・・・だったら、本音が俺の代わりにメイドをやってくれ。実際、簪の専属だろ?」

 

そういえば、楯無さんの別館に行った時も、本音も虚さんも従者的な服装は着てなかったな・・・

 

本 「え~、嫌だよぉ・・・それに~、確かにかんちゃんの専属メイドだけど・・・」

 

言葉を途中で止めた本音が、俺の耳元に近づいて・・・

 

本 「獅苑くんが望むなら、獅苑くんだけのメイドになってもいいんだよ~」

獅 「っ! い、いや、俺は別に・・・」

本 「お顔真っ赤~。可愛い~♪」

 

ニタニタしている本音が、垂れた袖で俺の頭を撫でる。

 

楯 「へぇ~、獅苑君って、メイド萌えだったんだ・・・」

 

・・・扇子で、頭を叩かないでほしいんだが。

つか、いつから居た?・・・どうでもいいけど

 

獅 「それで、どうしました?」

楯 「今、休憩中なんでしょ? 今なら、思う存分、接客してもらえるかな~って」

獅 「・・・今、ですか」

楯 「うん、今♪」

本 「あ~! じゃあ、私もしてもらおうかな~」

 

今度は、本音が甘えているのか、座っている俺の頭を抱きしめる。

 

楯 「ほらほら、両手に花なんだから、気分上げて♪」

 

楯無さんも、腰を低くして、俺の腕に絡みつく。

 

獅 「・・・はぁ、テーブルで待っていてください」

楯・本 「は~い!」

 

パッと同時に離れた2人は、カーテンをくぐり、控え室を出る。

 

(・・・めんどいけど、別にいっか)

 

リボンを結び直し、服装を整える。

一度、不備のない事を鏡で確認し、ホールに出た。

 

獅 「いらっしゃいませ、お嬢様方。メニューは決めておりますでしょうか?」

 

いつもどうり、営業スマイルを浮かべ、2人の接客を開始・・・なのだが

 

本・楯 「・・・」

獅 「どうかなさいましたか?」

楯 「いや、えっと・・・」

本 「ギ、ギリーだよねぇ?」

 

・・・やっぱり、おかしいのか? 今の俺の口調。

 

獅 「・・・それより、メニューは?」

楯 「あ、ああ、そうよね。じゃあ・・・この『?セット』を」

本 「あ、私もそれで~」

楯 「・・・で、『?セット』って、何?」

 

メニューに書かれた『?セット』を指差し、聞いてくる。

すると、本音が俺の代わりに質問に答えてくれた。

 

本 「それねぇ、何枚かのカードを引いて、そのカードに書かれたお菓子を、ギリーが作って、出してくれんだよ~」

楯 「へぇ~・・・」

 

本音が楯無さんに説明中している間に、俺は準備を進め、十数枚のカードを広げる。

 

獅 「・・・では、引いてください」

楯 「じゃあ、私からね・・・このカードで」

 

楯無さんは、引いたカードに書かれた内容を見る事無く、テーブルに伏せる。

 

獅 「どうかなされましたか?」

楯 「いきなり、見てもつまらないでしょ。どうせなら、本音ちゃんと同時に見るわ」

獅 「そうでしたか・・・では、本音お嬢様も」

本 「は、はいっ」

 

"お嬢様"と呼ばれた事が、新鮮すぎたの、声が上ずる本音。

 

本 「う、うーん・・・」

 

裏面のカード達と睨めっこ。

カードを引こうとする手は、あっちこっち移動し、かなり悩んでいるようだ。

 

本 「・・・これだぁ!」

楯 「なら、表にするわよ」

 

パサッと、同時にカードをめくる。

 

本 「・・・わぁあい! 『全メニュー』だ~!」

楯 「・・・『特大水飴』?」

 

どちらの内容も読んで字のごとく、本音のは、俺が全メニューを手作りし、1品ごと出す。

楯無さんのは、ただデカイ水飴。

 

獅 「では、さっそく、調理に入ります。ですが、どちらの内容も時間がかかりますので、少々退屈になると思います。申し訳ございません」

 

とりあえず、一礼して、キッチンに入る。

メイド服の袖をめくり上げ、エプロンを着用。

 

獅 「うっし、やるか・・・」

 

 

虚SIDE

 

 

虚 「・・・」

 

今、私は校舎の3階を歩いているのだが、どうも気分が上の空。

 

(彼・・・今頃、織斑君に会ってるかしら)

 

さっきから、グラウンドで出会った"織斑君の友達"が気になってしかたない。

 

虚 「うーん・・・ん?」

 

ちょうど、織斑君の教室を通りかかり、休憩中なのか、ガラガラの室内を覗いてみる。

 

虚 「・・・2人とも、何してるんですか?」

本・楯 「あ、お姉ちゃん・虚ちゃん」

 

室内には、2人だけがテーブルに座り、何かコソコソやっていた。

 

本 「お姉ちゃんもやろうよ~、指スマ」

虚 「指・・・何?」

楯 「え~、虚ちゃん知らないの?」

本 「会長も知らなかったでしょ~」

 

とりあえず、本音からルールを説明してもらう。

指スマは手で用いられるゲームで、まず順番を決め、攻めと守りの人に分かれる。

この場合、3人なので、本音が攻めな場合、私と楯無さんが守りである。

攻めの人は、3人×親指2本のため、0~6の数を言い、それと同時に、攻めも守りの人も親指を任意で上げる。

そして、本音が言った数と、上がった親指の本数が合っていれば、本音は1あがりとして、片方の手を下ろす。

つまりは、2あがりで両方の手を下げれば勝ち。

 

本 「じゃあ~、やってみよう~! 私からね・・・せーの、"3"」

 

上がった親指、"2"

 

本 「おしい~・・・」

楯 「なら、次は私ね・・・せーの、"6"」

 

上がった親指、"4"

 

楯 「むむっ、虚ちゃんが上げてくれれば、やっとあがれたのに・・・」

虚 「いえ、私に言われても・・・」

本 「ほら~、お姉ちゃんの番だよ~」

虚 「そ、そうね・・・せーの、"0"」

 

上がった親指、"0"

 

虚 「あがった・・・」

楯 「うっそー! 私、一度もあがってないのに・・・」

本 「お姉ちゃん・・・以外と強敵?」

虚 「そ、そうなの・・・?」

 

何か、良く知らないけど、あがれたみたい。

 

(それにしても、あの楯無さんが苦戦するなんて・・・面白いゲームね)

 

本 「じゃあ、いっくよ~! せーのっ・・・」

 

 

獅苑SIDE

 

 

獅 「・・・これで、完成か。よっと」

 

とりあえず、すべてのメニューが乗った皿を、バランス良く、手や頭に乗せる。

普通の接客なら、こんな事はしないが、あの二人相手なら別に問題はないだろう。

 

獅 「お嬢様、お待たせし、ま・・・した?」

虚 「あ、獅苑君・・・わぁ、似合ってますね」

 

いや、褒められても・・・つか、この惨状は?

 

本 「うぅ~、勝てない・・・」

楯 「私、自信無くした・・・」

 

何だ? このナイトメア状態・・・まぁ、いいか。

本音なら・・・

 

獅 「本音お嬢様、こちらが『全メニューセット』です」

本 「っ! わぁ~い!」

 

この通り・・・

んで、楯無さんは・・・

 

獅 「こちらが『特大水飴』でございます。楯無お嬢様」

楯 「え、あ、うん・・・って、デカ過ぎ!」

 

人一人の頭分ある、水飴を楯無さんに手渡す。

 

獅 「虚お嬢様は、何かメニューは?」

虚 「あら、"虚お嬢様"なんて、新鮮ね・・・あ、私は楯無さんの水飴をいただきますから」

獅 「そうですか、失礼しました。それでは、何かあればお申しつけください」

 

一礼して、控え室に戻る。

 

獅 「・・・で、これでいいか?」

 

カーテンから頭だけ出して、聞いてみると、2人はグッと親指を立てた。

 

獅 「はぁ・・・それより、そろそろ休憩時間、終わりです」

楯 「あ、もうそんな時間・・・って、この水飴を数分で食べろと?」

獅 [クイクイ]

 

指で本音の方を指す。

 

本 「ん? ふぁに~・・・?」

 

すでに、半分以上のお菓子が食されていた。

それなのに、本音はケロッとしていて、バクバクとお菓子が本音の口へと消えていく。

 

楯 「・・・あれは、別よ」

獅 「まぁ、分からなくはないですね」

虚 「本当、下品な妹で、すみません・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弾 「あれ? 俺、どうなるの・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

49話

 

 

 

 

 

 

獅苑SIDE

 

 

学園祭二日目。結局、昨日は一夏のお友達には会えなかったが、今日も来ている様で、さらには、優さんや春さん、ラウラが呼んだクラリッサさんと、箒から譲り受けた招待券で来る、隊員一人が来るようだ。

あと、セシリアとシャルロットが招待した人も来るらしいけど・・・

 

(まぁ、どうでもいいか・・・それに、今日は平和だし)

 

二日目の一大イベント『専用機持ち限定タッグマッチ』

各国の企業やお偉いさんはもちろん、一般人の方も観戦できる使用となっているため、一般人は場所取りに向かっているのか、客はまったく来ない。

しかも、クラスの皆も、俺と本音を残して、場所取りに向かってしまった。

 

獅 「・・・んじゃ、制服に着替えるか」

本 「え~、着替えちゃうの~?」

 

一夏達も、準備に行ったそうだし、客、来そうにもないしな・・・

だが、ガラガラと、教室の扉が開かれる。

 

簪 「あ、あの~・・・」

本 「あ、かんちゃん!」

 

着替えをするために、控え室のカーテンをくぐろうとする瞬間に、タイミング悪く、簪が来店。

 

獅 「かんざ・・・いらっしゃいませ、簪お嬢様」

 

一応、ここは喫茶店だからな。対応もいつもどうりと思ったのだが・・・

 

簪 「ぇ! ど、どうしたんですか?」

 

案の定、驚かせてしまったようだ。

 

獅 「ご説明は後ほど・・・メニューは何かございますか?」

簪 「え、えと、私、獅苑さんに会いに来ただけで・・・」

獅 「・・・俺に?」

 

どうやら、俺に用があったみたい。

という訳で、口調を直す。

 

簪 「ふぅ・・・」

獅 「・・・そんなに変か?」

簪 「変って、いうか・・・気持ち悪い?」

[グサッ!]

獅 [・・・クラッ]

 

何気ない簪の言葉に、視界が揺らぐ。

俺だって、こんな事したくないのに・・・

 

本 「あ、ギリー! ヒドイよ、かんちゃん!」

簪 「あ、いや、ち、違うの! 獅苑さんを気持ち悪いって事じゃ」

獅 「俺だって・・・俺だって・・・」

本 「あ~あ、いじけちゃったぁ・・・」

 

【しばらく、お待ちください】

 

獅 「・・・」

簪 「あ、あの、すみません」

 

背を向けている俺に、簪が頭を下げる。

ちなみに、今の服装は制服だ。あんな物、もう一生着るもんか・・・

 

獅 「・・・それで、用は?」

 

心を落ち着かせて、簪の方を振り向く。

 

簪 「え、えと、獅苑さんに伝えたい事が、ありまして・・・その、トーナメント表が決まったんです」

獅 「あ、もう決まったのか」

本 「相手、誰~?」

 

すると、簪が空中投影ディスプレイに、トーナメント表を出す。

そして、左端に映っていた組み合わせは・・・

 

獅 「織斑一夏&更識簪 VS 更識楯無&篠ノ之箒」

本 「・・・いきなり、本命来たねぇ」

簪 「はい。だから、いち早く獅苑さんに伝えに来ました」

獅 「そうか・・・勝てよ」

簪 「は、はいっ!」

 

元気の良い返事に、俺は満足げに笑う。

簪は打鉄弐式の調整確認するため、教室を出て行った。

 

獅 「じゃあ、俺は戸締りするから、先に場所取りに行ってくれるか? どうせ、俺は"余り者"だし・・・」

 

余り者・・・タッグ戦トーナメントでの余り者。

1年で俺を含めた8人。2年は楯無さんを加えた2人。3年は1人。

その中で俺は、タッグを組む相手はいなく、1人出場になっている。しかも、シード権持ちで・・・

たぶん、その許可を出したのは、織斑先生の仕業なのだろう・・・俺が連携に向いてないのと、遊び感覚で・・・

 

本 「うん、分かった~」

獅 「ありがとう」

[ナデナデ]

本 「♪~・・・じゃあ、また後でね~」

 

トボトボと、教室を出る本音を見送って、教室の点検、戸締りを確認する。

 

(後は、鍵を閉めるだけか・・・)

 

と、思っていると、教室のドアが開かれる。

 

ク 「失礼・・・あ、獅苑殿」

? [・・・ペコッ]

獅 「・・・?」

 

この前髪が赤髪で、体つきが鈴に似ている子・・・俺に似てる?

 

獅 「って、どちら様で・・・?」

 

今更だけど、俺はクラリッサさんの顔を知らなかった・・・

 

 

シャルロットSIDE

 

 

シ 「う~ん・・・」

ラ 「さっきから、どうした?」

 

6つピット中の1つに、パートナーであるラウラが、さっきから唸っている僕に問いかけてきた

 

シ 「もうすぐ、来ると思うんだけど・・・」

ラ 「お前が招待した奴がか?」

シ 「うん」

 

僕がフランスの代表候補生になってから、訓練の相手や、愚痴を聞かせ合った人。

 

シ 「そういえば、ラウラにも来てたよね」

ラ 「ああ、部隊の副隊長だ。今は私の代わりに指揮を執ってくれている」

シ 「じゃあさ、あの獅苑君に似た、赤髪の子は?」

 

身長的には、獅苑訓の方が若干高いが、顔立ちはかなり似ていた。

それに、織斑先生とも似ていたし・・・

 

ラ 「私も良くは知らんが、クラリッサが部隊に推薦した子だそうだ。歳は私達と変わらないらしいぞ」

シ 「ふぅん・・・」

? 「シャルロットっ! 悪いわね、遅れたわ・・・」

シ 「あ、レーアさん!」

 

ピットに入ってきた作業服と帽子を着た黒髪の美女、レーア・ディディア。

父親がフランス人で、母親が日本人のこと。

しかも、元フランス代表といった功績を持ち、その実力は未だに錆付いていない。

 

シ 「って、そのままの格好で来たんですか!?」

レ 「当たり前でしょ。これが私の正装よ」

 

すると、レーアさんは僕の頭を押し付けるように、クシャクシャ撫で始める。

 

レ 「それにしても、良い顔立ちになったわね・・・恋、したからかな?」

シ 「っ!? そ、それは、その・・・」

 

手をモジモジさせ、視線が泳ぐ。

 

レ 「あははっ、可愛いなこいつ~!」

シ 「ぐ、グリグリしないでください!」

 

セシリアSIDE

 

 

チ 「では、お嬢様。私は観客席で、応援してます」

セ 「ええ、わざわざ来てくれてありがとう、チェルシー」

 

すると、チェルシーはメイド服のスカートをつまんで、お辞儀したら、ピットから出て行く。

 

鈴 「あれが、セシリアが話してた幼馴染?」

セ 「そうですわ。わたくしが、一番の信頼をおいている方ですわ」

鈴 「一夏よりも?」

セ 「一夏さんは・・・って、何を言わせる気ですの!?」

鈴 「べっつに~」

 

くっ・・・そのニタニタ顔、腹立ちますわね・・・

 

鈴 「ま、あたし達は今から、その一夏をぶっ潰すんだけどね」

セ 「そうですわね、わたくし達の誘いを断った事を、後悔させて上げますわ・・・」

 

 

楯無SIDE

 

 

箒 「あの、楯無さんのご両親は来ないのですか?」

楯 「ん? 来てるよ。ただ、ここに来ないだけ。箒ちゃんは・・・聞いちゃいけなかったわね」

箒 「・・・すみません」

楯 「謝らなくていいわよ」

箒 「・・・」

 

あ~あ、沈んじゃった・・・って、私のせいか。

 

楯 「こら~、そんな悲しい顔しないの~」

箒 「え、ちょ、あはははは、や、やめ、はははっ!」

 

箒ちゃんの脇腹をくすぐると、我慢できずに笑い出す。

そして、指の動きを止めると、箒ちゃんは力尽きたように、膝をつく。

 

箒 「はぁ、はぁ、はぁ・・・何するんですかっ!?」

楯 「眉間にシワ寄せてたら、可愛い顔が台無しよ」

箒 「か、かわっ・・・」

 

そのまま、箒ちゃんはフリーズ。

 

楯 「ふふっ・・・面白~い♪」

 

 

簪SIDE

 

 

優 「・・・私は何も言わない。自分の持てる全てを出し切るんだ」

簪 「はい」

 

久しぶりに、両親と対面。

だが、私も両親も、"喜び"などの顔ではなかった。

 

優 「よし、それでこそ、私の娘だ・・・」

春 「じゃあ、私達は観客席で見てるから」

簪 「はい・・・」

 

ピットから去っていく2人。

そして、試合開始10分前の合図が出される。

 

(・・・一夏君、遅い)

 

 

一夏SIDE

 

 

やべぇ、握手やら、写真やら撮られていたら、こんな時間になっちまった。

 

一 「簪、怒ってるよな・・・」

? 「あの、織斑一夏さんですね?」

一 「え・・・?」

 

アリーナのピットまでダッシュしていると、ちょうど更衣室前で、ニコニコしている女性に声をかけられる。

 

一 「え、えと、写真とかは後で・・・」

? 「いえ、そうではありません。私はただ、『白式』いただこうと思いまして」

一 「・・・はい?」

? 「いいから、さっさとよこしやがれ、ガキがっ!」

一 「グフッ!」

 

急に口調が変わった女性に蹴り飛ばされる。

だが、未だに女性はニコニコしたままで、俺は現状についていけない。

 

? 「あーあ、クソッたれが。顔、戻らねぇじゃねえかよ、この私の顔がよっ!」

 

うずくまっている俺に、追い討ちとして蹴りを2発、打ち込まれる。

そして、俺はこの女性を『敵』として認識し、右手首のガンドレッドに手を添える。

 

一 「・・・『白式』!」

 

粒子が俺の体を包み込み始め、数秒後にはISスーツとともに、白式を装着。

 

? 「それを、待っていたぜ!」

 

やっと、笑みを解除した女性の背後から、スーツを切り裂いて出てきた、鋭利な爪が飛び出す。

それは、クモのように禍々しく、黄色と黒の配色だった。

 

? 「くらえっ!」

一 「くっ・・・」

 

一本から二本、二本から四本と背から生えていく爪。

俺はその爪の猛攻に翻弄され、更衣室に逃げ込むものの・・・

 

? 「逃がすかよーっ!」

 

ついに、八本になった爪の先端から、銃口が顔を出し、実弾射撃を開始した。

 

一 「くそっ!」

 

シールドでガードしながら、脚に備えられたスラスターを最大噴射。

白式はPICによって、重力相殺されており、Gが掛かる事無く、天井に足をつける。

 

一 「なんなんだよっ、お前はっ!」

 

雪羅をクローモードに切り替え、敵に瞬時加速(イグニッションブースト)。

だが、敵は後ろに飛び跳ね、その斬撃は避ける。

 

オ 「ああん? 知らねぇのかよ、秘密結社『亡国機業(ぼうこくきぎょう)』が一人、オータム様だっ!

一(オ 「何が秘密結社だっ! ふざけるのも「ふざけてなんかねぇよ! だから、ガキは・・・」

 

完全にISを展開したオータムが、手元にマシンガンを展開させ、背中から生えた八本の爪と同時に発砲。

俺は更衣室のロッカーを盾にして、銃撃を防ぐ。

今、思う事じゃないけど、銃撃を防げるロッカーなんて、金かけ過ぎだよな・・・

 

オ 「そうだ、てめぇに良い事教えてやるよ! 第二回モンドグロッソで、てめぇを誘拐したのは、ウチの組織だ! 感動のご対面だな、ハハハハッ!」

一 [ブチッ!]

 

オータムの言葉を聞いた瞬間、俺の頭は沸点を超え、本当なのか嘘なのかも考えず・・・

 

一 「だったら、あの時の借りを返してやらぁ!!」

 

ただ、敵を倒すだけの気持ちで、雪片弐型を構え瞬時加速。

 

オ 「ククッ、やっぱガキだな、てめぇは。馬鹿正直に突っ込んで来やがってよぉ!」

 

だが、オータムは指先をアヤトリのように動かし始め、エネルギーの塊を構築させる。

そして、そのエネルギーの塊を投げつけ、クモの糸のように、巨大な網を張る。

 

一 「そんな物っ!」

 

俺はその網ごと、オータムに斬りかかる。

 

オ 「おっと」

 

オータムには避けられてしまったが、網は切り裂いた。

 

オ 「おいおい、クモの糸を甘く見んじゃねぇよ」

一 「何っ!?」

 

切り裂いたはずの網が、ユラユラと白式に巻きつき、がんじがらめにされてしまう。

 

オ 「ハハハハッ! 楽勝だぜ、まったくよぉ!」

 

ケタケタを笑いながら、俺に近づき、何かを構築させる。

 

オ 「んじゃあ、お楽しみタイムとしようぜ。お別れの準備はいいか? ギャハハ!」

一 「・・・なんのだよ?」

 

オータムの手元には、さっき構築した四本足のメタリックなメカ。

大きさは40cmぐらいで、そのメカを身動きが取れない白式に取り付けられる。

 

オ 「決まってるだろうが! てめぇのISとだよっ!」

 

刹那、俺の体に電流に似た、エネルギーが流され、激痛が全身に伝わる。

 

一 「がああああっ!」

オ 「ギャハハハハハッ! 最高だぜ、このメカ。あのイカレ野朗、良いもん作ってくれるじゃねえか!」

 

俺が苦しんでる間にも、オータムはゲラゲラと笑い続けていた。

すると、俺の体から激痛は薄まっていき、床に転がる。

 

オ 「あ~あ、終わっちまった、なっ!」

一 「うっ!」

 

いつの間にか、白式が消えて、俺の腹部に直で蹴りを入れられた。

 

一 「な、何が、起こったんだ・・・おい、白式! おい!」

 

いくら、白式を呼んでも、反応がない。

 

オ 「てめぇが探してるのって、これか?」

一 「そ、それは・・・」

 

オータムが手に持っているのは、菱形状のクリスタル。

 

(間違いない、あれは白式のISコアだ・・・)

一 「でも、どうして・・・」

オ 「説明してやるよ、ありがたく思いなぁ。さっきの装置はなぁ、『剥離剤(リムーバー)』っつうて、ISを強制解除できる秘密兵器だ。良かったなぁ、死ぬ前に見れて、よっ!」

 

そこに、何度も蹴りを入れられ、体が言う事を聞かなくなってくる。

 

(白式さえ・・・白式さえあれば・・・)

獅 『お前の力はなんのためにある?』

一 「っ!」

 

オータムに頭を踏まれ続けている時、獅苑の言葉が甦ってきた。

 

一 「俺の力は・・・みんなを守る力」

オ 「ああぁ?」

一 「だから、帰って来いっ! 白式っ!」

 

そう叫んだ瞬間、全身が光に包まれる。

 

オ 「な、何だ!?」

 

オータムは異変を察知して、俺から離れる。

そして、光が収まると、俺には展開された白式が装着され、さっきの四本足の装置がポロッと、床に落ちる。

 

オ 「て、てめぇ、一体どうやって・・・?」

一 「知るかっ! 喰らえーっ!」

 

雪片弐型を最大出力。

そして、オータムに向かって雪片弐型を振り下ろす瞬間、零落白夜を発動させる。

 

オ 「チッ、図に乗るなよ、ガキが! てめぇがいきがったところで、現状は変わらねぇんだよっ!」

獅 「それは、どうかな?」

一・オ 「っ!?」

 

オータムの後ろには、足部分と小型スラスターだけを部分展開した、死戔の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

50話

 

 

 

 

 

 

獅苑SIDE

 

 

まだ、俺が喫茶店でクラリッサさん達に、お茶を出している時・・・

 

獅 「すみません」

 

俺は頭を下げていた。もちろん、理由はクラリッサさんの顔を知らず、追い出そうとした事だった。

だって、いきなり軍服の人が現れたら、警戒はするでしょう・・・

 

ク 「いえ、謝るのはこちらです。こちらの方こそ、いきなり押しかけてしまって・・・あ、こっちは」

 

クラリッサさんは手で、隣にいる少女に促す。

 

リ 「リリヤです・・・」

獅 「朝霧です・・・」

 

・・・自己紹介終了。

 

ク 「あ、あはは、部隊では、ハキハキしているんですが、人見知りが激しいもので・・・すみません」

獅 「いえ、俺も似たようなものですし」

リ 「・・・だろうね」

 

ん? 今、何か言ったか・・・? まぁ、いいか。

 

ク 「あ、獅苑殿、お手洗いはどこにあるんでしょうか?」

獅 「それなら、廊下突き当りです」

 

"ありがとうございます"と、言い残して、室内に俺とリリアさん、2人っきりとなる。

 

獅 「・・・」

リ 「・・・」

獅 「・・・」

リ 「・・・」

獅 「・・・お茶、入ります?」

 

沈黙に耐え切れず、リリアさんに話しかける。

だが突然、リリアさんは笑い始めた。

 

リ 「あははははっ! あんた、ほんとっに、人間らしい生活を送ってきたのね・・・ぷ、くくっ、まぁ、私も似たようなものだけど」

獅 「・・・?」

 

急にフランクな喋り方になったリリアさん。

ちなみに、俺はこの人とは面識はない。

 

リ 「あ、お茶だっけ? いるけど、そんな事をしてる余裕はあるのかな? 今にでも、大変な事が起こってるのに・・・」

獅 「・・・どういう事だ?」

リ 「教えてあげるよ。実はね、私達の部隊は今『亡国機業(ファントム・タスク)』について、調べてるんだけど・・・その機業の一人が、ここに来てるのよねぇ。その狙いは・・・」

 

数秒間の溜め。その間も、ニタニタしている笑みを絶やさない。

 

リ 「織斑一夏の専用IS『白式』」

獅 「っ!」

 

ガンッと、トレーを机に叩きつける。

 

リ 「わぁ!」

獅 「・・・確証は?」

 

上目使いで、リリアを睨みつける。

だが、彼女はケロッとして・・・

 

リ 「100%よ。今なら、更衣室あたりにいるんじゃない? 後、織斑一夏の保障は無いと思うよ?」

獅 「・・・」

 

俺は教室を出て、走り出す。

 

リ 「せいぜい、頑張れ~・・・」

 

 

リリアSIDE

 

 

(さてさて、オータムはどこまでやれるかな・・・?)

 

第二世代型の『アラクネ』では、あの朝霧獅苑と天と地の差がある。

だが、そこに『進化』という可能性があり、私はその『進化』を見るのが大好きだ。

 

(でもまぁ、オータムに『進化』を期待するほどでもないか・・・)

ク 「あ、リリア。獅苑殿から、教室の鍵を渡されたんだが、何か知ってるか?」

リ 「さぁ? 何か、急用でもあるんじゃないんですか? 副隊長」

 

 

投稿者SIDE (という訳で、49話の続き)

 

 

死戔が雪片弐型を防ごうとした八本の装甲脚を一瞬にして切り裂いて、敵の懐はがら空き状態に。

 

獅 「一夏、今だっ!」

一 「うおおおおぉっ!」

 

雪片弐型がオータムのIS『アラクネ』を切り裂く。

 

オ 「ぐぅぅ! 貴様、どうしてここに来れた?・・・見張りがいたはず」

獅 「廊下で伸びてる・・・」

 

更衣室の20メートル範囲には、廊下に突っ伏している黒服5人の姿。

 

オ 「くっ、ここまでか・・・」

獅 「っ! 一夏、離れろっ!」

一 「え・・・」

 

獅苑が叫んだ瞬間、ブシュッと、圧縮空気の音を響かせて、オータムがアラクネ本体から離れる。

 

獅 「チッ・・・おらっ!」

一 「うわっ」

 

光り始めたアラクネを獅苑が吹っ飛ばすのと同時に、一夏もアラクネとは逆方向に蹴り飛ばす。

そして、光り始めて数秒、アラクネは大爆発。

 

一 「一体、どうなって・・・おい、獅苑、獅苑ー!」

獅 「叫ばなくても、聞こえてる・・・ぐっ」

一 「獅苑っ!」

 

煙の中から、足を後ずさる獅苑が現れ、咄嗟に一夏が獅苑を支える。

 

獅 「大丈夫だ・・・コウのおかげで」

コ 『何が『コウのおかげで』よっ! もう少しで、死ぬところだったんだよ!』

 

獅苑の周りを浮遊するコウ。

それに、獅苑は軽く頭を下げて謝った。

 

一 「それで、オータムは?」

獅 「逃げた。今から追いかける」

一 「おいっ、その体で大丈夫なのか?」

獅 「平気」

 

と言うと、死戔を完全展開。

死戔には、操縦者の怪我などを一時的にだけ、回復させる事ができるため、IS装着していれば、どんな怪我だろうとも、100%の実力を出せる。

 

一(獅 「なら、俺も「お前は簪のところに行け。そろそろ、試合が始める」・・・でも、アイツは俺を」

獅 「頼む、行ってくれ。簪のためにも・・・」

一 「・・・分かったよ。その代わりに、絶対アイツを捕まえろよ」

 

そう言って、一夏はピットの方に走り去る。

 

獅 「・・・コウ、アイツはどこにいる?」

コ 『そんなに遠くに行ってないよ。今、追いかければ、すぐに追いつく」

獅 「なら、行くぞ」

 

 

オータムSIDE

 

 

(おいおい、聞いてねぇぞ・・・まさか、"アイツ"が出てくるなんてよぉ)

 

私は学園敷地内の森を走り続け、学園の出口を目指す。

 

(くそっ、何が簡単な仕事だ、あのガキっ!)

 

頭によぎるのは少女の姿。

いつでも、他人を見下したような目、自らの能力の高さと相手の能力の低さを確信している、そんな少女の目。

 

(それに、あんなメカ使いもんにならねぇじゃねぇか!)

 

あんな風に、ISを遠隔コールできるなら、剥離剤(リムーバー)の意味は無い。

しかも、二回目のチャンスは無いのだ。剥離剤を一度使ったISには、耐性ができてしまい、二度と使用する事はできないからである。

 

(・・・まさかっ!)

 

引き離す性質を持つ剥離剤に対して、耐性ができるという事は、それによって逆の性質・・・引き寄せあう性質を持つ事で、遠隔コールを可能にしたのだとしたら理解できる。

もちろん、あのイカレ野朗が、その事に気づかないはずが無い。

 

(殺す・・・殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す)

 

あのイカレ野朗も、あのガキも、スコールが何を言おうが殺してやる。

 

オ 「・・・クソッ、喉が渇いたぜ」

 

IS学園の敷地内から脱出し、近くの公園の水道で一休み。

 

オ 「・・・ん? なんだ、出てこねぇぞ。壊れてるのか?」

 

今日は厄日か・・・くそったれ

 

オ(獅 「チッ、なら、さっさと戻って「そうはいかねぇぞ」・・・っ!」

 

振り向いた時にはもう遅い。

私はIS腕で殴り飛ばされ、木にぶつかり気絶した。

 

 

獅苑SIDE

 

 

(こうしてっと・・・)

 

気絶しているオータムという女性を木に縛りつけ、周りを見渡し、人の気配を探る。

 

(・・・いない、な)

 

今の俺はIS装着中なので、民間人に見られると、めんどい事になる。

だが、人影が無い事を確認し、オータムを運び出そうとすると・・・

 

コ 『上空から、熱源っ!」

獅 「っ!?」

 

コウの警告に、咄嗟にその場から離れる。

すると、俺の場にいた場所が一瞬にして焼け焦げ、上空には長身のライフルを持った、濃い青色の機体が浮いていた。

 

コ 『あれ『サイレント・ゼフィロス』だよっ! イギリスの第三世代機の!』

獅 「・・・」

? 「・・・」

 

体型的に年下の少女。バイザーで顔が隠されているものの、とてつもない覇気を感じ、俺は少女から目を話さない。

すると、少女は冷徹に、ライフルの銃口をこちらに向ける。

 

獅 「っ・・・」

 

バシュンッと、レーザーが放たれ、俺は飛び上がる。

その間に、少女がオータムを掴んで、飛び立つ。

だが・・・

 

獅 「っ! 避けろっ!」

? 「っ!?」

 

次の瞬間、少女の横を超高密度圧縮熱線が通り過ぎた。

そのせいで、少女の手からオータムが離され、草木に落下。

 

獅 「コウ、索敵」

コ 『全方位上空から熱源反応あり。数は・・・15』

 

上を向くと、飛来してくる黒いIS。

洗礼されたスマートな右腕には、大型ブレードと同化しており、巨大な左腕の手の平には、強力なビーム兵器の砲口が見えた。

 

獅 「あれって・・・」

コ 『たぶん、"あの時に現れたIS"の発展期だよ』

 

クラス対抗戦に現れた黒いISよりは、鋼の巨人とかではなく、乙女のような体躯をしていた。

 

千 『おい朝霧、聞こえるか!』

獅 「織斑先生・・・」

 

特殊な回線から、織斑先生から通信が入る。

 

千 『急いで、アリーナに来てくれ! 各ピットに"あの黒いIS"の発展機が現れた!』

獅 「っ!」

千 『通信も全て、あのISのジャミングのせいで遮断された。繋がるのはお前と私のこの回線だけだが、もって30秒が限界だ』

獅 「みんなは・・・みんなはどうなってますっ!?」

千 『観客の方は、協力者もあって、無事に誘導している。各ピットの様子は分からんっ! それで、お前は今、どこに[ブツッ]・・・』

 

どうやら、時間切れのようだ・・・

 

? 「チッ・・・」

 

俺が通信中も、少女は草木に落ちたオータムを回収しようと、急降下するものの、黒いISの妨害により、回収失敗を続けている。

そして、俺にも矛先が向けられた。

 

獅 「くっ・・・」

 

左右八方からの、熱線の嵐。

ここは住宅街に近いので、できるだけ上空に逃げ込む。

 

獅 「・・・」

? 「・・・」

 

地上から2000メートル以上の位置まで上昇し、少女と背中合わせに、俺達を囲んでいるISを見つめる。

 

? 「おい・・・」

獅 「・・・なんだ?」

 

背中越しから、声をかけられ、俺は振り向かずに答える。

 

? 「こいつら、何分で殺れる?」

獅 「・・・お前は?」

? 「そんなの決まっている」

 

同時に、瞬時加速で黒いISに接近し・・・

 

獅・? 「五分で片をつけるっ!」

 

対艦刀と、ライフルのレーザー銃剣で、まず一機を片付けた。


 
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