~聖side~
キィ…。
そろ~り…。そろ~り…。
ギシッ!!
「っ!!」
キョロキョロ…。
「…ふぅ~…。 危ない危ない♪ さぁ~て…徳種さ~ん…。朝ですよ~。(ボソボソッ)」
「う~ん…。(ゴロリ)」
「もぉ~…。徳種さんは寝ぼすけさんですね~。 …そんな子には…。」
そぉ~…。
「チュッ♪」
「うん!? …う~ん……ぐぅ~…。」
何かが俺の頬に触れた気がしたが…まぁ良いや…眠いし…。
「うわわっ……危ない危ない。目を覚まさないように気を付けないと…。」
「う~ん…。むにゃ…。」
「…それにしても、無防備な寝顔って言うのもまた…。( ///)」
ガチャッ!!!
「おっ…おはよう…ござい…ます??」
「……馬謖??」
「へっ!? あわわ!!」
なにやら、うるさいな…。
「ん~っ?? 一体、何の騒ぎ?(ゴシゴシ)」
「おっ…おはよう…ございます…。」
「…おはよう。」
「おおおおはよう!! あああ朝だよ!! 徳種さん。」
明らかに挙動不審な馬謖ちゃんは、一体どうしたというのか…。まぁ、良いや。気にしない気にしない…。
「んっ?? もう朝か…。 ふわぁ~…。」
「あ…朝ごはんの…準備が整ってます。」
「…朝ごはん食べる?」
「うんっ。頂くよ。」
「私はお洗濯するから、洗濯物頂戴♪」
「あぁ、皆ちょっと外で待っててもらえる。」
そう言って、皆を部屋の外に出し、待っててもらう。
その間に、寝巻きからいつもの胴衣に着替える。
外ではなにやら話してるようだが、話の内容は良く聞こえない…。
俺は、着ていた服などを折り畳んで一つに纏める。そして、それを持って部屋を出る。
「お待たせ。はいっ、じゃあよろしくね。」
「うんっ♪ 確り洗っておくね。」
「でっ…では…参りましょうか。」
「…御飯冷めちゃう。」
「あぁそうだね。冷めちゃう前に行こう!!」
俺は、伊籍ちゃんと孫乾ちゃんと一緒に厨房に向かった。
その後姿を見送りながら、
「すぅ~…はぁ~…。 徳種さんの香りだ~…。へへっ♪( ///)」
と馬謖が、俺の服に顔をうずめては、零していたと知らずに。
俺は厨房の席の一つに腰をかける。
すると、二人が湯気のたった『湯』と御飯、それと麻婆豆腐を持ってきてくれた。しかも全て大盛り。
「朝からなかなかの量だな…。」
「あの…男の人って…どのくらい食べるのか…その…分からなくて…。」
「…とりあえず作った。」
「食べ切れなかったら…残してくださって結構…ですから…。」
「まぁ、食べてみないとなんとも…。」
麻婆豆腐にレンゲを伸ばしてみる。
適度にとろみが付いた辛めのタレが、綺麗に形の整った豆腐に絡まり、とても美味しそうである。
豆腐を一つ掬い、食べてみる。
「……!!」
「あっ…あの…。」
「……。」
「…美味しくない??」
「……。」
「「…。」」
「ぅ~ま~い!!!!!」
「「ビクッ!!!!!」」
「美味すぎる…。んっ!? 二人ともどうしたの??」
「(ガクブルガクブル)」
「…あぁ、ゴメンゴメン。驚かせちゃって…。でも、そのぐらい俺も驚いてるんだ。こんなに美味い麻婆豆腐があったんだって…。」
「そっ…それは…良かったです。」
「これは、孫乾ちゃんが作ったの?」
「いえっ。これは伊籍ちゃんが作りました。」
「そうなの?」
「…。(コクン)。」
「(ガシッ)」
「っ!!!!」
「ありがとう!!こんなに美味しい麻婆豆腐を食べさせてくれて!! 俺生きてて良かった!!」
「…分かった…分かったから…手を振り回さないで。」
「えっ、あぁゴメン。つい興奮しちゃって。」
「…あっ。」
「どうした??」
「…なんでもない。( ///)」
伊籍ちゃんは、俺が握ったほうの手を胸に抱えている。
ちょっと強くやりすぎちゃったかな…。怪我して無きゃ良いけど…。
「麻婆豆腐は…伊籍ちゃんの得意料理なんですよ…。」
「そうか~。得意料理って言うのが納得できる味わいだね…。」
「こっちの…湯も…飲んでみてください。」
「うん。 ずずっ…。」
口の中に、出汁の味と魚介の味が混ざり、見た目よりも深い味がする。
余計な味が存在せず、食材の味そのままで良い味になっている。
「うん!!美味しい!! これもとっても美味しいよ。」
「ありがとう…ございます…。」
「どうした? なんでちょっと落ち込んでるのさ?」
「いえっ…その…伊籍ちゃんの時みたいに…ならなかったなって…。」
「あぁ、確かに…。でも、それは俺も慣れたのがあるからね…。」
申し訳なさの気持ちも含めて、孫乾ちゃんの頭を撫でる。
「あうぁぅ…。」
「美味しい湯をありがとう。これはお礼ね。」
「ありがとう…ございます…。( ///)」
「さぁて、こんなに美味しいんだから全部食べきれそうだ!!」
「どうぞ…召し上がれ…。」
「…召し上がれ。」
俺は凄まじいスピードで食べていく。
すると、大盛りに盛られていたはずの麻婆豆腐は、どんどんとその量を減らしていく。
「あらぁ…。 凄い食べっぷりね。」
「ふわぁ、ふぁいふょうふぇんふぇえ!!」
「口に物が入ったまま喋るのはお止めください。はしたないです。」
「もごっもごっ…。 …ごくん。はぁ…。 ごめんなさい…。」
「分かってくだされば良いのですよ。」
「ふふっ、簡擁ちゃんはお母さんみたいね。」
「そっ…そんな!! 水鏡先生!!」
「…間違ってない。」
「確かに…。」
「ちょっ!!二人も…!!」
「俺は、簡擁ちゃんみたいな子がお母さんだったら嬉しいと思うけどな。」
「とっ…徳種さんまで!! からかうのはよして下さい!!」
「俺は思ったことを言っただけだよ。まぁ、本心が出ちゃってるって言い方も出来るけど…。」
「…だっ…だからと言って、お母さんなどと言うのは納得できません!!」
「そうか、年に見られるのは嫌だよね…。」
「そっ…そうじゃなくて…見られるなら彼女の方が良いというか…。(ボソッ)」
「ん??なんか言った??」
「なっ…なんでもありません!!」
「あっ!!そうそう…。御使いさん、今日も講義して頂いてよろしいですか?」
「…分かりました。」
「辛ければ、話されなくても結構ですから。」
「いえっ。これは俺が乗り越えないといけないことですから…。」
「…そうですか。では、また後で教室にお越しください。」
「ありがとうございます。ではまた後で。」
水鏡先生と簡擁ちゃんを見送った後、残っていた御飯を一気にかきこみ、部屋へと戻った。
昨日の一件から、俺の心根は決まっていた。今日はそのことを話してからまた質問を受けよう…。
「徳種さん!! ただいま大丈夫でしょうか??」
「ん?? 簡擁ちゃん?? 一体どうしたの??」
「急に申し訳ありません。徳種さんにお会いしたいと言う人が尋ねて参りましたが…。」
「はい?? どちら様??」
「何でも、徐庶と…。」
「芽衣!! 会う!! 直ぐに行くよ。」
「へっ?? お知り合いですか?」
「あぁ、俺の仲間だ。」
「分かりました。門の所でお待ちです。」
「ありがとう、簡擁ちゃん。」
「いえ…。では、参りましょう。」
俺は足早に門へと向かった。
「聖様!!!!」
「お頭!!!!」
「先生!!!!」
がしっ!!
「ぐえっ!! ちょ…皆、苦しいって!!! 久しぶりだからって…嬉しいのは分かるけど…ちょっとほんとに…マジでそろそろ…勘弁………。」
「絶対に放しません!!」
「そうだぜ、放せるわけないだろ!!」
「放したら…また先生はどこかに行っちゃうのです!!」
「……。」
俺を掴んでいた皆の手の力が少し緩まる。
「聖様に…私たちがどれだけ心配したか分かりますか?」
「…落ちてるつり橋を見たときは…肝が冷えたぜ。」
二人の目には涙が浮かんでいる。橙里のほうを見ると、橙里は号泣していた。
「ゴメンな、皆。心配かけちゃって。」
「本当に、もう駄目だとも思ったよ。」
「でも…こうして先生は生きていたのです。」
「本当に…良かったです~。」
「うんうん。俺も嬉しいよ。皆にまた会えて。」
「あの~…。お取り込み中申し訳ないのですが…。」
「「「はい??」」」
「そっ…その、人前でそんなにいちゃいちゃされても困るのですが…。」
「…愛する人に久しぶりに会ったのだから、少しくらいは多めに見てください~。」
「まぁそうだな。ここは多目に見てほしいところだな。」
「多目に見て欲しいのです…。」
「ですが!!『どちら様?』…水鏡先生…。」
「あらっ、御使いさんの知り合いの方?? …そこに居るのは…橙里じゃない!?」
「水鏡母さん!! お久しぶりです。」
「「「母さん!?!!?!!」」」
「水鏡先生は、橙里の親代わりなんだよ…。 な? 橙里!!」
「はい。水鏡母さんに私たち姉妹は随分とお世話になりました。」
「橙里…しばらくの間に随分と立派になったわね。でも確か、あなたは呉に仕官に行ったのではなくて?」
「はいっ。ですが、ここにいる先生に惹かれて、先生の仲間として一緒に旅をしています。」
「そう。随分と御使いさんはおモテになるのね。」
「ハハハッ、タマタマデスヨ。」
「どういうことですか~?」
「こちらの方々は??」
「聖様の仲間の徐庶、字を元直と申します、橙里のお母様。」
「あたいは凌統、字は公績。同じくお頭の仲間だよ、橙里の母さん。」
「これはこれは、ご丁寧に。私は司馬徽、字は徳操、号は水鏡と申します。」
「それで、先ほどの言葉はどういう意味でしょうか~、水鏡さん?」
「言葉の通りですわ。御使いさんは英雄さん。英雄が色を好むのは悪いことだとは思いませんよ。」
「「「ほぅ…。(ギロッ!!)」」」
「ちょっと待て!!俺は何もしてないぞ!!」
ゆら~り…。
「聖様は、知らずの内に女の子に手を出してますからね…。」
ゆら~り…。
「お頭~…。 英雄と言えども…手を出しすぎじゃないか…??」
ゆら~り…。
「『種馬』に名前を変えたほうがいいと思うのです…。」
「…皆…。一回落ち着こう…。 なっ!!」
「「「問答無用!!!!!」」」
「い~や~~~~…。」
……。
「すっ…水鏡先生…?? 確か、この方たちは徳種さんのお仲間の方ですよね…。」
「そのはずなんですけどね…。」
目の前で起こっているのはまさに惨劇…。
でも、どうやら皆本気ではないようだ…。
「反省しましたか、聖様?」
「ふぁい…。」
「それなら良かった。お説教したかいがあったな。」
「あれっ?何で怒ってたんでしたっけ?」
「うぅ~濡れ衣なのに…。」
「さぁ、積もる話もあるでしょうが、皆さんまず中にお入りください。こんなところで立ち話もなんでしょう?」
「すいません~失礼します~。」
「失礼するな。」
「ただいま~です。」
こうして、俺たちは再び四人揃った。
積もる話もあったのだが、俺が授業に出ると言うと、皆それを傍聴したいと言って授業に参加した。
「さて、昨日の話の続きからしようか…。」
「…よろしいのですか?」
「はい、水鏡先生。俺はもう決心しましたから。」
俺は皆の方に目を向け、ゆっくりとした口調で話し出す。
「…巷で噂のとおり、俺は確かに武器を持たない人を殺したり、助けを請う人を殺しました。」
「「「「っ!!!??」」」」
「「「「「……。」」」」」
「言い訳がましいけど、俺が手がけたのは村を襲った賊千人…。」
「賊相手なら仕方ないと思いますし、それに悪行を『弁護ありがとう。でも、良いんだ。』…。」
「相手が賊であれ農民であれ…武器を持ってようがいまいが…助けを請うた人を手に掛けるのは、義に反すること。 …俺は義を謳いながら、その義に反することをしてしまったんだよ…。」
「お頭…。」
「徳種さん…。」
「もしかしたら、話してみれば改心してくれたかもしれない。無駄に人を殺す必要がなかったかもしれない…。俺の理想である『和を以って貴しと為す』の精神を考えれば、その方が良かったのかもしれない…。」
「先生…。」
「徳種…さん…。」
「でも、昨日孫乾ちゃんに言われて気付いた。もし俺があそこで許してしまえば、今まであいつらに殺された人達はどう思うか、そして許したことを聞いた人たちはどう思うか…。これから、俺が領地を持っていく上で、このような事態を許していれば、領内は犯罪で荒れ、人々を苦しめる結果になってしまう。そこで出来る国は、俺の理想の国か?? いやっ、違う。 ならば、今回の賊どもは、人々にしめしをつける為の必要悪。『悪・即・斬』の精神から、悪は即座に斬る…。 これが…このことが平和へと繋がる第一歩だと思うから…。」
「その通りだと私も思いますよ、御使いさん。」
「…水鏡先生。」
「貴方がもし、この国の平和を目指したいと言うのなら、貴方はこれから多くの人を殺し、多くの屍を超えていかなければなりません。ただし、覚えておいてください。人を殺すことに悦を覚えてしまったら、貴方はもう人ではなくなります。出来るなら、人を殺す事無く天下平和を御目指しください。」
「はい、俺も出来ることなら人殺しは勘弁ですから…。」
「ふふふっ、お優しいのですね。」
「非暴力、不服従主義なんですよ。」
「徳種さん。なんですか、それは?」
「これは、俺の時代では有名な人の言葉だよ。俺はこれをガンディズムと呼んでる。」
「がんでずむ?」
「ガンディズム!! まぁ、発音は難しいわな…。」
「ふむ…。そのがんでずむと言うのは、徳種さんのこれからの思想ですね。」
「そうなるのかな…。というか、前々からそうだったんだけど、自覚してなかったってだけな気がするけどね…。」
「…質問。」
「どうしたのかな? 伊籍ちゃん。」
「…傍聴してる人たちって誰?」
「あぁ~…。そういえば言ってないね…。」
芽衣たち三人はそれぞれ自己紹介をし、それに続く形で簡擁ちゃん達も自己紹介をした。
「…ところで…徐庶さんたちは…その…徳種さんの…彼女なのですか??」
「「「「!!!」」」」
孫乾ちゃんの質問に残りの四人も食い入るようにこちらを見つめる。
ってちょっと!! 孫乾ちゃん!! あんたなんて質問をぶち込んでくれるんですか!!
「「「彼女ではないですね~。(ないな)(ないです)」」」
三人は全員否定した。何かちょっと寂しい俺がいた…。
「えっ…違うんですか!!!?」
「はいっ。 …聖様は…私たちの最愛の人。」
「彼女ではなく…。」
「妻の方が正しいのです。(ニコッ)」
「ぶふっ!! ゲホッゲホ…。」
俺は盛大に吹いた後、むせ込んでしまった…。それだけ驚いたのだから仕方ないよな…。
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どうも、作者のkikkomanです。
すいません…。水曜日には投稿しようと思っていたんですが、予想以上に忙しくて今日になってしまいました。
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